「にしても、彼女の様子はどうしたんだね?」
「いつもは多少なりとも、無邪気さがありましたよね?
まあ、どっちもヘンだという事には変わりないですけど。」
「言葉に険があるし、まるで別人のように感じますよ。」
メンバーたちの言葉に、ジジイは呆れた。
「あんたたち、録画画像を観とらんかったんかね?」
画像? 何のですか? と、口々に訊くメンバー。
「やれやれ、じゃあ、アッシュの言動も理解できんわな。」
ジジイは溜め息をつくと、説明を始めた。
「報告書には事務的に書かれていたが
ローズはアッシュのあの館での、唯一の支えじゃったんじゃ。
その繋がりの深さを知らないと、わからんかも知れんじゃろうが
ローズは大切なアッシュを、自らの死を持って守ろうとした。
録画画像にちゃんと残っておる。
『命を掛けてあんたを守る』 という最期の言葉がな。
だからアッシュはローズに汚名を着せ、館の崩壊を防いだんじゃ。
この画像は、さすがにアッシュには観せられんので
わしが事前に届けたんじゃが、会議前に確認していなかったんか?」
「そんな画像があったんですか・・・。」
「申し訳ない、我々の方のチェックミスだな。」
メンバーたちには初耳のようだった。
「あんたらも、気合い不足じゃの。
このやり取りを見ていたら、アッシュとローズのふたりが
いかに命を掛けて、館を守ろうとしているかがわかるぞ。
じゃが、残されたアッシュは
大切なローズの死に、今にも気が狂いそうじゃろうな。
あの画像を観れば、その気持ちがあんたらにもきっとわかるじゃろう。
アッシュの前では、もうこの話は禁物じゃぞ。」
重い背景のほんの一部を聞かされただけで
気の毒そうな顔をするメンバーに、ジジイが釘を刺す。
「今までアッシュの寝室は、少しでも安らげるようにと
ローズがいつもバラの花で埋め尽くしていたんじゃよ。
ベッドカバーからカーテンから、毎日ローズが整えとったんじゃ。
それを思い出すのも辛いゆえの、大幅改築なんじゃろう。
主の寝室は、警備上あそこじゃなきゃ困るんじゃが
アッシュは今、書斎で寝泊りしておるようじゃぞ。」
「それで、彼女は大丈夫なんですか?
ショックで人格が変わるという話もありますし・・・。」
メンバーの心配に、ジジイはサラッと答えた。
「これを乗り越えてこそ、主なんじゃよ。
ダメなら、しょせん主の器じゃなかったという事じゃな。
その見極めはわしがする。
無理ならば切り捨てるまでじゃ。」
アッシュびいきのはずのジジイの非情な言葉に、驚いた一同を見て
ジジイがいかにも意外そうな素振りをする。
「街の名士が揃って何を驚いとる?
あんたらだって、こんぐらいやって権力を得とるだろうて。
シビアなもんじゃろ、政財界も。」
それを言われるとそうなんだが
館は街の重荷であると同時に、元々は街の良心でもあったのだ。
自分たちがやっているのはボランティアだと思いたい気持ちがあり
だからこそ改革は、断固として進めなければならない。
出来れば、あの忌まわしい相続を二度とせずに、だ。
「では、寝室の改築ぐらい認めてあげましょう。
今の彼女には、安らぐ場所が確かに必要ですからね。」
ひとりのメンバーの言葉に、他のメンバーたちがうなずいた。
ジジイはそれを見て、言う。
「そうか、じゃあ、そこはわしに任せんしゃい。」
呼び戻されて、長老会から了承を得たアッシュは
「ありがとうございますー。
今後も全力で頑張りますので、ご指導をよろしくお願いしますー。」
と、まるで心のこもっていない棒読みお礼を無表情でした。
そこへジジイの横やりが入る。
「ただし、認めるのは改築費と常識的な家具のみじゃ。
棚、鏡台、KOTATSU、FUTON、TATAMI
コンポとパソコン、DVD機器の類も許そう。
ただしTVは1台までじゃ。
他の物は、全部あんたの自腹で何とかせえ。」
それを聞いたアッシュは、初めて表情を崩し青ざめた。
「ええーーーーーーっ?
液晶、すんげえ高いんですよー?
ネオジオソフト、チョー美品レア物落札しちゃったんすよー?
美容機器だって、ゲルマニウムローラーとか高価ですよー?
超音波美顔器なんか30万超えですよー?
美しさを保つのも、崇拝対象者の義務じゃないですかー?」
「心配すな。
ない “美” は保つ必要もない。」
ジジイが超!セクハラ発言をサラリとし
紳士たるメンバーたちを慌てさせ
リリーは吹き出しそうになったのを根性で耐え
アッシュはヘナヘナと床に両手両膝を付いた。
アッシュとリリーが帰っていった後、ジジイは言った。
「さて、どう金の工面をするやら。
あやつに部屋にこもられたらマズいんじゃ。
大きな悲劇を味わったんだから
それをぜひとも館の管理に活かしてもらわにゃのお。」
今日のアッシュには、有無を言わせない迫力があったが
ふぉっふぉっふぉっ、と高笑いをするジジイを見ると
この人の方が真の鬼だ、とメンバーはゾッとした。
続く。
関連記事: ジャンル・やかた 62 10.3.18
ジャンル・やかた 64 10.3.25
ジャンル・やかた 1 09.6.15
投稿者: あしゅ
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ジャンル・やかた 63
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訪問販売
たまにうちにも訪問販売が来る。
ほんとこの訪問販売、嫌いで、そのせいでチャイムの音すらイヤなんだ。
昔はどうにか玄関を開けさせようと
自分の名前を言って、ご近所さんかと勘違いさせる手法が流行っていた。
これは 「ご用件は?」 の質問で回避できるのだが
中にはなかなか用件を言わない人もいて
もう、絶対に断るのに、何でこんな時間のムダをしなきゃいけないのか
イライラさせられる事も多かった。
今でもこれに似た手法はあって
「近所に越してきた○○です。」 とか言うんで、出てみたら
近所に代理店が出来た布団売りだったりする。
玄関先に、訪問販売お断りの札を掲げたいんだが
その札で “断れない人” 認定をされて余計にターゲットになる
とTVで言ってたので、それも出来ない。
訪問販売で買わなきゃならんものなど何ひとつない!
という信念があるので、ほんと来ないでもらいたいよ。
どうやったらチャイムを押す前に、それをわからせられるのかなあ。
このように、全断りをしているのだが
最近は腹が立つ言い方の販売員が増えた。
「○○ですが、ちょっと出てきてください。」
これ、すんげえムカつかないか?
