投稿者: あしゅ

  • ときめきはいらない

    お勧めされた恋愛マンガは結局、挫折した。
    (関連記事: ティーンズ・ラブ 11.5.23 コメント欄
    でも試そうとしたのは、無駄ではなかった。
    私が恋愛体質じゃない理由がわかったから。
     
    少女マンガを勧めてくれて、ありがとう。
    今更ながら、自分の一面を直視できたよ。
     
     
    ここに来てくれている、やりたい盛りの男性が
    ここにはエロを期待していない、と言い放ってくれた。
     
    やりたい盛りの男性にそう言われるほど、ここの湿度は低い。
    もう、カラッカラのカッピカピ。
    やりたい盛りの男性もいるというのに
    エロいっちょ披露できん程、私の恋愛濃度は低い。
     
    やりたい盛り、やりたい盛りって
    その男性が何歳か知りもせずに、決め付けてるだけだけど
    男性って12歳ぐらいから71歳ぐらいまでは、やりたい盛りだよな?
    (私周囲基準)
     
     
    とにかく、私は恋愛が得意じゃないんだ。
    そういう私に恋愛スイッチが入るじゃん。
    そこで初めて、相手を意識し始めるんだけど
    そっからが地獄なんだよーーー。
     
    普通のノーマルな付き合いってさ、デートを重ねるわけだろ。
    茶ぁ飲んだり、飯食ったり、酒飲んだり、
    ドライブ行ったり、行楽に行ったり。
     
    んで、そういう工程の合間合間に
    ジワジワと接近遭遇せにゃならんのだろ?
     
    ああああああああああああああああああああっっっ!!!!!
     
     
    緊張すると、吐き気がしたり、腹が痛くなったりしねえ?
    どんな映画でも、たとえ推理物でも
    あらかじめあらすじを知っておかないと、安心して楽しめない私に
    付き合い始めのドキドキが耐えられるわけがねえじゃん。
     
    見つめられると、緊張してイライラしてくるし
    手を握られたら、緊張して汗ダラダラだし
    そういうのを想像するだけで、何か吐き気がしてくるんだよ。
     
    なあ、私たち付き合ってるんだろ?
    だったら、いずれセックスもするんだろ?
    だったらもう、とっとと済ませとこうよ!!!
     
     
    ・・・これを言うと、ほとんどの女性からはビッチ扱いをされ
    男性からは、萎える、手軽な女、と罵倒され
    人間としての偏差値を、ものすごく下げられるけど
    おめえら、あの、隣で隙を伺うオーラバトルが、よくできるよな。
     
    “それが恋愛の醍醐味” とか言うけど
    緊張すると、飯が食えなくなるし
    腸にガスが溜まりやすくなるけど
    気軽に屁もコケん時期なんで、我慢で腹がキリキリ痛くなるんだ。
     
    痩せるわ、腹痛にさいなまれるわで
    こっちは心のドキドキが、ダイレクトに健康被害に繋がるんだよ!
     
     
    だから恋愛でドキドキしたいのなら
    物陰でひとりで思う存分やってから、私に告白してくれ。
    大丈夫、そういう “想い” に気付く私じゃねえから。
    じゃないと、違う意味でドキドキさせかねん。
     
    プレステなんか、窓を開けて頭上に掲げるまでいったし
    パソコンとか、時々キーボードで滅多打ちしたくなるし
    携帯も叩き付ける寸前までいったんだから
    あまり追い詰めると、自爆装置を作動させてしまうぞーーーっ。
     
     
    私は純情なんじゃなく、プレッシャーに弱いんだ。
    恋愛に限らず、“人が自分にする期待” ってつらいじゃん。
     
    そんなん、一緒にする事じゃないのかも知れんけど
    私にそういう緊張感は無理! と気付いたよ。
    と言うか、いらん過去を思い出してブルーになったさ。
     
     
    恋愛マンガで、指が触れて頬を赤らめる等
    読んでいるこっちにまで、その緊張が移って
    胃が悪くなるんだよー。
     
    のたうち回って、読破は無理だった・・・。
    映画とかでは、ひたすら冷徹に流し見するけど
    2次元だと、つい感情移入してしまうんで
    自分のこの弱点に気付けたんだなあ。
     
    やっぱり人の助言なしに、自分を見直す事は難しいよな。
    少女恋愛マンガとか、自分じゃ絶対に手に取らないもんな。
     
     
    ・・・えーと、何も1mmも解決していないけど
    意外な部分で、すっごくタメになったんで
    ほんと皆には感謝だ、ありがとうー。
     
     

    評価:

    小林製薬


    ¥ 1,534

    (2007-04-16)

    コメント:色恋沙汰を諦めたそこのあなた、はい、ドーピング! 豆乳を飲み飽きたそこのあなたにも、豆腐はもう腹いっぱいなそこのあなたにも、レッツ・ドーピング! 努力などせずとも結果を出せば良いのよ、ふふふ。

  • そしてみんなの苦難 7

    「主様、あたくし、これから厨房に行ってきますわ。」
    帰って早々、携帯ゲーム機に向かっている主に、レニアが言った。
     
    「あたくし、今日の朝食で、もうすっかり
     ここの料理人たちを信用できなくなりましたの。
     食事は全部あたくしが作りますわ。」
     
    主はゲーム画面から目を離さずに返事をした。
    「んー、あー、じゃあ必ずマナタさんを同行させてくださいねー。」
    食事がダメでも警備は良いなんて、ありえない。
     
     
    レニアがマナタを引き連れて出て行ったのを確かめると
    タリスが主に声を掛けた。
    「お忙しそうなところを申し訳ないのですが・・・。」
    「んー、良いですよー、単調なレベル上げ作業ですからー。」
     
    真面目な話なのに顔を上げない主に、タリスはムッとしたが
    思い切って言ってみた。
     
    「マナタじゃ不安です。
     他の者に変えた方が良いと思います。」
    「んー、ダメですー。」
     
    「・・・・・・・」
    タリスはちゅうちょしたけど、とうとう禁を破った。
     
    「・・・り・・・
     理由をお伺いしてもよろしいでしょうか・・・?」
     
     
    主がLV上げをしながら答える。
    タリスが掟破りをしている事など、気にもしていないようだ。
     
    「理由は色々とありますー。
     まず、私たちは隠密行動だから、目立つチェンジなど出来ませんー。
     あちら側が用意してくれたガイドだから、そこまで我がまま言えませんー。
     うちの国がブラックリストに載っちゃったら、どうすんですかー。
     次にマナタさんはあれで確かに、ここでは一流だと思いますー。」
     
