「別に霊がいたって良いだろお、おやじぃー。」
巻き舌発音で、山口が無重力すぎる発言をする。
「良いわけねえだろ!」
激怒したのはゼロだった。
実父を差し置いて。
「普通は霊とかいちゃダメなの!
てか、多くの人には霊は見えないの!
まったく、おめえは無防備発言が多すぎるんだよ
そういうのは世間からは、“ちゃんとしてない” と見なされるんだよ。
いい加減、まともな感覚を持て!
このクソバカチャラ男!」
山口に向かってギャアギャア怒鳴るゼロを、太郎がたしなめる。
「あの、ゼロさん、おとうさんの前なんで・・・。」
その言葉に我に返ったゼロは
再びズザザザと後ずさり土下座をした。
「すっ、すいませんーーー!
ほんと、すいませんーーーーーー!!!」
「おやじぃ、ゼロさんには悪気はないからさあ。」
山口パパは、どう反応して良いのかわからない様子だったが
やっとか細い声を出したが
「ま、まあ、おまえたちの好きにしなさい。
わしはちょっと、まあ、その・・・。」
と、語尾をむちゃくちゃ濁しつつ
ヨロヨロと部屋を出て行ってしまった。
「んじゃ、お許しも出た事だし
さっそく引っ越す準備をしようぜー。」
山口の言葉に、ゼロと太郎が同時に叫んだ。
「「良いんかい!!!」 ですか!!!」
太郎におぶさりつつ帰る道すがら
ゼロは謎がひとつ解けた気がした。
チャラ男のフルネームって、山口拓也なんだ?
スマップかトキオかどっちなんだ? って突っ込まれそうだよな。
太郎の名前を笑わなかった理由はこれかな。
でも太郎の場合は、間違いなく親のセンスが悪いけど
チャラ男は、単に不運なだけだよな。
山口拓也、普通に良い名前じゃん。
名前・・・
ゼロはふと考えた。
ふざけて名乗ったゼロという名前だけど
よく考えてみると、虚しい響きだ・・・。
そもそも、私の本名は何なんだろう。
何も覚えていない割に、知識は残ってたりする。
霊ってこういうものなんだろうか?
てか、私ってちゃんとした霊なんだろうか?
「何を考えてるんですー?」
太郎が話しかけてきた。
その声に心配の響きを感じたゼロは、何だかホッとした。
「ううん、別にただボンヤリしてただけー。」
ゼロは太郎の肩にギュッとしがみついた。
ら、ズルッとすべって、太郎の腹からゼロの上半身が出る形になった。
「何をやってるんですか!」
怒る太郎を、ゼロが逆なでする。
「ふはははは、寄生虫型エイリアンだー。
腹を食い破って出てきたぞーーーっ。」
もう、やめてくださいよー、と嫌がる太郎と
太郎の腹から体半分を出して、ユラユラ揺れるゼロ。
アスファルトに伸びた影は、ひとり分だけだった。
続く。
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Comments
“亡き人 24” への2件のフィードバック
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ご無沙汰振りに来てみたら沢山更新されていて慌てて読破しました~
微笑ましいやり取りが続いていてほっこりほっこり。
アルゼンチーーーン!を引きずったまま読んだのでニヤニヤ
ゼロ本人は勿論、血まみれちゃんに黒い綿飴
まだまだ謎はたくさんですね。
超長編になる予感(・∀・)ワクワク -
椿、ご無沙汰すなって。
この話、長編にはしないつもりなんだ。
ラストは決めたけど
それで良いのか、まだ迷っているし
正直、この話を軽く考えて始めた事を後悔してるよ。もうちょっと精進できたら
続編とか番外編で、掘り下げていければ
と、思っているところなんだ。だから、この話は
もう終わりに向かっている。自分の力不足を痛感したよ・・・。
小説書きを挫折しそうだけど
私は文豪! と、空威張りをしながら
何とか続けていきたい。
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