継母伝説・二番目の恋 17

「あたしのお友達、ごめんなさい。」
王妃が公爵家の娘の腕に絡みつく。
まったく、何でこの子はこうやってベタベタまとわりついてくるのかしら?
 
公爵家の娘は、人に触られるのが嫌いであった。
身の回りの世話は召使いがするので、人の手には慣れているのだが
その手たちは仕事をしているだけで、“感情” は入っていない。
 
 
「何がですか? 王妃さま。」
公爵家の娘は、いつもの形だけの微笑みで訊いた。
 
「眠れるお茶、会議で寝せた。」
「えっ・・・?」
 
訊き返すも、王妃は腕にしがみついたまま黙り込んでしまった。
王妃と話す時は、いつも最大限の想像力を要求される。
頭をフル回転させて、公爵家の娘はようやく王妃の言葉を思い出した。
 
『このお茶、疲れを取る。 グッスリ眠れる。』
 
 
あのお茶!!!!!!
こ、このバカ娘はーーーーーーーーっっっ!!!
 
 
怒りに、また気絶しそうになったが、気を取り直した。
そうよね、このあたくしが居眠りするなどありえませんもの。
このバカ娘のお茶のせいだったのね。
 
意外なところで自信を取り戻した公爵家の娘は
今度は心からの笑みで、王妃に応えた。
 
「いいえ、確かに疲れが取れましたわ。
 王妃さまのお気遣いを、嬉しく思っておりますのよ。」
 
 
いつもなら、ここで王妃の顔がパアッとほころぶのだが
王妃はエヘヘと笑っただけだった。
 
公爵家の娘が、いぶかしむ。
腕に触れている王妃の頬が熱い。
 
「あら? 少しお熱がありますわね。」
王妃の額に手を当てて、公爵家の娘が慌てる。
 
「最近、ちょっと、寒い・・・。」
寒い?
暑かった夏がやっと終わって、ちょうど良い気候になってきたのに?
 
 
「誰かおらぬか!」
公爵家の娘は声を張り上げた。
すぐさま召使いが飛んでくる。
 
「王妃さまにお熱があるようだ。
 侍医を呼べ。」
 
王妃を連れて、寝室のベッドに寝せた。
医師の診断は、風邪であった。
 
ホッとする公爵家の娘。
ついでに王妃の使う部屋を見回る。
どの部屋も豪華だけど、生気がない。
 
 
自分の召使いを呼び付ける。
「おまえは王妃さまの衣装係の責任者になれ。
 おまえは王妃さまの私室を整える責任者、
 おまえは王妃さまのいらっしゃる部屋の暖房係
 おまえは王妃さまの体調チェックじゃ。」
 
「それでは姫さまのお世話をする者が減ります。」
召使い長の言葉に、事もなげに返す。
 
「あたくしの世話をする者など、いくらでもおる。
 それより、良いか?
 暑い国からいらっしゃった王妃さまに
 『寒い』 と仰らせたら、おまえたちの首がなくなると思え。」
 
この脅しに、召使いたちは震え上がった。
公爵家の娘がその気になったら、この場の全員の首をはねる事が出来る。
さしたる理由など必要とせずに。
 
 
王妃さま付きの召使いたちは無能だから・・・
 
公爵家の娘は、王妃が王妃として君臨する前に
シビレを切らせてしまった。
 
 
 続く 
 
 
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