敵味方両軍の片翼が静止する、という、とんでもない事態に
後ろに控える高雄が、やむを得ず乾行のところに馬を走らせた。
「おい、乾行、伊吹はどうした!」
乾行にも推測しか出来ないが、事は急を要する。
「多分あれは、伊吹の女じゃねえかと思う・・・。」
「何っ?」
敵軍の先頭にいるのは、真っ赤な甲冑を着た女性で
伊吹を見て、明らかに動揺している。
伊吹も伊吹で、どうする事も出来ずに
ただ馬上で呆然としている。
我らの三角が・・・
高雄は舌打ちをすると、馬の腹を蹴った。
馬が前足を高く掲げ、走り出す。
「乾行、この場を頼む。
安宅、来い!」
呼ばれた安宅が素早く反応する。
時の流れが止まった空間を、高雄の馬が蹴り破る。
高雄は伊吹の前に割り込み、娘を抱えた。
伊吹には、その動きがえらくゆっくりしたものに見えた。
すべてが止まった世界で、目の前を誰かが横切っていく。
目の前にいたはずの娘が連れ去られていく。
娘がこちらへと伸ばした手を、伊吹は掴もうとしたが
ふたりの手は、あと少しの間を残して空を切った。
「待て!」
伊吹が叫ぶ。
「待ってくれ、その娘は・・・」
伊吹の声を背に、高雄は後ろから来る安宅に命じた。
「姫を預かったゆえ一時休戦、の伝令を出せ。」
「はっ。」
安宅は、真っ直ぐに走り去る高雄から分離するように馬の方向を変えた。
「あなたは龍田家の姫ですね?」
自分に目もくれずに問う高雄に、娘は戸惑いながらも答える。
「は、はい、次女の青葉 (あおば) と申します。
あの、さっきのお方は・・・?」
高雄はわざとわからぬフリをした。
「誰の事でしょうか。」
青葉には、それが嫌がらせだと、すぐわかった。
女だてらに先駆けをしたあげくの立ちすくみなど
失態もいいとこで、軽蔑されても仕方のない事。
黙り込んだ青葉に、高雄がつぶやくように答えた。
「あれは伊吹。 私の友だ・・・。」
伊吹さま・・・
名を知る事が出来て、涙が出そうなぐらいに嬉しかった。
いくさで敵方に捕らえられた女性は
良くて、見知らぬ男の所有物になる。
多くは乱暴狼藉を働かれ、売られるか殺されるかのいずれかであった。
それをわかっているために、いくさに関わった家の女たちは
逃げるか、立てこもって自害をするのである。
青葉は人質となった。
身分ある人質は勝負の駒となるが、安全の保証はない
しかも自害も許されないであろう、最悪の事態である。
これによって、龍田家の犠牲と不利は決定した。
乾行は実に上手く立ち回った。
まず、高雄を追おうとする伊吹を馬上から叩き落し
伊吹の隊の槍兵たちに命じた。
「おまえら、伊吹を押さえとけ!」
そして敵兵に向かって叫んだ。
「待て待て待て待てえい!
おまえらの姫さんは預かった。
姫さんを助けたいなら、引けえい!」
そして自軍に向かっても叫ぶ。
「今日のところは休戦だ。
元の持ち場まで戻って待機!!!」
両方の兵が、どうするべきか迷いながらも、ジリジリと後ずさりをする中
使い番の馬が、八島陣から龍田陣へと駆け抜けて行った。
続く
関連記事 : 殿のご自慢 9 13.3.7
殿のご自慢 11 13.3.13
殿のご自慢・目次
投稿者: あしゅ
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殿のご自慢 10
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ヘアカラートリートメント 2
白髪の皆さま、こんにちは。
この記事は、心労で一気に白髪が6割ぐらいに増えた
アントワネット・あしゅ (太く硬い剛毛) が
月に1度、ヘナ + インディゴ をしつつ
なるべく色持ちがするように、と
もう髪の健康どっか行きで、色んな成分がてんこ盛りの
ヘアカラートリートメントを渡り歩きながらレポするアレです。 ドレだよ。
大抵のヘアカラートリートメントは
シャンプー後に水気を拭き取り、塗って5分して洗い流す、という方式だけど
ザツで荒くて不器用な私は、塗ってる時に不思議なぐらいに風呂場を汚すので
入浴前に乾いた髪の、しかも目立つ分け目部分のみに
洗面所を汚しつつ、素手で塗布。
30分ぐらい置いた後にようやく入浴。
使い回しの画像だけど、左から
シャンプーブラシで洗髪。
使用シャンプーは、あんだんて。
使用トリートメントは、オーブリーのGPB。
:::::::::::::::::::::::
リンス カラーリングヘア用
資生堂 ティアラ トリートメントカラーリンス グレー 220g 1050円
全成分: 水、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ベンジルアルコール、
DPG、ステアロイルメチルタウリンNa、ステアリン酸グリセリル(SE)、
ジメチコン、クエン酸、香料、赤227、黄4、橙205、紫401、黒401
トリートメントとして普通に使え、と書いてあるけど
嫌っ。 乾いた髪に使う!
これ、4番目に使うヘアカラートリートメントなんだけど
今までで一番、なめらか。
さすが天下の資生堂!
だけどこれ、染まらない・・・。
風呂に入る前の乾いた髪に塗って、容器半分まで使ったけど染まらないので
残り半分は、言われた通りにシャンプー後のトリートメントとして使ってみる。
だけどこれ、染まらない・・・。
染まってるけど、グレーだからわからないのか?
いや、白髪が普通に出るんで、これは私には向いていない
と、お茶を濁した判断。
使えん! と、はっきり言っても良いんだけど
おめえにはだろ! と反論されたら、言い返せんので
「私には~~~うにゃらこにゃら」 っちゅう事で察しれ。
良い商売だよな、化粧品会社はよお。
あまりの無意味さに、むっちゃケンカを売った気がするので
ひとつ援助しとくなら、トリートメント効果は今までの中で一番あるだよ。
よっ、さすが天下の資生堂!
