継母伝説・二番目の恋 42

南国の食材が届いた。
南国人の料理人も、城へとやってきた。
 
レシピだけじゃなく、料理人まで寄越すとは
ウォルカーも、中々気が利いているわね。
公爵家の娘は、ご満悦であった。
これで王妃も精をつけてくれるはず。
 
 
ところが、王妃は南国料理に喜びはしたものの、食が進まない。
元からいる、城の料理長の面目は潰れなかったが
調理場がスパイス臭くなって、怒り心頭である。
 
「どういう事なの?
 地方によって味付けが違うとかではないの?」
怒る公爵家の娘に、駆けつけたウォルカーは弁明をした。
「いいえ、あの料理人は南国の宮廷にいた者なのです。
 王妃さまにとっては慣れ親しんだ味のはず。」
 
「どういう事かしら・・・。」
わけがわからず、イラ立って歩き回る公爵家の娘に
他に方法がないか、ケルスートに相談してくる
と約束をして、ウォルカーは急ぎ立ち去った。
 
 
公爵家の娘は、王妃の部屋を訪れた。
身篭った王妃は、世界で一番大切にされる。
 
あの薄汚かった部屋も、今ではピカピカに磨かれ、暖房も利き
居心地の良い、清潔で明るい雰囲気になっている。
よし、皆、ちゃんと仕事をしているようね。
 
チェルニ男爵領から来た召使いたちは、実によく働いた。
田舎から出てきた “新参者” として
古株の召使いたちを立て、異国の王妃にも敬意を払っている。
 
さすがチェルニ男爵が選んだ者たち、抜かりがないわ
公爵家の娘は、そこでも少しチェルニ男爵に敗北感を味わっていた。
 
 
厚いひざ掛けをして、フカフカのソファーに緊張して座る王妃に
公爵家の娘は優しく語りかけた。
「王妃さま、何か不自由はございませんか?」
王妃はただ首を横に振る。
 
「お食べになりたいものは?
 暖かい部屋での氷菓子など、美味しいですわよ。」
王妃はただ首を横に振るだけ。
 
公爵家の娘は、そのオドオドした様子に
溜め息を付かないように意識した。
「そうですの・・・。
 何でもいつでも仰ってくださいね。」
 
公爵家の娘は、部屋を出る時に、見送る召使いにコソッと命じた。
「何かあったら、夜中でも連絡を。」
はい、と召使いはお辞儀をした。
 
 
王妃付きの召使いたちには、王妃のこの態度の理由がわかっていた。
公爵家の娘はすっかり忘れていたが、召使いの処刑事件である。
 
懇意になった、公爵家の娘付きの召使いたちから
その話を聞いていたのである。
 
王妃は公爵家の娘を恐がっている、と召使いたちは思っていたが
王妃が恐かったのは、自分のせいで人が死ぬ事であった。
 
 
 続く 
 
 
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