目覚めたのは、自室のベッドの中だった。
体調と周囲の雰囲気で、すぐに自分に何が起きたのかわかった。
王が入ってくると、侍女たちは慌てて部屋を出て行った。
「我が妃よ、やっと目覚めましたか。
あなたは3日も眠っていたのですよ。」
王は、イキテレラを抱きしめた。
「意識のないあなたはつまらない。」
イキテレラは、部屋から出なくなった。
自分のせいで、王に誰かが殺されるのが恐いからだ。
イキテレラの周囲には、最低限の人数の侍女だけが残った。
「部屋に閉じこもっていると、体に悪いですよ。」
王は時々イキテレラを抱きかかえて、庭を散歩した。
イキテレラの瞳は、何も映さない。
ついうっかり誰かと視線を交わしただけでも
王が激怒するかも知れないのだ。
「あなたの瞳は淡い空の色なのですね。」
王がイキテレラの瞳を覗き込む。
「あなたの髪が風をはらんで、まるで黄金の滝のようですよ。」
王がイキテレラを抱いて、笑いながらクルクルと回る。
うつろな表情の女性を撫ぜ回しながら、しきりに話しかけるその様子は
まるで人形遊びをしている変態男のようであった。
「あれがこの国の王の姿か・・・。」
大臣たちは、遠目にその様子を覗き見て嘆いた。
街では、王の乱心の噂が広まっていた。
天候不順で、農作物が不作だったからである。
不自由なく生活できていれば、他人の動向は気にはならない。
国を統べる王が不徳だから天が怒るのだ
いつの世も、民衆たちはそう結論付ける。
非科学的な理屈だが、王家の存在もまた科学ではない。
そしてある朝、パン屋の軒先で黒猫が死んでいた。
猫嫌いのパン屋のおかみは絶叫し、服屋のお針子は呪いだと恐れ
肉屋の主人は神の怒りに震え、酒場のマスターは時がきたと告げた。
民衆たちは憎悪の渦となって、城へと集まってきた。
王を捕えよ、処刑しろ、と怒声が響く。
門が壊されるのも時間の問題であった。
大臣たちは我先にと遁走した。
侍女たちは、どうしたら良いのかわからず
イキテレラの元へと集まってきている。
イキテレラは長椅子に座って
ボンヤリと外の喧騒を聴いていた。
続く
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カテゴリー パロディー小説
イキテレラ 14
Comments
“イキテレラ 14” への2件のフィードバック
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こ、怖いけど早く続きが読みたくなりますwww
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のん、恐怖の負担をかけて本当にすまん。
あはは
↑ 反省の色なし?
いやいや、お詫びに次は楽しい話にするから!・・・・・・多分・・・・・・・
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