継母伝説・二番目の恋 76

 誰がいようが たったひとりがいないなら
 
 それが  孤 独 
 
 
公爵家の娘は、自分の異変に気付いていた。
これは、何の実にもならない気鬱よ
冷静にそう判断したのはいいが
原因がわからないので、解決には至らない。
 
パーティーの人々の輪の中心で、公爵家の娘は笑顔を振りまきながらも
自分の体がどんどん、孤独の沼に沈んで行くような錯覚に陥っていた。
 
誰か・・・・・!!!!!
 
 
_____________
 
その視線に気付いた瞬間、世界が真っ暗になる。
華やかな人々は透明になり、かすかに輪郭だけが浮かび
パーティー会場の喧騒が、遠くでワンワンと反響する。
 
この中に2人だけ、黒い髪に黒い瞳の
 
・・・・・・地黒のゴリ姫!
 
 
何故あの子が・・・?
黒雪姫は、怪訝そうにこっちを見ている。
鮮やかなピンクの可愛らしいドレスが、まったく似合っていない。
 
・・・誰なの? あのような装いをさせたのは。
あの子には黄色系を着せないと・・・。
 
 
公爵家の娘が苦々しく思ったその瞬間
人々の笑顔と音楽がブワッと沸き上がった。
 
世界が元に戻ったのだ。
 
公爵家の娘は黒雪姫を目で探したが、もういなかった。
 
 
公爵家の娘は、分かれ道を
ことごとく間違った方へと歩いて行く自分に気付かない。
 
毎晩毎晩うなされる。
次第に元気もなくなってくる。
望まれて戻ってきたのに、まるで拒絶されているかのように
居心地が悪くてしょうがない。
 
 
あたくしは、ここにいるべきではないのかしら・・・
ふと一瞬、よぎった弱気に身震いがした。
 
どこにいても何をしていても
あたくしは国一番の大貴族である、公爵家の娘だったのに!
そのあたくしが居場所に困るなぞ!!!
 
・・・だけど、公爵家の娘もいまや “お妃さま”
しかも後妻で継母である。
身分は上がってるのに、言い様もない虚無感に囚われる。
 
 
公爵家の娘は、屋上でぼんやりと山を眺めていた。
なだらかな輪郭の、穏やかな山。
記憶の底の底に封じ込めていた何かが、少し動く。
 
その感覚が不安で、背けた目の端にキラリと光るものがあった。
何気なく、その方向を見る。
あれは・・・、幼い頃に王と探検した塔・・・。
 
 
公爵家の娘は、最後の間違った一歩を踏み出した。
 
 
 続く 
 
 
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