ひとり

人はひとりぼっちである
人に自分の痛みなどわからない
 
えらく殺伐とした意見に思えるだろうが
これは私が人生で学んだものの中でも、最重要の位置にくる感覚である。
 
 
人には自分の苦しみなどわからない。
自分にも人の苦悩はわからない。
 
「わかる」 などと言うのは、思いあがりである。
生まれた境遇、育った環境、性格、細胞、全部違うのだから
たとえ同じ経験をしても、その人その人によって
感じ方がまったく変わって当然である。
 
人と人とは、完全にはわかり合えないものなのだ。
これを確実に自覚した時には、大きな絶望感が襲ってきたけど
同時に心が軽くなるのを感じた。
 
いつも “根拠のない” と自称している私の不必要な自信の源は
自分がいつまでもどこまでもひとりである事を
知っている事からくるのかも知れない。
 
 
そこで、“ひとり” である事の素晴らしさを力説しよう。
 
もし、人と痛みを共有できるとしたら、こんな辛い話はない。
人が風邪の時に、自分にもそれが移るんだぞ。
ちょ、おめえは酔っくろうて道端で寝て自業自得だろうけど
何で私までそれで苦しまにゃならんのだ?
というような事例が続発したら、たまったもんじゃないだろ。
 
その具体例が、小学校の時に習った理不尽な連帯責任。
たったひとりのドバカのせいで、何で私まで?
と、社会主義もどきの妙な教育を呪った経験はないか?
 
まあ、その “たったひとりのドバカ” の位置には
大抵私が鎮座していたんで、「おめえが言うな!」 だが
被害に遭った人々は、私よりもその制度を恨んでいたはずだ。
 
これは学校教育の最大の間違いだと思う。
人はひとりであるゆえに、自業自得を体感できる。
罪をきっちり清算できるわけだ。
その無常を容赦なく教え込まないから
社会のせいにして、無差別殺人を起こすような輩が出るのである。
 
 
こういう感覚だから、私は常に孤独を感じている。
どんなに大勢に囲まれていても、拭えない虚しさがある。
心の中には常に、荒地にひとり立つ自分がいる。
 
だけどこんな私でも、相手の事を考えようとする。
わかり合えないとわかっているけど、“想い” がムダだとは思わない。
普段は結果重視の合理主義だが、人との付き合いに関してだけは
わかろうとする過程が大切だと思っている。
 
真にはわからないかも知れないけど
何とか少しでも相手の気持ちに近付きたい
人はそう想い合って、支え合って生きていくのだ。
 
孤独癖のある私でも、人と付き合うのが好きなのは
わからないからこそ逆に価値があるもの、だからなのだろう。
 
 
そしてその葛藤の最中に生まれてくるのが、“共感” である。
これを得たら、相手と自分が一体化したような安心感がある。
 
理解出来ずとも、共感できる場合もある。
理解は愛に関係ないが、共感もまた理解とは別だと思う。
これを出来るのが、人間の素晴らしさのような気がする。
 
 
だから、怒られるのも同情されるのも嬉しい。
どっちも相手が自分の事を気にしている証拠だからだ。
怒られる喜びについては、何度も書いているので
今回は同情される喜びについて書く。
 
同情は見下している気持ちだと解釈して、嫌う人もいるが
“可哀想” という気持ちがなかったら、世界はどうなるんだ?
 
確かに同情してくれる人の心理は、様々で複雑なんだろうけど
いずれにしても、その人は “同情” という形式で
自分の事を想ってくれている事は間違いないんじゃないか?
 
たとえ相手の脳内で、密かに見下しされていたとしても
可哀想だというのも確かに思っているであろう相手の気持ち、
そしてそう思われる事によって、もたらされる親切の方が
はるかに重要だと思わないか?
 
このように、怒られるのも同情されるのも
自分が “ひとり” だとわかっているからこそ
相手の思惑にとらわれる必要もなく
ただ素直に授かる恩恵だけを喜んでいられるのだ。
 
 
長々と書いたけど、“ひとり” 自覚の最大の利点は
人に期待をしなくなる事なのである。
 
それは投げやりな孤立感ではなく、自己責任みたいなものの芽生えで
とりあえず自分でどうにかしよう、と人に甘えなくなるのだ。
そうしてると、人が不思議と助けてくれるようになる。
 
いや、人に期待をしないでいると
人の厚意が、逆にはっきりと見えるようになるのかも知れない。
だから余計に人の助けをありがたく感じるようになるのだ。
私の場合は、まだまだ甘えている性格なんだけど
初手から人頼りしまくってた時より、良い循環をしている気がする。
 
 
人は皆ひとりである。
これを実感すると、自分が世界でたったひとつの存在だとわかる。
そこに価値を感じようと感じまいと、自分は無二の存在なのだ。
そしてまた、他人も同様にたったひとりの人間なのだ。
 
そう気付いたら、どっちも尊重せずにはいられない。
他人も自分の事も、理解する事が大事なのではない。
そのたったひとつのものに、愛を感じられるか否だ。
 
 
余談だが、ヴェルタースオリジナルキャンディ、あれ、美味いなあ。
最近、あのロコツな甘さにハマっているんだ。
 
・・・最後の最後に、熱弁全部を台無しにしたか?