    「どこが!」
    つい声を荒げてしまい、ハッとして顔を赤らめるタリスを
    主は見ようともせず、無表情で説明する。
     
    「今日この街を観たでしょうー?
     ここ、ひっどいですよねー。
     貧富の差が激しいだけなら、まだリセット可能ですけど
     ここって復活の呪文がない国っぽいですよねー。」
     
    「・・・はあ・・・。 ?」
    主の言葉の意味がよくわからず、眉間にかすかにシワを寄せるタリス。
     
     
    「この国の人生って、縄のれんみたいなもんですよー。
     縄が全部真下に垂れているだけで、分岐がないー。
     最初に産まれた場所から下りるだけで、横には行けないんですよー。
     
     金持ちの家に生まれたら、きちんとした教育が受けられ
     コネで良い職に就けて、そのまま金持ちー
     貧困家庭に生まれたら、初等の教育すら受けられずに
     自分の周囲の世界の中で、日々の生活に追われて貧困のままー。
     
     救済システムがないんですよねー。
     システムを作れる人間はヌクヌクと育ってるんで、変える必要がなく
     恵まれない人々は、いつまで経っても知恵をつける事が出来ないー。
     何せ教育されないんですから、良くする方法も学べず
     自分の不遇も “運命” だと呪うだけで、それで終わってしまうー。
     そんな無知っぷりが、富裕層にはまた都合が良いわけでー。」
     
    主は初めてゲーム画面から目を上げて、タリスを見た。
    「幸福は、不幸を知らないと生まれないんですよー。
     この国が成り立っていっているのは、その逆もまたしかり
     不幸は、幸福を知らないと生まれないから、ってわけなんですよー。」
     
     
    ニッと笑った主の目を見て、タリスはゾッとした。
    その黒い瞳には、あの貧しい人々への同情の欠けらもない。
     
    ふと、将軍の言葉を思い出す。
    『主の事は、私と同等に扱うように』
     
     
    このお方は奪う側なのだ
    タリスは、ようやく納得がいった。
     
     
    続く。
     
     
    関連記事 : そしてみんなの苦難 6 11.5.30
           そしてみんなの苦難 8 11.6.3
                  
           そしてみんなの苦難 1 11.5.16
           
           カテゴリー ジャンル・やかた
           
           小説・目次 

  • インテリアとランジェリー

    “ランジェリー” 打つのが長いんで、“下着” で良いよな。
     
    あ、いきなり殺伐とさせて、ほんとすまん。
    色っぽい内容を期待して迷い込んだ人、ほんとすまん。
    キャッチじゃねえんだよ、偶然だ。
     
    まあ、そう失望せんと、寄っていけ。
    立ってるのが辛いなら、ささ、この地ベタに。
     
     
    美意識の高い、オシャレな美容ババアならば
    さぞかしインテリアにも気を遣っている事だろう
    と、思われているだろう、という話なんだが
    私が私を見て気付いた、全人類に当てはめたい法則がある。
     
    インテリアに気を遣わないヤツは、下着にも気を遣わない。
     
    この別組み合わせはある。
    下着には気を遣うけど、インテリアには気を遣わない
    下着にもインテリアにも気を遣う、、っての。
    でも、インテリアに気を遣っているのに
    下着に気を遣わないヤツは少ない気がする。
    勘だが。
     
     
    さあて、そろそろ自分が書いている内容で混乱し始めてきたが
    サンプル数ひとり! なのに、よくもネットで書こうと思うもんだが
    この説が何のタメになるのか、っちゅうと
    部屋を見て、こいつ下着にも気を遣ってるんだろうな
    と、妄想するぐらいしか役に立たない。
     
    しかも “下着に気を遣う” の定義がよくわからん。
    私だって下着には気を遣っているぞ。
    なるべく体を締め付けず、レースなしワイヤーなしゴムゆるめ
    これを追求していけば、“ババアの肌着” になるんだよっ!!!
     
    摩擦は色素沈着を起こすんだぞ。
    キツいゴムは皮膚に段差を作るぞ。
    これ以上の気の遣い方があるか!
     
     
    だけどこの説、結構的を射ていると思わんか?
    実を言うと、記事を書き始めた途端、浮かんだ説なんだが
    私はこれを、“口からでまかせ” ではなく
    “神が降りた!” と、解釈している。
     
    今私は、自動書記をしている状態・・・。
    心は無
    私の人差し指を借りて、キーを打ってるのが
    神系なのか悪魔系なのかは定かではないが
    人知を超えた現象である事は間違いない。 かも知れない。
     
    こういう事を言い出し始めると、ブログも末期のような気がする。
    一度も花開かずに散るなんぞ、我が人生と連動しとんのか、と不安だが
    ブログの方 だ け は、管理人ぷらちッが何とかしてくれるであろう。
    ストッパー、大事だよなー、あらゆる意味で。
     
     
    下着に気を遣う定義は、結局判明していないが
    インテリアに気を遣う、という定義は明白である。
     
    “統一されている” これに限る。
    上級者、たとえプロであろうとも
    外したお遊びインテリアは、まず失敗している。
    インテリアは統一感をなしには語れない、と断言する。
     
     
    さて、黒を白と言い張れる根性の持ち主な私は
    今の自分の住まいについても、突っ込まれれば反撃できる。
     
    マイルームのインテリアは、全部もらいもの
    これで統一されている。
     
    理由は 貧 乏 だからだ!!!
     
    私の部屋が、テイの良い粗大ゴミ捨て場にされてる気もせんでもないが
    とりあえず拒否権はあるので、気軽に物を貰っている。
     
     
    思い返せば、インテリアに凝れた時期など一度もなかった。
    インテリア、金が掛かりすぎる!!!
    そして価値を理解できない。
     
    私は利便性と合理性と実用性のみに固執するので
    インテリアの美がさっぱりわからないのである。
    気分的に望むものと言ったら、せいぜい “シンプル” ぐらいだから
    私の理想の生活空間って、事務所風味なんじゃないか?
    おまけに体質的に欠かせないのが、コタツと座椅子。
     
    インテリアについて考えた時に、この現実が立ちはだかったので
    私はもう一生、インテリアには手を出すまい、と決めた。
    中途半端に手を出して、より一層わけのわからない内装になった例を
    いくつか目撃していて、ほんと銭捨てだと思ったからである。
     
    インテリアはトータルで考えられないのなら、するべきではない。
    一点豪華主義も、○○風も、あまり通用しないのだ。
     
     
    特に日本は、TV1台で部屋全体の可能性が限られてくる。
    TV、ゲーム機、パソコン、ビデオデッキ、DVDデッキ、ブルーレイ
    チューナー各種、これらを制圧できるインテリアがあるか?
     
