「館はあくまでも公的施設でーす。
我が国では政教分離の原則はないとは言え
あからさまな宗教はいただけなーい。
ですから、情に訴えるんでーす。」
紅茶をひと口飲み、続ける。
「暗い過去を持つ館を改革し、住人たちの心を救った “英雄”、
主をそれに仕立て上げるんでーす。
ひとりの人間を、“恩人” として奉るのは
各地によくある話で、しかも非常に道義的でーす。
神を信仰するのではないので、宗教ではありませーん。
一般民衆の共感も得やすいでしょーう。」
「なるほど、見事な心理誘導だな。」
将軍がつぶやいた。
「そうですね、それなら公でも可能ですね。」
「しかし、“神官” ですぞ?」
「そこは言い方じゃないですかな?
“生涯独身だった主に敬意を表して、館の管理者は独身を貫く”
と義務づける、というのはいかがですか?」
白髪の紳士が落ち着いた口調で発言した。
「「「 おお!!!!! 」」」
メンバーが一斉に、同調した。
「それが良い! ゲン担ぎのようなものだし。」
「伝統は重んじるべき、という我が国の風習にも合う。」
「これで決定ですね。」
会議室の空気が一体になったのをブチ壊すのは、いつも主である。
「あのー、ちょっと良いでしょうかー?
ごく一部には、崇拝者もいますが
どう自分に甘く見ても、“偶像” まで行けないと思うんですがー。」
「それはあんたの死後にするから大丈夫じゃろう。」
失礼な事を見事に言いたれるジジイに、将軍がもっと無礼な異議を唱える。
「ですが、捏造にも限度がある事ですし
主には今から言動を控えていてもらわないと。」
「その事なんでーすがあ。」
リオンが再び提案をする。
「主の毎日の演説は録画されていまーす。
これは後々の良い材料になりまーす。
それだけじゃなく、仕事中などの普段の姿も映像に撮るのでーす。
我々はそれを、切ったり貼ったり塗ったり削ったりして
美しい記録として残せば良いのでーす。」
メンバーのひとりが、ダンディー紳士に耳打ちした。
「いやはや、貴殿のご子息はヤリ手ですなあ。
先が楽しみですな。」
ダンディーは いやそんな、と恐縮しながらも、少し気落ちした。
代々市会議員を務めてきた我が一族だが
私にその才はなく、弟がその役目を肩代わりしている。
その弟も、そろそろ引退すると言っている。
弟の息子たちは、私似で政治家には向いていない。
逆に私のこの長男が弟にそっくりだ。
弟の跡は、多分この息子が継ぐ事になるだろう。
血というものは時折、奇妙な遺伝をするものだな・・・。
ダンディーの生真面目で心優しい性格では、その “才” が
非情で不道徳なものに思える事も、ままあったのだ。
「では、早速カメラマンを手配しよう。」
そう話がまとまりそうになった時に、主が慌てて制止しようとした。
「ちょ、やめてくださいよー!
一日中カメラに追われるなんて、冗談じゃないですよー。」
「きみが素で偶像になれるぐらいに好人物だったら
こんな予算も手間も掛けずに済んだのだがね。」
「うっっっ・・・。」
メンバーのその容赦のない批判に、主は反論の言葉も出なかった。
「では、そういう事で・・・」
「ちょっと待ってください!」
会議を締めようとする声を遮ったのは、意外な事に
主の死後の話にしょぼくれて、ずっと無言でいたグリスであった。
「何かね?」
長老たちは、グリスに優しい。
「カメラマンは女性にしてください!」
「「「「「 !!! 」」」」」
その言葉に、メンバーたち全員が意表を突かれ
主は瞬間だけ、嫌な顔をしたが
すぐさま長老たちに納得されたので、その願いは聞き届けられた。
この会議でグリスは発したのは、このひとことだけだった。
続く
関連記事 : かげふみ 24 12.1.17
かげふみ 26 12.1.23
かげふみ 1 11.10.27
カテゴリー ジャンル・やかた
小説・目次
かげふみ 25
Comments
“かげふみ 25” への10件のフィードバック
-
いや~!チョー面白い~!