「出てきていただけますか?」 じゃないんだよ。
勝手に来ておいて出て来いって、どういう言い草だよ?
この言い方、特に有名な会社に多いんだよ。
牛乳の宅配をしている超有名メーカーとか。
中でも私がとても怒っていたのが、某企業なんだ。
この企業さ、何度もしつこく来るんだよー。
先月もピンポン来たよ、夕方7時過ぎの飯作りの時間帯に。
「某企業ですが、お知らせがあるので出てきてください。」
本当にこういう言い方をするんだぜ?
「どういうご用件でしょうか?」 と、インターホンで訊いたら
光のご案内だと。
またかよ!!!
この某企業の光案内、去年も3度ぐらい来ている。
確か1度目はマンションタイプの光設置の案内で
そんなんは大家さんに言わないと無理だろ。
そんで2度目は長々と説明されて、考えてみます、で
後で調べたら、既に加入している契約の案内だった・・・。
1度目2度目はドアを開けて応対してこれだったんで
3度目はうんざりして、インターホンのみで対応した。
もちろん、既に入っている契約のご案内だった。
うち、何年も前からそこの企業の光なんだよ・・・。
うちが光に入る時に、大家さんに確認をしたら
マンションタイプの設置を固辞されたんで
戸建タイプのにしか入れなかったんだ。
こういう説明もちゃんとしとるというのに、また来たんかよ
今までのやり取り、全部受け流しかよ?
某企業は客の情報も確認せずに、ノコノコ訪販しとんのか?
私が何年も顧客である事は、一切意味なしか?
優遇せえとは思わないが、せめて契約者だと認識はしてくれよ!
呼んでもないのに契約者んちに来て
既に入っている契約の案内をするから出て来い、とは何事だよ!!!
数日後にポストにまた、その企業のチラシが入っていて
専サポに、こうこうこうなんだよー、と訴えたら
それはひどいんでクレームを入れろ、と指示された。
私的には、よくわからん分野でそういう苦情を言うのはとても苦手なんで
おめえが機嫌が悪くて、誰かに八つ当たりをしたい時に
私の代わりに電話してくれ、と言ったら
そりゃもういつでも! と何故かとても喜ばれた。
そんで早速機嫌が悪くなるような事が起きたんか、電話をしたらしい。
大家さんの感触が良かったんで
マンションタイプの光設置が出来ますよ!
そうすると今の契約は解除しなきゃならなく
工事費に2万何ぼ掛かりますけど
月々の使用料が500円安くなりますよ!
専サポは怒って、「アホか!」 と本当に怒鳴ったそうな。
その契約だと、安さの恩恵にあずかれるのは5年後以降で
しかも今の契約では、長期使用割り引きってのがあるんで
逆に損をするんだとさ。
「お知らせがあるんで出てきてください。」 にイラッとして
インターホン越しの対応で済ませたせいかも知れんが
そんな話、私は聞いてないよ・・・。
インターホンで、きちんと話さないのは何でだ?
意味のある話なら、こっちも玄関を開けるぞ。
不利な契約変更だとわかっているから
ツラをつき合わせて騙しにかかろうとしてたのか?
前3回が、既に入っている契約を契約しませんか? という
話にならん “お知らせ” だったんで
今回もそうだと思って、インターホンのみにしたんだが
今回のはちっとは違うNEW情報だったわけじゃん。
何でそれを最初に言わんかなあ。
ま、話を全部聞いても、PC系は自分ひとりじゃ即決はしないけど
立派な大企業なのに、こんなやり方をしてたら
詐欺会社にしか思えなくなってくるぞ。
訪問販売、何でこんなに多いのか不思議でならない。
需要があるんだろうか?関連記事 : 10.4.7 NTT光の営業
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ジャンル・やかた 62
配られた報告書とアッシュの解説に、長老会メンバーは苦悩していた。
「これは、本当の事なのかね?」
ひとりの紳士がアッシュに向かって訊ねた。
「何をマヌケな質問をしているんですかー。
これが、まごうことなき現実なんですー。」
資料を片付けながら、振り向きもせずに答えるアッシュに
他のメンバーが続けて訊く。
「きみは長年の護衛に罪をかぶせたわけだね?」
その言葉にアッシュの右目がピクッと動き
参加していたジジイとリリーはハラハラした。
アッシュは椅子に座り、テーブルを指でカツカツ叩きながら言う。
「こういう事を言うのは卑怯なんで、ほんと言いたくはないですけどねー
最前線にいない人にはわからないと思いますよー。
てか、普通の暮らしを出来るなら
こんな汚れ仕事、わかる必要なんてないですー。
死ぬか生きるかの環境なんて、存在しない方が良いんですからー。
でも私はもう、ドップリ関わってしまったー。
責任も重いー。
それをわきまえて、自分の仕事をこなしますから
今後は事後報告のみを待っていてくださいー。
この報告書を見ただけで、気分が沈むでしょー?
事件勃発の真っ最中に経過を聞いていたら、マジでウツになりますよー?
本当なら、改革が完了するまでは
皆さんへの報告も止めたいぐらいなんですよー。
知らない方が良い事も多いんですからねー。」
「知られたくない事をしている、って事かね?」
その言葉にアッシュが激怒すると、言った本人も含め全員が覚悟したが
意外にもアッシュは冷徹な表情で静かに答えた。
「知られたくない事をしていた事を
しないで済むようにしたいから、今頑張ってるんですよー。」
まるで早口言葉のような、わかりにくい返答だったが
メンバー全員がその言葉の意味を深く理解し、言葉に詰まった。
「どうせ汚れた手だから、責任は全部私が負いますー。
時間が掛かる事ですが、必ず私の代で終わらせますー。
そして私が死んだ後に、やっと館が浄化されるんですー。
その計画を見守っててくれませんかねー?」
長老会メンバーが皆、沈痛な面持ちで黙りこくったところに
アッシュが、紙を取り出した。
「それで、今回の締めくくりとして
私の寝室の改築をしたいので、その経費を認めてくれませんかねー?
