「ふむ・・・。」
書類を読みながら、屋敷のホールを足早に歩く中年男性。
「いかがでした?」
スレンダーな体型の女性が、男性に駆け寄る。
「遅かったよ。
王妃は火あぶりにされたそうだ。」
「火あぶり? よりによって何故にそのような残酷な刑を!!!」
女性は思わずよろめき、男性が慌てて支える。
「王が乱心したのは王妃のせいで、王妃は魔女だとなったのだ。」
「・・・はっ、この時代にバカらしい!」
ソファーに横になった女性が、吐き捨てるように言った。
「そのような野蛮な国は、早急に根絶やしにすべきですわ。」
「いいのかね? きみの祖国だろう?」
「いまや、その出自も恥にしかなりませんわ。
王妃を魔女扱いして火あぶりだなど・・・。」
「王妃はどのような女性だったのかね?」
「自分にも他人にも興味がない人でしたわね。
そのせいで、周囲はどんどん傷付いていく。
本人に自覚はないのでしょうけどね。」
「義理とは言え、妹に対して辛らつじゃないかね?」
「事実ですもの。」
イキテレラの父と義母は、国境近くの温泉地へと移り住まわされた。
継子イジメの噂のせいもあったが
父の具合があまり良くなかったからである。
程なくして、父は亡くなった。
父の訃報は城へも届けられたが
イキテレラを外に出したがらない王によって握り潰された。
代わりに王は大臣たちに命じて、義姉たちに縁談を用意する。
上の義姉は、母を伴って隣国の裕福な商人へと嫁いだ。
下の義姉は、同じ隣国の軍人の家系へと嫁いだ。
“王妃の義姉” という肩書きによる
恵まれた縁談で、分不相応ではあったが
ふたりとも妻として母として、家を立派に仕切っている。
手紙を読み終えた女性は、窓際に歩み寄った。
妹の夫は快勝したらしい。
これでまた階級が上がる事でしょう。
だけど生国がなくなったなど、お母さまには言えないわね。
この頃少しお体が弱ってらっしゃるし。
イキテレラ・・・
あのままあの家にいれば、あなたはあなたでいられたでしょうに。
生まれつきの召使いが、王妃になったのが悲劇だったんだわ。
女性は手入れの行き届いた庭を、満足気に眺めた。
窓に映った自分に気付き
すっきりと開いたドレスの胸元を整え直した。
その顔に、水滴が一筋垂れたのは雨ではない。
空は優しい光にあふれていた。
秋が深まる時の、遠く高い淡い青。
冬が始まる前に、ガラスの国はなくなった。
何もしようとしないひとりの女性によって、すべてが滅びたその奇跡。
終わり
関連記事 : イキテレラ 16 10.6.22
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カテゴリー パロディー小説
イキテレラ 1 10.5.11
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Comments
“イキテレラ 17” への12件のフィードバック
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何で3日前?と聞かれても「なんとなく」としか答えられないー(笑)
私の方もこれといって変わった事はないよーイキテレラ の結末がなんだか納得いかないぃ!
(`□´)! -
↑天然記念物発見ww
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チョウチャン、私はイキテレラの
話の流れ自体が納得いかないよ!
何でこんなんなっちゃったんだろう・・・。もう1回パロディで、今度は楽しい話にする!
ロマンスとは言わない。
でも、ちょっとチャレンジはしてみるつもりwがぶり、そう言えば
何で “記念物” なんだろうな。
何の記念なんだろう。念に記する・・・?
「覚えておけ」 って意味なんかな? -
ロマンスはどこいったん?
ハーレクインロマンス~~~!!二人の義姉が「立派に家を仕切ってる」だとぉ~?