    ああっ、隠す収納とか言わんでくれよ?
    ゲーム機は外に出しておかないと、すぐゲームを始められんのだ。
    DSもすぐ横に置いておきたいんだよ、しかも数台。
    攻略本なんか、寝転んでても手か足が届くところに!
     
    お手入れも気付いた時に、が美容の鉄則なんで
    引き出しを開ける手間でやる気がなくなったらマズいだろ?
    リップクリーム、ハンドクリーム、コロコロローラー
    爪ヤスリ、爪ケアグッズは、常に手元に。
    おっと、毛深いレディにはソイエも欠かせないな。
     
    さあ、これらのアイテムをどうやってインテリアに組み込むんだ?
    美容マニアのゲーマーには、インテリア、無理だろ。
    私、マジで “ジャンル・やかた” のアッシュの寝室が理想だよ・・・。
    ( ジャンル・やかた 61 10.3.16 )
     
    インテリアも、オタク系のジャンル、あって良いんじゃないだろうか?
    ときめくぞ、あの本棚とかフィギュア棚。
    (私はフィギュアの代わりにコスメを置くけど)
     
     
    インテリアショップの前を通りながら、こういう事を考えていたら
    若いチャラけた兄ちゃんたちが、じゅうたんを見ていた。
    その選択がちょっと興味深かったので、物陰から観察してみたんだけど
    最近のバカな若者は、もんのすげえ毛足の長いじゅうたんを好むんか?
     
    おめえら、ちゃんと掃除できるんか? 
    それ、ポテチのかけらが落ちたら二度と見つからんぞ
    ダニの温床になるぞ
    みたいな3cmぐらいの毛足のじゅうたん。
    人気の色は、黒か紫かドピンクのようである。
     
    セールをしてたんで、次々に来る若いヤツ全員
    その手のじゅうたんを絶賛して、買う気満々なんだよ。
     
    そういや、かなり前の殺人事件で、犯人の先輩とやらが
    自室で 「ここに血が」 とか、インタビューを受けていたけど
    その血が付いたというじゅうたんも、毛足長めだった。
    (若い男性が彼女宅に押し入って、友人と姉を殺傷し
     彼女を拉致して先輩宅で手当てした後、捕まった事件。)
     
    うーん、まあ大昔もヤンキーの車の内装は
    毛足長めのマットとかドア貼りがされていたよな。
    (若かりし頃の元彼の愛読書ヤンキーメイト情報)
     
    あの使い勝手の悪そうなモコモコ生地の
    何がドグラを引き付けるのだろう?
     
    注 : 買い物に来ていた兄ちゃんたちが、チャラだという確証はない。
        が、そう見られても差し支えがない、とでも言いたげな
        言動と格好をしてたので、遠慮なくそう見させてもらう。
        
        
        

    評価:

    ウエストハウスギャラリー


    ¥ 16,800

    コメント:“プリンセスのための布地” だと! ・・・おっかしいなあ、数十年前は “金華山” というと、赤と金の派手な柄でヤンキー車の内装に使われていたはず。 あれえ? 勘違いしてたかな?  時代とともに形は変わっても、人の夢見る心は変わらないんだな。 というキレイなマトメは逃げか?

  • そしてみんなの苦難 6

    「この車、サスペンションがイカれていないか?」
    いくら道路が整備されていないとしても、この縦揺れはひどすぎる。
     
    タリスの問いに、マナタはカラカラと笑って答えた。
    「大丈夫だぎゃあ。
     この車でチェイスする時は、このボタンを押すと
     サスが硬めになるんじゃが。」
     
    「ほっ、本当か! 凄いな!!」
    「冗談だと思いますよー。
     そんな車、この国で作れるわけがないでしょうー。」
    後部座席から主が棒読みで助言する。
     
    マナタがこっちを見て笑うので
    「前を見てろ。」
    と、ひとことだけ言って、タリスはムッツリと黙り込んだ。
     
     
    マナタはとめどなく喋り続ける。
    しかも、タリスを見たり後ろの主を見たり
    危なっかしくてしょうがない。
     
    「いますよねー、運転中にこっちの顔を見て話すヤツー。
     すっげえ危なくて、思わず殴りたくなりますよねー。
     それにしても、喋ると舌を噛みそうなぐらいの揺れですよねー。
     よく話し続けていられるもんですねー。」
    「あざーーーーっす!」
    「いや、全体的にケナしているんですからー。」
     
    陽気なマナタと、イラ立つタリス、実は車酔いで吐きそうな主を乗せた車は
    貧民街へと走って行った。
     
     
    「ここんちょ一帯が貧民街でっせ。
     浮浪者と泥棒の巣窟っちゅうですわ。」
    マナタが説明する通り、建物の壁の色からして、すさんでいる。
     
    「すんげえくっせえなー、何だろうー? この臭いー。
     こういう場所はどこの国にもあるけど
     聞くと見るとじゃ大違い、ってねー。
     本やネットから匂いが出てこなくて、ほんと良かったわー。」
     
    「主様、そういう事はあまりおっしゃらない方が良いかと思われます。」
    タリスの諌めに、主が訊いた。
     
    「何でー? ここの人たち英語がわかるんですかー?」
    「いえ、それはわかりませんが、マナタはこの国の者ですし・・・。」
    「マナタさんは富裕層出身だから大丈夫でしょー。」
     
    その言葉にマナタが飛びついた。
    「おっ、主様それがしが高貴な家の生まれだと何故に察知かね?」
     
    「・・・その気品を見ればわかりますですよー。」
    半笑いで答える主に、マナタは調子こいた。
    「一流は一流を知る、ってやつですかいな、はっはっは。」
     
     
    マナタの方を見てもいなかった主が、おっ と驚いた。
    「すげえ、道端に盗み盛りの若い兄ちゃんが寝てるー!」
    「ああ、あれは死んじょるんだなー。
     出血してないから凍死だと思われ。
     まだ夜はしばれるしなあ。
     衛生局が見回るから、そん時に持ってかれるで心配ねえだす。」
     
