継母伝説・二番目の恋 13

王が寝室に入ってくる。
公爵家の娘は、お辞儀をして迎える。
 
召使いによって、ドアが静かに閉められた後
王は公爵家の娘の前を通り過ぎ
部屋の向こうのドアへと歩いて行く。
公爵家の娘も、顔も上げずにお辞儀をしたまま王を見送る。
 
 
王が隣室へと消えたのを見届けた後、公爵家の娘はベッドに入り
自分とランプを毛布で覆う。
明かりが漏れないように。
 
明日の会議は大事なのに
今日一日を、王妃に付き合ってムダにしてしまった。
 
あたくしは一応は教育は受けたとは言え
情勢は刻々と変わっている。
ひとりで隠れて学ぶのは大変だわ・・・。
 
 
あくびをしながらも、書類を読む。
ふと気が付いたら、外が薄ら明るくなっていた。
 
ああ・・・、マズい・・・、少しは寝ておかないと・・・。
公爵家の娘は、書類を隠しランプを消しベッドにもぐった。
 
 
「姫さま、姫さま」
召使いが声を掛ける。
「・・・もう起きる時間なの・・・?」
 
身支度のために鏡の前に座る。
髪も顔も手も足も、すべてそれぞれの専属係がいる。
公爵家の娘は、ただ立ったり座ったりするだけ。
 
「目の下のクマが気になるわ。
 もっと紅を。」
公爵家の娘の指示に、メイク係が筆を振るう。
 
「今日はお風呂でパックをさせていただけますか?
 お肌が少々お疲れのようですから。」
「ええ・・・、お願い。」
 
後ろでドレスや靴を持って控えている召使いたちが
クスクスと笑いながら、ヒソヒソと言う。
 
「寝不足でいらっしゃるのだわ。」
「姫さまはお綺麗な上に賢くてらっしゃるから
 王さまから寝せてもらえないのよ。」
 
 
聴こえているわよ・・・
あなたたちは単純で良いわね・・・
 
召使いの言葉で、公爵家の娘の心はいちいち動かない。
それが貴人というものだ、と育てられたからである。
 
だけど思った以上に宮廷は・・・
いえ、そんな事を考えていたらいけないわ。
あたくしは公爵家の娘なのですから。
 
 
公爵家の娘はスッと立ち上がり、足を踏み出した。
何も言わずとも、公爵家の娘の歩む方向のドアは次々に開いて行く。
 
だって、あたくしは公爵家の娘なのですから!
 
 
 続く 
 
 
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