納得いかんなぁ~~(笑)アタシは・・・
王のオカンとイキテレラがどうのこうのと・・・
Lの世界ばりにドロドロと・・・ってのを
一瞬夢見たではないかぁ~~(笑)次作、期待してるよん♪
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イキテレラ楽しみに読んでたよー^^
私の中では、もちょいイキテレラ生きてて欲しかったんだが、
『何もしようとしないひとりの女性によってすべてが滅びた…』
というところに、ナンかきた!ゾクッというか…
っで、チャンおひさやなー^^ノ
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こんにちは、今回も熱中してストーリーを追わせていただいていました。
「登場人物を甘やかさない」ストーリーに、いつも感銘を受けています。
「自分にも他人にも興味の無い人」というところが
イキテレラの不幸の原点なのですね。楽しい話も読ませていただきたいです!
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あああ…なんだかとても悲しい終わり方でした(;ж;)
でも妙に清々しいような不思議な気分です。 -
>私はイキテレラの
>話の流れ自体が納得いかないよ!
>何でこんなんなっちゃったんだろう・・・。あくまで想像ですが・・・
書き始めた際に、
結末が決まっていなかったからでは?「やかた」の後書きで、
『目的地があって、そこまでの道のりはわかるけど、
それをイチイチ説明するのが困難なのと同じで、
結末に向かって設定とかを細かく書いていたら
想像以上に長くなってしまった』
みたいなことを言ってた気がします。だから、たとえばの話・・・
どっか楽しいところを探しに行こう、ってドアを開けても
手探りで進んでいったら、道に迷ってしまうでしょう。なんとか、楽しさの匂いをかぎわけるようにして、進む。
でも、とりあえず、わかる道に出たから、家に戻る。
あれれ、こんなはずでは・・・ってことじゃない?
なんとなく。
見当違いだったらスマソ!
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完結おつかれさまです*
まさか主人公処刑でジ・エンドとは…うーん、後味引きますね。とりあえず、
王子様ったら、DQN!
(これが言いたかっただけ) -
酔花・・・、まさか自分にここまで
“ロマンスの種” がなかったとは・・・。
通りで、リアル人生も花開かんわけだ。要するに、義姉もイキテレラに甘やかされて
悪いヤツになってたんだよ。ちゃあこも読んでくれてたんか!
王子もイキテレラの態度のせいで狂った、と。
皆、元々はちゃんとした人間だったのに
トラブルメーカーがいると・・・、みたいな。あまぐり、ありがとうー。
そうなんだ。イキテレラのその考え方は
自分をも不幸にした、というのを
書きたかったんだよー。椿、イキテレラが自業自得だからだ。
街も滅びるし、身の程をわきまえないヤツ全滅!
という、清々しい話だろ?ける、図星・・・。
今日の記事で言い訳をタラタラする。それほど意外な展開で
見切り発車がこれほど苦しい道程とは・・・。いや、思うがままに書いていけば良かったんだろうけど
“ロマンス” という縛りと
“本当は残酷だったあしゅ童話”
(こんなタイトルの本、あったよな?)
になりたくなくて無理したよ。うーん、自分の感覚って
かなり固定して存在しているものなんだなあ。miu、その単語、一般的になってほしいよな。
ロクでもねえヤツを、これほど端的に表す言葉はないぞ。
DQN。でも、王子は私の中では被害者だ。
イキテレラが嫌いだなあ。
書いてる側が、ここまで言って良いのかわからんが・・・。 -
ちょっと怖かったですけど面白かったです!
最後はなんか王子(王?)が可哀想でした…
でもあしゅさんのラブロマンスも読みたかったなぁ(笑)
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王さま、可哀想だよねーーー。
イキテレラが振り向かないもんだから
自分の殻に閉じこもった愛になっちゃったんだろうなあ。次は楽しい話にするよ。
人死にも出さないようにして。
(出来る限り)王子と姫の話をやり直したいんで
もいっちょパロディでやってみる。
王室物、自分で考えるのは無理っぽい。で、・・・ちょびっとラブも入れるようには
精一杯、何とか、一応、心掛けて。
(どんどん弱気に・・・)
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