:::::::::::::::::::::::
白髪染め トリートメント
テンスター カラートリートメント ソフトブラック 250g 1890円
全成分: 水、ミリスチルアルコール、PG、ジメチルステアラミン、
ベヘニルアルコール、ヘンナエキス、加水分解ケラチン(羊)、シア脂、
アジピン酸ジイソブチル、ミリスチン酸、ヘキシルデカノール、
ココイルアルギニンエチルPCA、乳酸、フェノキシエタノール、HC黄4、
4-ヒドロキシプロピルアミノ-3-ニトロフェノール、HC青2、塩基性青99
トリートメントとして普通に使え、と書いて略。
でもダメならシャンプー前でも良いんだよ、と
アバウトなところは、さすがヘナ由来。
(容器に注釈してあるけど、ヘナはトリートメント成分として配合だとさ。
ついでに “ノンシリコン” にして
この色素たちから目を逸らす作戦のようだ。)
ヘナの色落ちフォローとカブレに、ヘナ配合を使う・・・
ほんと使ってて、大いなる矛盾を感じるんだけど
さすがヘナは名ばかりの配合しかしてないだけあって
(いや、知らんぞ? ヘナ、ガッツリ入ってるかもだぞ。)
これ、もしかして今までで一番染まってるかも・・・。
これを塗ってる部分だけ真っ黒!
これはもう、“毛染め” と言った方が良いかも知れない。
ただ、いっちょ良ければいっちょ悪くてな
これ、洗い流すだけで風呂にシミがつくんだよ・・・。
もちろんバスマジックリンを吹き掛けておいて
しばらく経って、こすり洗いをしたら落ちるけど
バカモノ! こすらずに落ちる汚れはありません!!!
シミがつくだけでも不安じゃねえ?
だから風呂に入って、まず床や壁
カサツな私がワシワシお湯洗いして、水がはねそうなところを
全部、シャワーで濡らしておく必要があるんだ。
これをすると、シミが付きにくい。
そんで、なるべく洗った湯が散らないよう
風呂床に直接正座し、額を床につけて
大岡裁きを受けるような姿勢で、排水溝の近所でお湯洗いする。
・・・・・・とても屈辱的・・・・・・・・・
これ、染まりの点では、今のところNo.1。
だけど、果たしてこれを “カラートリートメント” 扱いして良いのか
いやしかし、ヘナを止めたら私はこれを使うかも。
・・・・・・・・・・何か忘れてるよな・・・・・・・・
あっっっ!!!
匂い! これ、ヘナの匂いをそれほど消さないかも。
あーーー、もうーーーっ、一長一短どころか一長二短かよ!
どれも似たような成分山盛りなのに、匂いも似れよ!
関連記事: カテゴリー ヘアケア
評価:
三宝商事
¥ 1,365
(2010-07-30)
コメント:これはもしかして “毛染め” の部類に入るんじゃないか? という染まりっぷり。 6割白髪の私が、中国国家主席のごとく黒々。 難点は、塗ったこれを洗い流すお湯でも風呂場にシミが付く事。 洗剤で落ちるけど風呂場の汚れが不安。
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殿のご自慢 9
とうとう開戦の日がやってきた。
翌日にでも始まる、と思われたいくさは
何故か龍田家側がいくさ場に現れず
延びに延びて、三日後にまで遅滞した。
それでも八島の殿も、重臣たちも到着せず
八島家陣営に総大将の旗は立たなかった。
戦場に両陣営が揃った。
その瞬間、高雄は愕然とした。
何だ、龍田家側の数は!
龍田家の兵士の数は、八島家側と同じぐらいなのだ。
あれだけ兵を集めるのを苦労したあげくに
殿を始め、八島家の主だった重臣たちが来ていないのにも関わらず。
龍田家はいくさを好まず、山城家との付き合いで
どうしても、という時にしか参戦せず
そういう家だから、重臣たちにも名のある武将もいない。
こちらには、伊吹と乾行の我々三人がいるぶん
こちらの人数が少なくとも、勝てる戦いなのである。
龍田家は少なくとも、倍の兵数を集めてしかるべき。
高雄に疑心が生じる。
まさか大殿はこれを見越して、わざとおいでにならなかったのでは・・・
「ひゃっほう!」
乾行の声が響き、高雄は我に返った。
「敵さんたち、少なくて楽勝だねえ。
だけど、おめえら、手を抜いちゃダメだよお?
どんな相手にも全力で! それが武士の礼儀っつーもんよ。」
兵たちが おおおおっ と呼応する。
高雄の頭が冷えた。
そうだ、私たちだけでやらなくてはならないのではない
私たちだけで充分なのだ。
「いくぞ、矢を放て!」
高雄の言葉に、開戦の合図の鏑矢 (かぶらや) が敵陣営へと射ち込まれる。
相手方からも、ヒュウウと音を上げて矢が飛んできた。
「開戦だあっ!」
両陣営は、一斉に走り始める。
「いくぞ! 俺らが先駆けだあっ!」
乾行が叫ぶと、兵たちも雄叫びを上げる。
相変わらず、盛り上げるのが上手い
高雄がそう思った時、敵陣営からも同様の おおおっ と声が上がった。
相手陣営にも兵を引っ張る者がいるようだ。
“花がいる”
甲冑に身を包み、手には槍を持ち、馬上にいる伊吹が思う事ではない。
その花は、どんどんとこちらに走り寄り
伊吹に向かって、突っ込んで来るかと思われたが
その少し手前で急にヒヒヒンと馬がいななき、その足を止めた。
その馬に乗っていた真っ赤な甲冑の女は
確かにあの時あの場所にいた、あの花であった。
そこは戦場にも関わらず、見合ったふたりの驚愕に圧倒され
その周囲だけは、誰も身動きを取れなくなっていた。
続く
関連記事 : 殿のご自慢 8 13.3.5
殿のご自慢 10 13.3.11
殿のご自慢・目次 -
ナプキンの安全性
コメント欄で、こういう疑問が寄せられた。
ごめんけど、丸写しさせてね。
: ネットで検索したら、皮膚から吸収される添加物はなかなか解毒されにくく、
: 身体の中で一番吸収されやすいのが性器らしいです。
: ナプキンは再生紙で出来ていて色んな薬品を使っているから、
: それが婦人病の原因になっている、と、書いてある記事を見つけました。
: 真相はどうなんだろう?
