投稿者: あしゅ

  • ブログという舞台

    他のブログを読む機会がない私にとっては
    34歳結婚詐欺女の事件をTVで報道してくれるのは、とても勉強になる。
    ブログというのはこういう風に書くんだな、と、わかるからである。

    と言うか、この事件の報道を観たババアどもは (私を筆頭に)
    女であるだけで、こんなに稼げるんかあああああああああっっっ
    と、己の過去を後悔したに違いない。

    いや、どういう風に稼いでいたのかはわからん。
    ヘルパーとか言ってるから、さぞかし尽くしていたんか、とも思うが
    一番わからないのが、お金の引っ張り方である。

    お金ちょーだい でホイホイ貰えるわけがないし
    その理由を考えるだけで面倒くせえ。
    そんで返さずにいるのも、根性がいると思うんだ。

    結局、借金というのは才能のひとつなわけで
    詐欺ってのは、マメなヤツのする犯罪なんだな。

    この事件は中々興味深くニュースを観ているが
    ひとつ、すげえ迷惑な事がある。
    ネットがこれでまた、悪の温床のように思われる事だ。

    リアルでの私の周囲はネットをしない人が多いので、浮かないように
    ネットショッピングぐらいしかしていないように振舞っているが
    よく考えると、私は紛れもなく “ブロガー” なのである。

    何かもう “一般人” の間では、ブロガーなど
    頭がおかしいヤツがやっているように思われていて
    真っ先におかしいヤツである私には
    ブログに対する世間の偏見を、訂正できず情けない。

    そんでTVで、「わざわざ書かなくても」 と言っていたが
    そんなん言われたら、私もそうで
    てか、私なんか、“わざわざ” を除いたら何ひとつ残らない。
    突き詰めれば、わざわざ生きていなくても良い、って事になるんだよー。

    TVや周囲の詐欺女に対するコメントが、胸にグッサグサ突き刺さって
    他人と自分の温度差に気付かされた事件である。

    詐欺女にもいっちょ文句を言いたいんだ。
    ブログを詐欺の道具に使っていたんかも知れんが
    嘘ばっかり書かないでほしかった。

    今更こういう事を訴えてもしょうがないし
    ブログなんて自己表現の場なんで、妄想もアリなんだろうけど
    何ちゅうか、同じ舞台に立っていて、こっちが真面目な話をしてるのに
    隣でいきなり脱がれて裸踊りをされる気分になる。

    ひとことで言えば、ブログを書く気分が萎える。
    嘘つきの道具で、必死こいて主張してるのがアホらしくなるんだ。
    私には関係ないから、これからも変わらずにやっていくつもりだが
    嘘つきと接点を持つと、ほんとテンションが下がるぜ。
    いい迷惑だよな。

    でも学んだ点もあって、ブログってのは
    こういう風に、しっとりと書くべきなんかな、っていうのと
    そこまで深読みされるんか! ってとこ。

    しっとり、は性格的に無理なんで、さっさと諦めるとしても
    何でもない文章を、自慢として取られかねない危険性もある
    っていう事が、よくわかった。

    私的には、エルメスやらベンツやらを好むなど
    頭を使ってない、としか思えないんだが
    それが世間的にはステータスなんだな。

    ここらへんを考えても、もう基本からズレている気がするが
    私も誤解されないように・・・・・
    とか言ったら、自画自賛が出来なくなるんで
    態度を改める代わりに、土下座の準備をしつつ書きまくるさ。

    ナイスバディを自慢したくてしょうがなくてな。
    リアルじゃ、「いえ、そんな事は おほほ」 と言っとかないと
    ほんと、何様? になるだろ。
    私もこれでいて、ちょこちょこと気を遣ってはいるのさ。

    って、これじゃ学んだ事にはならないか・・・。

  • ジャンル・やかた 21

    目が覚めた時は、もう昼だった。
    着の身着のままで寝ていた自分に、激しく驚いた。
    普段のアッシュなら、どんなに疲れていても絶対にしない
    いや、出来ない行為である。
    着替えずに寝るなど、気持ち悪くて逆に眠れない。
    それがここ数日で、2度もやっているのである。

    ああ・・・、何か私の中で色々と芽生えてる気がする・・・。
    いつもの型通りの自分の殻を打ち破った気分になり
    ちょっと嬉しかったりするが、とりあえず風呂に駆け込んだ。

    お手入れしまくって、クリーム塗りたくりの
    ツヤツヤを通り越してテラテラの顔で、アッシュは食堂にいた。
    夕食に近い時間の朝食なので、結構混んでいるのに
    アッシュの周りだけ空間が出来ていた。

    ここではいつもこんな調子で、遠巻きにされているのだが
    それをアッシュ自身が好んでいた。

    覇者は孤高でないと!
    そう思いつつ、ボロボロ食いこぼしているアッシュの前に
    若い女性がツカツカと一直線に歩み寄ってきた。

    「・・・が死んだわ。」
    え? 誰? と、肝心な部分を聞き逃した間の悪いアッシュは
    目を丸くして、女性の顔を見つめたまま固まった。

    「あんたのせいよ、この人殺し!!!」
    その言葉を聞き、戦った相手の中にこの女性の親しい誰かがいて
    その人がその傷が元で死んだのだ、とアッシュは悟った。

    女性は涙をボロボロこぼしながら、悲鳴に近い声を上げた。
    「相続者なんて言っても、結局人殺しじゃないの!
     人を殺してまで、この館が欲しいの? この人殺し!!!」