Comments

“ひとり” への11件のフィードバック

  1. ミクロネシアのアバター
    ミクロネシア

    あしゅのいつも言う、「孤独」の意味がよくわかりました。

    人は皆孤独ですよね。
    それを自覚しないといけないね。

    だから、助けあいたい、寄り添いたいと思う。

    その気持に偽りはないよね。

  2. kaiのアバター
    kai

    人は一人なんだけど
    誰かが声をかけてくれると
    楽になったりする

  3. miuのアバター
    miu

    ううっ…
    連帯責任教育のくだりですが,近年義務教育において基本装備化されつつある思想が頭をよぎってしまいました。その名も平等教育です。
    人間は皆平等ですよー,アナタ達は皆等しく同じ権利を持つのよー!と連呼された結果
    『どうしてあの人は良くて自分は駄目なの』
    『同じ事してるのに自分だけ責められるなんておかしい』
    という思考が形成されるという,世にも恐ろしい『新型』連帯責任教育なのです…。

    というか私自身その教育に組み込まれて育っているので,度々同世代の人間が自分と全く同じ思考の動きをしている事に気付く際の衝撃といったら!…真正面からデッドボール食らった感じです。笑
    三つ子の魂百までって言いますから,文科省さんには国民に公平で良質な教育を施して欲しいなあ,と願っています。

    …あしゅさんの素敵な人生観に感銘を受けた筈なんですが,全然関係ない所に反応してしまってすみません^^;
    この時期ははちみつゆず茶のどあめもオススメですよ~。

  4. 奈々のアバター
    奈々

    しゅごキャラ?地獄少女?ちびデビ?
    ちゃおデラの読み切りだったかな?

    人は孤独だから、○○するんだよ

    って、言葉がぁったな

    朝令暮改 と 朝三暮四 を間違った東大卒総理

  5. あしゅのアバター
    あしゅ

    ミクロネシア、要するに
    人の良いとこだけを受け取って
    自分に都合の悪い事は流せ、って事だ。

    こんなん言うのは、良くない事だろうけど
    皆、基本的に良いヤツなはず。
    だから、こうでもしないと息が詰まるぞって話なんだ。

    もちろん悪いヤツには、きちんと反省してもらいたい。

    kai、うん、そうなんだ。
    ブログをやってて、つくづくそう思うよ。

    miu、平等教育には私も疑問を感じる。
    だけど、平等だと教えないと、とんでもなくなるよな。
    要は、学んだ側の応用力がない、って事なんかなあ。

    はちみつゆず茶のどあめ?
    検索してみた。
    見つけたら買ってみるよ。

    奈々、孤独だから何をするんだ?
    そこが大事じゃないか!

    丁寧に、朝令暮改 と 朝三暮四を引いてみたぜ。

    ちょうれい‐ぼかい【朝令暮改】
    朝に出した命令を夕方にはもう改めること。
    方針などが絶えず変わって定まらないこと。朝改暮変。

    ちょうさん‐ぼし【朝三暮四】
    《中国、宋の狙公(そこう)が
    飼っている猿にトチの実を与えるのに
    朝に三つ、暮れに四つやると言うと
    猿が少ないと怒ったため
    朝に四つ、暮れに三つやると言うと
    たいそう喜んだという
    「荘子」斉物論などに見える故事から。

    1 目先の違いに気をとられて、
      実際は同じであるのに気がつかないこと。
      また、うまい言葉や方法で人をだますこと。朝四暮三。

    2 生計。くらし。

    多分すぐ忘れる・・・。

  6. つくしのアバター
    つくし

    私は 鈍感でなぜかワンテンポ遅れて 人の思いや気持ちに 気づく
    そんな自分が不甲斐なくて どうしたら 人の気持ちに すぐ気づけて対応できるかなぁ とずっと考えてた

    そしたら いつの間にか 自分の気持ちが わからなくなってた

    なんだか ヘンテコな話ですね
    自分でも なんでかわかんない

  7. あしゅのアバター
    あしゅ

    あっ、私もそうだよ。
    ワンテンポどころか
    後になって、何かのついでに思い出して
    あっっっ! と気付くものすごいタイムラグ。

    私の場合、人の気持ちは気付くのに遅れようが
    尊重するように努力するけど
    自分の気持ちは、あまり大事にしていないんだ。

    だって、我がままだから
    いくら自分自身といえども付き合ってらんねえよー。

    それに、必ずどっかで自分を重視してるから
    こう思ってても、自分の気持ちを優先するんだよな。

    自分の気持ちには、冷たくする気構えを持ってるぐらいが
    ちょうど良いと思う。
    私の場合は、だけど。

    つくしは、思いやりを持っているみたいだから
    “自分の気持ち” も
    自然に大事にしてると思うよ。
    たとえ見失っていてもな。

    自分の中にあるものだから
    あえて探す必要もないんじゃないのかな。
    必要な時は出てくるよ。

  8. つくしのアバター
    つくし

    あぁ そっか そうかも
    気づくのが遅いのは 自分の気持ちにもだ

    後になって あれ?なんか腹が立つ みたいな

    そうだなぁ のんびりと参りますか

    あしゅさんの「自分に付き合ってらんない」って、思わず笑っちゃった
    人間って、なんか かわいいですね

  9. あしゅのアバター
    あしゅ

    後になって気付くのって
    ストレスにもなるよね。

    あー、何であの時怒らなかったんだ
    フォローしてあげなかったんだ、等。

    でもさ、それを繰り返して悔やんでいると
    少しずつ反応が早くなってくるよ。
    学習、するもんだよー。

    まったく新しい状況の時や
    重要じゃない感情の場合は、反応は遅い。

    鈍いってのも、あるだろうけど
    ちゃんとその場で無意識に
    脳が瞬時に取捨選択をしてるっぽいよ。

  10. つくしのアバター
    つくし

    脳が選択 すごいなぁ
    自分にとって大切なものって 年を重ねて 吟味されていくのかもしれないですね

    後悔はいやだけど 反省しながら 気づいていけるといいなぁ

    返事だいじょうぶです

  11. あしゅのアバター
    あしゅ

    オッケー

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