投稿者: あしゅ

  • 兄と水

    てか、水話題、前にも書いた気がして
    何度も同じ話をするトンチキババアではあるんだが
    今日は怒りにあふれているので、ボケてるわけではなーい!

    いつだったか、多分ここ1~2ヶ月以内の事だったと思うが
    熊本市の水は全部、井戸水を使っている、とTVで観た。
    (地下水、って意味かも知れんが、“井戸水” って言ってた。)

    熊本住み時代に、私はミネラルウォーターを1度も買った事がなかった。
    水道水が何の支障もなく飲めるからだ。
    それでも世間は、ミネラルウォーターの時代なんで
    一応ヤカンで沸騰させた水を飲んでいた。
    炊飯とか料理に使う水は、堂々の生水である。

    正直、ミネラルウォーターがある意味がわからなかった。
    もちろん熊本でも売られているんだ。

    ミネラルウォーターっちゅうのは、特別な栄養が入った水で
    皆サプリとして飲んでいるのかな、と思っていたんだ。
    すまん、これほどのアホウで、ほんとすいません。

    兄が熊本に帰ってきて以降、実家ではミネラルウォーター常備になった。
    色んな場所の、天然水だかミネラルウォーターだが知らんが
    あっちゃこっちゃの水を、あれこれ取り寄せている。

    それは兄の自由なんで良いんだけど
    私に利き酒ならぬ利き水をさせるんだよ、いちいち。
    水道水とミネラルウォーターを飲み比べさせるんだよ、いちいち。

    その度に、ソムリエ並の表現をせにゃ不機嫌になる兄に気を遣って
    もんのすげーーーーーーーーーー、頭をひねりにひねったもんだ。

    このブログを読んでるヤツなら、私の苦労がわかると思う。
    私って、感性が鈍く、言葉の種類も少なく、表現にも乏しいだろ。
    ああっ、いいから! 自覚してるんで慰めはいらんから。
    でも年寄りはそう言いながら、流されると怒り出すがな!

    私の構われたい願望はどうでも良い。
    話を正道に戻すと、この利き水、ほんと大変なんだよ。
    いや、水に限らず、食い物の評価って私にとっては無理難題なんだ。
    それを兄は、何の嫌がらせなんか、更生させようとしとんのか
    私にえれえ望むんだ。

    大体水ってさ、味をそんなに多彩に表現できるかあ?
    て言うか、ワインだって、ちょい甘ちょい辛普通 以外に
    どう言えっちゅうんじゃあ!
    (私的には酸味があまり好きじゃないので、ワインは嫌いなんだが、
     「酸っぱい」 などと言うと、ソムリエがすっ飛んできて
     兄曰くの “面白い” 事になるらしいので
     死んでも 「酸っぱい」 とは言えない。)

    つーか、東京に何年も住んでいた時も、平気で水道水を飲んでいたので
    そんな私に水を語る資格はない、と自分でも思うんだが
    この、キーを打つのもめんどくせえミネラルウォーター、
    ほとんどが、熊本の水道水と何ら変わらなかったぞ?

    それを誰にも言えずにいたが、一度だけ某どこぞのガンも治る水が
    あまりにも熊本の水道水に激似だったんで、我慢できずに言っちゃったが
    熊本市の水道水が井戸水だとTVで観て

    そら見た事かーーーーーっっっ!!!

    と、もんのすげえ自分の味覚に自信を持ったぜ。
    さすが私! 凄え! 駄菓子で鍛えた舌はただ者じゃなかった!

    1本2リットルだっけ? 最低100円以上するだろ
    何でそんなんに、そんな金を出さにゃいかんのだよ?
    しかも天下の熊本でだぞ?
    もう、アホかバカか贅沢ぬかすんじゃねえ、と3日3晩説教したいね!

    最初に、ちょい前にTVで観た、と書いたが
    何故、今頃になって激怒しとんのか、と言うと
    来週末に法事で帰省せにゃならんのだ。

    その打ち合わせの電話で、兄がえれえ渋ってなあ。
    どうやら私の寝る部屋がないらしい。

    いないヤツの部屋が物置になるのは、自然の摂理でしょうがない。
    だけど6LDKで寝る部屋がない、ってどういう事だよ?
    しかも納戸が2部屋あるんだぞ、押入れなんか9畳分あるんだぞ?
    外にも100人乗っても大丈夫な物置が大小4個あるんだぞ?

    うちの実家、マジでゴミ屋敷になってるんかよ!!!!!!!

    で、私の部屋には、何とミネラルウォーターの箱が山積みなんだと。
    熊本で水をそこまで通販してんじゃねえ!!!!!!!!!