    女性の語尾が響くような凍った景色のごとく静まり返った中で
    しばらく女性を凝視していたアッシュが、ゆっくりと立ち上がった。

    アッシュが低音で話し始めた。
    「まずは、お知り合いのご冥福をお祈り申し上げますー。」
    女性がカッと顔を赤らめて、怒鳴った。
    「だったら何故こんな」

    その声をさえぎる大声で、アッシュは続けた。
    「この度は! 本当に! 残念な事だと思いますー!」

    そこまで言うと、また声を抑えて語るように話し始めた。
    「私にとっても今起こっている出来事は、非常に不本意ですー。
     あなたと同じように、私もまた “何故こんな” と思っていますー。
     本当に戦いたくなどありませんー。
     だけど、ひとつだけ言える事がありますー。
     私は自分を守るために、襲ってくる人には今後も立ち向かいますー。
     そして私の大切な人も、何をしても守りますー。」

    アッシュは、周囲を見回しひとりひとりの顔を見つめた。
    「あなたは私を襲ってきますかー? それとも助けてくれますかー?
     もし助けてくれるのなら、あなたは私の大切な人になりますー。
     私もこの命を投げ出してでも守りますー。」

    どうですか? と、確認するかのように人々の目を見る。
    誰ひとり口を開く者はいず、身動きひとつ取れない雰囲気が漂う。

    「そして、もし私が相続できたとしたら
     もう二度とこんな残酷な方法は取りませんー。
     この館の住人全員が、私の大切な人になるからですー。
     大切な人を、もう失いたくはありませんー。
     もう二度と彼女のような “被害者” も出したくないのですー。」

    あなたも同じ気持ちだと思います、と
    泣き続ける女性を見つめて、アッシュは言った。

    「本当に申し訳ありませんでしたー。
     心からお悔やみを申し上げますー。」
    深々と一礼した後、女性の反応も確かめずアッシュは食堂を出た。
    立ち去るときに、集まってきた群衆の中にローズを見つけたけど
    一瞥しただけで、無言ですれ違った。

    言いたい事を上手く言えなかっただけじゃなく
    焦って妙な約束まで持ち出した自分が腹立たしく
    自分の部屋へと、足早に歩き続けた。

    食堂の中がまだ静まり返っているのを、背後で感じながら。

    続く。

    関連記事: ジャンル・やかた 20 09.10.27
          ジャンル・やかた 22 09.11.2

  • 割り箸女

    今うちに割り箸が何膳あるだろう?

    割り箸で飯を食うと食欲がなくなる、と気付いてから
    実にどうでもいい作業に、ポンポン使い捨てて
    地球にも自分の体にも、とても厳しい行為をしているようで
    環境破壊の人類代表になった気分で消費してきて
    ああ・・・やっと先が見えてきた・・・、とホッとしていたのに
    今回の帰省で、何か知らんが以前以上に目の前に割り箸が積み重なっている。
    これをどこに収納するかが、うちの今後の課題である。

    こういう事態になったのは、まだかあちゃんが存命中。
    「ちゃんと食べなさい」「もっと食べなさい」 の攻撃に
    つい、「箸を洗うのも面倒くさい」 と反抗した事が発端である。

    誰でもあるだろ?
    心がすさんでいる時期とか
    つい言っちゃった、ついやっちゃった、みたいな事が。

    誰にでもあるのに、ほんの逃げ口上だったのに
    私はその一瞬の報いを、10年以上受けているんだよー。

    この私の言葉で、かあちゃん、「あら・・・」 となっちゃって
    それから私のために、割り箸を取っておくようになって
    それは私が関西に引っ越してからも変わらず
    しょっちゅう届く小包みの中には、毎回大量の割り箸が。

    どんなに 「ちゃんとお箸を洗って使ってるから」「やってるから」
    と言っても、子を想う親心は一度ヒートアップしたら止まらず
    更にうちのかあちゃんの恐ろしいところは
    親戚に言っちゃうんだよ、こういう事をー。
    悪気なく、後先考えずーーーーー。

    もう、ほんっとそういう逸話がどんだけ私の評価を下げてるのか
    ちっとは計算してもらいたいんだが、また親戚たちも真に受けるんだよー。

    にっこり笑って、ほら、あしゅちゃんのために取っといたのよ
    と、親切そうに割り箸の束を差し出されて、断る事が出来るか?
    普通、ありがとう、と受け取るしかねえだろー。

    そんで受け取ったら、喜ばれていると勘違いされて次も溜める、私のために。
    それを見た親戚たちも、何だどうしたんだ、と言う事で
    事情を知り、私のために割り箸を溜め始める。

    どんなに上品ぶっていようが、輪ゴムでくくった大量の割り箸を渡され
    周囲から、「あらー、良かったねー」 とか言われ
    今回はあまりの量に宅配で送ったから良いようなものの
    手持ちで空港のX線でもあてられたら
    こいつ一体どういう素性なんだ? と疑われる事は間違いない。

    何より、こいつら割り箸を見ると、私の事を思い出すんだろうな、と
    よりによって割り箸かよ! と、果てしなくガックリするが
    親切だから! 善意だから! 愛だから! ムゲに出来ないーーー!!!

    ふと、こういう親族たちならマルチも楽勝かも、と思ったりするが
    いらないものだから溜めておいてくれるんだろうし
    にしても、何故もちっと高価な物に設定されなかったんだか
    ほんと、10年以上に渡って、罰を受けてる気分なんだ・・・。

    て言うか、おめえら割り箸を貰いすぎ!
    店屋物取りすぎ! コンビニ行きすぎ!