たまには人の役に立とうではないか、と私も調べてみた。
“ナプキン 再生紙” で検索して出たサイトを見ただけでは
真実がわからなかったので、こういう場合はこの単語を入れるんだ。
“マルチ”
そうすると、布ナプキンのマルチ会社がいくつか見つかった。
そこが言ってる事は、普通に売ってるナプキンは
(以降、布ナプキンに対して、ケミカルナプキン、ケミナプキンと表記する)
化学薬品の塊で、燃やすとダイオキシンが発生して
それが巡り廻って、口に入る、と。
また他の販売サイトでは、それこそ上のような事が書いてあった。
ケミナプキンに付いた血は逆流する。
その時にケミナプキンのポリマーを体内に運ぶ。
他のサイト。
ケミナプキンは子宮けいガンの原因。
では違う意見も見てみよう、と社団法人 日本衛生材料工業連合会の
ナプキンの項目も見てみた。
ここは生理用品の歴史が書いてある。
1961年2月1日に、“紙” 製生理処理用品を
衛生綿類と共に医薬部外品に指定されたそうだ。
このサイトに書いてある人体への安全性は、簡単に言うと
「生理用品は医薬部外品だから、薬事法に縛られてるんだよ。
そもそも人体の健康を最優先する薬事法で
妙な材料や製造に許可を出すわけねえじゃねえか。
ダイオキシン? 出るわけねえだろ。
そんな心配をする前に、衛生面を考えるのなら
血が付いたものは、使用後は焼却するのが一番安全だとわからんか?」
と、私なりに訳してみた。 衛生連合会、ごめん。
私個人の感覚としては、政府やらNPOやらの言う事は必ずしも信用は出来ないけど
布ナプキン側のサイトは、どうも気色が悪いんだよ。
悩んでいる人や、洗脳されやすい信じやすい人が多いところに
マルチやjinkenは入り込む。
布ナプキンを激しく勧めてるサイトは、そういう感じ。
はい! 全部が全部、そうじゃありません!
あなたのサイトは見てません! 多分
で、布ナプキン愛用者の掲示板に行ってみたんだ。
実際に使ってる人の意見はどうなんだろう、って。
そしたら、ケミナプキンが合わない、布ナプキンの使い心地が良い
ただそれだけの、本当の “自由選択” で使ってるだけだったよ。
洗うのだって、普通の洗剤で洗ってる人もいるし
洗濯機を使ってる人だっていた。
ハマっちゃって買い集めて何か月で何万円使った、とか
ほんと私が化粧品好きなのと、あまり変わらない意識。
100均で買った布で手作り、とか言う人もいて
逆に、経皮毒とかいう人は嫌がられている始末。
よって私の結論としては、“好きにすれば良い” だな。
ただ、恐怖を煽るような事を言ったり押し付けるのには、ものすごく反発。
でも、どんな業界にもそういうアホウはいるので
不安なら、色んな角度から検索をして
自分の勘で選べば良いと思うんだ。
東北大震災で、有識者も学者も隠ぺいもすれば嘘も付く、とわかったんで
“ソース” というものに、以前ほど信頼性がなくなったから
自分の勘で選ぶ方が、失敗しても諦めが付きやすいだろ。
この問題も、そういう系統の話のような気がする。
なお、うちの故かあちゃんの教えてくれた “綿式生理用品”、
ナプキンの歴史の戦後あたりに載ってたよ・・・。
私は戦争を知らない子供だけど、1年ぐらい使ってたぜ。
“ナプキン” の存在を知らなかったという、奇跡!
まったく、遅くに出来た子供は、親とのジェネレーションギャップが激し過ぎ!
綿ナプキンの作り方。
1.薬局で売っているナプキン大の大きさの脱脂綿を、好きな厚さで使う。
最低、4~5cmの厚みは必要かな。
2.それを真ん中、もしくは上がちょっと薄めのところで、2つに分ける。
3.その間に、好きな厚みに畳んだトイレットペーパーを挟んで閉じる。
ペーパーで血を食い止めるので、これは厚い方が安心。
これ、“脱脂” 綿じゃないと、水分をはじきまくるんだって。
だったら底の綿は脱脂してないものが理想なんじゃないか、と思うんだが
脱脂してない綿って、凄くヌラりそうだよな。
私はこれを初潮時から、同級生たちに気付かれて大爆笑されるまで
約1年ほど使い続けていたけど、漏らした事はなかった。
これの欠点は、多少モッコリするところと、綿の繊維が付きやすいとこ。
そして、「ナプキン1袋丸ごと持ってきてるのか、と思ってた。」
と言われるほど、大きい荷物になるので、持ち歩きが大変。
でも使い捨てなので、布ナプキンが面倒な人は試してみて。
で、ひとつ思ったけど、カブレるナプキン、
綿とか布を肌との間に敷けば良いんじゃないのかねえ。
何しろ、漏れないのと利便性では、ケミカルナプキンが一番だから
直接皮膚に触れさせなきゃ良いわけだろ。
あ、経皮毒は、私も常々考えている項目で
今後、目が離せない事案だけど
ナプキンに関しては、気にしない方向でいくよ。
不都合が起こらない限り、こういう調子の良い態度で暮らすのがラクだけど
何かあってからじゃ遅いから、何をするにも覚悟は必要だよな。
評価:
白十字
¥ 999
(2003-02-17)
コメント:サイズを書いて!!! 調べるのに、むっちゃ苦労したよ。 多分、60cm×40cm、よくわからんのだけど、20cm×15cmに折り畳んだものが10枚って、? ほんと、???。 まあ、本文に出てくるのは、こういうものだ。
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殿のご自慢 8
伊吹は早朝一番から、丘へと向かうつもりだった。
しかし、朝飯を食べているところに
物見 (ものみ:相手の様子を探る役目) の一報が入った。
龍田陣営の準備が整ったようだ、というのだ。
青ざめた高雄の様子に、伊吹は初めて八島の殿の遅延を知る。
明日にでも開戦になるであろうに、こちらには総大将がいない。
その事で、高雄はここ何日も悩んだであろう。
「すまぬ、俺が側にいなかったばかりに・・・。」
自分を責める伊吹に、高雄が冷たく言う。
「意味がわからぬ。
おまえがいても、大殿の到着は早くはならん。」
「だが・・・」
走って来た乾行が、伊吹にドスンと抱きつく。
「何やってんだよお、いよいよ待ちに待った開戦だぜえ?
