小人たちが忙しくお使いに出ているというのに
黒雪姫は庭でノンビリと、落ち葉焚きをしていた。
切り株に大股開きで座り、枝で火を突付く姿はとても男らしい。
あたりには良い匂いが漂っている。
黒雪姫は枝で炎をかき分けて
サツマイモをぶっ刺して取り出した。
焚き火と言ったら、やっぱこれよねー
アチッアチッとお手玉をしながら、イモを2つに割る。
「おんや、美味しそうな匂いだねえ。
ヒェッヒェッヒェッ」
声がした方向を見ると、杖をついた老婆が立っていた。
渋々とは思えないほどの、見事な成りきりである。
継母は、“女は女優” を真に受けていた。
その姿を見ながらも、無言でイモにかじりつく黒雪姫に
老婆が手提げかごからリンゴを1個取り出して、提案した。
「そのイモをこれと交換してくれないかねえ?」
「イモ、1個しか焼いてないのよ。」
まったく、このバカ娘は相変わらず根性悪だね!
黒雪姫のそっけない返事に、脳血管をビキビキさせながらも言う。
「ほれ、そっちの半分で良いからさ。
こっちはリンゴを丸ごとあげるよ。
どうだい、悪い取り引きじゃないだろう?」
「・・・何か、えらい説得してるようだけど
そんなにイモが食いたいなら、恵んであげますわよ。
育ちが良いから、意地汚くないですしね。」
黒雪姫は老婆にイモの半分をポーンと投げた。
「・・・ありがとさんよ。(ムカムカ)
じゃあ、このリンゴを・・・」
「リンゴ、いらなーい。」
「えっ、リンゴ、好きじゃないんかい?」
「うん、別にどーでもいい存在ってやつ?」
おかしいわね、王国便りのプロフィールに載ってたのに・・・。
継母がどうしたものかと思案していたら、黒雪姫がムセ始めた。
ハンター・チャーーーンス!!!
継母は、瞬時に黒雪姫の側に走り寄り
とんでもない火事場のバカ力を出して
グシャッとリンゴを握り潰した。
フリッツ・フォン・エリックの先祖かも知れない。
「ああ、ほら、炭水化物系をガッつくから!
このリンゴをお食べ!
水分たっぷりで喉のつかえが取れるよ!!」
「あっ・・・!」
黒雪姫が何かを言おうとした瞬間
継母が黒雪姫の口にリンゴを押し込んだ。
「ゲホッゴホッ」
喉をかきむしってのたうち回る黒雪姫の顔色が
みるみる真っ青になっていく。
数秒後、前のめりにズシーンと地面に倒れる黒雪姫に向かって
拳銃バキューン 銃口の煙フッ の仕草をしながら、継母が言った。
「ジ・エンド」
恥ずかしいほど古い女である。
続く
関連記事 : 黒雪姫 11 10.8.10
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カテゴリー 小説・黒雪姫シリーズ
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黒雪姫 1 10.7.5
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Comments
“黒雪姫 12” への6件のフィードバック
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ここのところ忙しくてなかなかゆっくり読めずにいなので…まとめて読ませて頂きました!!!
サイコーですねwww
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落ち葉といい芋といい林檎といい、
季節感満載の小道具がGood!*
暦の上ではもう秋ですね~。最後の数行のおかげで脳内で
007のテーマが絶賛リフレイン中です。
お義母様、バキューンってw -
黒雪姫11のコメント欄、気が付かない内にえらい事になっていて変な汗が出ました。笑
恥ずかしいほど古い女の一文で一気に汗だくですwww -
のん、お盆に忙しいとは・・・
おめえ、霊だろ!私、ナスやきゅうりに爪楊枝を刺すあれ
実際に見た事が1度もないんだけど
どこの地域でやってるんかなあ。miu、やーめーれーーーーーっ!!!!!
これでもう、私の脳内からも007が止まらない・・・。
あああああああああ椿、きっとおめえは嫌がるとわかっていたよ。
でもどうしても言いたかったんだ・・・。
ほんとすいません。のんを霊呼ばわりしたまま放置!w
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Mなんで放置プレーとか嬉しいですw
サービス業なんでお盆は忙しいんですぅぅ(泣)
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Mだったんか!
私も自分で自分を規律や常識で縛るのが好きだから
Mだと思うんだけど
考えようによっちゃ、Sかも知れないんだよな。SとMの定義、難しいよな。
なるほど、サービス業なら連休等は大変だよな。
でもお盆って、暦上では祝祭日ではないよな。
今年は日曜に掛かったけどさ。
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