(ピンポーン)
・・・・・・・・・・・・
(ピンポーン ピポピポピポピンポーン)
ウメ 「えっ・・・?」
ヨネ 「ちゃ、何ね? 『えっ・・・?』 ちゃ。」
ウメ 「おめえが元旦早々うちに来る、ち言うか、外に出たとか、どしたとね?
天の岩戸でん開いたとね?」
ヨネ 「うちゃ、なにもんね?」
ウメ 「神さん扱いしてやっとっとだけん、よかろうも。」
ヨネ 「こん、元日のひとけのない住宅街の玄関先で
いつまで老婆2人の、つまらん漫才を続けなんとね?
今はロシアからプーチン級の冬将軍が攻めて来とる季節じゃが
寒さが足腰に来る年寄りが立ち話ちゃ
日本の国防もまだまだ若いもんにゃあ任せられん、て話ね?」
ウメ 「友人の思いがけない奇襲に驚いたら
いきなり話が憲法第9条に飛ぶとは、重ねてビックリたい。」
ヨネ 「そこまで飛んじゃおらんけど、挑むとなら
どこぞの国のミサイルのような人工衛星よりも
遥か彼方に飛ばしてやんよ。」
ウメ 「・・・元旦早々、機嫌が悪かね・・・。」
ヨネ 「ああ、暖かかー。
ようやく家の中に入れてもらえたのね、お祖母さん。」
ウメ 「マッチ売りの少女のマネはやめてくれんね。
おめえ、“元旦にした事はその1年しなきゃいけなくなる”
という迷信ば知らんとね?
おめえの1年、貧乏芝居の連続になっよ?」
ヨネ 「だから、ここにやってまいりました。」
ウメ 「何ね? 何かあったとね?」
ヨネ 「先に言うとくけど、“元旦” ちゃ1月1日の初日の出の時を言うとばい。
おめえ、さっきっから元旦連呼しとるが、今、午前9時。」
ウメ 「今はもう、1月1日を漠然と元旦ていう風潮たい。
そぎゃん礼儀作法に厳しかとなら
1月1日の午前9時に、突撃!人んちの朝ご飯! を
リアルでしとるとが、どぎゃん無作法かわかっとるとだろね。」
ヨネ 「わかっとって、しとる!」
ウメ 「・・・いさぎよかね。」
ヨネ 「おめえは天涯孤独老人だけん、わからんだろうばってん・・・」
ウメ 「とりあえず親族はおるけんね!」
ヨネ 「遠くの親戚より近くの他人たい。」
ウメ 「え? 耳が遠くなって、よく聞こえんかったばってん
アポなし突撃の可能性がほぼない遠くの親戚より
まだ人が寝とる朝9時に、いわれのないインネンを付けに来る
近所の友人の方がどれだけ悪質か、ていう話だったとね?」
ヨネ 「おめえは多少は親戚も残っとる孤独老人じゃけん、わからんだろうけんど
子がおると孫がおる。
孫がひとりおると、その友達が数人おる。
日本の正月というのは、そいつらが
バイオハザードのゾンビのように徘徊しとる日なわけたい。」
ウメ 「何事もなく話を再開するのが気に食わんけど
廊下に出るのが面倒かけん、コタツに座ったままで良いね?
『話はすべて聞かせてもらった!』」
ヨネ 「いんや、まだ話し足りん!
何で日本にハロウィンが定着せんか、わかったたい。
“トリック&トリート” は、言うても菓子じゃろ?
さすが食玩だけ取って、菓子本体を捨てる日本のガキどんたい。
菓子なんぞ眼中なしだけん、現ナマをせびりに来よるとよ!
こりゃもう、ハロウィンが引ったくりなら、お年玉は強奪たい!」
ウメ 「でん、うちらもガキん頃は、そん恩恵に預かったろたい。
そうやって和の風習が続いて行くと思えば・・・」
ヨネ 「甘い! 甘すぎったい!!!!!!」
ウメ 「・・・おめえ、元日の朝9時にエキサイトし過ぎて
よそんちで脳溢血で死ぬ、という
それ以上に縁起の悪か事はなか、て事ばしでかさんでよ?」
ヨネ 「今んガキは、親のしつけがなっとらんとが多くて
ポチ袋を貰ったら、その場で開けて
『これじゃ中古ソフトも買えん』 て言うとよ!
