黒雪姫ひとりの働きで、やっと茨の藪を抜けた。
最後の方は、ナタが壊れて使い物にならなくなり
執事のキッチン鋏が活躍した。
(剣を持った王子は、災いを恐れた小人たちに制止された。)
それほど長い藪であった。
「こっから、あっち方面に2時間じゃ。」
「急ごうかの。」
「あなたたち・・・、私を少しは休ませようとか思わないの?」
肩で息をする汗だくの黒雪姫に、小人たちが冷たく言い放つ。
「行きたがってるのは、あんたひとりじゃからのお。」
このもっともな意見に、言い返す言葉が見つからず
黒雪姫が一歩踏出した時に、前方に動く影が見えた。
「ああー、遅れる遅れる。」
その瞬間、黒雪姫は小人のひとりの首根っこを掴んでいた。
「うおりゃあああああああああああっっっ!」
「きゃあああああああああああああっっっ!」
投げられた小人は、悲鳴を上げながら水平に飛んで行き
動く影に的確に叩きつけられた。
そこへ黒雪姫が、すかさずにボディスラムをする。
黒雪姫にダイブされた小人かウサギのどっちかが
グエッと小さい声を洩らした。
一同はこの衝撃映像に、驚愕した。
「何て事をするんじゃ!」
「そりゃ、ひどすぎるぞ!」
「そこまでの仕打ちはあんまりじゃ!」
小人たちのブーイングをよそに
黒雪姫はウサギの耳を掴んで持ち上げた。
「こいつの皮を剥いで、さばいて干し肉にしましょ。」
「ちょっと待て、そのウサギ、服を着とるぞ。」
「懐中時計も持っとるぞ。」
小人たちの指摘を、黒雪姫は聞き入れない。
「森にいるウサギは食用と決まってます!
肉系は捕れるうちに捕っておかないと。」
「言葉を話す者を食べるのは感心しませんねえ。」
王子の言葉に、黒雪姫がブチ切れた。
「うるさい! こいつは生かしておいたらダメな気がするの!!!」
「あー、これ以上面倒な事になりたくないんじゃな?」
「見え透いとるぞ。」
「しかし、そのために殺人をしちゃいかんじゃろうー。」
小人たちのヤジに、黒雪姫が怒り出す。
「ドやかましい!!!
あなたたちだって、こんな騒動はさっさと終わらせたいでしょ?
そのために私が汚れ仕事をする、っつってんじゃん
何の文句があるのよ!」
「悪じゃ・・・。」
「こやつが真の悪だったか・・・。」
ザワつく小人たち。
その時、黒雪姫の手元のウサギが、歪んだ笑みを浮かべた。
「ふっふっふっ・・・
よくぞ見破ったな、女。」
ウサギは両手を前に出した。
「こうなったら、全員ご招待しよう。
お茶会に・・・。
波ぁっっっ!!!」
空中に出来たヒズミのような亀裂に
黒雪姫一行は吸い込まれて行った。
「波動砲ーーー?」
「カメハメ波ーーー?」
「ブレストファイヤーーーー?」
そのまま黙っていれば、黒雪姫が糾弾されて
自分は無傷で解放されてたかも知れないものを
早々とカミングアウトして馬脚をさらすなど
しょせん小動物は小動物、低脳なこって、という話である。
続く
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カテゴリー 小説・黒雪姫シリーズ
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