昨日は、やたら敵が多かったよなあ。
あんなん続くんなら、ほんと死ぬぜ。
あの後、北館2階を一周したのだが、敵が3回も出没したのである。
宣言通り、アッシュはキャーキャー言って逃げ回り
ローズがひとりで戦って、無事に生還できたわけだ。
ローズさん、すげえつえー。
ローズが守護者になった自分は、激しく運が良かった事に気付いた。
どんなに横柄でも、あんだけ強けりゃオッケーだよね。
問題は私の方なんだよねー、足手まといになってるだけでさー。
平安京エイリアンだって、時間が経つと敵大量投入されるし
こんなんじゃ、マジで寿命カウントダウン始まっちゃってるよー。
結果が出せないと、どんどんマイナス思考になっていく。
今日、何をすれば良いのかも思いつかず、体が動かない。
その時、ベッドに寝転んでいたアッシュの目に
ふと足元側に積み上げられている雑誌や本の山が映った。
書籍類は床に直置きされていて、それが1mぐらいの高さになっている。
中学ん時、布団の足元に本棚を置いといたら
それが寝てる時に倒れてきたんだよなあ。
冬で布団の重ね掛けをしてたから、ケガこそなかったものの
あれはスーパービックリ アーンド激痛だったよなあ。
これ、よく倒れないよな、危ないよなあ。
書籍の山をボンヤリ見上げていた目を、ふと下ろした瞬間
見覚えのある背表紙が目に飛び込んできた。
「レ、ペ・・・ペ・・・ペチット プ・・・プリンス!」
この読み方、絶対に違うと思うけど、これ、“星の王子さま” だよね?
この本、私が子供の頃読んで、何か知らんが悲しくて悲しくて泣いて
何でこんな内容で泣くの? 頭がおかしいんじゃない? って
家族全員にバカにされて笑われた本じゃん。
あの当時の私は、ほんとわけわからん心の機微を持ってたよなあ。
じゃなくて!
この本、ここに寝転ばないと気付かないんじゃねえ?
しかも (イヤな) 思い出の本。
これは次に必ず来るであろう私に兄が残したものじゃねえ?
うわ、よりによって何でこの本をーーー、じゃなくて!
そうか、これがあるからローズさんに私の護衛を頼んだんだ。
このフロアにローズさんの部屋がある限り
次の私も絶対にこの部屋を割り当てられるから。
すげえぜ、兄貴、やっぱり考えてたんじゃん!
アッシュは力任せに、本を山から引き抜こうとした。
そんなザツな事をしたら、ザツな結果になるわけで
本は将棋崩しの駒のように崩れ落ち、アッシュに降り注いだ。
本のカドが当たると、とても痛い。 雑誌でもとても痛い。
しかもそれの連続攻撃に、アッシュは兄を目一杯恨んだ。
アッシュの真の敗因は、将棋崩しとか、砂山の棒倒しとか
そういう慎重な動作を要求されるゲームは
大の苦手で、勝ち知らずなところにあったのに。 じゃなくて!
“激痛にのたうち回る”
アッシュの人生では幾度となく繰り返される光景だ。
昨日の警棒の跡も、ひどく腫れている。
あーもう、いっつもいつも!
いい加減、学習してくれよ、私の衝動はよー!!!
書籍類を積み重ねたヤツのせいにしないところは、割と正義。
痛みが治まると、アッシュは散らばった本を片付け始めた。
おいおい、それよりさっさと肝心の本を見た方が良いんじゃないのか?
と突っ込みたくなるが、アッシュの性格はこうなのだ。
サイズに合わせて、積み直された本を満足気に見たのち
ようやくアッシュは、問題の本をめくった。
・・・中、全部英語・・・。
イヤミなとこがある兄貴だったもんなあ。
はあ・・・と落胆しながらも、メモなどがないか
パラパラとページをめくる。
と、途中のページに写真が挟まっている。
セピア色になった古い白黒写真である。
写真は、野原に建つ1軒の館だった。
これ、この館・・・?
でも何か違うような・・・???
写真の裏を見ると、歴史と伝統 と万年筆で書いてある。
その極太の線は、兄が好んで使用していた万年筆で
特徴のある字体も、間違いなく兄の筆跡である。
ああ、やっぱり、この本は兄貴セッティングだー!!!
アッシュの心臓がドクンと一度高鳴り
頭のてっぺんに体中の何かが集まる感覚がして、涙が出そうになった。
色々と言葉が脳裏をよぎったが、それを確認すると
感情が爆発して崩れ落ちそうになるので
あえて無視をし、冷静に分析をする事を選ぶ。
が、アッシュは頭を抱えた。
続く。
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