具足の準備に人手が足りねえってえから
俺ら、いくさ前も役に立っちゃおうぜえ?」
確かにウジウジ悩むのは後からでも出来る。
今は、今すべき事がある。
「うむ、高雄、いくさが終わったら話そう。」
慌てて武具庫に走る伊吹の後ろをついていく乾行が
振り向いて、笑いながら高雄にヒラヒラと手を振る。
高雄はうなずくと、すぐに背を向けた。
助かったぞ、乾行。
伊吹の馬鹿、放っとくと何でも自分で背負おうとするからな。
蔵に納めておいた槍を抱えながら、それでも伊吹はまだ落ち込んでいた。
俺はいくさ前に女に気を取られるなど
何という馬鹿な事をやっていたんだろう・・・。
「おお、ここに立ててくれ。」
乾行にうながされながら、槍台に槍を立てていく。
「伊吹、おりゃあ、この数日で女を三人抱いたぞ。
ここいらの女は良いねえ、可愛くて情が深い。
もう、惚れちまったよお、くうううううううっ。」
能天気なその言葉に、伊吹は顔をしかめた。
「乾行・・・、おまえ高雄が大変な時に遊んでいて
心苦しくないのか?」
乾行は、あっはっは と笑う。
「高雄は “出来る” から、やってんだよ。
それが高雄の領分さ。
俺らは高雄が望めば力になる、それが役目だ。」
伊吹はハッとさせられた。
自分がいないから高雄が大変だなど、思い上がりも甚だしい。
「おまえも高雄に手伝わされただろ?
俺なんか、女を連れ込もうとした宿の店先に
高雄が仁王立ちしてたんだぜえ。
あいつは必要とあらば、こっちの都合などお構いなしに
引きずり回してくれる奴なんだよ!」
乾行の文句に、伊吹は気が晴れる思いであった。
「うむ、そうだな。
高雄が必要とした時に、俺たちがいれば良いのだ。」
伊吹の表情が明るくなったところで、乾行が探りを入れる。
「伊吹、おまえも女が出来たな?」
否定するにも、乾行は伊吹の胸元をクンクンと嗅いでいる。
「・・・・・・わかった、ちゃんと言うよ。
別に女が出来たわけではないのだ。
ただこれを貰って、俺は紐を渡しただけだ。」
伊吹の胸元から出てきた真っ赤な手拭いを見て、乾行はギョッとした。
金持ちの娘だろう、とは推測していたが
ここいらに、赤染めを手拭いに出来るほどの家があったか?
「どんな女だ?」
乾行の問いに、伊吹は少し視線を落とした。
「さあ・・・。
花のような娘なのだ。
その娘からは、この巾着を貰ってな。
この緑と俺が贈った紐の緑と、ちょっと違うんだ。
気に入って貰えるだろうか?」
いつもはまともな伊吹が、わかりにくい話の展開をする。
しかし水を差したら、黙り込まれるかも知れないので
乾行は頭の中で、状況を組み立てるのに必死になった。
要するに、こいつらは何らかの事情であまり会えずに
物の贈り合いだけ、やってたんだな?
握り締めた緑の巾着を見つめている伊吹の肩をポンポンと叩いた。
「心配すんな。
その巾着の緑は、おまえに似合う色だぜ。
女はそれを考えて選んだんだろ。
おまえが女に合う色を選んだようにさ。」
「そ、そうか・・・!」
臆面もなく笑顔になる伊吹に、乾行はウンザリした。
ああ、やだやだ、純情野郎の初恋なんて体がむず痒くなるぜ。
疑問は何ひとつ解明したわけではなかったが
伊吹のあまりの純粋さに、事はうやむやになってしまった。
続く
関連記事 : 殿のご自慢 7 13.3.1
殿のご自慢 9 13.3.7
殿のご自慢・目次 -
おりものシート
おりものシートと尿漏れシート、
そして “大事な部分の痒みに” というやつを常備しておる。
この3大陰部グッズ、買いにくい事この上ないか?
いんや、私は恥知らずな上にババアなので
オムツだろうが痔の薬だろうが、平気で買うがな。
さて、今日は道草は食わないぞ。
と言った端から、ひとつだけ直訴させて!
大事陰部痒みは何度、開封もせずに使用期限切れを起こした事か・・・。
もしカンジダとかなら、膣内部が痒くならねえ?
こりゃ座薬を買うた方が良くねえか?
と思うたが、座薬は軟膏よりも使用期限が短いくせに高い。
ついでにな、嫌な暗示をごめんだが
膣周辺にこの手の軟膏を塗ると、膀胱炎がヤバいよな?
と言う事で、私は軟膏系は有事の際にしか買わない事にした!
今更だが。
で、実はこっからが本題なのだが
私の体で一番規律正しいのは、子宮のような気がする!
よりによって、一番使わん部分が一番良い仕事をしよるとは
人体の不思議 (恐怖じゃない方の) !
と言っても、私も30歳ぐらいまでは、揺れ動く子宮だったさ。
でもそっから良い更年期になったのかわからんが
きっちり26日周期で生理が来よる。
何で28日じゃなく26日なのか・・・。
この周期の短さだと年中生理になってる気がするし
あれ? 不正出血? ・・・あああ、生理だよーーー・・・
となるので、日にちを数えるのが不得意な私は
年中おりものシートを常用している。
生理用ナプキンじゃ、しょっちゅうカブレるんだけど
綿100%のおりものシートなら、それはないので
正直、おりものシートに私のすべてを受け止めて貰いたいぐらいだ。
尿漏れシートは、生理前出血?や終わる直前の微妙な時に便利なので
これも活用しとるが、生理用ナプキンに似たり寄ったりのカブレ具合なので
ある程度のものをブロックするには
非通気性はやっぱり必要だと、我が肉体で実感。
ところで私がまだ生理がある事に驚いた人もいるだろうけど
使わん部分は老化が遅い!
というのが私の推理。
そんで、これも私の勝手な推測だけど
見た目で女性ホルモンが多い少ない、って
医師はわかっているような気がするんだ。
というのも、病弱な私はあらゆる科を受診して
ついでに更年期の話をするんだが
お医者さん全員が、調べもせずに 「まだまだですよ」 と言う。
自分から訊いておいて、私は年寄りか、と怒り出すババアでもおるんか
裁判をうたれたくねえのか、お世辞のどれかか?
