跡継ぎ探しに旅立ってから、わずか4日でアッシュは帰ってきた。
漆黒の肌と土色の瞳の男児を連れて。
「はい、これお土産ですー。」
と、真剣に家に置きたくない木彫りの人形を、長老会メンバーに配った。
「これは、何なのかね?」
「何か良い味出してませんー? 手彫りらしいですよー。
よくわからないけど、何かの呪いの儀式に使うものらしいですー。」
ああ・・・やっぱり・・・、とメンバー全員がとことん気落ちする。
リオンを除いて。
「にしても、えらく早いご帰還でしたねえ。」
メンバーのひとりが言うと、アッシュのスイッチが入った。
「だって、ひどい場所だったんですよー!!!
昼は暑いしー夜は寒いしー汚いしー臭いしー飯は不味いしー生水ヤバいしー
ホテルは古いしー設備は悪いしーサービスは悪いしー
シャワーの出は悪いしーお湯が水だしー・・・」
「よその国を、よくそこまで悪く言うのお。」
ジジイがアッシュのグチをさえぎった。
「きみは差別主義者かね?」
かっぷくの良い紳士が追求する。
「顔や腹ん中が汚いのは、私も人の事を言えないですけど
とにかく外側が汚いのが、ほんっっっとイヤなんですー!!!」
「ニッポン人は清潔なんでーす。
不潔なのが許せないんでーす。 ね?」
リオンが解説した。
「そうーーー!!!
良い事言うじゃんー、死にキャラー!」
「え? 何でーすか?」
「あー、いえー、何でもないですー。」
(ネタバレ注意解説: 某ゲームのリオンというキャラは途中で死ぬ)
「で、その子が跡継ぎかね? 何を基準に選んだんだね?」
「ああ、付いて来たんで、連れて来たんですー。」
「・・・え? それだけかね?」
「リアル生活にそんな妙な霊感とかを期待しないでくださいー。
現実なんて、そんなもんですよー。
教育すれば良いんですー。
と、言う事で、教育係の派遣よろー。」
はあああああああああ・・・・・、と全員が溜め息を付いた。
リオンを除いて。
「その子は何歳かね?」
「名前は何だね?」
「英語は喋れるのかね?」
質問が相次ぐ。
「書類上は5歳ってなってますねー。
名前はグリスだそうですー。
英語は喋れないようですー。」
「書類上ねえ・・・。」
「もう詳しい経緯を訊くのは止めときましょうよ・・・。」
ニコニコとグリスを見つめているリオン以外は、そう示し合わせた。
では、このへんで、と会議室を出ようとするアッシュに
ジジイがいらん事を訊いた。
「お供は知的イケメンじゃったか?」
ドアレバーに描けた手をピクッと止め、横目でチラッと見て
無表情のままひとことだけ言って、アッシュは部屋を出て行った。
「・・・・・・軍人でしたー・・・・・・・。」
長老会メンバーは、一斉にジジイを睨んだ。
リオンを除いて。
続く。
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