ジャンル・やかた 11

頑張る、とは言ったものの、やはりムカついてはいた。
すべてを知る事が出来ない現実にである。

こうなったら私の推理を全部、後続のヤツらに残しちゃる!
アッシュは自宅では絶対にしない点けっ放しのパソコンに向かった。
フォルダを作り、名を “Ash Fail” と付ける。

何か極秘ファイルのようでかっこいーーーーー!
アッシュはご満悦だったが、え? “ファイル” って言いたかったのか?
だったらFILEが正しいのだが、アッシュの英語力はこんなもんである。
(いや、素でFailと打ってたぜ。 調べて良かったーーー!)

ワードもエクセルも、その違いすら知らないので
メモ帳を開き、そこに今までに思い付いた推理や見聞きした情報を
人差し指1本でガシガシ打ち込む。
しかもキーボードが英字のみなので、ローマ字で。
日本語がわからんヤツなど、知った事かい!
アッシュは、気持ちがささくれ立っていた。

うーん、これじゃわかりにくいかなー、図解も必要かなー。
いやもう、日本語をローマ字で書いてる事自体
1行も読む気がしなくなるほど、わかりにくくて
図解など、何の付け足しにもならないのだが
そう思った瞬間、あのペイント太字地図が脳裏に甦った。

もしかして、他の相続者も同じ心境になったかも!
あの図解って、やる気を削ぐためのワナなんじゃねえの?

デスクトップの他のファイルを開いていくと
当たり前だが、全部英語であった。
くわーーーーーーーーっ
日本語のわからないヤツに仕返しされてるうううううううっ!

別に誰もアッシュを想定して打ったわけではないのだが
今のアッシュは、とことん被害者意識で一杯であった。

その頃、ローズは食堂にいた。
時計の針は、もう夕方の7時を回っている。
あいつ、夕飯は食わないんかね?
あまり飲み食いしないようだけど、あんなに痩せ細ってて大丈夫かねえ。

親しい誰もがアッシュに対して抱く心配を、ローズが思ったのは
アッシュを少し好きになりかけている事だという事に
ローズは気付いてはいない。

ローズは “敵” としては、指示がない限り動かなかった。
普段の生活では、決して好戦的ではない性格のせいと
自分が行けば、その回の相続は終わる、という
自分の戦闘能力に対して、揺るぎない自信があるからである。

しかしローズは、過去に4人の相続者の護衛をしていて
そのすべてが相続者の死で終わっている。

だけどそれは、ヤツらがあたしの言う事を聞かずに突っ走ったからだよ。
グレーは自分では戦わなかったから、いけると思ったんだけどねえ。
ローズにとって、グレーの結果は消えない深い後悔でしかなかった。

その妹であるアッシュ。
理解できない言動が、何を考えているのかわからなかったけど
アッシュなりに色々と考えて、挑戦している事がわかったし
今のところ、あたしの言う事は素直に聞いてるし
後は戦闘でどう動くかがキモだね。

ローズも、この相続が腕っぷしだけじゃクリア出来ない事を薄々感じていた。
ゲレーといいアッシュといい、この兄妹は
動きのなさにイライラさせられるけど
それはそれで、正しいやり方を選んでいるような気がする。

兄と同じ、それはアッシュにとっては最大の賛辞である。
自他共に天才と認められていた兄
その差の大きさに、妹はその背を追えずにもいた。

しかしアッシュもまた気付いていない。
投げやりなローズが、アッシュに対して徐々に惹かれている事を。
それは館の頂点に立つ主の資質として、欠かせぬ要素
得なければならない住人の尊敬の第一歩、である事に他ならないのだ。

が、こういう時に無意識に台無しにするのが、アッシュの常。
「ちょっと、あんた、飯は食わないのかい?」
アッシュの部屋のドアを開けたローズの目に飛び込んできたのは
顔面に紙を貼ったアッシュの姿であった。

「・・・それは何のまじないだい?」
ローズが怪訝そうに訊くと、アッシュはローズを手招きした。
近寄ったローズの鼻先に顔をくっつけて
アッシュはジロジロとローズの肌をチェックした。

「ローズさんー、お肌のお手入れ、してないでしょー?
 日焼け止めとか、ちゃんと塗ってないでしょー?
 ここのシミとここのシワは、その証明ですよー。
 ほら、ここらへん、たるんで毛穴も開いてきているーーー!
 ちゃんとお手入れをしないと、ゴッと老けますよー。
 ほら、私、プルップルでしょー。」
紙を剥がしたアッシュの肌は、確かに透き通って美しかった。

「東洋人は肌がキレイだからね。」
「東洋人とひとくくりにしないでくださいー!
 日本人!の肌がキレイなんですー!!
 それは日本人が、遺伝子とか水とかに恵まれてるからだけではなく
 お手入れをきっちりする性格だからでもあるんですーーーっ!」
「あんた、いくつなんだい?」

アッシュはローズに意気揚々と耳打ちした。
「えっ、あたしより年上なのかい?」
ローズのその驚きは、アッシュにとっては当然の反応だったが
それはアッシュの最も好きな場面であった。

アッシュは高らかに笑った。
「ほーーーーっほほほほほほ!」
テーブルの上に並べられた大小様々な形の容器を示し
「この面倒くさいお手入れをこなしてこその、若さなのですわよー!」

