黒雪姫の王位継承権獲得の儀は、滞りなく終わった。
念のために、ティレー伯爵夫人に行儀見習いに出して良かったわ。
公爵家の娘は、ホッと一息ついた。
黒雪姫には、あらゆる分野の専門家を家庭教師につけた。
貴婦人としてのマナーは、今後もティレー夫人が教える。
今度こそ、あの子には “統治者” になって貰わないと!
似てはいないのに、言動も見た目も
思い出を呼び覚ます部分はひとつもないのに
公爵家の娘は、あの少女に対する気持ちを取り戻しそうになっていた。
公爵家の娘の動揺のきっかけは、またしてもベイエル伯爵。
“勉強” として、会議にも黒雪姫を伴う公爵家の娘。
「おや、ご側室・・・いえ、お妃さま
王妃となられた今でも、王さまの隣には座れないのですかな。」
イヤな含み笑いで、ベイエル伯爵がくだらない煽りをしてくる。
王と公爵家の娘の間に、黒雪姫を座らせているのは
双方から教えられるように、との公爵家の娘の配慮である。
「そうしていらっしゃると、まるであのお方が甦ったようですな。
外見は全然似ていらっしゃらないようですが
頭の中身がそっくりだそうですな。
いや、これはひとりごと、お気になさらず、ふっふっふ」
公爵家の娘は、黒雪姫に教えるように言った。
「良いですか、黒雪。
臣下にはバカな事しか言わない者が、これから出てくるかも知れませんが
あなたはトップに立つ身ですから、そういうたわごとを相手にして
自身を貶める必要はどこにもないのですよ。」
黒雪姫は、他意なく訊く。
「では、無礼な臣下はどうすれば良いのですか?」
「どうもしなくて良いのですよ。」
公爵家の娘が、無表情で答える。
「ただ、その者が失態を冒した時に
一切の容赦をせねば良いだけです。」
その会話が聞こえていた者の全員が、青ざめ
ベイエル伯爵は、こわばった表情で席を立った。
雉 (きじ) も鳴かずば撃たれまいに、何故あやつはああなのかしら
公爵家の娘は目で追いもせずに、黒雪姫をかまうフリをした。
黒雪姫は無邪気に言う。
「お継母さまは鬼ですか?」
公爵家の娘は、さすがに頬を引きつらせた。
周囲の空気が瞬間冷却される。
そこに王がやってくる。
「おうおう、そなたらは本当の母子のように仲が良いのお。」
周囲の全員が心の中で叫んだ。
誰かひとりだけで良いから、空気が読める人をーーーっっっ!
続く
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継母伝説・二番目の恋 70
Comments
“継母伝説・二番目の恋 70” への2件のフィードバック
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あしゅさん、最高!
王妃様、素敵! -
70ちゃん、ありがとうーーーっ!
しかも今日、病魔が暴れる月曜日だったのが
テンション上がって、すっげえ感謝だよー。公爵家の娘には、黒雪シリーズでは
ずっと頑張ってもらう予定だよー。
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