と、疑問に思って調べてみたら
目安に過ぎないけど、ある程度の予想は見た目でわかるっぽい。
たとえば乳首が黒いとか、いや、乳首は出しておらんが
唇のふくらみとか、ムダ毛の生え具合や、腰のくびれ等。
・・・私の体は使わない部分だけが優れておる!
そうこうしている内に、更年期どころじゃない騒音トラブルに巻き込まれて
頭を打ったら腕をつねれば痛くない! とばかりに
更年期、どうでもよくなったがな。
(ちなみに、人で実験させてもらったら両方痛いんだって。
小指を机か何かの角で打って、のた打ち回っている人に
『人は2箇所同時に痛みは感じないって説があるんだよ
その説、試してみたくない? 良いよね、やるよ?』
と、痛みで返事も出来ない人の腕を
思いっくそ (善意で) つね上げたら
『両方痛いわ!!!』 と、蹴られたさ。
何箇所痛くても、各々が存分に痛いらしい。)
私は山羊、道草うめえ。
でな、検査済みの健康な子宮の持ち主の私が思うに
おりものには理由がある!
まずは病気。
知人の場合は、スカートが濡れるほどに出てて
病気で、子供が望めない
と言われたんだけど、治療して無事に2児の親になっている。
女体の神秘。
もうひとつは排卵日とか、そういうやつ。
子宮にゃ、何か出さなきゃ気が済まない日もあるらしい。
そして、外的要因。
私が膀胱炎で冤罪をかけられた “不潔なセックス”!
参考記事: ボーコレン 11.12.22
これはもちろん、感染をしない方がおかしいんで除外するが
意外なところで、石鹸、トイレットペーパー
合わない生理用ナプキンや下着 等もヤバい気がするんだ。
そして例の偏った潔癖症を発揮するけど、風呂!
得に公衆浴場!
銭湯、スーパー銭湯、温泉、プール、海、川、湖、池、沼!!!
人が入った後の風呂には入りたくない。
入りたくないけど、状況によっては入るがな。
だってそういう事を言ってると嫌われるじゃん。
ほんと、人付き合いって命懸け。
いや、命までは懸かってねえがな。
私さ、ほんと生理と同じく、おりものも定期的で
そういう私だからこそ言えるんだけど
異常がある時は、何か普段と違う事をしてると思うよ。
まあ、そうやって、おりものとして異物を体外に排出しているんだから
おりもの自体は悪い事ではないんだけど
あまりムチャは止めようね、という話。
と、ここまで書いておいたんだよ。
月曜って、頭が回らない時が多いんで、あらかじめ大筋を書いておくんだ。
そしたら先週は、私が 「生理の血は内臓の匂い」 と
普通の淑女ならしない発言をポロリしたせいで
ずーーーっと、コメント欄が生理時の匂いの話題。
さすが、ババアと病人と変質者とアホウの専用ブログ、と
悦に入ってたんだけど (嬉しいんかよ!)
再生紙とかの情報も舞い込んできたんで
これは、ちょっと真面目に調べなきゃ、と思ったんで。
で、土日にそれをすべきなのに、プーチンクラスの冬将軍到来で
寒いんで、延々と心霊ビデオとゲームをしてしまったさ。
これが何の言い訳にもなってない事は
言った本人が一番わかっているから、どんどん責めて!
いや、ちょろっとは調べたんだよ。
でもこれは、何かまとめられる自信がねえ。
だって今日は月曜日!!!
よって、ごめんけど、しばらく時間をほしい。
その間に真面目に調べるか、なかった事にするから。
という事で、今日は普通の記事。
・・・普通か・・・?
評価:
小林製薬
¥ 543
コメント:私愛用。 そこ、吐くな! 閉経しても、いきなりの不正出血もあるそうだから、女性が一番長く付き合うのはナプキンじゃなく、こっち系だと思う。 これは私にはヘンな匂いも起こらず、かぶれない。 たまに浮気しては戻る港的存在。
-
殿のご自慢 7
「・・・伊吹が女くせえ・・・。」
乾行の言葉を、高雄がたしなめる。
「あいつが女々しいなど、的外れの悪口だな。」
乾行は叫んだ。
「馬鹿か!
おりゃあ、別に今あいつと喧嘩なんかしてねえよ!」
乾行は高雄の着物の襟を両手で掴んで引き寄せ、小声でささやく。
「俺が言ってるのは、あいつから女の匂いがする、ってんだよ。」
高雄は嫌そうに、乾行の顔を手で押しのける。
「おまえの面 (つら) を間近で見せるな。」
「失礼な!」
とは言ったものの、意外にも乾行は怒らない。
「おまえのような綺麗な男に言われたら、反論は出来ねえな。」
「容姿など、能のない者への世辞にしか過ぎぬ。」
高雄は自分の容姿を褒められるのが、好きではなかった。
いくら頑張っても、人はまずその美しさを称える。
能力への評価をされていないわけではないが
「お綺麗なのに、その上うんぬん」 という褒め方をされるので
高雄にとっては、整った容姿は邪魔でしかなかった。
「で、おまえと仲が良い伊吹が何だって?」
高雄の嫌味に乾行は動じない。
「妬いてんのかよお。
おまえともこんなに仲良しじゃねえかよお。」
抱き付いてくる乾行と取っ組み合いをし
ようやく足払いで、相手を地面に転がした高雄がさすがにブチ切れた。
「話を進めろ!!!」
「うむ、すまん・・・。」
ふたりともゼイゼイ言っている。
「伊吹から、女の良い匂いがするのだ。」
「あの伊吹に女ができた、と言いたいのか?」
馬鹿らしい、といった素振りの高雄に乾行が言う。
「おりゃあ、女の達人だぜ?」
高雄は考えた。
確かにこいつは八島家家臣一の遊び人。
「どんな女だ?」
「本人を見た事はないが、どうも良い家の嬢ちゃんのようだ。
素人の若い娘が好みそうな匂いだけど、香料が高価に思える。」
その推理に、高雄は感心した。
「確かにおまえは女の達人だな。」
「ふん、俺みたいなご面相の男が、ただ近寄っても
女は相手にしちゃくれねえんだよ。
遊ぶにも努力が必要なのさ。」
「乾行・・・」
慰めようとする高雄を、乾行は両手で牽制した。
「おっと、面の事で、おまえにだけは慰められたくねえなあ。」
高雄は目を冷たく光らせると、乾行の手を握った。
