「で、説明をしてくれないかな。」
頭領に詰め寄られ、王子は悩んだ。
どこまで言って良いものか・・・。
黒雪は、隣でスープとパンをガッついている。
船酔いもまだ覚めない王子には、酷な風景である。
「奥さま、どうしましょう?」
王子がボソボソと黒雪に相談する。
「ん? フツーに言えば良いんじゃない?
王子と私は、魔王に頼まれてこの国にいる魔族を捕まえてんのよ。
はい、これで終わる話じゃん。」
ノンキな黒雪に頭領が突っ込む。
「終わるか!
何でこの国に魔族がはびこってるんだよ?」
このセリフに、王子と黒雪はハッと目を合わせた。
「そう言えば、何で・・・?」
「そうですよね、何で魔族が?」
青ざめて見詰め合うふたりに、頭領はイライラした。
「王子さまよお・・・、あんた頭脳担当じゃなかったんかい。
こんな大変な事の理由さえ疑問に思わなかったんかい?」
「あ、いえ、そこは色々とあって・・・。」
「だからその、“色々” を聞きたいんじゃないか!」
高貴な身分なのに、平民にしかも海賊に怒られてしょぼくれる王子と
とりあえず飯、とパンをおかわりする、全身ヌルヌルの黒雪に
海賊たちは王家のイメージを変えざるを得なかった。
「奥さまーーーっ」
泣きつく王子に、黒雪がキレた。
「細かいなあ、もう!
国大変 → 戦う これ当然じゃん。
しかも国から災いを除ける度にご褒美が貰えるんなら
一石二鳥でしょうが!」
「ご褒美?」
「あっ、着いた!!! 話は後!」
船室から勢い良く飛び出して行く黒雪の背を見て、頭領は思った。
猪のような女だね・・・。
「私、私、私が一番乗りーーー!」
ゴネにゴネて、黒雪が最初にボートで上陸した。
「金鉱カモーーーン!!!」
ダッシュした途端、ズザーーーーーッとコケる黒雪。
目の前にはホッカホカの温泉があった。
「ええ・・・? また温泉・・・?
どんだけ茹だれって言うの・・・?」
ヘタリ込む黒雪の横を、頭領がスッと追い越す。
「何やってんだい。
その温泉は、あたしらが利用してる秘湯だよ。
さっきの落雷場所はあそこだろ。」
え? と見ると、その先の岩山から煙が立ち昇っている。
黒雪は慌てて頭領の指差す方向へと走った。
「こ・・・これは・・・もしや・・・」
黒雪が手にした石を覗き込んで、王子が答える。
「ああ、これ、鉄っぽいですね。」
「じゃ、ここ鉄の山・・・?」
「ええ、多分。」
ニッコリ笑う王子に、黒雪がうおおおおおおおおおと吠える。
「やったーーーーーーっっっ!!!!!
鉄の剣 鉄の斧 鉄の槍 鉄の盾 鉄兜 鉄の鎧
武器防具作り放題ーーーーーーーーっっっ!!!!!!」
両手で石を掲げて踊り狂う黒雪を、海賊たちは呆然として見ていた。
「一体、何なんだい・・・?」
続く
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