図面と明細はこれですー。」
「何だね?」
ワラワラと集まって、その紙を覗き込む。
「部屋を丸ごと取り替えるのかね!」
「tatami?」
「液晶TV2台?」
会議室がザワめきたつ。
「これは何だ? メガドライブ?」
「SEGAのゲーム機ですよー。」
「こっちは何だ? ナショナルイ・・・オンスチーマー?」
「ああ、それは美顔器ですー。」
爪をほじくりながら答えるアッシュを全員が睨む。
「何のためにこんな物が必要なのかね?」
「ほんと、すいませんー。
自分でもちょっと独裁入っちゃってるかなー、と思ったんですけどー
私の心の安定のためなんですー。
さっきは大きい事言っちゃいましたけどねー
私も今回の事は、精神的にものすごいキツいものがあってですねー
せめて寝る場所ぐらいは、安心できる空間にしたいんですよー。
実はもう発注済みなんで、後は工事を始めるだけですー。
でもこれでも売れる物は全部売っちゃって
費用の足しにしようとしたんですけど、もう全然足りなくてー。」
一本調子で答えるアッシュに、一番若そうなメンバーが口を開いた。
「あなたは、OTAKU? とかいうやつでーすか?」
アッシュは はあ??? 何言ってんの? こいつ
という表情で、そのメンバーを睨んだ。
いつもは真面目にふざけた態度を取っているので
態度の悪さのランクで言ったら、そう変わらないのだが
今日のアッシュには、どことなく凄みがある。
たとえて言えば、チンピラ風情が盃をもらった、みたいな。
そんなアッシュの態度に戸惑ったメンバーが無言でいると
アッシュがテーブルの上に両手を組み、ようやく普通の口調で話し始めた。
ご機嫌が直ったのかと思ったが、その内容はよりヒドいものだった。
「子供を何人も誘拐してきて殺して血を飲むとか
使用人に次々に暴行するとか、そんな事をするより
ゲームの中でモンスターを倒している方が、健全じゃないですかー?
そういう極悪非道な支配者って大勢いるわけですしー。」
あまりの言い草に、互いに目を合わせて動揺するメンバーたち
ジジイがその様子を見て、アッシュに告げた。
「ちょっと我々だけで話すから、席を外してくれんかのお?」
アッシュとリリーが出て行った後、残された長老会メンバーは
ジジイのアッシュかばい独演会を想像したが
意外にもジジイが発したのは質問だった。
「それでどうするんじゃ?
アッシュを主から下ろす事も考えるべきじゃないかい?」
その言葉を聞くと、途端に会議室がザワめき始めた。
「いや、その選択肢はないんじゃないですか?
ここまで来といて、今更交代は愚策の極みでしょう!」
「実際にあそこまで出来る人間は、そうはいないと思うねえ。」
「そうだな、ゼロから権力を持った人間は、勘違いの全能感に溺れる。
しかし彼女には、それだけは見られない。
現に初めての個人的要求が、この寝室の改築だ。」
次々と起こるアッシュ擁護に、ジジイは内心ほくそ笑んだ。
じゃろ? 冷静に考えればあんな逸材はおらんぞ?
ジジイのアッシュ交代提案は
長老会に、自らの意思でアッシュを選ばせ直すためのワナだった。
ダラダラと30余年、運のみで主を務めていただけかと思いきや
それだけの功績を残せたジジイは、やはりかなりのタヌキであった。
続く。
関連記事: ジャンル・やかた 61 10.3.16
ジャンル・やかた 63 10.3.23
ジャンル・やかた 1 09.6.15 -
自意識
この言葉の真の意味が、本当にわからん。
自分でも、あまり使ってないんじゃないかと思う。
自意識について、予想してみると
多分、世界の中での自分の存在の確立なんじゃないかと思うが
この時点で既に大間違っていたら
この下全部、誤爆になってしまうんじゃないかと思うが
そういう冒険の旅には出なくても良いんじゃないかと思うが
毎度の綱渡りだし、今更何を守る? って感じじゃないかと思うが
韻を踏めたか?
自意識が自分の確立なら、それは必ず環境が関わってくる。
自分の置かれている境遇と周囲の人々。
その中で、自分と周囲の感覚の落差が大きいほど
自意識は強くなるような気がする。
自然体で生きていられるのなら、自分の確立など考える必要もないからだ。
“考える”“意識する” っちゅうのは
哲学的趣味の持ち主じゃない限り、何かを解決したがっているわけで
大抵の場合、それについて不満を持っているからである。
じゃあ、自意識が強いヤツはどういうタイプか。
ここで大きく関係してくるのが、自己評価だと思う。
自己評価が冷静に客観的に出来るというのは
他人の目を取り入れるのが上手いヤツである。
自意識が低いヤツは、他者の評価と
自分像のバランスを上手く取れているので
自意識を意識する事なく、生きていける。
つまり自己評価が極端に高いか低いか、なヤツが自意識が強い。
自己評価が高いヤツは、自分の不幸不遇を他者のせいにする傾向がある。
自分はちゃんとやってるのに、周囲の見る目がなくて評価されない
と、疑いなく思って、己を甘やかせている。
自己責任感がないので、自業自得すら考えない。
自己評価が低いヤツは、他人の目を気にする神経を持ち
自分を大事にはするけど、自分自身を信用できない。
こう考えていくと、どうも自意識というのは
あまり良い意味ではないようなイメージになってくる。
周囲に対する不平不満が溜まってきた時に、自分の内に目を向け始め
その時に追求するのが、自意識ってやつじゃないだろうか。
しかし、一見、自意識の権化のように思える勘違い系は
唯我独走状態なので、社会まったく眼中なし空間にいて
自意識云々には囚われていないような気がするのだ。
となると、自意識というのは、ある程度の社会性がないと
持つ事すらできないもののような気がする。
この点においては、一概に悪いばかりとも言えないので
度が過ぎるとマズい、という話なのだろう。
まあ、これは何に対しても言えるのだがな。
自分の事で考えてみると、私にはあまり自意識はない。
私は勘違い系に属するからだ。
自分の世界を持っていて、それで満足なのだが
とにかく他人に迷惑を掛けたくない、という気持ちがあるので
社会との穏便な迎合を目指している。
自分の世界は自分の心の中にだけありゃ良いしな。
そして何より、自分にも他人にもあまり期待をしていない。
(もちろん例外はあるが、基本的に大体、って話である。)これ、えらい投げやりな感覚に思えるだろうが、違うのだ。
人に期待しないでいると、他人のちょっとした厚意に気付けるようになる。
