九州の家庭での “客” 関係は、女性にとっては最悪の事態である。
うちの実家は客が多く、常にかあちゃんは召使い & 酌婦状態だった。
田舎ってのは、狙っとんのか飯時に平気で立ち寄る人が多い。
しかも朝昼晩3食どれも気が抜けない。
料理屋じゃねえので、飯ってのは普通どこも
家族の分しか用意しないものなので
客が来ると、かあちゃんはまだ手を付けていない自分の分を
そっと台所に持って行き盛り付け直して、客に出すのである。
何故かいつも直前の皿が並んだ頃に来るので、間に合うんだが
もしかあちゃんが自分の分に手を付けてしまっていたら
新しく料理を作らされるハメになる。
かあちゃんは料理上手だと評判だったので
そういうヤカラが多かったのだろうが
そいつらの家でも、飯の用意をしているだろうに
「食ってきた」 で済ませていたのだろうか?
どの方面で想像しても、最悪な夫だよな。
これが夜ともなると、6時7時に来て12時1時まで飲む。
客間もあるのだから、そっちに行けばいいのに
居間でドンチャンやるので、かあちゃんはTVも見られず
酔っ払いのたわごとを愛想良く聞き続けなければならない。
私は子供部屋に避難すればいいけど、うるさくて眠れない。
酔っ払いがいかにくだらん事しか言わんのかは、その時に学んだ。
お陰で私は今でも、酒好きが大っ嫌いである。
いくらタダ酒が飲めるとは言え、あの酒乱のとうちゃんのとこに来るなど
飲めれば何でも良いんだろうか。
よく口ゲンカの罵り合いに発展していたし
とうちゃんが寝ても、居続ける客もいたのが信じられなかった。
このように、うちは昼は飯屋、夜は居酒屋状態であった。
手伝いもしないガキで、遠目に見ていただけの私でも
その図々しさにはイライラさせられたものだ。
不思議なのが、上がりこむ客はいつもひとり。
2人目がやって来た時は、「ああ、先客がいたか」 と帰って行く。
うちに真の客や泊り客がある場合は、誰ひとり来ないし
突然の客の間では、連絡網や暗黙のルールでもあるんかいな?
だったらその前に、「飯時にアポなし訪問するものじゃない」
という一般常識を身に付けてもらいたかったぞ。
とうちゃんもかあちゃんも、その非常識さはわかっているものの
うちは仕事関係でそこに住んでいる “よそ者” だったので
「これも田舎の付き合いだ」 と、覚悟を決めていたようである。
ガキの頃は、かあちゃんの苦労は 「大人は大変だな」 という
他人事だったのだが、九州産の彼氏が出来ると
その災いは私にも降りかかるようになってきた。
この時に感じた怒りは、この温厚な私でも相当のものだった。
うちに遊びに来て、茶を出しの酒を出しの飯を出しのさせられ
で、会話は全部彼氏との内輪話で、私には入れない。
自分の客や友人にしか、そういう事はしたくねえよ。
うちに来るのなら、まず私と友人になれよ。
うちは飯屋じゃねえんだよ!!!!!
これを彼氏に言うと、「仲良くなるのには時間が掛かるだろ」 だ。
じゃ、相手が心を開くまで、私はずっと給仕かよ?
しかも相手は手ぶらで来て、何の努力もせず
私を友人と “認めてくれる” まで?
これ、私には耐えられない事だったんだが
これをしないと、彼氏の友人たちには評判が悪くなるんだと。
そういう見栄には付き合ってられないので
よく彼氏とはケンカになっていた。
ちなみにな、この彼氏の時の思い出で
街中で彼氏と歩いてて、彼氏の同僚にバッタリ会ったんで
挨拶をして、愛想良く隣でたたずんでたんだが
相手の紹介も私の紹介もしないどころか、怒られたぞ。
「女がでしゃばるな!
他のヤツの彼女は、こういう場合
知らん顔してどっかに行くぞ、気が利かない!」 だとさ。
私の存在は会社では知られていたので、隠したいとかじゃない。
世界が違う人種っているんだ! と、この時に知ったぜ。
こういう極端な例の彼氏はひとりだけだが
よくいたのが、“とりあえずは気を遣う” ヤツ。
ジュースとかの土産を持ってきて、たまに話し掛けたりしてくれるが
いかにも付け足しで、こっちは全然楽しくない。
おまけに、しょっちゅう来る。
そんでねずみ講方式に、友人の友人とか
どんどんバラエティ豊かな集まり方になってくる。
これもある意味行きつけの飲み屋って感じで、私は店員。
頼むから、本当の飲み屋に行ってくれ。
こういう事もあって、うちは彼氏の友人は出入り禁止にしたので
彼氏友人の間ではすげえ評判が悪かったらしいが、知った事か。
私の友人が来たら、彼氏はそこまで気を遣うのか?
茶を出してくれるか? 飯を作ってくれるのか?
こういうとこだけ、男女平等を唱えてるが
自分の被る迷惑の前では、主義主張など海の藻屑だぜ。
男尊女卑でいてほしかったら、それなりの行いをしてくれ。
被害を受ける女性が多かったから、平等論が出るんじゃん。
フェミニストにならないだけ、まだありがたいと思ってくれよ。
彼女に尽くされているとこを見せびらかしたい、という
若者の見栄で、結婚したらまた状況は違うのかも知れないが
こういう支障があったのは、九州出身の彼氏とだけで
それもほぼ全員がこれを望んでいたので
地域による意識の違いというのは存在すると思う。
東京にいた頃の彼氏の友人とは、友達付き合いができてたから
よく一緒に遊んでたし、うちにも呼んでたけど
同じ感覚で九州でそれをしたら、単なる彼氏の付属品扱いでしかなく
それにムカつく私は、九州にはふさわしくないんだろう。
どうも九州人は、タイプが真っ二つに分かれている気がする。
男尊女卑をナチュラルに言動するヤツと、しないヤツ。
尊側の男性がそれを主張するなど、尊に値しないと思う。
こういう事を言ってる自体、私も傲慢なのかも知れないが
九州から出ると、こういう事を微塵も感じずに済むのは何故だろう?
都会は実に居心地が良い。
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