スペランカーなら買えとる金額をやっとるとに!」
(注: スペランカーとは、横スクロールのアクションゲームだが
1mぐらい落ちただけで死ぬ、ゲーム界最弱の主人公で
栄えあるファミコン部門のクソゲー代表的存在である。)
(と、2013年1発目に検索した単語が “スペランカー” とは
今年のあしゅも、絶不調のフラグが立ってしもうたに違いない。)
ウメ 「ファミコンのソフトを買うてどうするか訊きたかけど
謎は全て解けた!頭脳は子供体は大人! それぞ、The痴呆!」
ヨネ 「正月から縁起の悪か話ば、せんで!」
ウメ 「始めたとは、おめえばってん
うちらの地雷は同じところに埋まっとるようじゃね。」
ヨネ 「ま、大体のあらすじは、そういうこったい。
大抵の子は親がちゃんとしつけてて、お年玉回収業務もせんし
貰うたら、お礼ば言うて親に預けるけん
お年玉ゾンビは一部のバカガキじゃけんどんね。」
ウメ 「特におめんとこの孫世代のバカ連中は、唯我独尊が激しかろうね。」
ヨネ 「名前で親がバカかどうか一発でわかるけん、逆に便利たい。」
ウメ 「バカ証明ネームて気付いとらんとこが、バカのバカたる所以たいね。」
ヨネ 「おめえ、それ、今の義務教育の施設前で言うたら
“子供に危害を加えかねない危険人物” として
学校、親、警察の連携プレイによって包囲さるっよ。」
ウメ 「道ば訊いただけで、こっちが職質される時代じゃしね。」
ヨネ 「テロリストとか女の方が残虐て言うけんねえ。」
ウメ 「テロリストで思い出したけんどん、茶ぁば淹れてくれんね。」
ヨネ 「何でテロで茶を思い出すとね?」
ウメ 「おめえとの飲食の話はピリカラで洗脳されとっとよ。」
ヨネ 「・・・胃腸の調子が悪くなる秘孔を突かれた気分たい。」
ウメ 「あたたたたああああっ おめえはもう患っとる・・・。」
ヨネ 「・・・茶ぁ淹れろて、ここはおめえんちばってん・・・。」
ウメ 「こん、シーツのマス目のついた顔が目に入らんとね?
うちゃ、おめえのピンポンで起きたとばい。
そんで、いきなり “祖母としてのグチ” を聞かされとっとだけん
目覚めの茶ぁぐらい淹れてもろうてん、バチは当たらんだろうもん。」
ヨネ 「その前に忠告させんね。
肌の弾力がなくなったら、寝具は平らな布一択ばい!」
ウメ 「それはわかっとるけんどん
チヨさんプレゼンツのシビラじゃし・・・。」
ヨネ 「チヨさんもさぞかし寝起きは
全身、地下鉄の路線図のようになっとらすだろね。」
ウメ 「あ、うちゃ、雑煮の餅は絶対に焼く派だけん!」
ヨネ 「はいはい、うちが茶を淹れて、おめえがそれを飲んどる間に
雑煮まで作れ、ていう話に発展したのが一瞬でわかったたい。
長い付き合い、っちゅうのもイヤなもんたいね。」
ウメ 「口を動かしてもよかけど、手を遊ばせとかんでほしかだけよ。」
ヨネ 「おめえほど人遣いが荒いヤツも知らんわ。
チヨさんでちゃ、案外世話焼きじゃしね。」
ウメ 「女社会の受け攻めたい。」
ヨネ 「・・・・・ま、それはあるかも知れん・・・。」
ウメ 「ああ・・・、静かな、よか正月じゃねえ。
ボケた友人のチャイム連打で起こされんけりゃね。」
ヨネ 「おめえはそう言うばってん、正月の町の地球滅亡感て凄かよ。
まるでこの世から自分以外のすべての人間が消えたような恐怖・・・。」
ウメ 「と、元日早々他人の家をピンポンダッシュして回ったYさんは
老婆とは思えない脚力で逃げ回り、身柄を確保された後は
『皆、存在している?』『マヤは成就したのか?』 などと
わけのわからない事を口走っており
今年も一年、この調子で時が進んでいくのでありました。」
ヨネ 「来年もまた、こうやって過ごせたらよかね。」
ウメ 「来年もバカガキにカツアゲされて逃げ回りたか、てね?」
ヨネ 「・・・・・・・・・・・」
ウメ 「わかっとるたい!
でも1月1日に来年の話をせんでくれんね。
うちの父親が隠居してから、毎年毎年そういう事を言い始めて
案の定、数年でポックリたい。
あんだけ来年過ぎる事ば言われ続けて
来年の事を聞くと笑う系鬼も
笑い過ぎて息が出来んで、一緒に死んどる気がするばい。」
ヨネ 「鬼殉死の最期ちゃ、さすがおめえのとうちゃんたいね。」
ウメ 「てか、うちらも今そうなっとっとよ。」
ヨネ 「うん、でも鳥の鳴き声とか、久しぶりに聞いた気がするたい。」
ウメ 「・・・・・・そうじゃね。
来年はおせちも持って来なっせね。」
ヨネ 「そうじゃね。 お屠蘇ぐらいは用意しときなっせよ。」
ウメ 「薬局で粉買っときゃよかろ?」
ヨネ 「ここんちは、お屠蘇の道具もなかとね?」
ウメ 「あると思われとるとがビックリじゃわ。」
ヨネ 「・・・じゃね・・・。」
ウメ 「・・・じゃろ?」
ヨネ 「おっと、大事な言葉を忘れちゃいけんがね。」
ウメ 「親しき仲にも礼儀あり、ちゅうしね。」
ヨネ 「さんざん無礼な事ばして、言葉だけはいっちょまえじゃけんど
言うのはタダじゃしね。」
ウメ 「おめえん腹ん中、真っ黒じゃね。」
ヨネ 「いいけん、とにかく早よ行事ば終わらせるよ!」
ウメ・ヨネ 「明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。」
評価: Sybilla
コメント:これは多分、平ら系布地。 ババアは寝ジワが3時間は取れないので、寝相と寝具の布質にはこだわるべし! でも大丈夫、たとえ顔に山手線ができても、マスクという強い味方がいらっしゃいます。 顔下半分だけの味方だけど・・・。 |
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