黒雪伝説・王の乱 4

「おまえたちーーーーーーーーっ
 よくも私を、す巻きにしてくれたわね!」
 
黒雪のこの怒りを抑えるのは、王子にとっては簡単だった。
「王を一発も殴らずに、あの場を逃げる事が
 あなたに出来ましたかっ?」
 
王子がギンッと睨むと、黒雪は気まずそうに目を逸らした。
「あなた、普段から王がうっとうしいと思ってたでしょう?
 ここぞとばかりに、殴りたかったんじゃないですか?」
 
黒雪が頭を掻きながら言う。
「・・・あの王さあ、ほんっとバカ君主の見本だと思わない?
 美しいもの楽しい事が大好きで、政治は大臣任せ。
 地位と権力があるのに、遊ぶ事しかしやしない。
 王家に生まれついて運が良かった、と思っている。」
 
 
王子はこの意見にあっさり賛成した。
「ええ。 バカな王だと思いますよ。」
「でしょ? どさくさ紛れに5~6発ぐらい殴っても良いわよね。」
 
「・・・普通、1~2発と言いませんか?
 あー、ほんと止めて良かったですよー。
 あなた、どんだけ、ついでの暴力を振るうつもりだったんですか!」
 
王子がこめかみを押さえつつ溜め息を付いた。
「いいですか?
 いくら相手がムチャを言ってきたとしても
 手を出したら最後、こっちが悪者になってしまうんですよ。
 殴った瞬間、相手の嘘が本当だと周囲に思われるんです!」
 
 
黒雪が正座させられて、王子に説教されている間
デラ・マッチョは、野宿の用意に取り掛かっていた。
 
「王子さまの判断は正しかったね。」
「ああ。 あのまま黒雪さまを放置してたら死人が出たよ。」
「隙さえあれば暴力に走ろうとするもんね・・・。」
 
 
デラ・マッチョが準備した焚き火のところに座ろうと
黒雪を呼ぼうとした王子が振り返ると
黒雪はフラフラとどこぞへ歩いて行こうとしていた。
「奥さま、どこへ行くんですか!」
 
王子のイラ立った声に、黒雪もついつい低姿勢になる。
「いや、ウサギでも狩ろうかと・・・。」
「何でいつもウサギを狩りたがるんですか!」
 
王子の剣幕に、デラ・マッチョはヒヤヒヤしたが
黒雪は真面目な顔で答えた。
「猪だと、結構大変なのよ?」
 
「いいから、こっちに来て座ってください!!!」
肉、大事なのに、と思いつつ、渋々と座る黒雪。
 
 
無理やり気を取り直して、王子が皆に問う。
「これからどうするか、何か案はありますか?」
勢い良く手を挙げたのは黒雪だった。
「はい! 王を殺せば良いと思います!」
 
王子は無視して、黒雪に背を向けて続けた。
「今回の事は、まったくわけがわからない状況で
 まずはその解明から始めるべきだと思うのですが
 その方法について、どう思いますか?」
 
黒雪が王子の後ろで、手を挙げながら叫ぶ。
「はいはいはいはい!!!!!
 王を拷問して口を割らせれば良いと思います!!」
王子がブチッと来たようで、黒雪の両肩を掴んで諭し始めた。
 
 
「あなた、昔はもっと賢かったですよねえ?
 何でそんなに脳みそまで筋肉化しちゃったんですか?」
王子も大概な言い様だが、黒雪はとても良い作戦のように誇る。
「だって考える担当はあなたがいるから。
 ほら、役割分担。 あなたも私も同じように必要、ね?」
 
この答は、黒雪なりの王子への思いやりだとはわかったけど
王子はガックリと肩を落とした。
 
「にしても、少しは考えてくださいよ・・・。
 私が考えてる隙に、あなたが先走って暴れたら
 元も子もないんですよ?
 あなたに犬死にしてほしくないんですよ?」
 
 
王子が姫のように真珠の涙をハラハラとこぼしているところに
黒雪が、何故そこで言う? というセリフを吐いた。
「犬と言えば、ネオトス、どうしてるの?」
 
王子が追い討ちをかけられたかのように嘆く。
「私の腹心のじい、犬扱いですか・・・。」
 
が、その後、王子がハッと気付いた。
「そう言えば、じいがいましたね!」
 
 
 続く 
 
 
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