もうほんとにもう次回が待ち遠しくてたまらんです~。
たまらんち会長です~。あしゅちゃんのツイートにコメント(リツイートというのですか?)したいけどツイッターやってないからできなくて、ひとりでうがうが言ってます~。
漬物の話とかマスクとか~。
あ~。 -
unaちゃん、大概、古い。 タマランチ。
しかも下ネタ。(違うかw)えっ、面白い?
ありがとうーーーーーー!今、他に気を取られているんで
(毎度毎度だけど、ゲーム)
手は抜いてないけど、気分的に自信がないんだ。文豪ぶるけど、集中してない!
こんなこっちゃ、ノーベルへいわし略。ツイッター、携帯電話で皆やってるっぽいよ。
あ、ツイッター画面が見えるんなら
unaちゃんはパソコンで見てるんかな?
・・・そうか、時代的にスマホか・・・。ツイッターの説明は私には無理だぞ。
意味もわからんで、やってるもん。
時代についていけねえよー。 -
だいたいいつもはケータイで見てるけど、あしゅちゃんのツイッター見たいときはPCで見てます。
ケータイはスマホでなくて、6年くらい使ってて外側はハゲまくってシルバーだかグレーだか白だかわかんない色になり中のボタン部分は連打の末プラスチック部分が剥げ落ちて内部のシリコン?がむき出しになってるすごいケータイを使ってます。
今年の7月だかにこの機種は使えなくなるそうで、1年以上前から買い替え要請のDMやメールや電話がひっきりなしに来てうざくて頭にきてるので、ギリギリまでこのケータイを使い倒してやろうと思っています。1年ちょっと前からブログやってて、その何年も前からmixiもやってるんですが、ブログ始めたらmixiの日記は全くといっていいほど書かなくなったので、私にツイッターとブログの使い分けができるかどうかな~って思って二の足ふんでます。
ブログにもツイッターみたいなつぶやくとこがついてるんで、たまにつぶやいてはいるんですよ~。
つぶやき系はツイッターもmixiもアメブロも何でもも相互にやりとりできると便利なのになあ~。
あ~でもそれやっちゃうとユーザー増えないのか~。
つーかそのうちガマンできなくなってツイッター始めるかもですね~。
つーかあしゅちゃんの記事も面白いけど小説もすごい楽しみにしてて、更新される度に毎回ウハウハで読んでますよ~。
漬物は、いぶりがっこが大好きです。
-
unaちゃん、おお、私も一緒。
地デジ非対応機種。私はこないだブチ切れて
お陰でDMしか来なくなって、スッキリ。春先あたりに、新機種を見ようかと思ってるよ。
携帯の機種変更で、スマホは候補に上がる?
私はもう普通の携帯で良いかな、と。ツイッターは、ここの管理人の命令だからやってるけど
苦にはならないと思う。ただ私のように、パソコンでネットインした時間だけ
と区切りを付けると、オチが必要になるんで
そこがちょっとつらい。
オチ、つかないし・・・。
ほんと、いらん縛りはしない方が良いぜ。照れるなあ、小説の評価。
ありがとう、テンションが上がるんで
ほんと感謝だーーー。私ごときに、というのは
読んでくれる人に失礼だから
私の精一杯を出すよ。私にスランプなどない!
やる気も、ものすごくある!
ネタも尽きない無限の泉!!
私は世界一!!!
(実情モロバレ?w)いぶりがっこ?
秋田かどっかのたくあん?
食べた事ないけど、美味しいんかー。私、今、歯ぎしりで顎とか歯茎とか痛くて
たくあん系が無理なんだよー。
白菜とかの菜っ葉系で過ごしてるよー。 -
スマホは特別興味はないけど、スマホにするならiPhone1択です。
なぜならマカーだから。それと、auがせっかくiPhone出したから。
でも、私にとって必須のサイトがまだスマホ対応してないから、そのサイトが対応したらスマホも考えようかな~っと思ってます。
スマホでケータイサイトが見られるアプリもあるみたいなんですけど、なんか、やらなくてもいいことに労力注ぐのがめんどくさい。。歯ぎしりまだ続いてますか~?
