私はしょっちゅう時計を見る。
しかし、腕時計はしない。
別に確固たる信念があるから、しないわけではなく
アクセもそうだけど、体に服以外を着けるというのが
すんげえ違和感があるのだ。
よって、アクセも滅多に着けない。
それでも20歳ぐらいまでは、無理して腕時計を着けていた。
ところが、違和感があるある言うくせに
動作がザツなのか、時計の出っ張りを計算せずに動き
机やドアにブチ当てて傷を付けたりするのだ。
はめたままだから、骨に痛えの何のって。
そこで、懐中時計に切り替えた。
小ぶりのペンダントタイプを使っていたが
すぐにチェーンをブチ切ってしまう。
しょうがないので、ポケットに入れて
わざわざ出して時間を確認していたのだが
その行為が、ものすげえこだわりのあるヤツに見えるらしい。
会う人全員に、そういう形状の時計を持ち歩くのは
何故どうしてホワイ? と訊かれ、正直に理由を言ったら
何の期待をされていたのか、ひどく落胆されてしまうので
とうとう、時計を持つ事自体を止めた。
今は携帯で時間がわかるから便利だろうが
私の携帯は重くて持ち歩けないので、恩恵は受けていない。
ところで、この腕時計の話で、不思議な体験がある。
高校に入学したら、かあちゃんが何の感慨を深めたのか
「あなたももう高校生なのだから、これを使いなさい。」 と
かあちゃんが長年愛用していた腕時計を譲り受けた。
長方形の薄く小さいシンプルなアンティーク調の時計で
てか、当時でも数十年前に買ったという、実際に古い物なのだが
私の好みに珍しく合い、とても嬉しくて
毎日言われた通りにネジを巻いて、大事に使っていた。
ところが、1ヶ月ほどしたら、急に動かなくなってしまったのだ。
かあちゃんに、「壊れたよー」 と返すと
(いや、普通はそんな返し方をしないのは
さすがの私でも、わかってるから。
相手がかあちゃんなんで、甘えただけだから。)
「乱暴に扱ったんでしょう」 と怒られたが、そんな事はない。
大事に大事にしていたんで、一度もぶつけたりもしなかったんだよ。
その時計、かあちゃんが持つと動き始めるのである。
「壊れてなかったわよ。 ネジをちゃんと巻きなさいね。」
と、再び渡され、前回以上に気をつけて扱ってたのだが
やはり私が持つと、1ヶ月ほどで動かなくなり
かあちゃんが持つと、すぐ動き始めるのだ。
学習能力のない母娘は、こういう事を数度繰り返し
「あなた、何かヘンな念でも出てるんじゃないの?」
と、オカルトな言い掛かりを付けられ
時計はかあちゃん所有に戻った。
かあちゃんからは、腕時計を何回か貰ったのだが
そういう事態になったのは、あの腕時計だけだった。
多分、あの腕時計はかあちゃんが好きだったんだろう
と、メルヘンの方向で解釈しているが
かあちゃんが死んだ今、形見として私の手元にある。
何か、謂われなく嫌われてそうなので、押入れに封印している。
呪われたりしないか、ちょっと不安である。
ちなみに、私が持ってるとうちゃんの唯一の形見も腕時計だ。
こっちも数十年前のブツで、もう立派なアンティークである。
これが薄いくせに重いのなんの。
というのも、最初は兄が使っていたのだが
「おまえ、親父の形見は持ってないだろう、これをやるよ。」
と、いきなり渡されたのだが、その際の取り扱いの説明に
“あまりに古いんで、電池交換は余程の専門店じゃないと出来ない”
という言葉があり、面倒くさいんで押し付けた、と気付いたのである。
電池が切れてしまっているが、このまま放置していて良いんだろうか?
腕時計とは、私を悩ませる存在である事は確かである。
評価: グラスプ
コメント:若い頃にこういう文字盤の時計を探してたんだ。 「今、子の刻。」 とかアホな事を言いたくてさ。 結局、見つからなかったんだけで、現代のネット社会は便利だのお。 ただ調べてみると、時刻表示がおかしいと言う人もいるんで、お遊びグッズとして捉えた方が良いかも。 |
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