失われた面子を取り戻そうと、大神官長がしきりに
“正式な結婚式” を言ってくる。
王にとっては2度目の式だし、あたくしも後妻なのだから
そう仰々しくは、したくないのよね・・・
しかし大神官長は諦めない。
「“縁起” というものも、ございますぞ。」
その内に、王も何となくはしゃいできて
盛大な式を、とか言い出しそうな雰囲気になった。
「よろしいじゃありませんの。
王さまも、お妃さまとお式をなさりたいのですわよ。」
「お妃さまのウェディングドレス姿は
さぞ、おきれいでしょうから、国中の皆が見たがってますわ。」
周囲のそういう言葉も、何となく空しく聞こえる。
あの人の立っていた場所に、あたくしが立ち
あの人の指を飾っていた指輪を、あたくしが身に着けるなんて・・・。
公爵家の娘は、その考えを “後ろめたい” 気持ちだと解釈した。
でも大貴族の娘である自分が、何に対して引け目を感じなくてはならないのか
そもそも “そこ” の席は、本来ならあたくしのものなのに。
・・・・・・・怒り・・・・・・・
公爵家の娘が飛び起きたのは、まだ真夜中であった。
体中にビッショリと汗をかいている。
恐い夢を見たようだけど、よく覚えていない。
公爵家の娘は、悪寒を振り払うかのように
寝巻きの衿を両手で寄せる。
空では痩せ細った月が、弱々しい光を放っている。
もうすぐ新月ね
月のない闇・・・。
公爵家の娘は、正体のわからない不安がもたげてくるのを感じ
それを打ち消そうと、サイドテーブルのグラスの水をあおった。
大丈夫、そういう時にはいつもよりも星が瞬くから
きっと華やかな星空になるわ
公爵家の娘は、窓に背を向けて布団をかぶったが
その夜は、もう眠りに落ちる事は出来なかった。
続く
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