ありがとうございますありがとうございます、と頭を下げる元女王を
良いからさっさとどっか行け、と追い払った黒雪姫は
「これ、結構重いわねえ。」
と言いながら、まるで帽子置きに置くように何気なく
王冠を小人の頭にポンと乗せた。
小人の服が、ポンッと赤いドレスになった。
「きゃああああああっっっ!!!」
慌てる女王小人に、うろたえる6人の小人。
「何じゃ、これ、取れんぞ?」
パニックになって、ワアワア泣き喚く女王小人の王冠を
全員でどうにか取ろうとするが、取れない。
「うーん、呪いの王冠かもね。」
サラリと言う黒雪姫に、小人たちが抗議する。
「あんたのする事は、考えられんぐらいにひどすぎるぞ!!!」
小人たちの心の底からの怒りも
黒雪姫に取っては、下僕の不平不満でしかない。
チェスの勝負をし直して、黒雪姫が女王になるべきだ
という意見も、ひと睨みで一蹴された。
「大丈夫。 ここの親玉を倒せば呪いも解けるでしょ。
てか、あなた、その駒たちの主人になったのよ。
家来がいっぱいできて良かったじゃない。」
黒雪姫の能天気な言葉につられて
女王小人もあさってなグチを言う。
「でも、ここで待たなきゃいけないんじゃろ?」
「誰がそんな事を決めたの?
駒にボードを持たせて移動すりゃ良いんじゃん。」
「え? そうなんか?」
「ルールも決められないなど、女王さまとは言えないでしょうー。
気合いで頑張れ!」
「よ、よし、あんたら、わしの後について来い。」
女王小人が、かなり虚勢を張って命令すると
駒たちは、ゾロゾロと女王小人の後ろについてきた。
「ボード、いらないみたいじゃな。」
「だったら無敵ね!」
黒雪姫は、アハハと笑った。
男なのに、赤いドレスを着せられて・・・?
と、その場の全員が思ったが
言ってもムダのような気がしたので、全員が沈黙した。
「ねえ、女王、ちょっとこの馬に
かぶりものを脱いでみるよう命令してみてよ。」
「おお、駒も呪われてるかも知れんしな。」
黒雪姫の無神経な言い方と
それを注意もしない仲間に、女王小人は心底失望した。
「マジで気が滅入っているのに
女王とか呼ばんでくれんかのお・・・。」
言った後に、やはり自分も気になるので
とりあえず “命令” してみた。
「ま、あんた、その馬、取ってみい。」
女王小人が命令すると、馬が馬を取った。
中から出てきたのは、色白の・・・・・
普通のオヤジであった。
何故かかなりガッカリする一同。
「馬を取ったら、体が人間で顔だけ馬、ってのが
出てきたら面白かったのにねえ。
かぶりもの、必要ないじゃん! って感じで。」
相変わらず、言ってはならない事を平気で言う黒雪姫を
小人たちが無言で蹴る。
「いつの間にか、こんな物をかぶせられて・・・。」
「ああ、ああ、もういいから帰ってくれ。」
投げやりに返事をする女王小人に
ありがとうございますありがとうございます、と言いながら
馬オヤジはどこかへと走って行った。
ルークもありがとうございますありがとうございます、と言い略
ポーンもありがとうございますありが略
ビショップもありがとうご略
以下、全員略。
ちなみに全員、不思議なぐらいにオヤジ揃いであった。
「・・・何だったんじゃろう?」
「さあ? でも “駒が足りない” って言ってたじゃん。
だから逃げる事が出来た人がいるのかな、と思ったのよ。
と言う事は、駒自体を倒せば代わりがいなくなるんじゃない?
って事で、暴れてみたのよね。」
「ほお。」
感心する小人たちに向かって、真面目な表情で語る黒雪姫。
「いずれにしても人を駒にするなんて、鬼畜の所業よねっ。」
「「「 あんたが言うな!!! 」」」
7人全員がハモった。
「てか家来もなしで、何でわしだけこのまま・・・?」
泣きそうな顔で、女王小人がつぶやく。
「ほんと、大変よねえー。」
上っ面だけ同情する黒雪姫に、小人たちの蹴りが入る。
「「「 あんたが言うな!!! 」」」
続く
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カテゴリー 小説・黒雪姫シリーズ
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