亡き人 12

ゼロと血まみれちゃんは、公園に来ていた。
「アパートからちょっと離れているけど来れたねえ。
 うちら半径どれぐらいまで移動できるんだろうねえ?
 んで、基準って何なんだろう?」
 
考え込むゼロに、血まみれちゃんは首をかしげる。
「まあ、その実験は、追々やってみよう。
 血まみれちゃんも、今度アルゼンチンやってみてよ。
 太郎んとこに行けるかどうか。」
 
いやいや、と首を横に振る血まみれちゃん。
「したくないの?」
うんうん、とうなずく血まみれちゃん。
「えーと、何でかな。」
 
 
しばらく考えたゼロが言う。
「1.血まみれちゃんの土着は太郎じゃない
 2.血まみれちゃんは、そもそも地縛していない
 3.マジでアルゼンチンに行けそうだから
 4.迷子になったら困るから
 どれ?
 1? 2? 3? 4?」
 
血まみれちゃんは、1と4でうなずいた。
「迷子になった事があるの?」
うんうん
「そん時、どうやって戻った?」
いやいや
「自動的に?」
いやいや
「戻ってないの?」
うんうん
「じゃ、迷子のまま?」
うんうん
 
ええ・・・?
じゃあ、血まみれちゃんは浮遊霊って事?
血まみれちゃんに移動制限はないんか?
私は地縛霊?
でも太郎に呼び出されるよねえ?
ゼロは益々考え込んでしまった。
 
 
「て言うかさ、考えてもわかるわけないじゃん、って話だよねー。」
ゼロが顔を上げて、血まみれちゃんの方を見ると
血まみれちゃんが青ざめていた。
 
「ちょ、何フリーズしてんの?」
血まみれちゃんの顔の前で、手の平を上下させた時に
その目が一点を見つめているのに気付き、振り返るゼロ。
 
視線の先には、真っ黒の巨大な綿菓子のようなものが
ウニャウニャしながら、こっちへゆっくりと近付いて来ていた。
 
「あ、あれ何? とか質問しているヒマがあったら
 とっとと逃げるべきじゃない?」
ゼロが慌てる程に、“それ” は嫌な雰囲気をかもし出していた。
 
 
「逃げろ! おい、血まみれちゃん、正気に戻れ
 とにかく逃げろ、あれ、ヤバいって!!!」
ゼロの剣幕に、血まみれちゃんがようやく反応した。
 
「おらおらおらおら、全力で遁走せえーーーーーーっ!!!」
ゼロの叫びに、血まみれちゃんも必死で飛ぶ。
 
 
次の瞬間、血まみれちゃんがヨロめいた。
「って、ああっ、浮いてるのに何でコケる!」
前を飛ぶゼロが振り返りつつ突っ込む。
 
血まみれちゃんはコケたわけではない。
黒綿菓子から伸びた手みたいなものに捕まれたのだ。
 
「ああああああ、触手プレイきたーーーーーーーーっ!!!」
 
 
もうゼロ、ピンチ過ぎて、わけわからん状態。
 
 
 続く。
 
 
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      カテゴリー 小説
               
      亡き人 1 10.11.17  

Comments

“亡き人 12” への4件のフィードバック

  1. ゆかりのアバター
    ゆかり

    こんにちは。ゆかりです。

    黒綿菓子怖いです・・・。
    形のないものって、逆に怖さ倍増かもしれませんね。
    正体不明のものが襲ってくる訳だし。

    それにしてもゼロちゃんの反応は見事に迅速ですね。
    生前どういう人だったか気になりっぱなしです。
    先がとても楽しみです。

  2. あしゅのアバター
    あしゅ

    ありがとうー。

    霊感がないと、逆に
    単なる闇とかが、ものすごく恐いと思う。

    そうか、人物像とかが
    読んでて気になるのだな?

    そういう意見は、次の小説を書く時に
    参考になるんで、とてもありがたいよー。

  3. miuのアバター
    miu

    血まみれちゃんの「いやいや」にちょっと癒された私がいます。
    スプラッタなのはわかってるんですけど 笑"

    黒わたあめのくだりで某国営放送の『やさいのようせい』を想像してしまいました。
    多分イメージは全く違うと思いますが、モルドレイスというぞわぞわしたお化け(正体はカビ)が出てくるんです。
    主に水回りや冷蔵庫の裏に、そう、奴らは…。ぎゃー。

  4. あしゅのアバター
    あしゅ

    うっっっ・・・
    検索して見てしまったじゃないかーーーっ。

    某国営放送と言えば、トイレのかみさま
    紅白の記者会見で
    えらい失礼な事を言ってたと思うんだが。

    「切れる場所が1個もない」 って
    その歌を聴いた事がないけど
    他の人の歌も聴いてないけど
    誰の歌だって、想いが込められてるんじゃねえの?
    きっと皆、切られたくないよ。

    この話、何か事情があるんかな?

    私?
    ブッツンブッツン切り刻んで良いよ。

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