    「主様、車から降りない方がよろしいかと思います。」
    「んだな。 ここいらを車でグルグル回るんで我慢せれ。」
     
    「んーーーーーーーー、じゃあ今日はそうしましょうー。
     ただし明日は歩きますんで、その予定でお願いしますねー。」
    車は激しい上下運動をしながら、あたり一帯を走り回った。
     
     
    「こんな車で、いざという時に故障したらどうするんだ?」
    珍しくタリスがよく喋る。
     
    「そん時は自爆装置を作動させるしかねえだなあ。」
    「それじゃ死んでしまうじゃないか!」
    「ははは、おめさも大概、楽しい男じゃのお。」
     
    マナタに爆笑され、タリスはまたカツがれた、と気付いてムッとした。
    後部座席では、主がこの振動の中、爆睡していた。
     
     
    続く。
     
     
    関連記事 : そしてみんなの苦難 5 11.5.26
           そしてみんなの苦難 7 11.6.1
                  
           そしてみんなの苦難 1 11.5.16
           
           カテゴリー ジャンル・やかた
           
           小説・目次 

  • 永谷園

    私の朝飯はお茶漬けである。
    これを言ったら、「え? 朝からお茶漬けーーーっ ?(笑)」 と
    バカにしたような笑いを、そう親しくない男性 にされたが
    じゃあ、いつお茶漬けを食うんでしょうか、と訊ねたら
    「飲んだ後」 だと。
     
    「あら、まあ。」 と、その人のお腹のあたりを見たのは
    本当に悪意はなかったけど、今思えば、だから敵を作るんだろ
    と、自分で自分を叱ってあげたい。
     
    とにかく、人間関係もナイスバディも不健康な私は
    朝からマトモな飯は食えないのだ。
     
    数年前までは、たまにパンも食べられていたけど
    今はお茶漬けと漬け物、私の朝食はこれしか無理。
     
     
    そんな私には、永谷園のお茶漬け海苔が欠かせない。
    漬け物は頻繁に種類を替えるけど
    お茶漬けの素だけは、永谷園のお茶漬け海苔から動けない。
     
    だから1年365日、350包ぐらい食ってるんだよ。
    (たまにお茶のみかける時もある。
     そんぐらい、朝は食欲がないんだ。)
    永谷園、私に表彰状をくれても良いと思う!
     
    その割には、“お茶漬け海苔” だったか
    “海苔茶漬け” だったか、商品名がわからず
    1袋いくらで買ってるのか
    1袋何包入りなのか、まったく覚えていないのが不思議だ。
     
    食ってる証拠に写真を載せとく。
     
     
     
    “お茶漬け海苔” で、8包入りだったな・・・。
     
     
    何故こんなに永谷園のみを食い続けるかと言うと
     
    他 が 不 味 い か ら   だ!
     
    いや、“不味い” は言い過ぎだな。
    “美味くない” と言おう。
     
    正直な、色んなのを食いたいんだよ
    だって毎朝食ってるんだぜ、1種類のを。
     
    永谷園にも、シャケも梅もわさびもあるけど
    梅に入っていたあられで、前歯が欠けたんで
    何だか他の味は呪われてる気がして恐くてな・・・。
     
     
    よくこういう言い草で永谷園に恩着せできるよな、とは思うけど
    そんぐらい永谷園のお茶漬け海苔を食ってるんだ。
    私、世界でベスト5に入れるはず。
    日本アジアにとどまらず、世界で!
     
    永谷園のお茶漬け海苔、個人常食では世界で戦えるレベル!
     
    私の健康とかに、永谷園、結構な影響を与えてるかもな。
    ・・・とか、すぐ脅しに掛かるけど
    そんぐらい食ってるんだよー。
     
     
    昔、お茶漬けに入ってた浮世絵カードを集めて
    永谷園に懇願すると、浮世絵カードセットが貰える
    というキャンペーンをやってただろ。
     
    あれを貰ったヤツを見た事がない、と
    どっかで笑ってたのを見たか読んだかしたけど
    すげえショック!!!
     
    私、あれ2回貰ってるんだ。
     
    それでもなお、何セットも貰える勢いで
    カードが溜まってたけど
    笑われる種類の行為なんだ・・・、と傷付いた羽を閉じたさ。
    文豪だから、つい美しい言い方をしてしもうたが
    要するに、真っ赤な顔で溜めてたカードを捨てただけだ。
     
    貰ったカードセットは、元婚家にあるはず。
    とか、またしても縁起の悪い事を言ってるけど
    永谷園は殴り書きで良いから、早く賞状か何かを書いて渡さんと
    どんどんどんどん余計な事を書き連ねるぞ。
     
     
    まあ、今日はギョウチュウの居所が悪いのかわからんが
    やたらにクレクレちゃんになっとるが
    ちょっと甘えてるだけだ、心配すな。
    女性の甘えには金品で対処するのが正しい道だぞ。
     
    永谷園、いつもありがとう。
    何十年も毎朝食っとるが、飽きない味なのが不思議だよ。
    これからも、よろしくな。
     
     
    他のメーカー、私を永谷園に独占させといて良いのか!
    何でお茶漬け海苔を超える味を出せねえんだよ?
    高級も低級も、貰い物も拾い物も (さすがに拾いはせんけど)
    目に付くお茶漬けの素は、全部試してきたけど
    永谷園のお茶漬け海苔を超えるものはなかったぞ。
     
    お茶漬け、とあなどるな!
    ナイスバディの私が食ってるものは、ナイスバディの素だ。
    ダイエットにお茶漬け、という時代が来るかも知れんが
    その時に慌てても遅いぞ。
    この調子では、私はもちろん永谷園支持だ。
     
    さっさとお茶漬けの素開発に精を出せ!
     
     

    評価:

    カネミ美和


    ¥ 1,680

    コメント:うわ、永谷園!!! ほんと永谷園!!!  永谷園のこの模様の商品って割にあるんだよ。 バインダーとかナイフとか、永谷園の必要1個もなし、なのが。 持ってたら、どんだけお茶漬け好きなの? と疑われるんで、この茶碗だけにしとけ。 一番不自然じゃないから!

