「まあ、今までのいきさつはわかった。」
「気の毒な境遇で、大変じゃったの。」
小人たちが、黒雪姫をねぎらう。
「しかし、何故窓ガラスが割れておるのじゃ?」
「家の中に入るために、やむを得ず・・・」
「ドアに鍵は掛かっとらんのにか?」
「ええええええええっ、そんな無用心な!」
「ここいらには、通常は侵入者はおらんのじゃよ。
と言うか、ドアに鍵を何個かけようが
窓を割って入ってこられたら一緒じゃろ。」
小人があごで割れた窓を指し示したので
バツが悪そうに黒雪姫が目を逸らした。
「・・・まあね。」
「で、何でわしらの家に入って来たんじゃ?」
「火を点けっ放しで、火事になると大変だと思って・・・。」
チリンチリンチリンチリンチリンチリンチリン
「鍋のシチューが5分の1に減っておるが?」
「火にかけっ放しで、蒸発したんじゃないでしょうか?」
チリンチリンチリンチリンチリンチリンチリン
「・・・・・すいません、腹が減って盗み食いいたしました・・・。」
「最初からそう言えば良いんじゃ。
妖精族は親切なヤツが多いんじゃから、咎めはせんよ。
そ れ ほ ど は な。」
黒雪姫は正座させられて、この後30分ほどネチネチと説教された。
「にしても、人間が妖精の国に紛れ込めるとは不思議じゃのお。」
「うむうむ、妖精王さまが守っておられるはずなのに。」
「この娘をどうしたものかのお。」
横から黒雪姫が口を挟む。
「ちょっとー、娘娘言わないでくださいません? 無礼者さんたち。
私の事は “黒雪姫様” とお呼び。」
「うむ、わかった。
それで黒雪をどうするか、ちょっくら賢者さまに訊いてくるかの。」
「黒雪 “姫” ! 姫!! ひ・め !!!」
黒雪姫の怒りをよそに、小人のひとりがさっさと家を出て行った。
「よーし、わかった!
あなたたちがその気なら、私にも考えがあるわ。
さあ、あなたたち、自己紹介なさい。」
仁王立ちの黒雪姫の前に、残りの小人6人が並ばされる。
「わしはアレクサンデル」
「わしはハドリアヌス」
「わしはクレメンス」
「わしはユリウス」
「わしはニコラウス」
「わしはマルティヌスで、今出て行ったのがベネディクトゥスじゃ。」
「・・・・・・・・・・・・
何かその名前群、こんな話で気軽に使うのはヤバい気がするわー。
テキトーに縮めたイヤなあだ名をつけようと思ってたんだけど
絶対にどっかの良識筋からクレームが来ると思う。
しかも正式に。」
黒雪姫は、しばらく頭を指で突付いて悩んでいた。
「よし、しょうがないわね。
あなたたちの名前は、“おい”“ちょっと”“そこの” 等
男尊女卑の夫が妻を呼ぶような、芸のない言い方にするから。
呼ばれたら、そこらへんにいる一番近くの者が対応するように。
どうせ7人もいたら、個性なんかこっちには関係ないしね。」
そんなひどい、何て事じゃ、あんまりじゃないか
と口々に文句を言う小人たちを無視して、黒雪姫は話題を変えた。
「ところで、賢者さまって誰なの?」
続く
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