    と叫びたいが、何せ3年ぶりだし、そりゃ割り箸も溜まるか・・・。

  • ジャンル・やかた 20

    よく推理小説なんかで、ダイイングメッセージとかあるけど
    何でわざわざわかりにくくするんやら。
    兄の残した1枚の写真を眺めながら、アッシュはイラ立っていた。

    答、それは明らかにわかりやすいと、証拠隠滅されるからでーす。
    って言うけど、現実問題、わかりにくいなら意味なくね?

    気を取り直して、アッシュは推理に入った。
    何で写真の裏に日本語で書き残したか?
    私に宛ててだからだろうけど、そんなヒント、見つかったら没収だよね。
    と言う事は、やっぱりこの写真自体が、重要なヒントなんだ。
    裏に何を書き残そうが、即没収クラスの。

    でも、そしたら詳しく書いても良いはず。
    うーん、ギリオッケーみたいなライン?

    アッシュは改めて写真の館を見つめた。
    これ、この館に似てるけど違う建物だよね。
    この写真の館は、2階建てだし小さい。
    あっ、もしや、敷地内に別建物があって、そこに主がいる?

    うわあーーーーー、それは反則だろーーーーーーーー。
    アッシュはバッタリとベッドに倒れこんだ。
    しかし、頭の中ではグルグルと考えが渦を巻いている。

    ・・・・・・・・・もしかして、こっから見えない角度に
    この写真の建物があって、通路で繋がってるとか?
    だったら、それがあるのは北側じゃないよね?
    死角の南側で、南館のどっかから行けるんじゃないの?
    それじゃあ、北館に滞在すると激しく不利になるんだけど・・・。

    でも、この言葉はどういう意味?
    歴史と伝統
    確かにここらへんの人、重要視してるよね、歴史と伝統。
    で、それが何なんだ?

    うーん、答、出ないっぽいー。
    とりあえず今日からは南に集中するか。
    考えようによっちゃ、候補が半分に絞られたわけだし
    お兄ちゃんありがとう、だよ。

    でも私なら、もちっとわかりやすく残すけどね、ふん。
    アッシュは、よっこらしょ、と起き上がった。

    探すべきは、南館の1F、2F、5F、6F
    の、一番南側の壁及び部屋。

    「ローズさん、明日は南館の2Fにレッツゴーですわよーーー!」
    アッシュはローズの部屋のドアを勢いよく開けて叫んだ。
    日本人にはノックの習性はない。 ふすま、紙だし。

    数時間後、ベッドに突っ伏したアッシュは溜め息を付いた。

    今日の南館2階は、敵の出が激しかった。
    そのせいで奥まで行かない内に、ローズの鋏が壊れ
    不本意でも、引き返さざるを得なかった。
    それも、かなりの危機一髪で。

    あんだけ敵が出るってのは、本丸に近いって証拠のようなもんだよな。
    もう一度、南館の2階の残りに行かなければ。
    鋏の修理は、バイオラが張り切っていたし
    もし何とかいう兄ちゃんが三節棍を持ってきたら
    バトルマスター・ローズに使いこなしてもらおう。

    アッシュは人の名前と顔を、まったく覚えられないので注釈するが
    “何とかいう兄ちゃん” とは、ラムズの事である。

    アッシュは、あまりの疲労にそのままベッドで爆睡した。

    続く。

    関連記事: ジャンル・やかた 19 09.10.21
          ジャンル・やかた 21 09.10.29

  • 死の集まり

    遠距離に住んでいると、親族が集まるのは冠婚葬祭ぐらいである。

    私の場合は、よほどのおおごとじゃないと耳にも入ってこない。
    「あしゅちゃんには言いなさんな。」
    が、親族間での合言葉だと、今回初めて知った。
    “悪気のない” 兄の会話から。

    どうやら親族間には、私には余計な気を遣わせたくない
    という雰囲気があるようで、その空気が生まれた理由は
    ひとつの事件で心当たりがあるが、それはまたの機会っちゅう事で
    今回珍しく帰省したのは、自分ちの行事だったからである。

    それも、別にパスしても構わない法事なんだが
    実家に置いてあるものを取りに行きたかったのと
    うちがゴミ屋敷になっていないか、不安で眠れない夜もあるので
    (TVでゴミ屋敷の映像を観たら、そうなる。)
    確認、というか、いい加減、現実を直視して
    その現実具合によっては対決せにゃならん、と腹をくくったからだ。

    結果、庭はものすごいジャングルだった。
    兄は 「苺を栽培している」 とか言いおったが
    よく聞くと、いつの間にか庭に生えていた身元不明の苺が
    どんどんと生い茂っていっただけらしい。

    知らない内にどっかからやってきて、居ついて
    あの魔の繁殖力を誇る芝生を差し置いて増えまくる果物など
    植物世界のゴキブリのようなものだと思うんだが
    それは良いよ、突っ込まない。

    だが、何かを育てているつもりなら、二毛作せえ!!!
    春の実が枯れてる時期は、秋の実を栽培せんか!