その上、その “意外な厚意” が、とてもありがたく感じる。
自分に期待しないと、自然体でいられる。
やっただけの評価しか貰えないのも当然だと納得できる。
何の問題もなく、逆に良い事だらけである。
私の言う “期待” とは、自分に都合の良い願望を差す。
社会というのは、ギブ&テイクが基本設定だと思う。
これを逸脱したら、失望が結構な高確率でやってくる。
それに懲りたんで、私は期待をしない努力をしているのだ。
そこまで極端に走らなくても良いだろうけど
己をわきまえない期待というのは
多くの場合、周囲にも自分にも害にしかならない。
自意識というのは、実はこの “期待” じゃないかと思うのだ。 -
ジャンル・やかた 61
住人たちの動揺は、アッシュの演説で見事に収まった。
この館で再び殺人が起こるなど、あってはならない事だったが
それは “愛” のためだと認識されたのである。
理由が愛だろうが何だろうが、殺人は凶悪犯罪なのだが
長期間に渡って戦場だったここでは
やはりそのあたりの感覚が狂っている、という事なのだろう。
反乱グループの残党も、逆らう気力を失っていた。
たとえ主が許したとしても、主の周囲が許してはくれないのである。
積極的だった仲間が真っ先に殺された、という恐怖もあるが
何よりもその内のひとりが逃亡した、という方に失望を感じた。
どんなに偉そうな事を言っても、しょせんビビったら逃げ出してしまう。
だが主は絶対に逃げる事はないだろう。
あの演説の時の、得体の知れない空気・・・。
自分たちと主では、気合いが違う。
主が主になった理由が、何となく理解できた。
こういう状態で、いつまでもツルんでいたら
いつ主の目がこっちに向くかわからない
その恐怖から、グループは自然に瓦解していった。
ジジイとリリーは、アッシュのウソを最初から理解できたが
調査や計画に加わっていた他の館員たちはどう思ったか。
ローズの最期の行動は、カメラのない室内以外はすべて録画されていた。
アッシュを屋上に連れて行ったのも、屋上での会話も。
それをジジイとリリーを含めた、今回の事件関係者全員で検証した結果
とり残されたアッシュの様子も含めて
罪をかぶるのはローズの意思だった、と結論付けた。
それにしても、アッシュのあのショックの受けようは
ローズの考えを知らされていなかったように見える。
なのに素早く切り替えるあたり
お互いが何も言わずともわかりあえる仲だったのだろう
と、都合の良い方向へと解釈された。
それを “事実” と判断して、館員たちは皆泣いた。
ジジイとリリーも、はばからずに涙を流した。
これは主様の評価については心配なさそうね。
リリーは、密かに館員たちの心情をチェックしていたのだった。
一連の事件は、あまりにも犠牲が大きすぎた。
でもここを乗り切って館を安定させなければ、その犠牲がムダになる。
そのためには、事務部全部の団結が必要なのよ。
ジジイのアッシュへの信頼は、一瞬も揺るがなかった。
それどころか、前にも増して固くなっていた。
ひとつの空間の頂点に立つ者は、大抵血まみれじゃ。
他人の血だけじゃなく、自分の血も浴びておる。
それに耐えられるか耐えられないかが、資質というものなんじゃ。
あやつは迅速かつ的確に、“主” の成すべき道を見抜いた。
本来なら、手放しで褒めてやりたいもんじゃぞ。
リリーの懸念、ジジイの賞賛、そしてデイジーの心配。
デイジーは、ローズの死を喜ぶ、ただひとりの側近だった。
主様に “特別” があってはならない。
常々あの女の存在を邪魔に感じてきたけれど
意外にもそのローズが死んでくれて、主様はそれを上手く利用した。
主様がおひとりで立ったという事。
これからが真の主様の始まりだわ!
しかし大きな心配があった。
アッシュは、固形物が食べられなくなっていた。
口に入れても吐き気で飲み込めないようだ。
このままじゃ体力がなくなって死んでしまう、と
焦っているところに、アリッサの言葉で余計に心配が重なる。
「主様のおからだがつめたいだよ。」
栄養が摂れていないんだわ
何とか主様にお元気になってもらわないと。
デイジーは、和食サイトを必死に検索していた。
各々の想いをよそに、アッシュは精力的に仕事をこなした。
反乱事件でうろたえていた期間に滞っていた通常業務を片付けるのだ。
長老会には今回の報告のため、臨時会議の開催を要請した。
そのための資料作りにも手間が掛かる。
館の軌道を、早く元に戻さなくてはならない。
そして改革を進めなければ。
私の悪行を知っている者たちに、有無を言わせない結果を出さねば。
悪行・・・・・
アッシュは無意識に浮かんだ単語に、つい考え込みそうになって
頭の中で開きかけた箱を、慌てて閉じた。
感情はいらない!
多くの人の人生が掛かっている、という重責のみを見つめろ。
決定権を持つ者に私情があってはならない!
アッシュは寝室の改造を決めた。
天井も床も窓枠も含め、一部屋丸ごとの改築である。
家具や調度品、枕カバーにいたるまで、すべてのものを新しく替えるのだ。
ローズの寝室は封鎖し、入り口を取り壊し壁にする。
アッシュの寝室と繋がっているドアも取り壊し
壁にして、更にそこには棚を置こう。
以前のメルヘンなベッドルームとはうって変わって
アッシュ本来の好みの、殺伐とした空間にする計画を立てた。
パソコンはペンティアムコアi7自作を注文し
液晶TVは映画用の105インチと、ゲーム用の52インチ
TVゲーム機は、PS3からワンダースワンまで万遍なく揃え
ビデオデッキ、DVDプレーヤー、ブルーレイ、HDVD
CD、MDは無難なオーディオシステムにしたが
レコードやカセットテープは、真空管アンプと張り込み
ドルビープロロジックのサラウンドシステムも忘れない。
ビデオ棚、ディスク棚、ゲームソフト棚、CD棚も、幾重にも。
美容雑誌や攻略本が並んだ頭の悪そうな本棚に
窓際の壁には、折りたたみ式三面鏡付き洗面台とコスメラック
メイクスペースの棚には、数々の美容機器
化粧品専用冷蔵庫も完備は当然。
部屋の入り口には、靴を脱ぐ場所を設置し
床は畳、コタツに座椅子に布団直敷き。
館の中でのこの一部屋を、どこぞの日の本の国の
ちょっとマニア入っちゃってる~? みたいな~?
なヤツが住むアパートの一室みたいにしたい。
よし! これなら1万年でも引きこもれるわ
てゆーか、こういう部屋に住めるなら、私の人生に何の悔いもなし!
そう、悔いなどひとつもない!!!
