犬のスタンダード

犬には、各犬種ごとに細かい規定が定められている。
これを “スタンダード” と言う。

たとえば、前歯の噛み合わせだけでも
シザーズバイト、レベルバイト、オーバーショット、アンダーショット
と、犬種によってスタンダードが分かれているのである。

ちなみに、各用語を簡単に言うと
シザーズバイトとは、上下がちょっと当たる程度の噛み合わせ
レベルバイトは、上下がぴっちりと当たる噛み合わせ
オーバーショットは、上の歯が下の歯にかぶさる噛み合わせ
アンダーショットは、下の歯が上の歯にかぶさる噛み合わせ

だと記憶しているけど、間違ってるかも知れない。
アンダーショットで有名なのは、パグやブルドックの口元。

たかが歯ぁごときでも、これだけの事を求められるので
他の項目がどれだけうるさい事を定めているかは、容易に想像付くだろう。

頭、首、胴、前足、後ろ足、尻尾、毛、と
各パーツごとに、何個も設定があるだけじゃなく
表情や態度、歩幅に歩く姿、走る姿まで
「~ が望ましい」「~ が理想的」 と、柔らかい表現を使いつつも
ムダに厳しい中学校並みの規則を、ガンガン上げ連ねている。

何故こんな事を決めているのかっちゅうと
犬の種の完璧な保存を目指しているからである。

過去から現代に至るまでに、どれだけ多くの人々が
苦労して犬種の保存に奮闘してきたか
それはひとえに、犬は放っとくと異種混合をやっちゃうからである。

大昔の小さな島や、隔離された王宮、人里離れた山奥で
それぞれの特徴的な進化を遂げてきた犬種も
交通が発達して人の行き来も容易になったら
意識して守らなければ、犬種の維持が難しくなってしまうのだ。

犬は太古から、人間のお供であり家族であり友人であった。
人間が動くと犬も一緒に動くのである。
人間の都合であちこちに移動していくのだから
犬の種類は、人間が守らなければならない。

これは決して、雑種の否定ではない。
今は雑種を “ミックス” と言っているようだが
どう英語に言い換えても、意味は同じ。
逆に何を差別しとんのかいな、と思ってしまう。
雑種は雑種でメリットはあるのに。

ただ私の意見としては、雑種は飼い主のだらしなさの表れである。
犬は人間に管理されるべき動物である。
野生に生きるには、人間との歴史が長すぎて無理。
それでいて、“群れ” の意識は残っているので
人間が長として、犬の自由も不自由もコントロールしてあげねばならない。
人間と共に生きる独特の動物なので
“普通” の獣と同じように考える方が、犬にとっては酷なのだ。

自分が管理すべき、その犬の交配を適当に捉えているから
雑種が生まれてくるハメになるのだ。
交尾や出産は、人間にとっても一大事なのに
そんな大事な事を、飼う時に考慮しない飼い主に犬を飼う資格はない。

厳正なスタンダードの保持は、プロに任せれば良いけれど
何故出産させたいのか、同じ気持ちの同犬種の飼い主はいるのか
出産の用意は大丈夫か、手順はわかっているのか
5~6匹は産まれる子犬を、自分で飼うのか貰い手はあるのか
数々の問題を考えていく責任がある。

これをすべて放棄したのが、雑種の誕生である。
もちろん計算ずくでのあえての雑種の場合は、これには該当しない。
中には山に捨てて、などで産まれた雑種もいるので
雑種に罪はなくとも、人間側に罪があるのは明白である。

ちなみに雑種のメリットというのは
純血種の良いとこ取りをしたら
丈夫で頭の良い犬になる可能性が高い事である。

純血種には、姿形を優先して遺伝させようとした結果
種の固有の持病や弱い部分も引き継いでしまった、という欠点がある。
後ろ足が弱い、などという軽微 (とも言えないが) のものだけじゃなく
ヘルニアだの血友病だの白内障だの、シャレにならん病気もあって
飼い主はこれに怯え、苦心する事が多い。

私も “大型犬” という、外せない条件がないなら
保健所で犬を貰ってくる事を選ぶのだけど
とにかく、とにかく大きい犬が好きなので
サイズが保証されている純血種を選ぶしかなかった。

もし、また犬を飼える環境になれたら
次は保健所に行って、大型の成犬を貰ってこようと思っている。
子犬は小さいんで、それほど興味はないのである。
そのぐらい徹底して、大きい犬が好きなんだ。

成犬から飼うなど、大変だとは思うが
過去に飼ったアフガンハウンドやゴールデンレトリーバーで
犬の善意には期待しない飼い主観を養ったし
(特にアフガンとの摩擦で、暴犬への耐性も培われた)
辛い生き方をさせてしまったゴールデンへの後悔を
寂しい想いをしている犬を可愛がって、贖罪したい
という都合のいい思惑もある。

とにかく、犬は人間が守るべき存在なのである。
純血種も雑種も、人間に対する想いは一緒なのだから。
ただ、それぞれの飼い方、守るべき決まりがある、と言いたいだけである。

なお、この記事は十数年前の古い知識で
今はまた内容が変わっているかも知れない事をご了承ください。

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