「どこにも異常は見られません。」
「じゃが、確かに右目は見えていないんじゃろ?」
病院長の言葉に、ジジイが確認し直す。
「はい。 おそらく心因によるものかと思われます。」
そこまでなってしまったか・・・。
「わかった。 わしが説明する。」
ジジイは病室に入った。
「異常はどこにも見られないそうじゃぞ。 良かったのお。」
ジジイの、とてつもない簡略な説明に
アッシュが小声ながら、久しぶりにまともに喋った。
「では・・右目が・・・見えないと・・いうのは・・・・・
精神的な・・もの・・・ですか・・?」
「・・・そうじゃな。」
ジジイの苦悩した様子の答に、しばらく考え込んでいた様子のアッシュが
ふふふ と笑った。
その反応を見てジジイは、ああ、ショックでとうとう頭まで・・・
と、絶望的な気分になった。
ところが意に反して、アッシュは息も絶え絶えに言った。
「じゃあ・・・・・私は・・・許さ・・れる・・って・・・
事・・じゃ・・・な・・いです・・・か・・・・・?
目が・・見えなく・・・なる・・・って・・・
片目・・・でも・・大変・・・な・・罰・・・ですよ・・・ね・・?
罰・・・が・・与え・・・られる・・・って事・・・は・・・・
償う・・機会を・・貰・・・った・・・
って・・事・・・・です・・よね・・・?」
ジジイは、その言葉に驚愕した。
こやつは何ちゅうプラス思考なんじゃ!!!
感心して良いのか、呆れるべきなのか、迷っているジジイにアッシュが言う。
「喋・・・る・・のも・・・す・・んげえ・・・
体・・・力・・・・・が・・いり・・ます・・・ね・・・・・。
リ・・ハビ・・リ・・・おお・・ごと・・・かも・・・。」
その言葉に我に返ったジジイが、アッシュに確認した。
「リハビリはここでするかね? 館に帰るかね?」
「こ・・こ・・・どこ・・で・・すかあ・・・?」
「何じゃ、そんな事もわからんかったんか?」
「す・・・い・・ませ・・ん・・・
何・・せ・・トチ・・狂って・・・たん・・で・・・・・。」
「ここは長老会管轄の街の病院じゃ。
警備的には館の方が安全じゃが、どうするかね?」
「こ・・こ・・・に・・・しま・・・す・・・。
住・・・人・・たち・・・に・・・
こんな・・・姿・・・見せ・・られ・・・ない・・です・・・。」
「そうじゃな、じゃあ、そう長老会に報告しとくわい。」
「gome・・atoyoro・・・otsu・・・・・。」
「???」
ジジイにはアッシュの最後の言葉は理解できなかったが
『ごめんね、後の事はよろしくお願いします、お疲れ様ですー。』
という意味の日本語であった。
久しぶりに喋って、気力体力を使い果たしたんで
最後は投げやりになったのだ。
続く。
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