かあちゃんが死んでから、うちの兄妹関係に
変化が生じて、正直とまどっている。
毎月、どこかの米を送ってきては
感想を求められるのである。
それもネットで探した“幻の米”だとか
真空パックまでされた高級米だとか
全国津々浦々の名産米。
あのな、米はとてもありがたい。
私は米大好きだから、ひじょうに嬉しい。
だがな、よおく考えてみい?
この私が! 安い炊飯器で! ゲロ不味い関西の水道水で炊くんだぞ?
「美味い」か「不味い」しか味覚の幅がないこの私がだぞ?
大体、まともに米を研げているのかも怪しいぞ?
毎月毎月、ワインのテイスティングのように
その米が“どう”美味いのかを表現しなければならなくなり
かなり切羽詰って、米を炊く水をも
ミネラルウォーターにせざるを得なくなったのが財布に痛い!
米代は浮いたが、水代が生活費を圧迫しとるんだぞーーーーーっ。
かあちゃんは「どうだった?」「うん、美味かった」で
話が終わる簡単なヤツだったが、さすが兄、甘くはない。
数ヶ月前の米との比較まで求められても覚えてねえよ・・・。
しかも、米の産地のウンチクを延々とされ
話は水や地酒にまで及び、毎月の糧を得るのはラクじゃねえ!と
生きてくことの厳しさを、つくづく思い知らされている。
「これで米を買え」と、お米券でもくださいーーー。
てか、何度も何度も問うているが、何で米?
米さえあれば、とりあえずは飢えないからか?
グルメの身内を持つと、とても辛い。
これで私が博学になるかっちゅうと
聞いた端から忘れているので、ほぼ意味はない。
私も身内からすると迷惑なヤツと評判だが
兄も相当にやっかいだよなあ・・・。
でも、米は全部美味かったぞ。
「どう違う?」とか聞かれても、さっぱりわからんが
とにかく、そこらで買う米より美味い。
多分、私以外のヤツが炊いたら、もっと美味かろうて
ちょっと米が気の毒になる。
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