台風のメッカである九州でも
直撃なのに、被害に遭う地域と遭わない地域がある。
遭うとこは、毎回ひどい被害が出るんだ。
大した被害が出ない地域の人々は
そりゃ、風雨の強さには困惑するけど
TVでニュースを観て、「ほおおおおお、すんげーーー」
と、それが自分の住む地域の話とは思えず
まるで、台風に縁がない地方の人々と同じような感覚である。
風が吹き荒れた後の、ゴミだのの散乱の掃除は大変だが。
そんなノンキな台風ライフを送っていた私も
何度か、恐怖のド真ん中に突き落とされた経験がある。
暴風で、サッシのガラスがビビビビビビと絶えず鳴くんだ。
時々ミシッミシッとガラスがたわむのが、目に見えてわかり
「!!! 割れる???」 と、そりゃあもう恐ろしい。
これが割れたら、爆風と共に破片が部屋中に飛び
それでも根性を出して、反対側の窓を開けて
吹き込んでくる暴風を逃がさないと、屋根が持っていかれる。
こうなったら最後、家中、暴動民衆が土足で走り去った後みたいな
状態になるが、それでも屋根がなくなるよりはマシだろうな。
窓ガラスが割れる一番の原因は、飛んでくる瓦。
あの重い瓦が飛ぶんだぞ。 落ちるんじゃない。
まるで秋の風に舞う枯れ葉のように、空をビュウビュウ飛ぶんだ。
瓦が!!!!!
初めて見た時は、紙かと思ったよ。
ツバメのように大きく縦ターンしながら
2階建ての家より高い空中を、何枚何十枚もの瓦が飛ぶ様は
今でもそれを目撃した時の衝撃とともに、はっきり覚えている。
あれを見たら最後、台風 = 恐い って脳裏に刻み込まれるさ。
その飛んだ瓦は、各家々の窓ガラスや屋根や壁を破壊し
木々を裂き、車庫をブチ抜き、車にボコボコ突き刺さる。
ごっつい手裏剣のようである。
戦争中はこれが焼夷弾とかで、もっと激しい恐怖だったんだろうな。
普通の家の瓦は、組み合わせ式だけど
台風通過地域の家は、ビス留めの瓦じゃないとダメ!
それでも他家の瓦が飛んできて、自分ちのビス留め瓦を
割ってくれたら、そっから風で巻き上げられる可能性もある。
一軒家に住んでいた時、そこの地域で風速40m/hってのに遭った。
これがどれだけ凄いかっちゅうと、家が揺れるのだ。
ゴゴゴッ ビリビリ パシッ メキメキ
と、普段耳にしないあらゆる不気味な音が、家のあちこちから鳴り
震度4の横揺れ地震と同じぐらいの強さの揺れが、何時間も続く。
何かもう、この世の終わりな恐怖で、気が狂いそうになるが
脳内では被害額の心配とかをしている。
大事なものをまとめておくべきだろうが
もう、そういう建設的な余裕がないのだ。 動くのすら恐い。
窓から離して敷いた布団をかぶって、震えつつ祈るだけ。
悪い事に、台風が来るのは夏。
当然そういう状況では停電をしていて、エアコンも扇風機も点かない。
窓も開けられず、蒸し風呂のような室内で恐怖と闘う。
冷蔵庫も止まっているので、食料が腐るのを防ぐために
冷気を逃さないよう、開け閉め厳禁。
冷たいものも飲み食いできない。
ヘタすると、断水にもなる。
ガスも都市ガスだと止まる場合がある。
台風が通り過ぎても安心は出来ない。
吹き返しってのがあるからだ。
この風の方向で、台風がどこにいるかが判断できる。
東風だったのが、今度は西風?
時間差で全方位攻撃かよ! って感じ。
渦中に外に出ようとすると、道にたどり着く前にまず
玄関ドアが風で持っていかれるので
すべてが終わってからでないと、外には1歩も出られない。
台風が通り過ぎた後の街並みは、まるでゴーストタウン。
ガラスや瓦の破片や、家の壁、トイなどのあらゆる部品
破壊された車、水に浸かった車、標識、街路樹、ゴミ、電線
これらがいたるところに散乱しているし
電柱は見渡す限り、全部斜めに傾いている。
コンビニは商品が根こそぎ欠品。
停電や断水はすぐには回復しないし
頼るべきは我が家の備蓄である。
しかし床上浸水されたら、これらも使用不能にされる。
浸水された家ってのは、床中に増えるワカメを巻かれた感じになる。
どんだけ悲しいだろう、と思う。
台風地域の人々は、毎年毎年この恐怖の再来の可能性があるわけだ。
もう、うんざりだよな。
私は今、関西にいるが、関西人にこの話をしても
「まさかー」 と、疑われる。
台風が来ないだけでも幸せだと思うよ。
(関西の台風? ありゃ単なる強風だよ。)
でも、地震、洪水、大雪、地すべりなど、自然災害は日本中で起きる。
台風の恐怖はわからなくても、被害に遭った人々の悲しみは共通だ。
何があるともわからないんだから、備蓄、しとこうね。
コメントを残す