    と言いたかったが、これも良いよ、突っ込まない。
    何故ならば、家の中がキレイに片付いていたからだ。

    そりゃ、ところどころに新聞の山やらが出来ていて
    触るもの皆、手がホコリだらけになるは、水周りはカビだらけだは
    でも、何も言わない。 突っ込まない。

    今回帰省してみて、あらためて実家のムダな広さに気付いたからだ。
    ここでも6LDKーーー? と、突っ込まれたが
    それプラス、トイレ洗面所が3箇所あるんだよー。
    ピアノが置ける縁側まであるんだよー。
    こりゃ確かに “豪邸” だな、と思ったわな。
    売っても、関西の3LDKのマンション1室ぐらいの価値しかないがな。

    私だって、こんな意味もなく広い家は管理できん。
    片付けただけマシだよ。
    頑張ったんだね、お兄ちゃん、どうもありがとう。

    そんな兄にインタビューしてみたが
    ゴミ屋敷、あれ信じられないんだそうだ。
    あんなん病気だろ、と憤る兄に、内心 「おまえもな!」 と
    言いたかったが、それもしなかった。

    だって寝る場所が出来ていたんだから、他に何を望むよ?
    こっちは夜ごとに、ゴミ屋敷の恐怖にうなされる日々だったんだし
    それがなかっただけでも、ありがたいと思えるよー。

    まあ、汚屋敷には違いないんだが
    男のひとり暮らしにしては、上出来だと思う。
    あんな家をきっちり管理しようと思ったら
    毎日掃除に明け暮れる日々になるぜ。

    で、実家のゴミ疑惑は半分払拭されて目出度かったんだが、法事が辛かった。
    今回は短期帰省なんで、最初から最後までバタバタさせられて
    疲れ過ぎてて眠れず、睡眠時間が1日2時間という、恐ろしい日もあった。
    法事の後の、“せっかくの集まり” の観光も、予定に入っていたので良い。

    だが、“帰るついで” に阿蘇の外輪山1周はないわーーーーー。
    全然別方向で、わざわざ出向く距離なのに、何が “ついで” だよ?
    そんで、どんだけそれに時間が掛かると思っているんだよ?

    デス・フラグが立った気がしたので、思わず織田裕二?風に
    「イベントは1日2回までにしてくださいーーーっ」
    と、叫んだら、さすがジジババの集団
    「何?」「イベントって何?」 と、? の嵐だったので
    大人しくバッグに隠し持ってたドリンク剤を一気飲みしたよ。

    いやあ、もう疲れた。
    色々と疲れたが、何に一番HPをそぎ落とされたかっちゅうと
    大人の集まりのあの独特のまとまりのなさ!
    気を遣いあって物事ひとつ決めるのに、えれえな時間が掛かる。

    特に久々の再開なんで、最初にあっちこっちで挨拶が始まり
    それが終わると、都合を聞き合い遠慮で変更
    この繰り返しで進んでいくもんで、進行がすっげー遅えの。

    あー、もう、機械的にチャッチャとやってくれ!
    と、イライラさせられるが、こんな事を思うから
    私は “半人前”“子供”“わがまま” 扱いなんであって
    うちの親族たちは皆、私に “合わせてやっている” という
    空気になってしまっているのである。

    だっておめえら、野放しにしてたら何時まで経ってもまとまらないだろうが!
    私があえての汚れ役を引き受けているんだよー。
    こう訴えたいけど、私のやり方も悪いし
    今回も親族たちの愛を感じたんで、何も言わない。

    何も言わない何も言わない、と無言の行をしてきたように思えるかも知れんが
    それは “私” にしては、なので、私の評価は相変わらずだと思う。

    面白い話もあれこれあったような気がするが
    あまりの疲労に、よく思い出せない。
    思い出したら端々に書いていくよ。

    何はともあれ、ただいま。
    またいつもの日常が戻ってきた。
    ・・・風邪気味なのを除いて・・・。

    やっべー、親族全員に、「寝込まないように」 と口々に言われて
    一体私を何だと思ってんだよ? と、逆切れしてきたのに
    マジで寝込むハメになるんか?

    頑張れ私! 予言を的中させるな!

  • ジャンル・やかた 19

    昨日は、やたら敵が多かったよなあ。
    あんなん続くんなら、ほんと死ぬぜ。

    あの後、北館2階を一周したのだが、敵が3回も出没したのである。
    宣言通り、アッシュはキャーキャー言って逃げ回り
    ローズがひとりで戦って、無事に生還できたわけだ。

    ローズさん、すげえつえー。
    ローズが守護者になった自分は、激しく運が良かった事に気付いた。

    どんなに横柄でも、あんだけ強けりゃオッケーだよね。
    問題は私の方なんだよねー、足手まといになってるだけでさー。
    平安京エイリアンだって、時間が経つと敵大量投入されるし
    こんなんじゃ、マジで寿命カウントダウン始まっちゃってるよー。

    結果が出せないと、どんどんマイナス思考になっていく。
    今日、何をすれば良いのかも思いつかず、体が動かない。

    その時、ベッドに寝転んでいたアッシュの目に
    ふと足元側に積み上げられている雑誌や本の山が映った。

    書籍類は床に直置きされていて、それが1mぐらいの高さになっている。
    中学ん時、布団の足元に本棚を置いといたら
    それが寝てる時に倒れてきたんだよなあ。
    冬で布団の重ね掛けをしてたから、ケガこそなかったものの
    あれはスーパービックリ アーンド激痛だったよなあ。
    これ、よく倒れないよな、危ないよなあ。

    書籍の山をボンヤリ見上げていた目を、ふと下ろした瞬間
    見覚えのある背表紙が目に飛び込んできた。

    「レ、ペ・・・ペ・・・ペチット プ・・・プリンス!」

    この読み方、絶対に違うと思うけど、これ、“星の王子さま” だよね?
    この本、私が子供の頃読んで、何か知らんが悲しくて悲しくて泣いて
    何でこんな内容で泣くの? 頭がおかしいんじゃない? って
    家族全員にバカにされて笑われた本じゃん。
    あの当時の私は、ほんとわけわからん心の機微を持ってたよなあ。

    じゃなくて!
    この本、ここに寝転ばないと気付かないんじゃねえ?
    しかも (イヤな) 思い出の本。
    これは次に必ず来るであろう私に兄が残したものじゃねえ?
    うわ、よりによって何でこの本をーーー、じゃなくて!

