継母伝説・二番目の恋 8

公爵家の娘の寝室は、王妃の部屋の隣になった。
公爵家の娘の寝室から、王妃の部屋へと内ドア続きになっていて
王妃の部屋からは王妃の寝室へと行ける。
 
王は時々、公爵家の娘の寝室へと入って行った。
そして王妃の寝室へと、こっそりと行くのである。
 
公爵家の娘に手を付けない、というのは
王と公爵家の娘とで、密かに取り決められた事。
それは、公爵家の娘を尊重すると共に
王妃への配慮でもあった。
 
 
普通なら、側室の子に王位継承権を与えるのを嫌う風潮も
今回ばかりは、風向きが違っている。
 
『あの田舎王妃はもう、しょうがない
 王の恋の相手として、遊んでいてもらおう』
 
よって国一番の大貴族である公爵家の、その娘を側室にしておいて
手を付けないなど、王として許されないのである。
 
この問題があるせいで、公爵家の娘と王妃の寝室を
内ドア続きにしたのであった。
王が公爵家の娘の元へも、通っているように見せかけるために。
 
 
しかし、そういう時間稼ぎも長くは続かない。
王と王妃の子供が男の子であれば、きっと大丈夫。
王妃を皆に受け入れられて貰い
自分もさっさと嫁いで、子を産まねば。
 
公爵家の娘にとっては、タイムリミット付きの
王妃の “教育係” の役目であった。
 
 
王妃はそんな事情を知らず
のんきに公爵家の娘と、本当に “遊ぼう” とする。
 
「あたしのお友達、あそこの丘の向こう、どうなってる?
 行ってみたい、連れて行ってほしい。」
 
 
王妃が “あたしのお友達” と言えば、公爵家の娘である。
その南国なまりの口調は、甘く優しく
まるで小鳥がさえずるような響きを持つ。
 
しかも王妃がそう呼ぶのは、自分だけである。
王妃の “友達” は、公爵家の娘ただひとり・・・。
 
 
 続く 
 
 
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