続く。
関連記事: ジャンル・やかた 60 10.3.12
ジャンル・やかた 62 10.3.18
ジャンル・やかた 1 09.6.15 -
管理人ぷらちッとの関係
以前、ぷらちッは私の彼なのか元彼なのか、と問われて
あはは、ぷらちッ、気の毒に (爆笑) で済ませたんだが
よく考えてみると、このブログに来てくれる人々が
そういう誤解をしてもおかしくない事に気付いた。
この類の誤解で傷付くのは、普通は女性側なんだが
うちの場合、どう考えてもぷらちッの方が受けるダメージがデカい。
なんせ私はナイスバディだが、顔も頭も性格も悪いババアだからな。
そこで、ぷらちッの名誉を守るため、私たちの真実を書いておく。
私は昔、ポトリスというネットゲームをやっていた。
そこでぷらちッと同じギルドにいたのである。
私はギルドのHPを作っていて、ギルドが解散する時に
ぷらちッが、新しいHPを作ってくれる、と言ってくれた。
ちなみに私はネトゲ時代の自分を、とても後悔している。
やりたい放題で、トラブルメーカーだったからだ。
当時、迷惑を掛けた人たちに、土下座して回りたいぐらいだ。
多分、今やってもあの頃と寸分違わぬ言動をするであろう。
私はそういうヤツだからだ。
そんな自分を反省しているので、二度とネトゲはやるまい、と固く誓った。
ぷらちッがそんな災いの元と、何故一緒にHPをしようと思ったのか
そこは謎なんだが、こんなありがたい話に乗らないわけがない。
潜伏のとこから、昔のHPの名残りが見られるが
ごらんの有り様の無残な出来具合いなんで
同情されての申し出だったんじゃないか? とも推測している。
ところが蓋を開けてみると、ぷらちッが用意してくれた場所は
何と! 有料の・・・えーと何だっけ、サーバー?で
しかもぷらちッはほとんど書き込みに来ない。
ちょ、金の掛かった場所で私ひとり遊んでて良いんかい?
と気が引けるんだが、何も言われないので好き放題にやっている。
もしかしてぷらちッは、ネトゲ時代の私の乱行を見て
善良な他ユーザーから隔離せねば、との使命を担ったのかも知れない。
そんな無法な私でも、時々悩む。
くだらん記事しか書けない時など
こんなん書いてて、ぷらちッに申し訳ない、と思う事もある。
全記事くだらんから、毎日自分を責め抜くべきなのに
“時々” しか悩まないのは、まさに “私” の無神経なところだが
それでも、今の (比較的大人しい) 自分がいるのは
なるべくぷらちッに迷惑かけまい、と己を戒めているからだ。
そういう心境になったのも、ぷらちッのお陰だと本当に感謝している。
狂犬が飼いならされて大人しくなった、みたいな感じもあるので
ぷらちッは、ネット世界の平和にものすごく貢献している。
ああ・・・やっぱ私隔離政策かも知れない・・・。
ぷらちッと私は、現実では会うどころか話をした事もない。
よって顔も声も本名も住所も、お互いに知らない。
ぷらちッが私について知っている事は、このブログ以上の事は何もないし
私がぷらちッの事で知っているのは
男性で三重県出身で既婚者で東京あたりにいる、という事だけだ。
(この情報は、ぷらちッ自身が書き込みしているので
ここに書いても差し支えはないよな?)
ぷらちッとの連絡は、何もない時は1ヶ月に1度ぐらい
メールで調味料の情報交換程度、という
どこの主婦の会話だ? レベルのやりとりのみ。
普通の交友関係以下の希薄な付き合いである。
まあそれが “私” と長続きさせるコツかも知れないが
私にとってぷらちッとの関係は
お釈迦様とその手の平の上にいる孫悟空のようなものだと感じている。
もちろん私がモンキー側だ。
私にとって、ぷらちッの取る距離感はとても心地良いもので
こいつヤリ手だな、と感心させられる。
こんなに私を泳がせられるヤツがいるとは、世の中ほんとにあなどれない。
何かやたら褒めてしまったが
他に言う事が見つからないんだから、しょうがない。
(こいつ、何を警戒しとんのか、私の前では尻尾を出さないんだよ。)
ぷらちッの考えている事も、まったくわからないが
多分何も考えていないんだろう、と気にしていない。
人の気持ち、しかも恩義あるヤツの気持ちを
あれこれ詮索する趣味もないんで
言いたい事ができたら言ってくるだろう、ぐらいに思って
ちっと気を遣うぐらいで、自分のしたいようにしているだけである。
この自由さが、私の増長を促がしていなくもないが
道を踏み外しすぎたら、必ずしっぺ返しが四方八方から来るので
人生プラマイゼロで、まあ良かろう。
この先の私たちの関係がどうなるかもわからないが
ぷらちッには、やめたい時はいつでもやめてくれ、と伝えてあるので
今のところは、私との付き合いは負担にはなっていないはずだと思う。
我ながら不思議な関係ではあるけど
ネットによってもたらされた新しい付き合いの形のようで
そんな新規の関係を、グダグダ考えてもロクな答も出せんだろうから
私は甘えるだけの姿勢で、今後もやっていきたい。
ところで、ひとつ面白い事があった。
数日続けて、ぷらちッの夢を見た事があったんだ。
何かの虫の知らせか? と心配になったんだが
夢の中のぷらちッが、やたら楽しそうだったんで
別に悪い事が起きているわけじゃないだろう、と放置していた。
そしたらその数日後の明け方4時!!!に、ぷらちッからメールが入り
「明日結婚式です」
そんな時間に入るのは、大抵が凶報。
寝ぼけ眼でビクビクしながらメールを開いたので
おめえ、何ちゅう時間にメールしてくるんだよ! と
布団の中でしばらく脱力させられたもんさ。
結婚直前なんて、むちゃくちゃ忙しいから
メールを打つ時間も取れないだろうし
とにかく嬉しい事だから、そこについては少ししか触れずに
(少しは触れたんかよ!) おめでとう返信をしておいた。
それ以来、寝室に携帯を持ち込むのはやめたがなwww
今になって思えば、あの夢はぷらちッの幸せな気持ちが
私に届いていたのかも知れない。
そう思うと、何となく絆みたいなもんを感じて嬉しい。
先日は、ぷらちッに家族が増える夢もみた。
これも普通の場合は吉報だろうから、当たっていると良いなあ。
ぷらちッ、幸せでいてくれよ。
私は不幸だが、気にすな。 ああ、露ほども気にすな。
夢の中のぷらちッは、出てこなかった。
ただ、ぷらちッがそこにいる、という感覚だけ。
これも私たちの関係を暗示していて、面白い。 -
ジャンル・やかた 60
「最近の連続した死亡事件は、管理部でも不審に思ったので
密かに調査をしていましたー。」
アッシュがいつもの口調で話し始めた。
それも皆が一番聞きたかった本題を、いきなりである。
「その結果、浮かび上がったのが、私の護衛、ローズさんでしたー。」
ジジイとリリーは、内心驚愕した。
実際には、そんな動きは一切なかったからである。
「そこで私はローズさんに問いただしてみましたー。
すると、驚くべき事が判明したのですー。」
少し間を置いたのち、続ける。
「今回、亡くなった人たちは皆、現在の館の改革に反感を持ち