    そうか、これがあるからローズさんに私の護衛を頼んだんだ。
    このフロアにローズさんの部屋がある限り
    次の私も絶対にこの部屋を割り当てられるから。
    すげえぜ、兄貴、やっぱり考えてたんじゃん!

    アッシュは力任せに、本を山から引き抜こうとした。
    そんなザツな事をしたら、ザツな結果になるわけで
    本は将棋崩しの駒のように崩れ落ち、アッシュに降り注いだ。

    本のカドが当たると、とても痛い。 雑誌でもとても痛い。
    しかもそれの連続攻撃に、アッシュは兄を目一杯恨んだ。

    アッシュの真の敗因は、将棋崩しとか、砂山の棒倒しとか
    そういう慎重な動作を要求されるゲームは
    大の苦手で、勝ち知らずなところにあったのに。 じゃなくて!

    “激痛にのたうち回る”
    アッシュの人生では幾度となく繰り返される光景だ。
    昨日の警棒の跡も、ひどく腫れている。

    あーもう、いっつもいつも!
    いい加減、学習してくれよ、私の衝動はよー!!!
    書籍類を積み重ねたヤツのせいにしないところは、割と正義。

    痛みが治まると、アッシュは散らばった本を片付け始めた。
    おいおい、それよりさっさと肝心の本を見た方が良いんじゃないのか?
    と突っ込みたくなるが、アッシュの性格はこうなのだ。

    サイズに合わせて、積み直された本を満足気に見たのち
    ようやくアッシュは、問題の本をめくった。

    ・・・中、全部英語・・・。
    イヤミなとこがある兄貴だったもんなあ。
    はあ・・・と落胆しながらも、メモなどがないか
    パラパラとページをめくる。

    と、途中のページに写真が挟まっている。
    セピア色になった古い白黒写真である。

    写真は、野原に建つ1軒の館だった。
    これ、この館・・・?
    でも何か違うような・・・???

    写真の裏を見ると、歴史と伝統 と万年筆で書いてある。
    その極太の線は、兄が好んで使用していた万年筆で
    特徴のある字体も、間違いなく兄の筆跡である。

    ああ、やっぱり、この本は兄貴セッティングだー!!!
    アッシュの心臓がドクンと一度高鳴り
    頭のてっぺんに体中の何かが集まる感覚がして、涙が出そうになった。

    色々と言葉が脳裏をよぎったが、それを確認すると
    感情が爆発して崩れ落ちそうになるので
    あえて無視をし、冷静に分析をする事を選ぶ。

    が、アッシュは頭を抱えた。

    続く。

    関連記事: ジャンル・やかた 18 09.10.19
          ジャンル・やかた 20 09.10.27

  • ブログ休みのお知らせ

    10月22日 (木) と23日 (金) のブログを休みます。
    (土日祝祭日はいつも休んでいるので、普通に休むけど)

    理由は、法事による帰省です。
    この週末は、管理人ぷらちッが代わりに記事を書いてくれるかも。

    にしても、関西のお土産って何があるんだろう?
    大阪じゃなくても、ひとくくりに “関西” なら、どこでも良いんだが
    空港でいっつも迷うんだ。

    洋菓子系は神戸が多く、京都は漬け物とワンパターンで
    大阪が意外に、これ! と言ったものがない。
    土産物ってそういうものかなあ。

    ちなみに、どこぞの有名な冷凍たこ焼きを兄に送ったら
    「自分でまず食ってから送れ」
    という、ものすごいキツい御礼を言われた・・・。
    食い倒れの街大阪は、お持ち帰りは得意じゃないんかのお?

    久々に熊本の地を汚しに行くわけだが、この時期は困るのが服なんだよ。
    誰に訊いても、「何かはおる物を1枚」 と言われるけど
    その “はおる物” の厚さがわからんで、ほんと悩ましい。

    こんな質問をされても、相手も困るだろうけど
    そんな中、すんげえヒントをくれた人がいた!!!
    「熊本は関西よりは確実に暑いから、関西よりちょっと薄着で。」

    これ、言われたら当たり前の事なんだが、気付かなかったよー。
    以前に、東京から熊本に観光に来る友人がいてさ
    それが11月頃で、「寒い?」 と訊かれて、「寒い」 と答えたんだ。
    熊本 “にしては” 寒かったんだよー。

    そしたらその友人、まさかのロングのダウンジャケットで来てさ・・・。
    あんなかさばる衣服に、文句ひとつ言わなかったけど
    ほんと申し訳なかったよー。

    そんで生まれ育った地域によって、暑い寒いの感覚と耐性も違うらしい。
    私は南国生まれなんで、すんげえ寒がりなんだ。
    でも同じ境遇の人より、寒さに弱いっぽい。
    これは体型の違いだと思う。

