「どういう経緯になっても、責任を取っての辞職は免れませーん。
私も市議会議員を辞職しまーす。」
リオンの言葉に、ダンディーが仰天した顔で 何っ? と叫んだ。
「だけど私はこの首を賭ける事で、この館を善だと全国に認識させ
かえす刀で現州知事を叩き切って、州知事に立候補しまーす。
民衆の支持を得られたら、名誉の回復もできまーす。」
「要するに、勝てば良いわけじゃよ。」
ジジイが続けた。
「ここにいるお歴々にそれが出来ないわけがない。」
ここまで言われて、逃げ腰になっている紳士たちではない。
「そうですね、まずは館に広報部を作りましょう。」
「よし、敏腕の広告マンを連れてこよう。」
「デザイナーたちも必要になってくるな。」
「グリスくん、きみは住人と村人の意思の統一を図ってくれ。」
「クリスタル新聞の社主には私が働きかけよう。」
「では私は、検事に根回しをしておこう。」
「わしは本を書くぞ!」
ジジイが叫んだ。
「一番の生き証人は、このわしじゃ。
全部を包み隠さず書き、館内部の罪をすべて背負う。
主の弔い合戦じゃ!!」
「その本は村と館のサイトで売って、収益は館に回してくださいね。」
ジジイの興奮に水を差すように、リリーが冷静に言う。
「もちろんじゃ。 年寄りに金は必要ない。
わしの財産も、死後はすべて館に寄与する。
グリス、おまえも主との回顧録を書くんじゃ。」
「は、はい。」
「では推敲も含めて、文章のプロも必要になりますね。」
「あ、それは私が新聞社に心当たりがあります。」
マデレンが手を上げた。
「きみには広報部に所属して、引き続き館にいてもらいたいんだが。」
メンバーの言葉に、マデレンは即答した。
「はい、喜んで。」
「それと、ネットも販売だけじゃなく
館自体のサイトが必要じゃないかね?」
「それは電気部でまかなえると思います。
詳しい者が何人もおりますので。」
リリーの言葉に、将軍がうなずいた。
「うむ、一気に外部から人員を補充すると
思想教育がおろそかになりうる。」
「これらの動きは、ひとつずつ密かに進めていきましょう。
敵に知られる前に、あらかたの準備をしておいて
アピールは小出しにして、国民に徐々に慣れさせていくべきです。」
「異議なし。」
「同意。」
長老会が久々に息を吹き返した。
主が死んで1年も経たないのに、再び戦いが始まろうとしていた。
館の歯車は、止まる事を知らないのか。
続く
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