日本の消費者は特異性がある。
どういう部分がかというと
・ 安い物を信じない
・ パッケージの精密さにこだわる
この2点において、世界でも特殊な感覚を持っていると思う。
もちろん私もそうである。
海外ブランドの化粧品の輸入品は買わない。
名立たるブランドであっても、海外で売られているのは容器が違う。
たとえばアイシャドウを例に取れば
海外の物は、中の金属型と容器の間にザツな隙間がある。
容器にキッチリと色が並んでなく、歪んでいるのなど許せない。
ビチッとはめろよ! と、イラ立ってしまう。
男性だって、車のボディにわずかな波うちがあったら許せないだろう?
計算された “崩し” じゃないと、受け入れられないだろう?
これが日本人の特性なのだ。
遊び心がないっちゃあないが、この緻密さが
ジャパンブランドを支えてきた、重要な個性なのだ。
“安い物を信じない” というのは、今は転換期の真っ最中で
化粧品業界においては、質に見合った値段か、という
しごく真っ当な方向に消費者が知恵を付け始めている。
だから今、新たに日本進出を図る化粧品ブランドは
動向が掴めず、苦労しているはず。
では、ちょい前までの “高い物ほど良い” という風潮だった頃の
化粧品の値段は誰が決めたのか?
それは他ならぬ日本の化粧品会社である。
と言うか、今でも化粧品の日本における “適正価格” は
日本の大企業が作り出している、と私は考える。
現代は海外ブランドが幅を利かせているように見えるが
「皮膚に直接つける物は、やはり日本製」 という感覚が根強い。
色物などは海外品も遊びで使うけど、慎重な日本人の性質上
やはり化粧品においては、国内ブランドは不動の地位にあるのだ。
そして堅実な日本人は、「皮膚に直接つけるものは良い物を」
と考えるので、ある程度の値段が必要になってくるのである。
この “ある程度” という計算が、実に難しく
良心的な価格で発売された化粧品がさっぱり売れず
数倍の値段に上げたところバカ売れした、という逸話もある。
日本人の “良い物” という言葉の意味は
・ 値段に見合った品質
・ 値段の割には良い品質
・ 持つ事で自分の格が上がるブランド
この3つが、その時々、分野、時代によって目まぐるしく変わる。
この動きを素早く察知し、また操れるのは
化粧品業界では、日本の大手メーカーなのである。
海外でブランド品を漁る日本人のイメージが強いせいか
外国ブランドが日本進出をする時には、必ず “格” を目指す。
それは服飾関係ではアリだが、化粧品の場合は甘い目論見である。
何故なら、日本メーカーが堅強だからである。
日本と付き合いの長いアメリカは、さすがそのへんをわかっていて
日本メーカーとの比較で、ちょうど良い位置に鎮座するが
他の地域のブランドは、日本の化粧品企業と提携していない場合
すげえヘマをやらかす事が多い。
単なるブランド好きな国だとナメてかかって
撤退を余儀なくされたブランドも数多い。
たとえば、あるヨーロッパのブランドは
自国ではドラッグストアで売られているのに
日本では一流ヅラをしようとして、数年で完敗した。
当たり前だ。
カネボウで言えば、KATEクラス (1000円代) なのに
ルナソルの値段 (3~5000円) で売り出したんだから。
日本人女性は、お手入れもメイクもきっちりし
各アイテムを全揃えする几帳面さと、経済力を持っているので
日本で当たればデカい、と皮算用をするだろうが
それだけ熱心だからこそ、情報収集もハンパじゃねえんだよ!
おめえんとこの名前も、日本に入る前から知ってたよ。
日本での値段設定を聞いた時に、誰もが 「アホか!」 と思ったさ。
他にも、これはボッタクリすぎだろうー、というブランドもあるが
それは消費者の意識が変化する前に日本上陸を果たし
定着できたブランドばかりである。
それでも、以前より支持はされなくなっている傾向にある。
今後、日本に新規参入するブランドは
かなり調査をしないと苦戦する事は間違いない。
何故これを今書いているかというと
物価高騰で化粧品の値段も上がり始めているからだ。
日本メーカーは、もちろん癇に障らないやり方をし
長年定着している海外ブランドも、さすがにソツがないが
ロコツな値上げをして、ステージLVUP便乗を企んでいる
としか思えないブランドもチラホラ見受けられるのだ。
日本の化粧品マニアをあなどったら、痛い目に遭うと思うのだが
それとも、“一見さん” を一通りこなして儲けて終るつもりだろうか?
今回の物価高騰は、生活上困りものではあるが
色んなブランドの色んな下心が垣間見えて、とても興味深くもある。
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