「乾行、おまえは本当にイイ男だぞ。」
「高雄ーーーっ、おまえって奴はああああああああ!」
再び取っ組み合う。
土ボコリまみれになって、地面に座り込むふたり。
「伊吹が心配だ。
あいつは真面目な男だ。
騙されていなければよいが・・・。」
「うむ、俺もそう思う。
しばらく、それとなく伊吹を見張っておくさ。
おまえは大殿の迎えで忙しいだろうし。」
「・・・それが、実はな・・・」
高雄が声を潜めた。
「明日来る予定だった大殿が、数日遅れそうなのだ。」
八島の殿は、今回のいくさの総大将である。
その立場にある者が戦場にいないのは、士気に大きく影響を与える。
「では、総大将代理を立てるのか?」
「その事で私は国境まで帰って、連絡を取ったのだ。
大殿が言うには、主だった重臣たち共々
怨敵、吾妻家との睨み合いで、こちらに来られないらしい。」
乾行が険しい表情になる。
「おいおい、それじゃあ、今回の編成は
おまえが一番上で、他は伊吹と俺以下の下級武士たちで何とかしろ
と、言ってるのかよ?」
無言の高雄に、乾行が苦々しく言う。
「孤児だった俺や伊吹を重用してくれるのはありがたいんだが
時々このような無体な事をなさるから・・・」
「乾行、言うな。
おまえが暗い顔をしていると、皆も沈む。
するまでもない勝ちいくさが、我らの力量を示す勝ちいくさになっただけだ。」
高雄のそのつぶやきに、乾行は仰向けに寝っ転がった。
「良かったな、今回は俺らが三人揃っていて。」
高雄も空を仰ぐ。
「うむ。 我らの三角は無敵だ。」
続く
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殿のご自慢 8 13.3.5
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頑張れ クロネコヤマト!
世は佐川萌えらしい。
が、私は断然クロネコヤマト支持である。
ヤマトと私との間には、長い長い歴史があるからだ。
昔、建築業の家に嫁いだ時は、家の隣が事務所だったので
あらゆる運送会社の人と接触してきた。
配達物はドデカい建築資材とかなので
事務所のところの広い置き場所に置いておいて、と
依頼時にちゃんと言っておくらしいのだが
それすら出来ない人が多数。
それでもピンポーンと来て、「どこに置けば?」 なら、まだ良い方。
ある日、出掛けようと車に乗り、車庫のシャッターを開けたら
目の前一面に台所の流し台が置いてあったのには驚かされた。
・・・そこ、一般家屋の車庫前。
事務所、その2m横・・・。
そんなこんなで、運送会社をとても厳しい目で見るようになった私の
唯一の心のオアシスは、クロネコヤマトであった。
ニコニコテキパキ愛想良く、しかもイケメン揃い。
うちのバカ犬アフガンハウンドが、荷物のやり取り中に逃げ出した時は
「あ、放っといても帰ってきますから、気になさらないでください。」
と言っておいて、その帰って来るまでにそこら中で迷惑をかけかねないので
チッ、探しに行くか、と縄、いやリードを持って家を出た私の目に
田んぼの向こうでアフガンにしがみつくヤマトガイの姿が!
「すすすすみませんーーーっ!」 と駆け寄ると
「いたので呼んだら来たので捕まえたけど
どうして良いのかわからなくて・・・。」
と、可愛い事を言ってくれて、私のまだタレていない胸がキュンだったよー。
このアフガン、男好きだとトリマーさんが言ってたけど
(理由は、私が女性だかららしい。)
香水ならず、男の趣味まで私と一緒とは・・・
と、帰宅後、ケンカ勃発。
庭師さんに頼んでいるくせに、伝説の高枝切りバサミなどを買う
ボケるんならはっきりボケてくれよ! という
通販好きのうちの母も近所にいて、同じ人が担当エリアだったけど
「ヤマトの男の子、優しいしハンサムで良いわよね。」
と、老婆の心もわし掴み。
荷物を届けに来て、言ったそうな。
「おばちゃん、手紙とか出す時は俺に言ってください。
郵便局の前もよく通るから。」
・・・凄くねえ?
“おばあちゃん” に “おばちゃん” という気遣い。
んで、うちの母が出す手紙を靴箱の上に置いているのを見ている観察眼。
ヤマトガイも私たちが親子だとは知らなかっただろうが
一生、隠し通さなければ、と思ったさ。
だって実家と婚家、車で1分。
お使いとか私がすべきだから。
(ヤマトガイの前では良い子ぶりたい乙女心)
それが関西に来たら、ナイスガイぶりがちょっと落ちた。
しかも、「ありがとうございます。」 とお礼を言う私の顔を
ジッと見る、ヘンな間がある。
あっ、言うとくが、色恋系じゃないぞ。
だって熊本のヤマトガイなんか、私が寝てる時に来たら
「す、すいませんーーーっ」 って何度も謝って
何のこっちゃら、と鏡を見たら、寝グセにヨダレとシーツの跡で
これは、ものすごい恥部を見せちゃったな、と落ち込んだもん。
で、そのいつも配達に来てくれる熊本のヤマトガイと
郵便局の駐車場でバッタリ会って
「いつもお世話になっております。」 と挨拶をしたら
「すみませんが、どちらの方ですか?」 と訊かれ
「ほら、アフガンのいる家の。」 に
「ええええええええええっ!」 と驚かれたほど
家での私はボロボロなのだ。
だから関西のヤマトガイは、九州弁が珍しいのかな
と思っていたけど、慣れてきたら少し愛想が良くなったので
その時もものすごく心の中で応援してたよ。
私の宅配歴史上、トップ走者はいつだってクロネコヤマト。
そもそも関西に来てからは、他の宅配会社は滅多に来ない。
ああ、ヤマト天国だわ、と満喫していたんだが
最近、“ヤマトのにいちゃん” が “ヤマトのおっさん” になった。
そりゃ、若者も年を取る。
だが、おっさんはさすがに年の功で愛想が良い。
熊本時代にあらゆる配達の人に会ってたもんで
とにかく配達に来る人は、愛想が良いのが一番!
