イキテレラ 5

翌日のイキテレラは、グッタリだった。
途中で魔法が解け、重いカボチャを抱えて歩くハメになったのだ。
貧乏なので、1個の野菜もムダにしたくない。
家に着いた時には、もう朝方の4時を回っていた。
 
義姉たちの社交界デビューの準備で、いつもよりも仕事が増え
飯も食えずに踊らされ、歩いて帰らされ、寝る時間もなく
おまけに今日の義姉たちの機嫌は最悪である。
舞踏会で誰にも相手にされなかったのだろう。
 
それでもわたくしよりはマシよ。
イキテレラには、魔女の “奇跡” は大迷惑にしかならなかった。
 
 
長い一日がやっと終わり、イキテレラが自室に戻ると
窓の外には魔女が立っていた。
 
「ああ、どうも・・・。」
イキテレラは億劫そうな表情で、魔女に靴を返した。
「片方だけかい?」
 
「すみません、もう片方はなくしてしまいましたの。」
「ううむ・・・、それはマズいねえ・・・。
 でもまあ、しょうがないか。」
 
「では、ごきげんよう。」
イキテレラが窓を閉めようとするのを、魔女が止める。
「ちょっ、ちょっと、それだけかい?」
 
「ああ・・・、お心遣い本当にありがとうございました。
 魔女さまのご健勝をお祈り申し上げておりますわ。
 では、所用がございますので、これにて。」
 
イキテレラは、棒読みを終えて窓を閉めた。
魔女は首をかしげつつ、帰って行った。
 
 
いつもの日々が戻ってきた。
何事もないのが一番だわ、そう思いつつ
イキテレラが草むしりをしていると、辻の方が騒がしい。
 
何かしら? と、顔を覗かせると
辻に立っている掲示板に張り紙がしてあった。
 
 
『先日の舞踏会にて、靴をお忘れの姫君
 預かっていますので、取りにおいでください。
                   王子 』
 
張り紙を読んで、ギョッとした。
あのしつこい男性は、この国の王子さまだったらしい。
 
証拠は靴しかないし、バレないわよね
にしても、何故こうトラブル続きなのかしら・・・
イキテレラは溜め息を付いた。
 
 
街中が、また浮き足立った。
 
「王子が靴の持ち主を探している」
    ↓
「王子が靴の持ち主に恋をしたらしい」
    ↓
「靴の持ち主は王子と結婚できるらしい」
    ↓
「靴が足に合えば王子と結婚できるらしい」
 
噂が、アホウ参加の伝言ゲームのように形を変え
街中の娘が、連日城に押し寄せていた。
 
 
何をどう考えたら、話がそうなるのかしら?
私はあの時、王子の言葉に返事もせず目も合わせず
イヤそうに踊ったあげくに、むこうずねにケリを入れて
おまけに靴を投げつけたのよね。
あの張り紙は、罠よ。
ノコノコ行ったら、不敬罪で捕えられて禁固刑、いえ、死刑だわ。
 
おお、いやだいやだ、恐ろしい
ビクビクするイキテレラの後ろで
義姉たちが靴合わせにチャレンジする、と張り切っている。
 
 
義姉たちを見送り、振り向いたイキテレラの鼻先に魔女の顔があった。
不意打ちに声も出ないほど驚くイキテレラに、魔女が言う。
「義姉たちの靴じゃないのに、止めないのかい?」
「心配しなくても、あの靴は普通の女性には入りませんわ。」
 
「名乗り出ないのかい?」
「申し訳ないとは思っているけど、あれは事故だったのよ。」
「・・・? あんた、一体何をしてきたんだね?」
 
 
イキテレラは、舞踏会での一部始終を魔女に打ち明けた。
魔女は大笑いをしながら言った。
「だから、あんた、機嫌が悪かったんだねえ。」
 
「ええ、もう忘れたいの。
 だからわたくしの前に現われないでくださる?」
イキテレラは、申し訳なさそうに魔女にお願いした。
 
「ん、まあ、別に良いけどね。
 王子は本当にあんたと結婚したがっているようだよ。」
 
「ええええええええっっっ?」
イキテレラが、イヤそうに叫んだ。
 
 
 続く
 
 
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Comments

“イキテレラ 5” への6件のフィードバック

  1. かいねのアバター
    かいね

    このシリーズ好きですw
    更新楽しみにしてます~。

  2. のとのアバター
    のと

    面白いッ
    続き楽しみにしてます~

  3. のんのアバター
    のん

    今回のお話しも面白いですね!!!
    楽しみにしてます!!!

  4. あしゅのアバター
    あしゅ

    みみみ皆、ありがとう・・・???

    何を動揺してるかっちゅうと
    私、宣言通りに
    ロマンスストーリーを書いてるつもりなんだ。

    でも、どう良い風に解釈しても
    これ、ロマンスじゃないだろ?
    今、ものすごく悩んでるところなんだよ。

    どうしたらこれを軌道修正して
    ハーレクインロマンスに持っていけるか・・・。

    とにかく最大限の努力をして
    ラブラブな話にするから!!!

  5. のんのアバター
    のん

    期待してます(^・^)

  6. あしゅのアバター
    あしゅ

    うううううううん
    まままままかせとけ・・・・・

    ・・・・・・・・・・

    すまん、やっぱ保険を掛けさせといてくれ。
    何か、自分の首を絞めてる真っ最中の
    ような予感がするんだ。

    頑張るけど、ほんっと真剣に取り組むけど
    ラブの方面、万が一はごめん!

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