    だから、「どんな服で」 と問われるのって
    答えようがなくて迷惑だと思う。

    でも荷物は減らしたいから、どうしても訊いてしまうんだよなあ。
    夏や冬はわかりきってるから良いけど、春と秋って難しいよな。

    地元でも、出かける時と帰宅時では気温差があるじゃん。
    はおる物って言っても、厚手薄手どうすりゃ良いんだか
    建物の空調もよくわからんし、万能服ってないよな。

    だけど暑い中寒い中に、出かけたくはないから
    今回はこの時期でほんと助かる。

    今年はわけわからん気候だったんで、例外かも知れんけど
    熊本のいつもの夏は蒸し風呂地獄なんだ。
    夏に呼び出しをくらっていたら、ほんと生死に関わっていたぜ。

    と言うか、実家の状態によっては、兄と大ゲンカになるかも知れんので
    いずれにしても生死に関わるかも。

    ほんと気が重い帰省だよ・・・。

    昨日から荷造りのリストを作り始めたけど
    自分が旅行が嫌いな理由がわかった!
    たった数日の移動なのに、膨大な荷物になるんだ。

    化粧品の類は、チマチマと詰め替えをやってるけど
    詰め替え容器って、洗うのが大変じゃん。
    液体系は、弁当用のしょうゆ入れを買ってきて使い捨てにしたさ。

    そもそも普段使いしている物が多すぎるんだよー。
    部屋丸ごと移動できたら良いのに・・・。

    と言うわけで、あさってから休むけど、惨劇が起きての事じゃない。
    来週の月曜からは普通に再開をするので、よろしくお願いいたします。

  • ジャンル・やかた 18

    「さあ、ローズさんからものすごーーーく褒められて
     やる気が出たんで、ちゃっちゃと行きましょかねー。」

    アッシュがイヤミっぽく冗談を言いつつ、廊下を歩いて行く。
    ドアのひとつひとつをへっぴり腰で覗いていた時とは大違いである。
    ほんの一日二日で・・・。 この変化は進歩なんだろうか?

    アッシュの変わりようを、“成長” と喜びつつも
    初めて出会ったようなこの人物を、どうしてもいぶかしんでしまうローズ。

    「ちょっ、あんた、そんなにスタスタ行くと」
    危ない、と言おうとしたその瞬間、案の定ドアが勢い良く開いた。
    走り出て来た人影は、アッシュに向かって叫んだ。

    「あたしが殺ってや」 ジャキッゴスッ
    アッシュが素早く警棒を出し、女の首筋に振り下ろした。
    先日のローズのように。

    よろける女性に鋏を突き刺すローズの背後で、アッシュが騒いだ。
    「いっっってええええええええええええええええ!
     ほんとに痛ええええええええええええええええええええ!」

    警棒をはめた右腕を抱えながら、うずくまるアッシュ。
    「警棒がね、こう、ね、骨に、ゴリッと、痛みがね、うううーーーーー」

    ああああ・・・、もう本当に始末に終えないヤツだね
    冷ややかな目ながらも、アッシュの警棒を外してあげるローズ。
    「殴るのも殴られるのも、同じに痛いんだよ。」

    そうだよね、人を本気で殴るなど、一生経験しない人も多いもんね
    武器で殴っても、こんなに痛みが伝わってくるんだ・・・
    映画なんか、平気で殴り合いしてるけど
    あんなん、よっぽど鍛えてないと無理なんじゃん。

    しばらくのたうち回っていたアッシュだったが
    フラフラと立ち上がり、涙に濡れた瞳でローズを見つめた。
    「ローズさん、1発で何なんですけど、私やっぱり戦闘ムリですー。
     すっげー痛いですー。
     骨にヒビぐらい入っとるかも知れませんー。
     よって、今後のバトルは全逃げに徹しますー。
     つまり、あとよろー、って事ですー。 良いですかー?」

    「えらいあっさりと諦めるのもどうかとは思うんだけど
     その方があたしもやりやすいし、それで良いよ。」
    「お互いに得意分野で勝負しましょう、って話ですよねー。」

    あんたに得意分野ってあるんかい、と、ここで突っ込めば
    アッシュの良いカモになれたんだが
    ローズはアッシュの軽口はとことん無視に回っていた。
    その態度は結構、正解だった。
    アッシュをそれ以上、見下す事態にならないで済むからである。

    「じゃ、この階をグルッと一周お願いしますー。
     私は後ろから付いて行きますんで。
     あ、ドア全部開けつつ、どうかなにとぞー。」

    イラッとしながら歩き出したローズの背中に
    倒れている女を見ないよう、アッシュがぴったりと張り付く。
    「うっとうしいねえ、もちっと離れな。」
    へへ、とアッシュが笑った。

    可愛いと思えなくもないんだけど、何だろね、このカンに障る感じは。
    その突拍子もない言動で、得体が知れない印象を与えるアッシュだが
    ローズの感じる違和感は、アッシュの持つ闇を敏感に察知していた。
    ローズは正に、常に生き残れる兵士の感覚を備えていたのである。

    続く。

    関連記事: ジャンル・やかた 17 09.10.15
          ジャンル・やかた 19 09.10.19

  • ストレッチ

    ストレッチというものを知らない。

    こう言ったら、すげえ驚かれたけど
    学校では、あまりストレッチを教えられなかったと思わんか?
    私が聞いてなかっただけかも知れんが (この可能性がものすごく大きいが)
    体育とか部活でやった記憶がないんだよな。