  • そしてみんなの苦難 5

    ふいにドアが開いた。
    驚くタリスに、部屋の中から寝ぼけ眼のマナタが蹴り出される。
     
    「マナタさん、次はあなたが見張ってくださいー。
     タリンさん、中に入ってくださいー、話がありますー。」
    ふああああ・・・、とあくびをするマナタを廊下に立たせて
    主はタリスの腕を引っ張り、ドアを閉めた。
     
     
    「タリンさん、あなた飛行機でも寝てないですよねー?
     今からすぐ寝てくださいー。」
    いやしかし、と言おうとするタリスを遮って、主は強い口調で言う。
     
    「寝不足だと、明日に差し支えますー。
     これは命令ですー。
     今すぐ寝てくださいー。」
     
    タリスは、“命令” という単語に弱い。
    言われた通りに自室に入って腕時計を見たら、夜中の2時半だった。
    主は何故起きていたんだろう?
    疑問に思ったが、明日からが本番なので考えずに眠りに付いた。
     
     
    朝になっても、マナタが部屋のどこにもいないので
    呼びに行こうと、廊下へのドアを開けようとしたが
    何かがつっかえて開かない。
     
    イヤな予感がして渾身の力で押して、やっと開いた隙間から覗くと
    倒れているマナタの後頭部が見えた。
     
    「おい、マナタ! 大丈夫か? マナタ!」
    大声で叫んだせいで、主が起きてきた。
    「どうしたんですかー?」
     
     
    ドアの隙間から廊下を確認した主は、テーブルのところへ行き
    ピッチャーを手にスタスタとドアの側に寄り、勢い良く水をブチまけた。
     
    「うわっぷ!!!」
    水を浴びて慌てて飛び起きたマナタ。
    呆れた事に、ドアの前で大の字になって爆睡していたのだ。
    ドアも床も水が掛かってビチャビチャである。
     
    「ある意味、最強の戸締りでしたねー。
     予定外に早起きした事だし、
     さっさと、飯食って用意して出掛けましょうかー。」
    主が腫れぼったい目で、涼しく言った。
     
     
    朝食は悲惨であった。
    時間通りにこないし、やっときた食事は
    得体の知れないスープに、パンはパサパサ、オムレツも味がなかった。
     
    「こんな事も (絶対に) あろうかとー。」
    主はトランクの中から、ウイダーインゼリーとカロリーメイトを取り出した。
    やけに荷物が多く、しかも重いと思っていたが
    着替えの服かと思いきや、トランク1個丸ごと携帯食や菓子類だった。
     
    それをタリスやレニアに渡す主を見て
    他人の分までガツガツと食っていたマナタが言う。
    「何どすえー? 何どすえー?」
     
    主はマナタにもカロリーメイトを1箱投げた。
    3人前の朝食を平らげたマナタは、その1箱も全部食った。
    主はその様子に、見てるだけで満腹になる、と嘆いた。
     
     
    レニアはホテルに残す事にした。
    護衛面で負担が増えるせいもあったが、一番の問題は荷物である。
    一流ホテルであろうと、こういう国では従業員による盗難も多い。
     
    マナタが連絡をして呼び寄せた女性SPと共に
    ホテルの部屋で荷物の番をする事になったのである。
     
    それを告げられた時のレニアの顔は、ホッとしているように見えた。
    今から行く場所は、決して気分の良い場所ではないからだろう。
    そしてあのマナタの車、あれに乗らなくても済む。
     
     
    「くれぐれもお気をつけてくださいね。
     あまり無理をせずに。」
    それでもレニアは心配そうに、主を見送った。
     
    「マナタさん、“今度は” ちゃんと主様を守ってくださいよ?」
    マナタの信用は、24時間足らずですっかり地に堕ちていた。
     
     
    「大丈夫じゃん!
     わいを誰と思おとんのんですかー?
     この国一のSPですわいなー。」
     
    マナタがそう断言して出て行った後、レニアは女性SPに訊いた。
    「本当ですか?」
    女性SPの答はあいまいだった。
     
    「まあ、割に・・・?」
     
     
    続く。
     
     
    関連記事 : そしてみんなの苦難 4 11.5.24
           そしてみんなの苦難 6 11.5.30
                  
           そしてみんなの苦難 1 11.5.16
           
           カテゴリー ジャンル・やかた
           
           小説・目次 

  • ファッションブランド

    私は結構なブランド好きである。
    しかも、ああ、やっぱ “私” だな、ってとこは
    “あまり人が着ていないブランドを着る わ・た・く・し” なのだ。
     
    でもこれも、今になって冷静に分析すると
    奇抜なデザインのブランドを好んでいたんで
    “人が着ていない” んじゃなく、“人が着たくない” だな。
    何か色々と道を踏み外しているよな。
     
     
    ババアになってからは、トラッドを心掛けたが
    関西に来てからは、ブランド物など買えない身分になってしもうた。
     
    正直、装備がロトのよろいから皮のよろいに落ちた気分だったが
    ある日、友人が言った。
    「その服良いね、私も欲しいわ、どこで買ったの?」
     
    私の着ている服を褒めるなど、どうしたカモか?
    「私が着てるから良く見えるだけだよ。」 と答えた。
    ほーほほほほほぽほほ
     
    友人は案の定、イヤな顔をしたが
    その服は、亡きかあちゃんが15年ぐらい前に
    3枚いくらでニッセンで注文したものだったからだ。
     
     
    ブランド装備を出来ていた頃は、そんな服など見向きもしないから
    ずっとタンスに眠っていたんだが
    服が買えない今となっては、ハギレですら出動させにゃならん。
     
    その何でもないヘンリーネックTシャツも
    着てみたら、意外にイケるんじゃないか? と
    平気で街なかで着ていたのである。
     
    つまり友人は、ある意味私に騙されたわけで
    この真相を聞いて、絶句していた。
     
    事実、“私” が着てるから、良く見えるのである。
    ナイスバディというのは、そういう事なのさ。
    いや? 最近は実に穏やかな日々を過ごしていて、不幸など1個もないぞ?
     
