黒雪伝説・王の乱 19

「・・・・・・・・どうしても、ここですか・・・・・・」
 
王子が服の汚れをはらいながら、険しい顔をする。
飛ばされた先は、荒野であった。
 
 
「そんな事より魔物はっっっ?」
黒雪がガバッと構えて、振り向く。
 
と同時にズザーーーッとコケる。
 
 
目の前には、バラが一輪飾られたテーブルで
フカフカクッションの椅子に座った継母が
優雅にお茶を飲んでいた。
 
「あらあら、古典的なズッコケ方ね。
 あなた、中身はあたくしより古いようね。 ほほほ。」
 
その言葉にピキッときた黒雪が
継母に向かって、背の斧を抜いて構える。
 
「おのれ、見た事もないような醜悪な魔物め!」
継母のこめかみの血管がヒクヒクとケイレンした。
 
 
「ちょ、ちょっと、おふたりとも遊んでる場合じゃありませんよ。
 王妃さま、何故ここにいらっしゃるんです?」
ふたりの “女の攻防” を、“遊び” と悪気なく断定する王子。
 
「鏡を割ると、ここに飛ばされるんじゃないかと思ったのですよ。
 ここ、あの時の場所なのよ。」
あたりを見ると、確かに広い荒野なのに
“あの時” の “あの場所” である。
 
「で、お継母さま以外の魔物は?」
「黒雪、あなたって人は~~~~~~っ!」
継母が思わず立ち上がった瞬間、何かが跳ねた。
黒雪が反射的に、“それ” を踏んだ。
考えなしに。
 
 プチッ
 
 
全員が顔を見合わせる。
 
「ご・・・、ごめ・・・、無意識に足が動いて・・・。」
「今、プチッていったわよね?」
「とうとう殺したんですか? この話、ロマンスなのに?」
「えっ? 何だったんですか?」
「拙者の動体視力でも捉えられなかったでござる。」
 
 
一同が黒雪の足に注目する。
「いやあああああ、足を上げたくないーーーっっっ!」
「では、このまま靴をここに脱ぎ捨てて・・・」
 
「何を言ってるのよ、このバカ夫婦は!
 いいから足を上げなさい、黒雪!」
「そうでござる。 確認はせねば。」
 
混乱状態の現場である。
黒雪は意を決して、ソーーーッと足を上げた。
 
 
 続く 
 
 
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