ズシャズシャズシャッ と折り重なるように
どこかに落とされた黒雪姫たち。
「あいたたたたた・・・。」
「何でこんなに投げ回されにゃならんのじゃ。」
「損しかしてない気分じゃ。」
「と言うか、次はどこなんじゃ?」
「うう・・・、周りを見るのが恐いぞ。」
目を開けると、下は木の床だった。
見上げると、目の前にドレスを着た女性が立っている。
「女王じゃあ!!!」
キャアキャア言って、右往左往する小人たち。
「「 うるさい !! 」」
女性と黒雪姫が同時に怒鳴った。
だるまさんが転んだ で、ピタッと止まる小人たち。
「・・・うっとうしいわね・・・。
さすが、あなたのツレね。」
「お褒めいただき光栄ですわ、お継母さま。」
「何ーーーーーーーーっ?」
「お継母さまじゃとーーーーーーーっ?」
「ラスボスはあんたの継母じゃったんか!」
どよめく小人たちを、継母と姫がギッと睨む。
睨まれた小人たちは、部屋の隅にジワジワ追いやられつつも
各自がひとことは余計な感想を言わなきゃ気が済まないようで。
「迫力はさすが似ておるな。」
「言動も一緒じゃ。」
「本当に継母か? あれで血の繋がりはないのか?」
「・・・と言うか、あの話、覚えているか?」
「何じゃ?」
「ほれ、事の発端の美人争い。」
「ああ・・・、そうじゃったな・・・。」
「このレベルでのお・・・。」
「「 聴こえているんだけど? 」」
「「「「「「「 すっすいませんーーーっ。 」」」」」」」
ズザザザザと、あとずさりする小人一同。
「姫のお継母さまでいらっしゃいますか。
お初にお目にかかります、私、北国の王子です。
どうぞ、お見知りおきを。」
片膝を付き頭を下げる王子に、継母の顔が少しほころんだ。
「あら・・・ (はぁと)」
「(はぁと) じゃないですわよ、この色ボケババア。」
黒雪姫の罵倒に、継母が微笑んで言う。
「鉄板処女よりマシでしょう、ほほほ。」
30cmの距離で睨み合う継母と娘。
「美人争いですって?
ペラペラとよくも・・・。
口が軽い女はモテなくてよ?」
「おほほ 勘違いババアほどイタいものもありませんわ。
私は自分のツラの偏差値ぐらい、わきまえておりますから。」
ビシビシビシッと火花が散る。
こ、恐すぎる・・・ と2人以外の全員が縮み上がった。
「で? あなた、何故生きているのかしら?
ああ、いえ、それは後ほど瞬殺するから良いとしても
何故ここにいるのかしら?」
継母のその問いに、黒雪姫が怪訝そうな顔をする。
「お継母さまが私たちを呼んだのではないのですか?」
継母は、は? と笑った。
「何故あたくしがあなたを呼ばなきゃならないのかしら?」
継母から目を逸らさずに、黒雪姫が問う。
「ここはどこですの?」
「ここはあたくしの塔ですわよ。」
「城の・・・?」
「ええ。」
黒雪姫の口の端がピクッと上がった。
「そこだあっ!!!」
黒雪姫が振り向き様に、ヒジで鏡を割る姿が
スローモーションのように展開された。
「あな た な に を 」
継母の叫びが、途切れ途切れに耳に入ってくる。
飛び散った鏡のカケラのひとつひとつに
全員の驚く顔が映りこんでいた。
カケラは渦を巻いて鏡台の中へと吸い込まれて行った。
後に残ったのは、鏡面のない鏡台だけだった。
続く
関連記事 : 黒雪姫 30 10.10.5
黒雪姫 32 10.10.12
カテゴリー 小説・黒雪姫シリーズ
黒雪姫 1 10.7.5
コメントを残す