     
    好みのブランド物は、今でも欲しい。
    しかし現実問題、衣食住の衣はやはり最後の最後、道楽なのである。
     
    ましてや、何を着ても最高級品に見えるナイスバディなのだから
    高いブランド物に頼る必要もない、と思うようになった。
    今のファストファッションブランドだっけ?
    デザインもシンプルで、品も結構良いのがあるしな。
     
    と言うか、ブランド服の値段の基準がよくわからん。
    “アート” とか “デザイン” って
    法外な価格に思えるのは、私の目が腐ってるからかも知れない。
     
     
    こういう事を何となく考えていたら
    あるTV番組で、何だか答を見つけたような気がした。
     
    それは、バブル時代に踊った男性とその息子の話で
    父親は今でもバブルを引きずっていて
    ブランドファッションで身を固めているのだが
    息子はまったくファッションに興味がないのである。
     
    バブル父が息子に、「女性と良い店に行け」 とか
    「もっと自分の可能性を広げて考えろ」 とか言って
    オシャレの方向に目を向けさせようとしているのだが
    ちょ、そこのクジャク親父、おめえちょっと来い
    と、父親を説教したくなった。
     
    今の時代はどう見ても、息子の方が真っ当で好感が持てるのだ。
    父親は、バブルの遺物にしか見えず
    逆におめえがもちっと “他の事” に目を向けたら? と言いたくなる。
     
    イイ大人が、服に血眼になるのは見苦しいものだと思えて
    ああ・・・、ブランド好きのファッションは
    こうなる危険性もあるんだな と、考えさせられた。
     
     
    ま、ブランド物を買い漁れるようになるほど、復活できる芽もないし
    好みのブランドのデザインも、ババアにはきっついんで
    私の老後は、“たびびとの服”(ドラクエ最弱装備) で決定である。
     
    この記事は何が言いたかったのか、というと
    単にナイスバディな貧乏人の自画自賛さ。
    繰り返し言うけど、決して不幸なわけじゃないぞ。 
     
     

    評価:

    トラッド


    ¥ 1,080

    コメント:“トラッド” で検索したら、これが堂々と登場。 何と、45度と90度のみならず、水平垂直がこれで確保できるとなっっっ!!! しかも錆びにくく軽量なアルミ素材。 倉庫にでも置いておいたら二度と日の目を見る事のない逸品になること請け合い。 一家に1個、いかがかな?

  • そしてみんなの苦難 4

    「おっ、ホテルは普通っぽいじゃんー。」
    主が建物を見上げて喜んだ。
     
    「もちのろんだがやです。
     何せビップをお迎えするだから
     この国でNo.1の超・高級ホテルを用意させたですさー。」
     
    「(何かよくわからんけど) どうもありがとうございますー。」
    タリスには、主の ( ) 内の言葉まで聴こえた気がした。
     
     
    「当然、主様は最上階のスーパーデラックスルーム。
     ここが大部屋のリビングで、主様の寝室はあっち
     ミス・レニアの寝室は、続き部屋のそっち
     ミスター・タリスは、わすと一緒にこっちの続き部屋が寝室でごわす。」
     
    「へえー、(古いけど) 広い部屋ー。 眺め良いーーー。」
    主が喜んで、窓にへばりつく。
    その途端
    「危ないだべす!!!!!!」
    「うぎゃっっっ!!!」
     
    叫びながら、マナタが主をタックルした。
    主は顔面からビッターンと床に倒れた。
    あまりの意外な行動に、さすがのタリスも反応できなかった。
     
    それを見て、レニアが激怒した。
    「何をなさるんですか!
     主様はこう見えても、お歳を召されているんですよ!
     それをなぎ倒すなど、骨折したらどうするんですかっ!!!」
     
    レニアの剣幕に、マナタが申し訳なさそうに弁解する。
    「窓の側は狙撃される恐れっつーもんがあるじゃき・・・。」
     
    四つんばいになって、首をさすりながら主が言った。
    「タ・・・タロスさん、彼に護衛の仕方を教えておいてください。
     私たちが、公的に来てるわけじゃない事も・・・。」
     
    タリスは、はっ、と返事はしたものの
    この遥か斜め下の言動をする男を
    しかもなまじ知識があって腕が立ちそうな、“プロヘッショナル” を
    どう指導をしたら良いのか、途方に暮れた。
     
     
    とりあえず冷静に無難に、今回の旅の主旨と
    護衛法について一通り説明したタリスに
    マナタがうんうんと、腕を組んでうなずきながら言った。
    「タリスと呼び捨てで良いだかね?
     おいどんの事はマナタと呼んでけれ。」
     
    人の話にロクに返事せずに、話題を変える
    これが部下なら鉄拳制裁だ・・・
    冷静な表情とは裏腹に、心の中に熱い炎が燃えたぎるタリス。
     
     
    「いやあ、さっきの事は、まことにごめんだった。
     今回の目的も主様の事も、全部伝達済みだーでわかっとるきに。
     ただ、いつも政治ビッパーのSPをやっとるもんで、つい癖が出てなもし。
     んだでも、あの主様はただ者じゃないと思わんだぎゃね?」
     
    「どういう事だ?」
    いぶかしげに訊ねるタリスに、マナタが解説する。
    「わしゃ、仕事柄、多くのビップと間近に接しておられるがな
     ありゃあ、クセ者だべよー。」
     
    「だから、どういうところがだ?」
    タリスはついイライラを口調に出してしまった。
    「わからんのかね?
     おまん、護衛はそんだばにゃあ経験ないだな?」
     
    マナタはやれやれ、と両手の平を挙げて首を振り
    その仕草が、タリスの逆鱗に触れた。
    しかもタリスは確かに護衛の経験がなく、その図星が余計に腹が立つ。
     
    「おまえとは気が合わなさそうだな!」
    いつものタリスなら、そんな任務に支障の出そうな事は言わないのだが
    あまりの立腹に、うっかり口に出してしまったのである。
     
    「なあに、そういうカップルほどアッチッチーってもんじゃが。
     映画でもそうだべさー。」
    マンタは、カンラカラと豪快に笑い
    その態度が、タリスの心の炎にガソリンを掛けた。
     
     
    タリスが殺気を放った瞬間、悲鳴が響いた。
    何事かと、主の部屋のドアを開けると同時に
    バスタオルを巻いた主もまた、部屋に飛び込んできた。
     
    「シャワーが急に水になったーーー!!!!!」
    主の訴えに、タリスは肩を落とした。
     
    「ちょっと! 何をガックリきてるんですか!
     主様はこれでもお歳なんですよ!
     心臓マヒを起こしたら、どうするおつもりですか!」
    レニアがヒステリックにわめく。
     
    「・・・歳、歳、うるせー・・・。
     マ○コさん、これはこの国ではデフォですかー?」
    「わしの名はマナタだよ、放送禁止用語のような呼び方はやめてけれ。
     デホ? えーと、よくわからんが、湯ー出るが奇跡ですがな。」
     
    「・・・・・・そうですかー・・・・・・
     じゃ、気をつけますー・・・。」
    主は落胆しつつも、あっさりとバスルームに戻って行った。
     
     
    普通なら、ここはサービスシーンなのだが
    それを微塵も感じさせない主は、確かにある意味大物である。
     
    「主様の半裸姿を見るなど、とんでもない事ですわ!」
    タリスとマナタが、とんだとばっちりをくらった。
    「主様も自重なさってください!」
    バスルームに向かっても叫ぶレニアは、怒鳴る事が好きな女性のようだ。
     