私を襲撃しようと計画を立てていたのですー。
私を良くは思わない人もいるとは聞いていましたが
まさか具体的な襲撃の計画があるとは思っていませんでしたー。
これは、私の管理不行き届きですー。」
ところどころに本当の事を織り交ぜながらアッシュが語る。
大体の主旨を決めたら、後は言いたい放題がアッシュのやり方なので
通常の演説の時にも、原稿は一切持ち込まない。
会場を見渡しながら、来ている人々ひとりひとりと
順々に目を合わせつつ大声で話す。
それが説得力の助けになっていたが、アッシュは無意識にやっていたので
天性の詐欺師能力を持っているのかも知れない。
「本来ならば襲撃計画の事を知った時点で、私に報告すべきでしたー。
しかしローズさんは、数年前に姉バイオラさんを
彼らの仲間の襲撃で亡くしていたのですー。
ローズさんは、彼らを放置していたら
繰り返される襲撃で、いつか私が殺されると焦ったのでしょうー。」
アッシュは一旦うつむき、迷うようなしぐさをした後、再び口を開いた。
「反乱グループのリーダーのバスカムさんが自殺してしまい
その死の疑いが私に掛かっている、と知ったローズさんは
彼らを殺しましたー。
ディモルさんと、タンツさんですー。
オラスさんは館を逃げ出し、州外れで車にはねられて亡くなりましたー。
バスカムさんとオラスさんの事は、悲しむべき偶然の出来事で
ローズさんとは無関係ですー。」
ほおー、そうだったのか、と、あちこちでかすかな声がする。
「ローズさんは、これらの事を率直に話してくれましたー。
ローズさんのした事は、してはいけない事ですー
しかし全部、私のためだったのですー。
私はどうしてもローズさんを責める気にはなれませんー。
こんな事では、主失格ですー。
私も同じく責められるべきなのですー。」
アッシュはここまで話すと
人々を見回していた目を前方の空間に固定した。
どこを見ているのかわからない、焦点の合っていない眼差しだった。
「・・・ただ・・・、皆さんに固くお願いしたいー。
何か起きたら、周囲の人、出来れば私にも相談をしてくださいー。
苦情や不満がある人も、私とまず話し合う事をお願いしますー。」
次の瞬間、アッシュの様子がガラリと変わった。
「そして・・・何があっても、自ら、・・・死を、選ばないでくださいー。
死んで、ラクになれる、とか、ありませんー。
自殺、してからが、本当の、苦しみの、始まり、なのです、からー。」
アッシュの表情が強張り、視線は変わらず宙に固定されている。
その様子を見ていた人々は、アッシュが泣き出すかと思ったが
アッシュの目からは涙の一粒も零れ落ちず、まばたきすらしない。
それを見ていると、何故か寒気がしてきた。
館に来た当時からずっと、ローズがアッシュから離れずに守っていたのを
住人全員が知っていて、ふたりの間には強い絆が感じられた。
そのローズが、罪を犯したとは言え目の前で自殺してしまい
どれほどのショックを受けただろうか
誰もがアッシュの悲しみを、容易に想像できる。
しかしアッシュは微塵も悲しんではいなかった。
自分をこの世界にひとりにした事を、深く強く怒っていたのだ。
経験した事のない、静かなそれでいて激しい怒りであった。
アッシュの形相には、無表情なのにそれがにじみ出ていた。
体の周りに冷気が立ち上がる幻が見えるほどの迫力が。
その異様な雰囲気に、震え上がる者もいたが
その事が逆に最高の悲しみに感じる者、涙を流す者もいて
講堂中が恐怖と悲しみの織り交ざる、重苦しい雰囲気に包まれた。
「重ねてお願いしますー。
自殺だけは絶対に絶対にしないでくださいー。」
そう言うと、ようやく視線を落として壇上を降りた。
アッシュが控え室に入っても、誰も口を開かず
しばらくそのまま放心していた。
ジジイとリリーは、予想だにしなかったアッシュの演説に
かなりの動揺をしていたが、それを表情に出さずに聴いていた。
住人たちに邪推されるとマズいからだ。
しかし住人たちは全員、壇上のアッシュに注目していて
誰ひとりアッシュから目を離す者はいなかったので
ふたりのこの演技も徒労に終わった。
無言で執務室に戻ったジジイとリリー。
アッシュは事務部に寄っているようだ。
部屋にはふたりだけだったが、演説について話す気にはなれなかった。
アッシュの話した事は、事実とは違う。
おそらくアッシュの今の状況を心配したローズが
何かを取り決めたのであろう。
演説で、ひとことも “事実” という単語を使わなかったのは
アッシュに罪悪感があるせいだろうか。
ふたりともそう想像したが、“真実” は誰にもわからない。
当のアッシュにも。
続く。
関連記事: ジャンル・やかた 60 10.3.10
ジャンル・やかた 61 10.3.16
ジャンル・やかた 1 09.6.15 -
マウスパッド
またウィンドウズのアップデートが言うてきとる。
うちのパソコン、どうもこれでブルーストップするみたいなんだ。
専サポにメールしたら、「しないでください」 とひとこと。
とうとうマイクロソフトが敵になってしもうたか・・・。
更新がない時は、このアップデートによるパソコンクラッシュで
ここの記事を読んでいる人にとっても
マイクロソフト社は強大なエネミーになってしまった事になるのだ。
ふはははははははははは
と、そういうたわ事はどうでもいい。
うちのリビングは6畳の畳張りである。
コタツは必須。
コタツときたら、当然座椅子も必需品。
秋から春先にかけて、このセットから離れられん生活である。
“リビング” じゃなく、正に “茶の間” で
オシャレさのかけらもねえが、ないと部屋内で凍死するに決まっている。
その部屋には、ゲーム機やら化粧品が陣取っているので
パソコンラックなど置くスペースがない。
と言うか、机など足先が冷えてやっとられん。
何とかコタツに入って寝っ転がりながらネットを出来んものか
と、そういう事にだけは熱心に知恵を絞る私が編み出したのが
植木鉢置きの台にパソコンの箱を置き
折りたたみ式ミニテーブルにモニターを置く戦術。
見下ろすのは好きだが、見上げるのが大嫌いなのは
首が凝るからで、高飛車なせいではない。
TVも出来れば地ベタに置きたいが
ビデオデッキやらDVD等があるので
仕方なくTVラックみたいなものの上に置いている。
TVが薄型になってるんだから、こういう周辺機器も
縦置きとかにならんと、台だけデカくて見苦しいと思うんだがなあ。
まあ、そんなこんなで、うちのパソコンは
かろうじて床から30cmぐらい上に置かれている。
座椅子に座って、コタツに片足を突っ込んで
キーボードは膝の上、マウスは床で動かしている。
こんなんやっとるから、モニターからは1m弱離れて操作しておる。
字が小さいと見えんのは、決して老眼なせいじゃねえぞ。
なので文字設定を超特大にしとるが、そのお陰でサイトが見づらい。
文字が重なってしまうサイトもあるんだ。
まったく、ラクあれば苦ありでヤになるよ。
ここで問題発生。
畳な、マウスが利かないんだよ!
