輪になって、クッキーやサンドイッチをつまんだ後
何も食べるものがなくなっても、誰も立ち上がろうとはしなかった。
ひどく疲れているのもそうだったが
どこに行って何をすれば良いのか、見当も付かなかったからである。
そんな中、黒雪姫はボンヤリと遠くに見える森を眺めていた。
今座っているここは、草もまばらな小石の多い土地である。
足元の土を掻いてみる。
えらく硬い。
作物も実りにくい、痩せた土地に見える。
どうしようか・・・
いや、行くしかないのはわかってるし!
黒雪姫は、自分に活を入れるように両頬を叩いた。
そのバシバシという音に、一同はビクッとさせられた。
「よっしゃあ! 行くかー!」
すっくと立ち上がった黒雪姫に、小人が訴えた。
「なあ、あんたは何をしたいんじゃ?
何もわからずに付いて行くのは、倍疲れるんじゃよ。
わしらにも作戦を話してくれんかのお。」
黒雪姫は、しばし考え込んだ後にうなずいた。
「うん、そうね、ごめんなさい。
こういう場合は、南の方へ行くべきだと思うのね。
温かい方が生き残れる確率が高いでしょ?
だから私はこっちに行きたいのよ。」
「そんだけの理由かい!」
呆れる小人に、黒雪姫はムッとする。
「サバイバル、大変なのよ?」
「まあ、そりゃそうじゃな。
じゃあ、夜になる前になるべく南下しとこうかの。」
小人たちが次々に腰を上げる。
黒雪姫は、勘のみで動いていたが
南の森林が、どうも気になってしょうがなかったのである。
まさかとは思うけど、見覚えがあるのよねえ・・・。
「じゃが、今までに会ったヤツは、皆北に向かってたろう?
北の方向に何かがあるんじゃないのか?」
「あったとしても、それは良いものじゃない気がするんじゃが・・・。」
「そんな事を言っとたら、解決せんじゃろう。」
小人たちの議論を、黒雪姫はうんこ座りで眺めている。
「何じゃ?」
「いや、あなたたちが意見をどうまとめるのか、興味があって。」
「多数決じゃ。」
「・・・何だ、結局エセ民主主義なわけね。」
「いるよな、こういう、平等を嫌うひねくれ者。」
「うんうん、絶対に自分が少数派になるもんで、歪むんじゃ。」
「何ですってーーー?」
小人たちの図星に、暴力で済ませようとする黒雪姫。
「あんたはケダモノか!」
キャアキャア逃げ回りながら、罵倒する小人たち。
それを あはは とノンキに見物している王子。
ひとりで黙々と後片付けをする執事。
突然空間にキラキラした光の渦が現われた、と思ったら
全員を再び飲み込んだ。
「何じゃ? こりゃあ」
「うおっ、吸い込まれる???」
「強制移動はもう嫌じゃあーーーっ」
「じゃあーーーっ」
「ゃあーーーっ」
「あーーーっ」
「ーーーっ」
誰もいなくなった荒野には、小人の叫びがこだましていた。
続く
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