黒雪姫 16

賢者が戻ってくるまで、王子たちも現場待機という事で
小人の家の庭先にテントを張った。
 
「て言うか、すんごい段取り悪くない?」
皆を集めて、黒雪姫が文句を言った。
「何か1個あるたびに、王に訊く王に訊く って
 行ったり来たりしてる時間、むっちゃロスだっての。」
 
「じゃが、この森は妖精王さまによって治められているから
 わしらが勝手に行動する事は出来ないんじゃよ。」
 
「ふーん。
 じゃ、この森所属じゃない私らなら、勝手に動けるわけね。」
 
 
この発言には、小人たちだけじゃなく王子たちも慌てた。
「ちょ、“私ら” って、私たちふたりも入ってるんですか?」
この言葉に、黒雪姫はジロリと王子を睨んだ。
 
「あなた、状況わかってる?
 私ら、被害者なのよ?
 加害してんのは、この世界のヤツなのよ?
 だから解決もお願い、って加害者側に全任せして気長に待つの?
 そうこうしてる内に、私らの世界で戦争とか起きたらどうするの?
 結果はどうあれ、自分に出来る事をすべきじゃない?
 それが巻き込まれた私らの責務だと思わない?」
 
 
黒雪姫は、すっくと立ち上がった。
「とにかく私は一国の姫の名に恥じぬよう、何か行動をする!」
 
ドアを出て行こうとする黒雪姫を全力で止めようと
小人たちがその手足にしがみつく。
「ちょっと待ってくれ。」
「あんたに暴れられたら、わしらが困るんじゃ。」
 
黒雪姫は、すがる小人たちをジロリと見下ろした。
「私に好き放題にされたら困る、って?」
「そうじゃ、わしらの立場もわかってくれい。」
 
黒雪姫は小人たちをぶら下げたまま、グルリと振り向いた。
「わかった。 じゃあお互いに譲歩しましょう。
 あなたら、私が単独暴走しないように協力して。」
「だから、大人しく待っててくれ、とお願いしとるのにーーー!」
 
 
「暴れる気があれば、とっくの昔に破壊行為に及んどるわ!」
黒雪姫が右腕を激しく振ると
しがみついていた小人が、隣の部屋に飛んで行った。
 
隣室から漏れ聞こえてくる小人の呻き声にも動じず
黒雪姫は演説を続ける。
 
「いい?
 この不可思議な事件には、人間も関わっている。
 しかもマイ継母。
 私にも、この事件を解決する責任と義務があるのよ。
 ひとりで勝手にやっても良いけど
 あんたらにもあんたらの都合があるだろうから
 一緒にしよう、と言ってるんじゃないの!」
 
 
小人たちは円陣を組んで、なにやら相談をし始めた。
「ほらほらほらほら
 さっさと決めないと、壁をブッ壊して出ていっちゃいますよー?
 ハリアップ! ハリアップ! せいやせいやせいやせいや!」
 
腕組みして、壁を靴でドカドカ蹴り鳴らしながら
小人たちをせかす黒雪姫。
「ああーーー、うるさくて集中できん!」
「完璧な環境下じゃないと考えられないなんて
 死亡フラグが立ってますよー。
 ほらほら、とっとと考える!」
 
小人たちは、すっかり集団パニックに陥っていた。
黒雪姫は、そんな彼らに容赦なく追い討ちをかける。
「急がないと、もっと騒いじゃいますよー?」
 
ドッコーン ドッコーン
壁に頭突きまでし始めた。
掛けてあった額縁が、振動で次々に落ち始める。
小人たちの脳内も、轟音を立てて土砂崩れを起こし始めた。
 
「どどどどどどうする?」
「わしゃ、あんたに任せる。」
「わしもあんたに同意する。」
「うん、わしもあんたの意見に賛成じゃ。」
 
誰も何も提案すらしていないのに
全員が他のヤツの決定に従うと言い始める始末。
 
 
王子が執事にささやいた。
「決断力と実行力、そして政治力に長けた姫ですね。」
 
執事は、そうか? と、思っただけだった。
 
 
 続く
 
 
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       黒雪姫 1 10.7.5 

Comments

“黒雪姫 16” への4件のフィードバック

  1. アグ ブーツのアバター

    はじめまして
    突然のコメント
    失礼しました
    ブランドuggのご紹介です
    よろしくお願いします

  2. のとのアバター
    のと

    はあぁぁ面白い。。
    なんてカラフルでコミカルで愛らしいお話なんですか(T_T)
    小人まみれの黒雪姫&頭突き&小人集団パニックなんて楽し過ぎて私の『わくわくボルテージ』が振り切れるかと思いました。

    王子もなんだか嫌いじゃないです

    更新楽しみにしてます!

  3. けるのアバター
    ける

    黒雪、カッコいい!!

  4. あしゅのアバター
    あしゅ

    のと、えっ、これメルヘンなのか!
    これで良いのか!

    いや、ものすごくビックリしたよー。
    そうか、これ、メルヘンなんだー?
    私、無意識にメルヘン書いてるんだー
    うわ、私の中に意外な情緒発見? (天狗)

    ける、またまた えっ?
    頭突きする女、格好良いかあ?

    皆それぞれの世界観を持って
    読んでいるんだな、と驚かされたよ。

    書く側が必要以上に、あれこれ決め付けるものじゃ
    ないんかも知れないな。
    なるべく想像が広がるような表現をするように心掛けるよ。

    読み手が優れている小説、って事だな!

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