うちのマウス、コードレスなんだが
どうもあの畳の目とやらが、マウスの電波?を乱反射するようで
画面上でカーソルがワープしまくるんだ。
そもそも畳って、あまり好きではない。
ついうっかりお出掛け前に寝てたりすると、顔面に畳の目の痕が付いて
そんでババアだもんで、お肌のハリがなくてその痕が取れねえ取れねえ。
え? ご両親魚人? みたいな、ウロコ状のツラで出掛けにゃならん。
そういう切実な事情もあって、畳の上にじゅうたんを敷いた。
(これ、カビの元になるんで、本当はしない方が良い。)
じゅうたんも、私の弾力のないお肌とマウスのために
デコボコのないやつを選んだんだが、安物なんで古くなるとシワが寄る。
じゅうたんも女性の肌と同じだな。
困るのは、そのシワで時々カーソルが仔犬のようにプルプル震えやがる事。
ある意味可愛いと言えなくもないが
うっとうしいので、どっかで貰ったマウスパッドを使ってみた。
しかしマウスパッド、小さすぎるんだ。
今まで床全体がマウスパッドと言わんばかりに
縦横無尽に動かしてきた私にとって、マウスパッドの世界は狭すぎる。
1m×1mぐらいのマウスパッドってないんかなあ
と、専サポに訊いたら、地雷を踏んだようだ。
専サポは常々私のパソコン環境がものすごく気に食わないらしく
しつこくキーボードカバー叩きから始まって
これまた、くどくモニターカバーの文句をたれ
パソコンの箱置き場や、モニターテーブルにまで怒り出した。
もう、私のやってる何もかもが間違ってるそうである。
そう言われれば、そうかも知れんが
私は私なりにパソコンを大事にしているんだよ。
それ以上に自分を大事にしてるがな。
怒ってくれるのは、ありがたい事なんで
(決して直す気はないが) すいませんすいませんと素直に聞いた。
怒られている時って、結構至福の時間だよな。
だが、1m、いや50cm×50cmぐらいのマウスパッド
もしくはマウスパッドの代わりになるものを探す野望は失ってはいない。
雑誌とかでも試してみたけど、ツルツルしてるのもダメなんだよな。
てかさ、マウスパッドって何であんな小さいんだよ?
とか言ったら、「皆、机の上で操作してるからです!」 と怒られたが。 -
ジャンル・やかた 59
「あたしはあんたを守る、と約束したね?」
ローズの問いかけに、アッシュは、うん、だから殺して良いよ
と心の中で返事をしながら、無言でうなずいた。
「それはあたしの命を懸けて誓った事だ。
あんたがどうなろうと、絶対にあたしはあんたを守る。
だから・・・。」
そこまで言うと、ローズはあたりを見回した。
天気が良いせいか、屋上には数人の女性が輪になって座っていて
裁縫箱や布があるところを見ると、何かの手作業をしているようだ。
アッシュとローズが来たのに気付いて、手を止めて見ている。
「ああ、ちょうど良いね。」
ローズは女性たちを見ながらつぶやいた。
「ここで待ってな。」
ローズはアッシュにそう言うと、女性たちの方へと歩いて行った。
アッシュがキョトンとして見守っていると
ローズは女性たちの横を通り過ぎ、立ち止まり
そしてアッシュの方を振り向いて、にっこりと笑った。
次の瞬間
ローズが 真っ青 な 空 に 溶け て いった
とぎれとぎれに薄っすらと思うアッシュを引き戻したのは
女性たちの響き渡る悲鳴だった。
アッシュはそれだけで全てを悟った。
足どころか、指の一本すら動かせなかった。
一体どれほどの時間、そこに立っていたのかわからないが
アッシュが我に返ったのは、リリーに体を揺さぶられた時だった。
周囲では大勢の人々が、慌ただしく走り回っている。
リリーが自分に向かって、しきりに何かを叫んでいるようだが
何故だか、その言葉がどうしても理解できない。
これまでにないアッシュの動揺ぶりを見て、リリーが命じ
アッシュは警備員に抱きかかえられて、寝室に戻った。
医師が来て鎮静剤を注射したせいか
アッシュは何週間ぶりかで、よく眠れた。
それは、安眠とはほど遠いものであったが。
看護士が様子を見に行くと
アッシュは目を開いて天井を見つめながら、ベッドに横たわっていた。
身動きひとつしないその姿に、ちょっとちゅうちょしたが声を掛ける。
「・・・お加減はいかがですか?」
アッシュはその声を聞いた途端、スッと起き上がった。
「迷惑を掛けて申し訳ありませんでしたー。
もう大丈夫ですー。」
ベッドから降りながらフラ付いたので
もう少しお休みになった方が、と止める看護士に
にっこり微笑みながら、バスルームに入っていった。
風呂に入り、さっぱりした様子で執務室に入ってきたアッシュを見て
連絡を受けて待っていたジジイもリリーも
お茶を用意していたデイジーも、一様に驚いた。
2日前に放心していたとは思えないぐらい、平静なのである。
「ご心配をお掛けして、すみませんでしたー。」
いつもと同じように話すアッシュだが、どこか以前と雰囲気が違う。
こんな時に口を開くのは、上司であるジジイの義務。
「・・・それで、何がどうしたんじゃ・・・?」
「それは今日の演説の時に話しますー。」
アッシュのきっぱりとした口調に、誰も異議を唱えられなかったが
全員が思った。
今日、演説をするのか?
