黒雪伝説・王の乱 15

レグランドが城内に入ると、皆がチラッとこっちを見る。
が、すぐまた、自分の仕事へと戻る。
見て見ぬフリなのである。
 
要するに、コトを起こしたくない、って事だよね。
レグランドは、衆人の視線を感じながらも
とりあえずネオトスのところに向かった。
 
 
意外にもネオトスは、王子たちを案じてはいなかった。
「黒雪さまと一緒なら、無敵ですからね。」
無表情で言うネオトスの心理が、レグランドには謎だった。
 
妖精界時代からの家臣だと聞いていたけれど
それにしては、この突き放しっぷりが不可解である。
これが親なら、わかってはいても心配でならないだろう
ましてや、妻があの無鉄砲な黒雪さまなのに・・・
 
怪訝に思うレグランドに、ネオトスが言う。
「“そんな事” より、早く王子たちを呼び戻すのです。
 王は自室にこもっています。
 これは、王の身に何やら起きているようですぞ。」
 
レグランドは、ネオトスの言い回しに気付かず
その剣幕に圧されて、慌てて城の出口へと取って返した。
 
 
城外に出ると、頭上からファフェイが降ってきた。
飛び退こうとするヒマもなく
レグランドの喉には、短剣を突きつけられた。
「おぬしの首、いただいたり!
 なんちゃってー。」
 
ファフェイは素早く短剣を回しつつ、サヤに入れた。
「おぬしは、相討ちを狙うタイプだから
 こういう遊びは危ないでござるな、フシュシュ。」
 
何度も不意を衝かれ、プライドはズタズタである。
だがこの男、黒雪よりレグランドより素早いのは確かだ。
 
この変態に戦いで負けるとは、と
激しくイラ立つレグランドだったが、ひとことだけ言った。
「・・・メガネを掛けて・・・。」
 
 
「拙者は、お后さまに報告する。
 黒雪さまたちは、すぐにおいでになる事であろう。
 では、さらばだ!」
ファフェイの黒装束は、一瞬で闇に溶けていった。
 
「あっ・・・」
レグランドは追おうとしたが、もうファフェイの姿はなかった。
 
さっき別れたはずの彼が何故ここにいるのか、何をしてたのか。
黒雪さまたちは彼を信用しているようだけど
しょせんは他国の間者、疑いは常に持っておかないと・・・。
 
豹変した自国の王、他国の密かな介入
レグランドは、得体の知れないものに前後を挟まれた気分であった。
 
 
 続く 
 
 
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