    「あがいな痩せっぽち見ても嬉しゅうないぎゃあな。」
    護衛相手の悪口を言うマナタの無神経さに
    タリスはまた腹が立ってきたが
    優れた自制心をフルに活用して、抑えに抑えた。
     
     
    主が寝たというのに、ベッドでグーグーと寝ているマナタを見て
    果てしない絶望感に襲われるタリス。
     
    ・・・もう、こいつをアテにするのはやめよう
    自分ひとりで護衛しているのだと思うのだ。
     
    タリスはホテルの廊下の主の部屋の入り口の前に立った。
     
     
    続く。
     
     
    関連記事 : そしてみんなの苦難 3 11.5.20
           そしてみんなの苦難 5 11.5.26
                  
           そしてみんなの苦難 1 11.5.16
           
           カテゴリー ジャンル・やかた
           
           小説・目次 

  • ティーンズ・ラブ

    自分の殻は、打ち破るのが好ましい。
    そこでエロ小説を書いてみよう、と思い立った。
    都知事もエロ小説を書いてる事だしな。
     
    ところが私のエロ濃度は、とても低い。
    えげつない下ネタを言う割には、エロの才能がないのだ。
    なので、エロマンガをずっと探し続けてきた。
     
     
    何故マンガ限定なのか、っちゅうと
    齢、数十歳にして判明して、我ながら驚愕しておるが
     
    ・・・2次元エロじゃないと、受け付けんのだ・・・。
     
    都知事、ごめん!
    せっかくエロマンガを規制しようとしていたのに
    肝心の (?) 私が2次元属性でごめん!
     
    ああ・・・、これがエロトピアで培われた実力なのか・・・。
    (エロトピアとは、エロマンガ雑誌なのだが
     男性が描いた男性用エロなので
     女性には突っ込みどころ満載で面白かったのだ。)
     
     
    で、エロマンガというものを、なかなか見つけられなかったのだが
    それは “エロ” という言葉で探していたからであった。
     
    私の望むのは、ストーリーがちゃんとしていて
    キレイな絵のマンガなのである。
    その条件を満たすのは、“ティーンズ・ラブ” というジャンルらしい。
     
     
    ネットの試し読みって、やり過ぎるとシャットアウトされるんだな。
    “データを閲覧できません” と出た時には
    とても情けない気持ちになった。
    イイ歳をして、何をやっとんのだよ・・・。
     
    でも、とりあえず出版社のアタリはついたし
    イイ歳して、レンタルコミックへGO!!!
     
     
    レンタルコミック店のティーンズ・ラブは、コーナーになっていた。
    つまりそこの場所にいれば、エロ目当てだと丸バレ。
     
    うっわーーー、イイ歳にはすっごく不利なレイアウト!
    と、一瞬ちゅうちょしたけど、とにかく借りる!
     
    だけど漫画家の名前とか、さっぱり覚えてない。
    あんだけ暗記したのに・・・。
     
    しょうがないので、いっちょいっちょ中を確認して
    好みの絵柄か、ちゃんとセックス場面があるかをチェックする。
    たまに純愛ものとかが混じっている罠があるのだ。
    純愛ーーー? 何それ、神の起こす奇跡の一種?
     
     
    そうこうやってると、右目の端にチラッと影が映る。
    次に左目の端に。 また右目に。
    どうやら、カラテカ?矢部?似の男性が
    ティーンズ・ラブを借りたがってるようである。
     
    へえ、男性もこういうのを読むんか、と思ったけど
    キレイらしい絵でエロなど、理想的だもんな。
    おめえ詳しそうだから教えてくれよ!
    と、心中で叫んだけど、矢部はすごすごと退場したっぽい。
     
     
    次に現れたのが若い女性。
    私の隣に並んで立つ。
     
    ザカザカ本を取ってパラパラめくっては戻す
    を繰り返している私としては、やりにくくてしょうがない。
     
    もう、いやあああああああっっっ
    これは私の趣味じゃないんだよ
    私には文豪として都知事の跡を継ぐ使命があって
    と、心の中で、えらいな壮大な妄想を叫ぶも
    エロを探しているのは、まぎれもない事実。
     
    おめえ後から来たんだから、ちょっと待てよ
    選べないじゃないか、空気読んでくれよー!
    とパニックになりつつ、その場を離れた。
     
     
    男性なら、アダルトビデオを赤の他人と
    並んで選ばねばならない場面を想像してみてくれたまえ。
    わかるだろう? その気まずさが。
     
    ええ? おまえ、その女が好みなんだー、ププ
    うっそー、おまえ、そういう性癖なの? 引くーーーっ
    とか、ハンター×ハンター級のオーラでの攻防があって
    本当の気持ちのままには選べないだろう?
     
    ああっ、もうこのバトル、無理!
    と、スゴスゴと離脱させられ
    蒼天の拳を流し読みしていて、我に返る。
     
    私、何をやってるんだろう?
    ここへはエロマンガを借りに来ているのに
    続あたたたたたたた!!! ふべしっ を読んでる場合じゃない。
     
     
    そこでティーンズ・ラブコーナーに戻ると、誰もいない。
    再び、本を取ってはめくって戻す、をやり直していたら
    肩をスーッと撫ぜられた。
     
    くそっ、こんなコーナーにいるからビッチに思われたのか。
    でも変態、すっげーこええええええええええええ!
     
    心はこれ以上になく動揺しているのに
    体が、睨みを利かせてゆっくりと振り向いたのは
    私の凶暴性が具現化したとしか思えない。
     
     
    ところがな、誰もいないんだ。
    あれ? と、エロンガを開いたまま、一周ターンしちゃったよ。
    誰もいないんだよ!!!!!
     
