「霊がいる呪われた黒ずくめの部屋ぁ~~~~~。」
皆が引越しで忙しく働いている時に
何もする事がないゼロは、リビングの黒い家具から
顔半分を出して、荷物を運ぶ人々を威嚇していた。
「うわー、マジ、ヤな事しないでくださいよー。」
山口が本気で嫌がる。
同居のお陰で、太郎はほぼ毎日していたバイトを
半分にまで減らす事ができた。
家賃は1部屋占有だけなので、月2万という破格値だし
光熱費も “基本料金” という項目があるので
2人で分担する方がお得だし
大学の側なので、交通費は0になった。
余裕が出来た時間の半分は、遊びに回された。
学校の側という立地は、仲間のたまり場になるのである。
今宵も仲間が集まってドンチャンやっているところに
ゼロが来て、高らかに宣言した。
「おまえら若人に、『遊ぶな』 とは言わないけど
何事も程々にせえよ。
太郎が司法試験に落ちたら
子々孫々祟ってやるからな!」
この言葉に、一同は悲鳴を上げた。
「長野、頑張れよ!」
「私たち、しょっちゅう来るけど
気にしなくて良いのよ。」
太郎がキッと睨むと、ゼロは悪魔の笑みを浮かべた。
「ほっほっほ、若い者はたまには絞めにゃ暴走するしな。」
何気ない日々が過ぎて行った。
スピリチュアル・長崎の暴挙を
エリア・マネージャーに相談したら
系列会社の塾の事務へと、バイト先の変更を手配してくれた。
太郎に取っては、思いがけない出世である。
「ゼロさん、大事にしてあげなさいよ。」
エリア・マネージャーは、太郎の肩をポンポンと叩いた。
ゼロの除霊以来、エリア・マネージャーには
“男子好き” という疑いが掛けられていたので
太郎とも、これが最後の接触になるだろう。
ゼロさんに迷惑を掛けられたようなものなのに・・・
太郎は、エリア・マネージャーに申し訳なく思った。
引っ越しで浮かれ騒いでいた仲間たちも
いつもの落ち着きを取り戻し
学業にも精を出すようになったある日
太郎のところに石川がやってきた。
「ね、ちょっとゼロさんを呼び出してくれない?」
「ゼロさんに会いたいならマンションに来れば?」
「緊急なの、お願い!」
両手を合わせて頼む石川に、太郎はつい承諾した。
ゼロさん、呼び出しを嫌がるからなあ・・・
怒るだろうなあ・・・。
続く。
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