たった一度の失敗が
人生を狂わす最大の敗北になる
飛び起きたベッドの上で、公爵家の娘は波打つ鼓動に胸を押さえた。
恐い夢・・・? を、見た・・・?
幸いにも今夜はひとり寝である。
悪夢にうなされているなど、王に知られたら失礼に当たるわ
公爵家の娘は、王がいない事を “良かった” と感じた。
が、逆かも知れない。
王がいないからこそ、恐い夢を見る可能性は?
いつも汗ビッショリで飛び起きるのだが
どんな夢だったのかは、さっぱり覚えていない。
だけど・・・、嫌だわ・・・
よく眠れる薬を、ああ、だめだわ
懐妊するかも知れない身で、薬は飲みたくない。
それ以前に、うなされている事を誰にも知られたくない。
公爵家の娘は、分かれ道を
ことごとく間違った方へと歩いて行く自分に気付かない。
最近、王は宮殿の増設に向けて、忙しく動き回っている。
「本当はそなたをひとりで寝せたくはないのだが
疲れていてな、すまぬ・・・。」
「いいえ、あたくしの方は大丈夫ですわ。
王さまこそ、ゆっくりお休みくださいませ。」
軽く口付けをして、自室へと戻る王を
微笑みながら見送る公爵家の娘。
一緒にいて のひとことが 何故 言 え な い ?
公爵家の娘は、汗に濡れた顔を両手で覆い
ベッドの上でうずくまる。
だって、あたくしが男爵領の援助をせびらなければ
城は新築されていたのですもの。
この上に “寂しい” などと
寂しい?
あたくしがここにいるのは間違っているのかしら?
何故、毎晩うなされるの?
風がヒョオオオオと鳴きながら、丘を渡って行く。
真夜中の木々は、風に揺らされ化け物へと化す。
公爵家の娘は、今まで感じた事がない闇への恐怖に
思わず助けを呼んだ。
「ファフェイ!」
・・・・・・・・・・・
天井に伸ばした手を、ゆっくりと下ろす。
そうだった・・・、ファフェイは出掛けている・・・。
いえ、あたくしには味方がたくさんいる。
王さまは言えば来てくれる。
お父さまも来てくれる。
チェルニ男爵もウォルカーも、あたくしが呼べば駆けつけてくれる。
・・・なのに何故、今ひとりなの?
何故こんなにも孤独なの?
公爵家の娘は、布団をかぶって泣き喚いた。
嗚咽はこの風が消してくれる。
が、あの時の手はもうない。
続く
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