歯茎まで痛くなるのチョーわかる!あれ、なにもかもやる気なくしますよね~。
おかげさまで私は治ったぽいです。
いぶりがっこは秋田のです。妹が医者と再婚して秋田に住んでて裕福そうなので、シャレで「いぶりがっこ死ぬほど食いたい」と言ったらほんとに死ぬほど買ってきてくれましたw イェ~イ♪
菜っ葉系ならやっぱり高菜漬がマイNo.1ですねえ~。顎とか歯茎とかおだいじにしてください~m(__)m
-
マカー?
いや、知らなくて良い単語の気がする。
私の脳、最近ところてん方式なんで
知識の詰め込みもヤバくなってるよー。歯ぎしり、マウスピースで防いでる。
でも食いしばってるみたいで
朝起きたら歯茎が痛いんだ・・・。ストレス元が消えるか、私が強くなるかだから
何か時間が掛かりそうなんで
とりあえずの応急処置のマウスピースだよー。
自己暗示、心が弱ってると衰えるようだ。いぶりがっこは秋田かあー。
北の方って、野菜とか美味いのが多いイメージだ。
高冷地野菜なんて、美味い美味い!
寒冷地と高冷地は、また違うか。あ、稲庭うどんも好みだった。
あれも秋田だっけ?
“いなば” じゃなくて、“いなにわ” なんだよね。
読み方を何度も調べたけど、まだ不安だ。 -
マカー=Mac使いってことです~。
Windowsも使うけど、Macでないと職業的になかなか不便なのです。稲庭はいなにわですね~。
秋田はたぶん1回しか行ったことないけど、出身が仙台なので、北のほうの食べ物はやっぱり詳しくなりますよねえ~。
仙台は牛タンが有名ですけど、個人的には和菓子がピカイチだと思っています~。 -
やっぱりmacかー。
何となく予想はしてたよー。へえ、unaちゃんは北出身かあ。
私は九州だから、雪国に憧れる。
メイド付きの別荘で、一冬だけ過ごしたい。いや、生活上で雪は大変だと
雪国の人に聞いたんで。仙台は、うちのかあちゃんが
気に入ってた旅行先だったよ。
私も子供の頃に行った事があるらしい。和菓子が美味しいのは羨ましいー。
最近はめっきりケーキが食えなくなって
和菓子を選ぶんだよー。
油がダメになってきたんかな。 -
私は大人になってから1回だけ熊本へ行ったことありますよ~。
でもわけわからないまま連れられて行ったので、どこらへんに行ったのか全然わかんないんです~。
すんごい山奥で田楽食べました。
おいしかったです♪仙台はそうでもないけど、雪がハンパない青森とかは、雪かきさぼると家が雪に埋まるので、2階にも玄関(つーかドアだけ)ある家がよくあるんですよ。
夏に外から見ると、階段もないのに2階の位置にドアだけあって不思議な光景です。 -
unaちゃん、それきっと阿蘇。
阿蘇の味噌田楽だと思う。
私は食った事がないけど美味しいんかー。えっ、仙台、そう豪雪でもないんか?
あ、だから大きな街ができるんかな。青森と言えば、「デトロイトメタルシティー」 の
映画を撮るために、作者の故郷
大分の犬飼って地方を訪れた松山ケンイチが
「俺の故郷より田舎を初めて見た」
みたいな事を言ったんだ。
(雑誌のインタビューで読んだ)松山ケンイチの故郷って、青森なんだろ?
私、犬飼を知ってて
私から言わせれば、それ程田舎でもないんで
それ以来、私の中では青森のイメージは
都会、となってるよ。2階にドア、ニュース映像で見た記憶がある。
雪国は、設備や暖房にお金が掛かりそうで大変だね。まあ、南国も台風や大雨で大変だし
都会はちょっとの雨雪風で、すぐマヒするし
どこに住んでも、それぞれ大変かー。
コメントを残す