「それは、わしだ。」
「と、フクロウが言った。 ・・・って、鳥じゃん!」
「ただの鳥ではない。 猛禽類だぞ。」
賢者はふふんと笑った。
「まあ! さすが役職が付いてるだけあって
こいつら (小人) と違って、人間的余裕がありますのねえ。
人間でもなく、鷲 (わし) でもなく、フクロウだったけど。」
「ほお、なかなかウイットに富んだ人間だの。」
「ええ、高貴な血筋には知性も必要で。」
賢者と黒雪姫は、ふぉっふぉっふぉっ ほほほ と笑い合った。
「この森もどんどん汚れていってる気がするのお。」
小人たちが嘆く。
「で、何故人間が入り込んだのか、賢者さまにもわからんそうな。」
「信じがたくて見に来たんだが、本当だったな。
わしのところにも、何も情報は入ってきとらんのだよ。」
「賢者、まさかの役立たず・・・。」
暴言を吐く黒雪姫を小人たち全員が蹴った。
とことんローキックである。
「しかし妖精王さまが、この事態を知らぬわけはない。
きっと何か理由があるのだ。
おまえたち、しばらくこの娘を預かりなさい。」
これには小人たちからブーイングが噴出した。
「ええー、何でわしらがー?」
「しょうがないだろう!
この娘が妖精の森を我が物顔で闊歩したら、どうなる事やら。
被害は最小限に抑えねば。」
「じゃ、賢者さまが預かってくださいよー。」
「もちろん、そうしたいのは山々だが」
と言った途端、風鈴がヂリヂリ鳴り始めた。
「わ、わしはこれから、妖精王さまを探しに行ってくるので忙しいのだ。
よって、分業、という事で、よっ、よろしく頼むぞ。」
賢者は慌てて飛び去った。
「賢者って、知恵を武器にした詐欺師みたいなものなのね。」
黒雪姫の素直な感想に、小人たちは内心思った。
それを言っちゃおしまいじゃろう・・・。
だが、風鈴は鳴らなかった。
「何? 妖精王って普段どこにいるか決まってないの?」
「いや、大抵は妖精城にいらっしゃるのじゃが
今は実りの季節で、あちこちで祭が行われているじゃろ。」
「ああ、稼ぎ時のドサ回り中ね。」
小人たちが黒雪姫を蹴る。
「妖精王さまは劇団じゃない!」
「人間界にも来てるの?」
「いや、人間界は神界の管轄なんで
妖精界からの介入は出来ない決まりなんじゃ。」
この言葉には、黒雪姫も驚いた。
「神、いるの?????」
「ありゃ? 人間界は儀式とかする、と聞いたが。」
「いえ、するけど、あんなん単なる行事だと思ってたし。」
「そういう不信心じゃから、こういう目に遭っとるんじゃないんか?」
「うわあ・・・、かも知れない・・・。
神様、ごめんなさいーーーーー!」
黒雪姫は、ひざまずいてブツブツと祈りだした。
「届けば良いのお、その祈り。」
「届いてもらわんと、わしらが困るしのお。」
小人たちも、ほとほと困り果てているようである。
続く
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