黒雪伝説・王の乱 22

丘を越えたら城が見える地点で、夜がふけるまで休憩した後
馬たちと黒雪を残し、王子たちは城へと向かう。
 
「お願い、戻ってくる時に何か甘い系を持ってきて!」
ファフェイの袖を引っ張り、黒雪が懇願する。
ファフェイには、背後の王子の嫉妬の視線が痛い。
 
ファフェイが同行するのは、城の中の抜け道を調べて知っているからで
王子たちを送り届けたら、馬たちを連れて
継母のところへと帰って行く予定である。
 
一同を見送りもせず、黒雪はそのまま
地べたに大の字になって、イビキをかき始めた。
 
 
問題は王が目覚めた後・・・。
こっそりと自室に戻り、久々の入浴をしながらも
王子は気が気ではなかった。
 
翌日、王の部屋に入った王子は
緊張とともに、王が目覚めるのを待った。
 
 
 
「・・・さま・・・、黒雪さま・・・
 くー!ろー!ゆー!きー!さー!まーーー!!!」
「うおっ」
 
大声に飛び起きる黒雪。
「ああ・・・、叫んで体力を使ったんで目まいが・・・」
と言いながら、“胸” を押さえてヨロけるファフェイ。
 
「・・・えーと・・・?」
寝ぼけて、状況をすっかり忘れている黒雪に
エジリンがケーキの乗った皿を差し出す。
 
 
「あ、ありがとう。 えーと・・・?」
ケーキをガツガツ食いながらも、まだボケている黒雪。
 
コーヒーを淹れながら、エジリンが説明をした。
「王様は、スッキリお目覚めでしただよ。
 『急に目まいがして倒れた後の記憶がない』 と
 おっしゃってたんで、頭を打って一時的に混乱して
 あのような騒ぎを起こしたんだろう、となってるようですだ。
 まあ、丸く収まった、という事ですだね。」
 
 
どうやら王の記憶は、濡れ衣事件から消えているらしい。
「ふーん・・・?」
コーヒーを飲みながら、黒雪はあいまいに返事をした。
 
その様子には触れずに、ファフェイは馬の手綱をまとめた。
「それでは拙者はこれにて。」
 
「うん・・・。」
黒雪は、まだ呆けている。
 
 
「さあ、あたしらも城へと戻りましょうかね。」
「うん・・・。」
 
黒雪の寝ぼけは完全に取れていた。
なのに反応が薄いのは、この大団円に
妙な違和感を感じているからであった。
 
だけど、その違和感の正体がわからない限り
わざわざ混ぜ返す必要もない。
 
まあ、いいや
どうせ王子絡みの、妖精だの魔王関係の話だろうし。
 
黒雪は、考える事を完全に投げ出していた。
 
 
 続く 
 
 
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