と、とことんヤマト支持。
だが、この前、珍しく佐川男子が来た。
・・・・・・・・ものっすげえイケメンだった・・・・・・・・・・
普段と変わらず対応して、玄関ドアを締めた途端
はじける笑顔に輝く白い歯の眩しさに
思わず脳溢血しそうになったよ。
何? 佐川、ヤマトからイケメンを引き抜いてんの?
いや、佐川男子に文句は何もないんだけど
私にはヤマトに恩があるんだよーーーーーっっっ!
(故かあちゃんの雑用引き受け)
ブサイクほど相手のツラに厳しいものなので
顔顔顔顔言ってたけど、もうそれは止める。
にいちゃんでもおっさんでも良い。
(さすがに、じいさんは事務に回してあげて!)
クロネコヤマトよ、とにかく愛想で頑張ってほしい。
私も今まで以上に歓待するから。
佐川男子は来ないで!
ババアの胸キュンは、マジで心筋梗塞直結だから
おめえらの笑顔は、私にはゴルゴ並みの刺客なんだよっ。
評価:
AURACACIA
¥ 1,990
コメント:クロネコヤマトの検索で出るのは、国際ヤマト便でくるからだろう。 このタマヌ、キャリアオイルだけど抗炎症作用と鎮痛作用があるから、神経痛とかの痛みの緩和に良いんだと。 フケ、頭皮の痒み、抜け毛にも良いってよ。 思わぬ情報、さすがヤマト!
-
殿のご自慢 6
思いがけずに、娘への贈り物を買ってしまった伊吹は
どうしようか迷ったが、あの丘へと向かう事にした。
まだ陽は斜め上にある。
もしかしたら、と、無意識に足が速まる。
空が見えてきたが、やはり花はない。
俺は何を期待していたのだろう、と笑いすら込み上げてくる。
一度見かけただけの、話もしていない女のために
決して安くはない金を使ったりして、自分がとても滑稽に思える。
この草むらも何度通っても、自分の足跡しかない。
伊吹は急に泣きたくなるような孤独感に襲われた。
しかし伊吹は武士。
合戦前に弱気になっていたら、士気に関わる。
仕方あるまい。
この紐は男でも使える。
自分で使えば良い。
そうは思っても、急ぎ足も次第にトボトボと力がなくなり
空が見えてから頂上に着くまでに、かなり時間が掛かってしまった。
本当に花が咲いている
そう思ったのは、地面に置かれた真っ赤な手拭いゆえであった。
伊吹は駆け寄り、それを慌てて拾う。
フワッと香った甘い匂いに、軽いめまいがする。
手拭いには、小さな巾着袋が包まれていた。
・・・・・・緑だ!!!
伊吹は、娘との不可思議な縁を感じずにはいられなかった。
地面に正座をすると、膝の上に懐から出した自分の手拭いを広げた。
今まで使っていたのは、この前かんざしを包んだので
これは新しく買ったものである。
しかし、単なるくすんだ灰色のつまらない布でしかない。
その手拭いの上に組み紐を大事そうに置き、丁寧に丁寧に包んだ。
そしてそれを、娘の手拭いが置いてあったところにソッと置いた。
これは、金子入れであろうか?
俺が使っているのは、もうボロボロで破れていて
呉服屋の主人も、見て少し笑っていた。
ありがたい。
女というのは、何故こういう事に気が回るのだろう?
伊吹は巾着の中を覗いたり、裏返して眺めたりした。
おお、内側は外側よりも濃い緑なのか。
布が二重になっておるのだな。
これは丈夫で良い。
ひとしきり巾着を眺めた後に、伊吹はふと不安を感じた。
・・・この緑は、組み紐の緑とちょっと違う色だな。
あの紐より、もっと鮮やかな緑だ。
あの娘ははっきりした色が好みなのだろうか?
伊吹はさっき置いた手拭いを拾い、もう一度組み紐を出してみる。
この紐の色、少し地味ではないか?
ああ、そういえば
巾着が包まれていた赤い手拭いを、膝の上に広げた。
その赤い手拭いの上に、巾着と紐を置いてみる。
この赤に確かに、この巾着の緑は目立つが
この紐の緑の方がしっくりと落ち着いて、良いように思える。
ふう・・・・・・・
ひとしきり考えた後、伊吹は溜め息を付いた。
俺にこういう事柄は難し過ぎる。
あの娘が気に入ってくれなかったら、また呉服屋の主人に相談すればよい。
この赤い手拭いも借りよう。
この赤に、より合うものを見繕ってくれるであろう。
しかし、これが高価だという、赤染めという色か。
確かにこのような鮮やかな赤は初めて見る。
花と見間違えるのも無理はないな。
伊吹は再び組み紐を包んだ手拭いを置き、赤い手拭いは懐に入れた。
巾着はそのまま手に持ち、陽にかざして眺めながら丘を降りた。
続く
関連記事 : 殿のご自慢 5 13.2.25
殿のご自慢 7 13.3.1
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大事な形見・続報
私はお金よりも、物に執着する性格なんだけど
それでも “値段” って、ものすごく大事だと思う。
“こんなに高い靴を履いている私 (はぁと)” だけじゃなく
“こんなに安くて良い靴を見つけた私 (はぁと)” もある
と金持ちから貧乏に転落して、知る事が出来た。
「値段なんて関係ない」 と言うやつは
何百万円の茶碗で茶ぁを飲んでみい。
ももももし、これを落としたら・・・、と
リアル・メンタル・アクティビティーが味わえる。
1億円の絵を前に、これを爪でかきむしったら
という誘惑にときめく事もある。
“値段” ってな、人心をものすごく揺り動かすぞ。
そんなケタ違いの話ではなくとも
興味がない分野だと、値段で判断せざるを得ない場合が多い。
これが不思議な事に、“高いほど偉いわけでもない”
というのが、値段の罠。
車社会にいた頃は、車はステータスのひとつだったので
周囲に、ものすごくお金を掛けている人が多かった。
ホイル1個が50万円 (タイヤは4つ)
おい、その足元に200万? みたいに。
ボロアパートに住んで、ベンツAMGだったり。
そりゃあ、人の勝手だけれど、理解されないお金の使い方には
それなりの評価が付いて回るのは、覚悟せねばならない。
私も、ボロレビンにいくらつぎ込んだか・・・。
主に修理代だったけど、足回りをちょっといじくっちゃったんで
正直、86が新車で買えたぜ。
レビンと言えば86と思われるんで、86に逆恨みしてるがな。
私のレビンはTE71!!!