この後アッシュは、美容の知識をまくしたて
ローズをとことんウンザリさせた。

続く。

関連記事: ジャンル・やかた 10 09.9.24
      ジャンル・やかた 12 09.10.1

Comments

“ジャンル・やかた 11” への7件のフィードバック

  1. ミクロネシアのアバター
    ミクロネシア

    話と全っ然関係ないのだが、、、

    「シミそばかす」が子供時代からあるんだよー

    んでさ、エステとかですぱっと取りたいのだけど、
    あれってレーザー?で焼いてとんの?
    んで、しばらく日焼け止め完全にして、世間から隔離された生活しないといかんの?
    聞くところによると、いったん、ありえん程シミの色が濃くなって、2、3週間したらポロポロ取れるとか、、、

    それまでまともな日常生活出来ないのかなあ~?
    そんなことまでできんわ~しかも、しばらくしたらまたシミが復活するとかも聞くし!

    もう少し、技術が進んだら楽に出来るようになるんかなあ~?

  2. 奈々のアバター
    奈々

    子どもはシランが、ぁる年齢に達したらシミは、表面上取れても再発するょ

    結局は、見た目を気にせず農作業する時は顔を覆ったほうがょぃ。

    明日も稲刈りだ。。。orz

  3. あしゅのアバター
    あしゅ

    ミクロネシア、シミソバカス、取る方法もあるけど
    また再発する可能性も結構な確率であるし
    細胞を傷めた痕跡は、歳をとったら浮き出てくるよ。

    これは体質によるかも知れんけど
    そういう事もある、って誰も言わない。
    データが揃ってないんかな?

    だから私はお勧めしない。
    歳を取ったら、シミソバカスなんか
    二の次になるぐらい、顔色がクスむし。

    でもとりあえず、情報として
    その日からメイクもOKな施術もある。
    ほんと、方法は多いんで
    自分のライフスタイルに合わせて選べるよ。

    深い根のホクロでも
    メイク禁止は1週間ぐらいだったような。
    思うより短期間で済む。

    ただ全顔ピーリング系は
    日々使う化粧品で皮膚を焼いていくんで
    半年ぐらい皮膚がボロボロらしいけど
    シミソバカスでこれはしないと思う。

    ただ淡い色のシミや、生まれつきのソバカスは
    対応が難しい、と聞いた事がある。

    技術の進歩か、他の大きな肌悩みが出て
    シミソバカスなど気にならなくなるまで待て。
    私が今ここ ↑ だから、胸を張って助言するさ。

    奈々、おめえも再発GOGO組か・・・。
    私のホクロ除去は、色は無色だけど
    皮膚の盛り上がりが再発してしもうたわい。
    眉とわきの下と足。
    わきの下は黒い点が微かにあるしー。

    やっぱ己の体質なんかな・・・。
    私は美容で皮膚にメスや針は入れない
    と決めたよー。

    稲刈り、頑張れ!
    首の後ろも覆え!
    そこ、結構なたるみポイントらしいぞ。

  4. ぽにこのアバター
    ぽにこ

    美容なお話に便乗して

    小鼻とか、眉間とか、でことか、ほっぺ、むしろ顔全体に
    ぽつっとしたちっちゃいニキビみたいのができまくってんですよ(・ω・`)

    どうしたら消えますかね…
    美肌にはほどとおいorz

  5. のアバター
    匿名

    奈々サン、あしゅ、助言感謝!

    子供時代のそばかすは大して多くはないし、濃いわけではないけど、
    キャンディキャンディと深津りえを師と仰ぎすぎたせいか、
    全くもって気にせず生きて来すぎて、
    気付いた時には そばかす以外にもシミが出来始めていることに 気づくのが遅すぎたんだよ!

    かと言って、この先太陽を天敵に生きて行くのはしんどすぎるし、
    いざとなったら レーザーでピッとやるさーと思ってたんだわ。
    そしたら、完全には取れないとかの情報が、、、

    あー!もう歳も歳だし、細かい事は気にしないようにするわ!
    今後の悩みは「タルミ」だわな!

  6. ミクロネシアのアバター
    ミクロネシア

    名前を入れ忘れたが、さっきのコメントは私です
    わかると思うけどね、、、!

  7. あしゅのアバター
    あしゅ

    ぽにこ、ニキビ “みたいな” って、ニキビとは違うんか?
    だったら、脂肪の塊かなあ?
    (正式名称があったが忘れたー)

    状態がよくわからないけど
    白ニキビや脂肪の塊みたいな、その類のポツポツが治った
    という話を多く聞くのは、ハトムギ化粧水だ。

    ドラッグストアで低額で売ってるけど
    (高額代表はアルビオンのスキンコンディショナー)
    手作りの方が効き目があるらしい。
    作り方までは知らないんだ、すまん。

    ミクロネシア、SK-2のCMに出てる小雪
    何かのTV番組に出てるのを観た時に
    顔中あご周辺までシミソバカスだらけだった事がある。
    あれ、多分メイク失敗だな。

    透明感はメイクで作れるようだ。
    だけどタルミや深いシワは、メイクじゃ無理。
    深刻度が違うんだから、じきに気にならなくなる。

    てか、女性は死ぬまで常に肌を気にせにゃならんのだよな・・・。

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