「で、ファフェイの登場は、まったく価値のないものだったんだけど
これからどうする?」
王子に訊く黒雪に、ファフェイが怒る。
「失礼にも程があるでござるよ、プンプン!
大体、それがしが1人でここまで来るとお思いでござるか?」
「うわ、こいつ、“プンプン” とか言ってるわよ。」
顔を見合わせて、気持ち悪がる黒雪とレグランド。
マッチョでも、やはり気持ちは女性である。
意外に気にしないのが王子。
「それより、他に誰か来てるんですか?」
「ムッフッフー。」
ニヤニヤしながら、クネるファフェイ。
首を倒してゴキゴキ鳴らせる黒雪が
差し出した手の平に、レグランドがハンマーを置く。
「はわわわわわわーーーーーっっっ
すまぬでござるすまぬでござる言うでござる白状するでござると言うか別に隠し立てをするつもりはないんでござるてか黒雪さまをお連れしろと言われてここにいるんでござるよって他意はないんでござるよーーーーーっっっ! フヒュフヒュフヒュフヒュ」
瞬時に3mぐらい後ろに飛び退いて、土下座するファフェイ。
「しばらく見ない内に、キモさに磨きがかかったわね・・・。」
さすがの黒雪も呆れ果ててしまった。
「で、誰が来てるって?」
「お后さまでござるーーーーーーーっ! ヒュヒュヒュヒュ」
「は?」
その場のファフェイ以外の全員が、聞き返した。
「・・・お后さまでござる・・・フフッ。」
ドキマギしながら、テンション低くクネるファフェイ。
「? ? ? ? ? ! 」
6秒後にファフェイ以外の全員が叫んだ。
「「「ええええええええええええええええっっっ?」」」
「お后さまって、“あの” お継母さまの事?」
「東国の王の后が他国へ?」
「しかも城でゴタゴタしてる真っ最中に?」
それが事実だと呑み込めたら
次は怒りと恐怖が襲ってきた。
「そっ、それは政治上ありえませんよ!」
「あのバカババア、何をチョロチョロしとんのやら!」
「これで東国のお后さまに何かあったら
益々厄介な状況になるじゃないですかー!」
アタフタする3人に、ファフェイが言う。
「だから、おしのびで・・・。」
「おまえらが全力で止めんか!
てか、早く言え!!!」
ゴーーーーーーーーーーン!
黒雪が思いっくそ、ファフェイの頭を叩いた。
ファフェイが頭のコブを押さえて、転げ回ってる横で
3人が深刻な顔で相談する。
「私はすぐにお継母さまのところに行くわ。」
「そうですね、あのお方を留め置く事が出来るのは
奥さましかいないでしょうし。」
「城はどうしましょう?」
レグランドの指示仰ぎに、王子はしばらく考え込んだ。
「では、私と奥さまはお后さまのところへ行きます。
あなたとファフェイさんは、協力して城を探ってくだい。」
王子のこの命令に、レグランドは思わず一瞬イヤな顔をした。
「ファフェイはああ見えても、能力はあるのよ。」
黒雪の言葉に、へえ? とファフェイを見直しかけるレグランド。
が、それも次のひとことでチャラになる。
「特に逃げ足の速さは見事なのよ。」
とことんいやらしい人間である。
「ふむ、だったらファフェイを途中に潜ませて
私たちとの連絡係になってもらって
城へはレグランドひとりで行った方が良いですね。」
王子の言葉に、黒雪も同意する。
「そうね。
城の者はきっと今頃困ってるはず。
頭領は私の側近だから、逆に頼ってくるんじゃない?」
「まあ、そこまで軽く考えてたら危ないですけど
王が捕らえたいのは、きっと私と奥さまだけでしょうしね。」
その後、王子とレグランドが細かい打ち合わせをし
ファフェイは黒雪に念入りにしばかれ
一向は二手に分かれて、歩き始めた。
レグランドが振り返ると、王子と黒雪は手を握り合って歩いて行く。
それを微笑ましく思えば思うほど
視界の端をチョロチョロする忍者に、イライラさせられる。
レグランドには、過酷な任務になった。
親衛隊に就任した直後なのに・・・。
続く
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