    何か、ここ10年ぐらいで、やたらこの単語を聞くようになって
    単なる筋伸ばしも英語?で言えば立派に聞こえるよな
    ぐらいに、ナメきっていたんだが
    ヘルニア持ちの知人が、朝一でアキレスのストレッチをすると
    腰の具合がかなり違う、と言うんで、ガシガシやっていたら
    「そんなんじゃ、腱を切ってしまう! こうジワーッと・・・」
    とか、すんげえ指導入って、それがまた悠長な動作で
    そんなクソ面倒くせえ事をやっとられるか!
    と、それきり “ストレッチ” の単語は、封印しとった。

    しかし思うとこあって、最近ストレッチを始めた。
    と言っても、正しい方法とか一切知らないんで全部、勘!!! で
    とにかく、あっちゃこっちゃゆっくり伸ばせば良いんだろ
    と、テキトーにやっている。

    お手本は、アフガンハウンド。
    こいつ、寝てて起きると、必ず伸びをしてたんだ。
    それが、まず前足を伸ばして、背中を丸めつつ肋骨を伸ばすように
    ググーーーーーーーーーーーッと後ろに引き
    次に前足に全体重を掛けて、後ろ足を思いっきり伸ばす
    この2つを1セットで、必ずやっていた。
    ゴールデンレトリーバーの方は、まったくこういう伸びをしない。

    アフガンは、ものすごく関節の可動域が大きくてバネのある
    正にしなやかな肉体であるのに比べて
    ゴーデンレトリーバーは、胴体の中心に鉄骨が1本通ってねえ?
    というぐらい、体が硬かった。

    何か体が硬直してるな、と思う時は
    アフガンのあの伸びを思い出してたんで
    犬畜生が本能でする事ぐらい、人間様の私にも出来るはず
    と、ひたすら勘で、あちこちを伸ばそうとしている。

    そんな非人道的な差別用語を出して張り合う前に
    ネットで正しい方法を調べろよ! と言う話だが
    そーこーまーでーしーてーーー?かっこわらいとじかっこ
    と、ストレッチをどうしても軽んじてしまう自分がいるのだ。

    ところが、何日か続けてみると、かなり体調が違う!
    たかが10分ぐらいの足腕グイグイで
    目の疲れから来る肩の痛みが軽減されたのだ。

    て言うか、ヘンなとこが筋肉痛になってるんだ。
    膝の裏とか背中とかは、神経痛っぽい痛みも続いている。

    そんで、私は元々ゴールデンを笑えないレベルで体が硬いんだが
    膝を額に付けるつもりで両手でグイグイした後に
    足を真っ直ぐ元の位置に伸ばす時に、足の付け根の関節がゴキゴキ鳴る。
    えーと、曲げようとしても中々曲がらず一気にパキッといく、みたいな
    骨が関節のソケット?内でゴリゴリ擦れているような。

    これは良くないんじゃないか? とビビっているんだが
    何かヤバい事になってそうで、恐くて益々調べたくない心境に。

    つーか、何十年も運動をしていない体の硬い老人用のストレッチ、あるんか?
    つーか、そもそもそういうヤツがストレッチとかやって良いんか?
    グルグル考えて悩んでたが、やっぱ調べる事にする。
    この記事を書いて、ようやく決意が出来たよ、ありがとうブログ!!!

    今、健康法とか運動法とか、色々ありすぎて
    運動嫌いで健康管理無神経の素人ババアには、ものすごく敷居が高い。
    選択肢が多すぎる、ってのは、逆に物事を困難にしている気がする。

    化粧品なら、大好きなんで常にチェックしているから
    選択肢が多いのはありがたいけど
    あの何万種類とある中から、1個を選ぶなんて
    マニアじゃないと無理な話だよな、とよくわかったわ。

    これから訊かれたら、最終的には具体的に1~2品を挙げようと思う。
    その品を基準に、これよりもっと○○な物、と
    本人が候補を狭めていけるもんな。

    化粧品アドバイスをする時の、すんげえ参考になったぜ。

    ・・・って、違う!!!
    問題は、自分の健康管理の運動法なんだよ!
    こうやって、すぐ脇道に逸れるから本来の目的を忘れるんだよな。

    とにかく、老人になって寝たきりにならないよう
    真面目に体を動かす事を考えよう、と思い始めたんだ。

    運動、ほんと面倒くせえし、痛いのも辛いのもイヤなんで
    こんな私に合う運動があれば良いんだが。
    ストレッチの10分も、何かむっちゃタルい・・・。

    ちなみに、やってて思ったんだけど
    ラジオ体操、あれもしかして全身ストレッチじゃねえ?

    いっつもタラタラやってて、真面目にした事がなかったんだが
    一生懸命やったら、全身の筋を伸ばす仕組みになってる気がするぞ。
    もし、この推理が当たってたら、ラジオ体操、すげえよな。
    何で教師たちも、その意味をちゃんと教えなかったんだろう?