    ええっ、ここに来てまさかのオカルト展開?
    と、ゾゾゾときたけど、とにかく借りないと!
    霊より、“恥をかいた上に無収穫” の方が恐いんだ。
     
     
    色んな恐怖に切羽詰って、すっげー目を血走らせて選んで
    ようやくコーナーを出ようとしたら、さっきの女性がまたやってきた。
    カゴには、10冊ぐらいティーンズ・ラブ系が入っている。
    この女性も迷走中のようだ。
    見ると、矢部もガンツのところで待機中。
     
    うんうん、よくわからんよな、ティーンズ・ラブ。
    出来ればおめえらと情報交換をしたいよ。
    と、背中でエールを送りつつ、借りて帰ったさ。
     
     
    は? 霊?
    私、霊感ゼロだから、あれは透明人間だと思う。
    そういうファンタジーより、現実のが大事だろ
    今、色々と大変なんで、よそに行ってくれよ。
     
     
    そういう苦労をして選んだティーンズ・ラブな
    けがれたババアには、落胆ものだったぜ・・・。
     
    ああんいやんうっそ~ん感じる~ん じゃねえんだよ!!!
    幸せそうでまことに良かったな! という感想。
     
    私、ちょっと特殊性癖の持ち主だったかも。
    己を直視するのが恐いんで、掘り下げないけどさ。
    ここまでエロトピアに鍛えられていたとは・・・。
     
    すまん、都知事、私にはエロ小説は無理のようだ。
    跡継ぎはよそを当たってくれーーーーー。
     
     

    評価:

    石原 慎太郎

    新潮社


    ¥ 540

    (2010-12)

    コメント:長文が読めない自主的ゆとりなので、もちろん読んでいない。 本のレビューで 「もちろん読んでいない」 ときたか・・・。 それはさておき、性器で障子を破る男の話らしい。 今の障子紙はプラスチック製のもあるので、前もって材質をよくご確認の上お突き破りください。 確認中に大概のヤツは我に返ると思うが、勇者もいるかも知れんしな。

  • そしてみんなの苦難 3

    主は飛行機の中で、ずっと携帯ゲーム機で遊んでいた。
    レニアはうつらうつらとしている。
     
    現地に着けば、もうひとりガイド兼護衛が付くという話だが
    今は自分ひとりである。
    眠るわけにはいかない、そうタリスが思った瞬間、声がした。
     
    「寝て良いですよー。」
    主がゲーム画面から目を離さずに言ったのだ。
    それがやたら鋭い指摘に思えて、タリスはちょっと驚いた。
     
     
    「いえ、これが私の仕事ですから。」
    そう答えると、主がボタン連打をしながら棒読みで言う。
     
    「そういうの、やめてもらえませんかねー。
     『仕事ですから』 とかー。
     そんなん言われなくとも、わかりきった事だし
     いかにもイヤイヤやってる、って感じで悲しくなるんですよねー。」
     
    「申し訳ございません、今後は気をつけます。」
    「うおっっっ! ああーーーっっっ! やってもたーーーーーー!
     もうー、あなたのせいだからねーーーっ!」
     
    どうやらパーティーが全滅したようである。
    「・・・申し訳ございません・・・。」
    「・・・冗談だってー。
     ヤバいと思った時点で、帰還魔法を唱えなかった私の戦略ミスなんだしー。
     こういう八つ当たりもよくするから、真に受けないでくださいねー。」
     
    無表情で妙な事を言うこの女性を、どう判断すれば良いのか
    迷いに迷うタリスであった。
     
     
    現地は太陽の光が強かったが、日陰に入ると乾燥した風で寒い。
    「暑いんか寒いんか、よくわかんねー。」
    全員が思った事を、主が大声で代弁した。
     
    「主様、思った事を全部口にするのは
     おなたの場合、ほぼ礼儀に反しますから、お止めくださいませ。」
    レニアが冷徹に言い放つ。
    重箱の隅をほじくるタイプの女性である。
     
     
    ひとりのいかつい男が真っ直ぐこちらに向かってきた。
    推定20代後半、浅黒い肌の軍人風刈り上げヘアだ。
     
    多分彼が現地の供だろうけど
    一応タリスは警戒して、主の前に立った。
     
    「よ-よ-、おめら主様ご一行ですだべ?
     おら、護衛ガイドのマナタっちゅうもんだす。
     どか、よろしゅうにお願い申し上げたてまつる。」
     
    何弁なのか、はっきりせんかい!!!!!
     
    誰もが同時に思ったが、自分の言語もおかしい事を自覚している主は
    今度は何も言わなかった。
    多分、彼は精一杯の敬語を使って、礼儀をはらっているのであろう。
     
    「よろしくお願いいたしますー。
     私が主で、彼女はお世話をしてくれるレニアさんー
     彼が護衛のタ・・・タラス?さんですー。」
     
    主はタリスの名をつっかえながら、?付きでも正しく言えなかった。
    人の名前と顔を覚えるのが大の苦手で
    自分の親兄弟の顔ですら、しばらく会わないと忘れるという。
     
    「タリスです。」
    自分で自分を紹介するしかない。
     
     
    「んーだば、まずは宿に行こうですかね。
     車があるきに乗りなっせ。」
    マナタに促がされ、見た方向にあったのは
    見た事もない車種の、古いボロ車であった。
     
    ドアも完全には閉まらないし
    走り出したら、上下にバッコンバッコン揺れる。
     
    「うわ、すっげー、ある意味、ダンシング・カーーーー?」
    また主がわけのわからない事を叫ぶ。
     
    「こっちじゃ良い車は逆に狙われるんですわいな。
     おぬしら、隠密行動なんだしょ?
     こういう車の方が安全保証だぜよ。
     わすはプロヘッショナルですじゃけんのう。」
     
     
    マナタが威張って言うと、主が真面目に突っ込む。
    「そのボロ車に、高貴で美しい裕福そうな女性が乗ってる方が
     いかにも怪しくて危なくないですかー?」
     
    「うんうん、普通はそうだがや、今回は大丈夫なもし。」
    そのマナタの笑顔に主は大らかに笑っていたが、レニアが激怒した。
    「あなた、誰に向かってそんな口を利いているの?
     このお方はとても立派なお方なのよ!」
     
    そのキイキイ声があまりにもうるさいので、主が抑えるよう言っても
    「あなたを侮辱されて黙っているわけにはいきません!」
    と、レニアの勢いは増す一方である。
     
    「ああ・・・もう、何かワヤクチャー・・・」
     
     
    かろうじて4ドア、という小さい車に、4人がギュウギュウ詰めになって
    ホテルへと向かう車内での、主の小さいつぶやき。
     
    この言葉が、今後の日程のすべてを表現している事に
    この時点で知る者は誰ひとりとしていない
     
     
    ・・・わけがなく、そんな事ぐらい全員が容易に予想できた。
     
     
    続く。
     
     
    関連記事 : そしてみんなの苦難 2 11.5.18
           そしてみんなの苦難 4 11.5.24
           
           そしてみんなの苦難 1 11.5.16
           
           カテゴリー ジャンル・やかた
                         
           小説・目次