かげふみ 35

 リオンは嬉々として叫んだ。
 
「このアスターという友人は、グリスくんより年上だけど
 グリスくんにラヴなんだと思いまーす!!!」
 
 
リオンの言葉に主はくいついた。
「何ーーーっ? 森のくまさんかーーーっっっ?」
 
「何でーす? それ。」
「昔、本屋さんの趣味の棚でさー
 森のくまさん、っちゅう雑誌が置いてあったんですよー。
 毛むくじゃらのメタボおやじのヌード写真集でー・・・」
 
主の言葉をリオンがさえぎった。
「あああっっっ、そういうディープなジャンルじゃなく
 ふたりはボーイズラヴなんでーす!」
「ボーイズラブー?」
「いいえ、ボーイズラヴ。」
 
主がリオンと向き合って、両手の平を胸元で立てた。
リオンがその手に自分の手を合わせて、ふたりでうなずく。
「イエス! ボーイズラヴ!」
と言いながら、グルリと顔を横に向けた。
 
ふたりで大ウケしてはしゃぐ。
「おめえ、私のパソコン、見ただろー。」
「はいー。 日本、お笑いも面白いでーす。」
 
こいつ、プライバシーの侵害はまったく気にしてないわけね
主がリオンの距離感を苦々しく思っているところに
リオンが無神経発言を追いかぶせる。
 
「だけど主のアンテナは、数年古いでーす。
 今はお笑いもゲイものがウケてるんでーすよ。」
「いや、別に私は日本の流行を追ってるわけでもないしー。」
 
 
「日本かあー・・・。」
主が窓越しの空を見上げる。
 
「そっちは南でーす。」
「だって地球は丸いんだもんー。」
「でも、いくら回ってても、軌道線上にない国にはたどり着けませーんよお。」
 
睨む主に、リオンが微笑む。
「日本に帰りたいでーすかあ?」
「いや、別に良いですよー。」
 
「私が隠居して日本に移住する時に
 一緒に行きましょーうねえ。」
「だから別に良い、っつってるじゃんー!」
主がイラッとした様子で怒鳴り、リオンがふふふと笑う。
 
 
こうなると主に勝ち目はないので、早々に話題を戻す。
「えー、でもその話、確かですかあー?」
「私の腐れ濃度をあなどったらいけませーん。
 とりあえず、一通りはかじっていまーす。」
 
威張るリオンに、ちょっと感心する主。
「おめえ、そっち方面にも手を出しとるんかー。
 あー、でもさー、私、そのジャンル詳しくないんですよー。
 それに恋愛ごととかどうでも良い、っていうかー。」
 
 
相手にしない主に、リオンがポツッと言う。
「・・・歴代主には、“護衛” が必要だと思いまーす。」
 
主は何の反応も示さず、書類を読んでいる。
そんな主に、リオンが改めて感心する。
「すごいでーすねえ、あなたの愛は。」
 
ここで主が、ブチ切れカウントダウンを開始した。
「・・・何を言ってるのかわからないし、わかりたくもねえんだけどー?」
 
“館” に関わっている者ならば皆、主の逆鱗場所は熟知している。
そこにあえて触るヤツは、リオンかジジイぐらいのものだが
リオンは、より冷酷に戦略的思考を展開する。
 
「目をそむけていたいのなら、私に従ってくださーいねえ。
 館の未来のためでーすから。」
 
 
“館のため” と、“リオン” が言うのなら
主は目隠しをされても付いて行く。
「・・・ん、わかりましたー。」
 
リオンは、主の説得の成功し、つい馬脚を現した。
「楽しいバカンスになりそうでーすねえ。
 点描の花びら舞い散る禁断の愛の青春劇!!!」
 
「うーむ、それはちょっと見てみたいかもー・・・。」
両手を広げてクルクル回るリオンに、手をあごにあてて妄想する主。
「ね? ね? 心の琴線に触れるでしょーう?」
 
 
執務室にデスクがあるリリーは
同室での邪念いっぱいのふたりの話がイヤでも耳に入る。
 
「差し出がましい事を申しますが
 ご旅行をなさるなら、元様もお連れになった方がよろしいかと。」
 
その言葉に、主とリオンは顔を見合わせた。
「あ、そうでーした。」
「だなあー。 連れてかないと、どんだけヒガむやらー。」
 
 
リオンがパンと手を打った。
「そうだ、良い考えがありまーす!
 別荘でコスプレパーティーをするんで-す。
 元殿にはゼノの格好をしてもらいましょーう。」
 
「ああー、確かにジジイはゼノ風味だよなー、ププッ。」
主は吹き出した。
 
「でも却下ー!
 この年でコスプレやらに手を出したら
 平穏な老後を迎えられん気がするー。」
 
「そうでーすねえ。
 コスプレ、結構な費用が掛かりまーすから
 私のような富豪じゃないと無理でーすよねえ。」
 
リオンの言葉の失礼さに気付かない主は
うんうん、そうそう、と同意した。
ある意味、純粋な人間なのかも知れない。
 
 
 続く 
 
 
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Comments

“かげふみ 35” への2件のフィードバック

  1. unaのアバター
    una

    あしゅちゃん昨日ツイッターで言ってた団子ってニョッキでしょ?

    私はニョッキはゴルゴンゾーラで食べるのがすきだなあ~。

    チーズ嫌いでなかったらおすすめ~。

    ってもう食べちゃいましたよね~。

    ニョッキは小麦粉とじゃがいもですぐ作れるんで、貧乏時には便利ですよお~。

  2. あしゅのアバター
    あしゅ

    unaちゃん、食った。
    ゲロ不味かった。

    確かに、じゃがいも原料のニョッキだと
    パッケージに書いてあった。
    そこで既にイヤな予感はしてたけど、案の定だった。

    小麦粉は水で練って
    じゃがいもは別個に単体で食う方が美味いと思う。
    何でこの2つをミックスしようと思ったんやら。

    ニョッキ、私にはなくても良い食い物だったよー。

    チーズは好きだけど
    ゴルゴンゾーラって、確かあれだよね?
    結構、強い味のチーズじゃん
    ちょっと苦手だな。

    私の好きなチーズは
    旧雪印のプロセスチーズだったけど
    カマンベールでも良いや。

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