飲みに行って、店の客全員におごって
一晩で数百万使った、とか聞くと
まあ、そういう人がいるから、日本経済も回るんだろうけど
と思うけど、それが親兄弟夫彼氏なら、しばき倒しとる。
物体執着属性なんで、せめて残るものに金を使って欲しい。
・・・と、今までは思っておりました。
うちのかあちゃんが死ぬ前に
着物も宝石も全部あなたに遺すわね、と言ってて
そういうのに興味がない私は、ちゃんと
「値段を書いておいてくれないと大事にしないよ」
と言っておいたのに、そんな私を下品呼ばわりしたあげく
家中、あっちこっちにテキトーに置いてくれて
探すのにどんだけ苦労したか。
おめえはあちこちに食い物を隠す小動物か!
兄貴も、積み上げられた古い通販雑誌を前に
「某ニッセンとかめくってると、1万円札がはさまってる事があるんだよ
だからウカツに捨てられないんだ。」 と、困っていた。
かあちゃんの死後、かあちゃんの妹、叔母が遺品整理に来てくれた。
叔母もお上品な人なので、その下衆さに嘆き悲しみつつ
国税庁の家捜しのごとく、ふたりで宝石を探しに探し
出てきたアクセ類は、何かものすげえ安っぽいデビ夫人系。
叔母も、今時は宝石もブランドの時代で、こんなんじゃ高く売れないから
“母親の形見” として、大事に取っておきなさい
と、よく聞き直すとえらいひでえ事を言いつつ
あ、着物を1枚ちょうだいね
誰とか作?の何とか (着物の名を知らないので忘れた) があるのよ
どうせあなた着ないでしょ? と、押し入れを開けたら
その高価な着物群が、桐箱に入れときゃ良いでしょ、みたいに
無造作に積み上げられていて
んで、開けたらカビびっしりで叔母、ひいいいいいいいいっ!
手ぶらで帰ろうとする叔母に、待って、着物全部持って帰って
私の手に負えん、と追いすがると
ニッコリ微笑んで、着物というのはクリーニングだけでも
ものすごい値段なのよ、それもああなったら、いくら掛かるか
だから、母親の形見略。
うちのかあちゃんは、ブランド無視の高価格派で
買えば気が済むタイプだったらしい。
私はしょうがねえので宝石だけは、宅配で関西に送り
着物は 「捨てろ」 と、兄に言い残して来た。
どうせ捨てられないさ。
兄もかあちゃんの遺伝か、捨てられない性格だし。
そういう性格が、銭を捨ててる事になっとるのにのお。
何だ、あの浪費は。
あんなん遺すんだったら、旅行とかバンバン行って
思い出と供にあの世に旅立ってほしかった、と普通は思うだろ?
だけど、うちのかあちゃんは旅行もバンバン行ってたんで
もう、マジで 現金! で遺してほしかった・・・。
と、ここまでが、いつか書いたあらすじ。
かあちゃんの命日がいつだったか忘れた ← ・・・
(これさあ、非難されるだろうけど、だったら人に訊けるか?
可愛い可愛い愛娘だったのに、かあちゃんの命日忘れちゃいましたー
とか、怒られるのはしょうがねえけど
一生、非人道の烙印をベッタリ押されるのは、ほんとごめん。)
んだけど、2月の末、20日台という実に覚えにくい日だったので
それを思い出したら、着物の二の舞は踏むまい、と
アンド、うちにカビとか冗談じゃねえぞ、と
遺品のアクセを出してチェックしてるんだ。
叔母の、“ブランドものだけは大事にしなさい”
という下品な言いつけを肝に銘じていたんだが
今年は100均で乾燥剤を見つけたんで
おおっ!!! と、大量買いして
それを箱にいっちょいっちょ入れていたら
どれがどの箱に入っていたか、わからなくなりました
どどどどうしよう、と慌てまくって
友人に助言を求めたら、「重いのは本物らしいよ」 という
何時代の物々交換だよ? という意見を貰った。
・・・・・・下品デザインで、全部重いです・・・・・・・・・・
鑑定書とか英語だし、そもそもあのかあちゃんは値段派なので
全部、本物っちゅうたら本物なんだよな。
価値があるなしは別にして。
にしても、18金とかブランド名とか、本体に刻印してねえの?
もしかして、最初から入れてる物を間違えてた?
何か、ここらへん、ものすごく謎。
とりあえず入る箱に入れて、それをこの紙袋に入れておいて
これひとまとめで “かあちゃんの形見” として置いておくしかねえな。
真珠とか、すぐ腐るんで、綿の手袋で触らにゃならんし
物に執着するタイプには、貰いものって全体的に迷惑にしかならねえよ。
すぐ物に換えるんで、私にプレゼントは金券オンリーで頼みたいぜ。
あ、かあちゃんのアクセの中に、24金の指輪があるんだよ!
珍しいだろ? 24金のアクセなんて。
それな、素手でグニャグニャ曲がるんだ。
かあちゃんの指、ほっそくて、中指が私の小指の太さなんで
どれもはめようがないんだ。
小指にデカ石指輪とか、それ何の引っ掛け問題? (この高尚なダジャレ!)
でもその24金の指輪は切れてるんで、私の指に合わせようと
伸ばしてたら、ガタガタになってしもうた・・・。
これならアンティークだし、着けたいんだけど
ちょっと見苦しい・・・。
あんまり触るとブチ切りそうだし
これ、どうしたら真円になるかなあ・・・。
何か私、この形見に、えれえ苦労させられてる気がするんだけど
まさか祟られていねえよな・・・。
評価:
株式会社シンヤ
¥ 1,344
コメント:これな、美味いんだよーーー。 1度食べてみいよ。 24金指輪 → 金沢金箔 → 加賀お麩 で思い出したという。 これも、かあちゃんが教えてくれた食べ物のひとつだ。