館中が大騒ぎになっているので
すぐにでも説明をした方が良い事は良いのだが
ローズが死んでから2日間、ずっと眠りっ放しで
葬儀にも出席できなかったアッシュが、起きていきなり演説など
ムチャではないのか?
そんな心配をよそに、アッシュはいつも以上にテキパキと事務をこなす。
自分が寝ていた間の事を、何ひとつ訊かないし
その前後にアッシュとローズに起きた事も話さない。
何かがおかしい。
が、ここはアッシュに任せるしかない。
ジジイとリリーには、演説までの1時間がやたら長く感じられた。
講堂には住人たちのほぼ全員が来ていた。
皆、演説があるという放送を聞き、仕事も何も放っぽり出して来ていた。
講堂は本来、全員分を収容できる大きさだったが
詰めて座らないので、立ち見まで出る有り様だった。
ジジイとリリーは、アッシュの後ろについて講堂に入り
席を譲ろうとする男性の勧めを丁寧に断って
控え室のドアのところに立って聴く事にした。
アッシュが壇上に上る。
人で一杯の講堂は、無人であるかのように静まり返った。
誰も呼吸していないかのように。
これぞ固唾を呑む、というやつだろうか。
アッシュがマイクを少し動かし、口を開いた。
続く。
関連記事: ジャンル・やかた 58 10.3.8
ジャンル・やかた 60 10.3.12
ジャンル・やかた 1 09.6.15 -
牛深ポンカン
兄に河内みかんを送ってくれ、と頼んでいたら
2月初めに牛深 (うしぶか) ポンカンを送ってきた。
へ? と思ったけど、ありがとうの電話をすると、兄の言い訳が
近所の八百屋 (はあ・・・) に、河内みかんを買いに行ったところ
5kgのは送料より安かったんだと。
みかんを10kgも食えないだろうし
現物より送料の方が高いのが、どうしても許せないので
もっと上等のが出るまで待とう、と思って
翌週その八百屋を覗いてみたら、みかんがない。
店員さんに訊くと、河内みかんはもう時期を越した、と。
で、ポンカンならありますよ、と。
私はポンカン好きなんで、10kgのなら送料より高いし
誰かに分けれ、これを逃すともう後がない、という事だそうだ。
とにかくお礼を言って、ポンカンを食ったら
ものすごくイラッときた。
牛深ポンカンよ、おめえもか!!!!!
日頃お世話になっている友人知人に、それをお裾分けした。
みかんは好きだけどポンカンは・・・、と言う人もいたが
「甘いみかんが好きなら、お勧めだよ。」 と言うと
とりあえず食ってくれた。
と言うのも、私のお勧めには信頼を持たれているのだ。
自分の好みと万人受けが違う自覚があるので
「私は好みだけど、お勧めはしない」 と言うから
その私が素直に勧めるのは、全部当たりなのだそうだ。
さて、牛深ポンカンを食った人は必ず問う。
「これ、いくら?」
「10kgで2000円」 と答えると、絶句される。
河内みかんの時もそうだったが
「何でこんな美味しいのが宣伝されてないの?」 と問い詰められるのだ。
熊本の人はいつもこれを食ってるので、これが普通で
そんな特別な物だとは気付いていないんじゃないか? 私の予想だけど。
と答えている。
「・・・悔しい・・・。」 と言う人もいて、何かと思ったら
「うちらが今まで美味い美味いと食ってたみかんは何だったのか!」
と、怒っていた。
決して威張って渡したわけじゃないし
あげて美味かったのに怒られるのは、通常の感覚なら解せないだろうけど
私にはその気持ちが、ある意味よくわかるので
「ごめんね、南国は果物が美味いんだよ。
関西は美味い食い物がたくさんあるじゃん、ひとつぐらい許してよ。」
と、謝っておいた。
河内みかんよ、牛深ポンカンよ、これは最高の賛辞じゃないか?
熊本の人、関西のスーパーの人、見てたらどうか考えてくれ!
熊本の河内みかん、植木スイカ、牛深ポンカン、日本一なんだよ!!!
関西のスーパーで見かけた熊本の野菜果物は
熊本きゅうり、熊本トマト、熊本スイカ、熊本みかん。
きゅうりは普通なんで、あったら愛でなるべく買うようにしている。
トマトは買わない。 正直言って不味い。
野菜はどうしても東の高地に負ける。
熊本は馬刺しをプッシュしてるが、確かに美味いが
真に絶品なのはフルーツなんだよ!!!!!
熊本スイカは、少々高値でもすぐ売り切れている。
でも熊本みかんは、他産より100円高しかも少量なのに
買って食ってたら、そんなに美味しくなかった。
何をやってるんだよ、河内みかんーーーーー
普通ので美味いのに、何でそれを持ってこないんだよ?
ネットで河内みかんを検索してみたら “幻の” とかで売ってるし
確かに幻っぽく無名なんだけど、微妙に高級なのばっかりだし
そんな商売してんなよ。
河内みかん、普通ので日本一なんだよ。
宮崎のマンゴーみたいに、超高級品な売り方をしてちゃダメだ。
そのままで今のままで、日本国民に広く愛される逸品なんだよ!
熊本、意外な事にイチゴも美味かったんだと、わかった。
関西に来て食ったイチゴ、どれもそれほどじゃないんだ。
熊本で何気なく食ってたものが、実は美味い部類だったと
よそに出て、始めて気付いたよ。
熊本は普通のフルーツのアピールに、もっと力を入れるべきだ。
私は関西に来てから、フルーツを買わなくなったよ・・・。
こっちのスーパーで買うフルーツ、あまり美味しくないんだ。
買ってまで食おうとは思えないんだよ。
河内みかんとかは兄に頼めるけど、イチゴなどはさすがに頼めない。
その河内みかんも、兄がいなくなったらどうするべきやら。
兄なら、「わあい、ありがとうーーー!」 で済むけど
親戚に頼んだら、お礼が必要だろ。
5kg1000円弱の河内みかんに、お礼を3~5千円しなきゃならねえ。
熊本、頼む!
河内みかん、植木スイカ、牛深ポンカン、イチゴ
熊本県民が普通に食ってる普通の値段の物を、日本中に浸透させてくれ。
熊本産のこれらのフルーツは、日本一だ!!!!!
もしかして、他のフルーツも熊本で作れば凄いかも知れん。
県の振興にも、ものすごく貢献するはずだ。
ほんと、私欲が中心ですまんが、それだけじゃなく
熊本のためにもなるんで頼む!
↓ 熊本の果物のネットショップ
まぼろしの果実.comヤフー店