    と、すぐ人のせいにする、と。

  • ジャンル・やかた 17

    ふたりがやってきたのは、北館2階である。

    確かにここはまだ調べていないけど
    この前1戦目で逃げ帰ったのに、大丈夫かねえ。
    心配するローズに、アッシュが振り返ってドアを指差す。
    その目は前回とは違い、力強い光が宿っていた。

    ローズがうなずくと、アッシュはドアの横の壁を背にして
    左手を伸ばしてドアを静かに開けた。

    部屋の中は無人であった。
    アッシュは全体を見回すと、さっさと隣の部屋のドアの前に移動し
    またローズの目を見て、無言でドアを指差す。

    まるで別人のようだね・・・。
    ローズは不思議だった。
    この2日間で、何故こうまで変われるのかわからない。

    ローズの目には、“変わった” と映るだろうが
    ふたりが出会った瞬間に、アッシュはパニックを起こしていたので
    それが正確な表現なのかは定かではなかった。

    2つ目の部屋も3つ目の部屋も、人の気配はなかった。
    4つ目の部屋の中に立ったアッシュは言った。
    「このエリアは色んな作業をする部屋ですよねえー?
     普段は人が仕事をしているんでしょー?
     それが誰もいない、って事はー・・・」

    「ここが今日のバトルエリアってこった。」
    急に男性の声がしたので、アッシュは飛び上がった。
    「うおっ、びっくりしたああああああ!!!!!」
    あ、やっぱり変わってない・・・、とローズは思った。
    それが嬉しくもあり、残念でもあるのは
    ローズの方が、変わりつつあるのかも知れない。

    アッシュは男を睨みながら腕を振った。
    シャシャッガッと音がして、警棒が伸びた。
    その様子が我ながら格好良すぎて、アッシュはついついニヤついた。

    「おっ、警棒かい、マニアだね。」
    「いやー、マニアってほどじゃないですよー。 えへへー。」
    「俺の武器はこれだぜ。」
    男が差し出した武器を見て、アッシュは驚いた。
    木の棒に、直角に取っ手が付いている。

    「あっ、トンファー!」
    「ほお、知ってるのかい?
     カンフー映画で観て、自分で作ってみたんだ。」
    「手作りですかー? えー、すっげーーーーー!
     じゃ、三節棍とか作れますー?」
    「あー、あれねー。 うん、作れると思う。」
    「私、中国で行われた少林寺拳法の大会をTVで観たんですけど
     三節棍使いが優勝してた記憶があるんですよねー。」
    「えっ? そうなのか? 
     確かにこれ、ちょっと使いづらいし、んじゃあそっちにしてみようかな。」
    「あれ、絶対に便利だと思うー。 相手との距離幅の融通も利くしー。」
    「あんたのそれも面白いな。 腕にくっついてんのかい?」
    「そうなんですよー、格好良くないですかー?
     こう、シャキーンと出して・・・、あれ? 引っ込まないー。」
    「ああ、それ垂直に押さないと引っ込まないんだよ
     コツがいるんだ。 ちょっと貸してみい。」

    「こうやって真っ直ぐコンコンと・・・」
    と、男が実践し
    「うわ、難しそうーーー」
    と不安がるアッシュに、アームのベルトをはめてやる。
    「慣れれば、すぐ引っ込められるようになるよ。」

    妙になごやかな雰囲気のふたりを見て
    イライラしていたローズは男に鋏の先を向けながら、怒った。
    「ちょっと、あんたら、何を仲良くやってんだい。 さっさとやるよ!」
    「あ、俺、やらねえ。」
    「はあ?」
    「やっぱ話すとダメだな。 話が合ったりすると特にな。
     俺はリタイアするよ。 嬢ちゃん頑張んな。」
    「あ、あ、ちょっと待って、三節棍、作ってもらえませんかー?」
    「オッケ、出来たら貸すよ。 俺は4階に住むラムズってもんだ。」
    「ありがとうーーー。」

    にこやかに手を振るアッシュを見ながら
    怒るべきか、無視するべきか、ローズは迷っていた。
    ラムズは普段から気の良いヤツで、ローズも戦いたくはなかったので
    結果としては良かったのだが、それは運が良かっただけ。
    あのように、すぐに無防備になられたら困る。

    迷ったあげくにローズの口から出た言葉は、自分でも以外だった。
    「嬢ちゃん?」
    そうなんですよー! と、アッシュはエキサイトした。

    「東洋人が若く見られるのは話には聞いてたけど
     まさか、ここまでとは思いませんでしたよー。
     そりゃ私は日本人同士でも若く見られてたけどー。」
     
    天狗になろうとしているアッシュの鼻を、ローズはさっさとへし折った。
    「ふん、人前でビービー泣くから、ガキだと思われてんだよ!」
    「あっ・・・、そうだったんですかー・・・。」

    見るからにガックリきているアッシュの、うつむいた横顔に
    すぐ顔に出すのがガキの証拠なんだよ、と思ったが
    ここで落ち込まれると、また面倒なので
    何か良い慰めの言葉でもないか、と捜していると
    アッシュがローズの顔を見て言った。

    「ローズさん、私、褒められて伸びるタイプなんですー。
     と言うか、褒められないと絶対に伸びないタイプなんですー。
     ウソへったくろでも良いから、とにかく褒めといてくださいー。」

    これはジャパニーズジョークなのか? と、一瞬疑ったが
    アッシュの真っ直ぐな瞳に、心の底から真面目に言ってると気付き
    激しい動揺を隠すがごとく、こぶしでアッシュの脳天をゴツンと叩いた。

    ローズの鉄拳は、結構痛いものがあったが
    大人しく後ろを付いて行ったのは
    部屋を出るローズの背中が、怒りに燃えていたからである。

    うちの親戚連中もこんなやってすぐ怒るしなあ
    アッシュは、自分の言動がある種の人間にとって
    ガラスに爪を立てる行為と似たようなものだとは気付いていなかった。

    その、“ある種の人間” とは
    アッシュを心配してくれる人々である事も。

    続く。

    関連記事: ジャンル・やかた 16 09.10.13
          ジャンル・やかた 18 09.10.19