    私だって、この財政圧迫の中、飛行機代払ってまで帰りたくねえよ。
    早い予約で割り引かれても、往復3万ちょい掛かるんだよ。

    新幹線? ああーーー? 誰に言っとんのじゃ?
    何時間もジッと座っとられるかい!
    腹ん中にギョウ虫がいるんじゃないか、と思うほど
    落ち着きがないんだよ、私は!

    (痩せてるのは寄生虫のせいか、と虫下し薬を飲んだ事まである。
     もちろん薬剤師には止められた。
     結果、痩せも落ち着きも何の変化もなし。
     正当な虫はいないようだが
     これで脳みそにウジが湧いてる確率が、益々高くなった事は確かだ。)

    だけど実家に置いてある荷物を、ちょっとでも持って来たいんだ。
    「買えば良いやー」 と、思って置いてきてたんだけど
    貧乏で、とても買えない事に気付いてな。

    結局は己の欲で怒ってるんだが
    帰る場所がない、ってのも、ほんと悲しいぞ。
    それにも増して、実家がゴミ屋敷なのは、もっと辛いぞ。

    ああ・・・帰るのが怖い・・・・・。

  • ジャンル・やかた 16

    珍しく朝早く起きたアッシュの目に留まったのは、テーブルの上のメモ。
    どうやらローズは、アッシュが寝ている真っ最中の部屋に
    自由に出入り出来る神経を会得したようである。
    こんな危険な館で、気付かず爆睡してる方もどうなんやら、だが。

    読み書きが苦手なアッシュは、最後の署名だけ見て
    とりあえずローズの部屋に行けば良いや、と流した。
    そしてその受け流しは、アッシュにとっては滅多にない正解だった。

    ローズの部屋に行くと、見知らぬ女性がいた。
    「あたしの姉のバイオラだよ。 鍛冶屋みたいなもんをやってる。」
    「かかかかかかか鍛冶屋ーーーーーっ?  !!!!!」
    RPG好きのアッシュの心は、狂おしくときめいた。

    ソワソワと嬉しそうに握手をするアッシュ。
    とまどうバイオラの耳元で、ローズが囁く。
    「その動揺はわかるけど、さしたる害はないから大丈夫。」

    「でね、あんたに武器を見つくろってきたんだよ。
     いやあ、大変だったよ、作るのはさあ。
     図書館で勉強をしたのは久しぶりだったよ。
     日本人という事だから、やっぱり使い慣れた武器が良いだろ?」

    バイオラは布包みを開いた。
    「どうだい、ザ・シュリケーーーン!」

    「一体いつの時代の本をー・・・?」
    アッシュは青ざめた。
    しかもその手裏剣は、ブ厚い上に直径15cmぐらいあって
    投げるどころか、重くて持てない。

    「これ、試しに投げてみてくださいよーーー。」
    アッシュにうながされバイオラが投げると、手裏剣は手を離れた途端
    急降下して、30cm先の床にドスッと刺さった
    「ああああああああああ、あたしのラグがーーーーー!」
    ローズが悲鳴を上げた。
    「こっ・・・これはアキスミンスターの骨董ものなんだよ!」

    「あはは、ごめんごめん、ちょっと使いにくかったね。
     じゃあ、こっちの鎖鎌はどうだい?」
    鉄球から1mほどの太い鎖が伸びていて、先には鎌が付いている。
    「サムライの日本刀は知ってるけどさ
     あれを作るのには、かなりの時間が掛かると思うんだよね。
     その点、このニンジャ武器ならある材料で作れるしさ。」

    バイオラなら、ツヴァイハンダーのような日本刀を作るに違いない
    中腰で、直径10cmの鉄球を両手でやっと持ち上げたアッシュは
    泣きそうな目でローズを見つめた。
    ローズはラグの穴をさすりながら、バイオラを睨む。

    バイオラは豪快に笑った。
    「あはははは、冗談だよ、冗談。
     こんな重いものを戦闘で使えるわけがない。」
    そう言いつつも、急に真顔になって溜め息を付いた。
    「・・・持って来る時に気付いたんだがね・・・。」

    「あ、あのですねー、手軽に警棒とか、ないですかー?
     アルミかなんかの軽いので、3段に伸びて
     腕に取り付けられるようなんが良いんですがー。」

    「警棒ならあるけど、腕に取り付けるって?」
    ローズが持ってきた警棒で、身振り手振り説明をする。
    「ほら、ここに警棒付きのアームカバーをして
     腕を振ると、警棒がジャキジャキンって伸びるのー。」
    「へえ、それ良いアイディアだね。
     すぐに出来そうだから、ちょっと急ぎ作ってくるよ。」

    バイオラの背中に向かって、アッシュが懇願の叫びを上げた。
    「軽いのをー! とにかく軽いのをーーーーーーっ!」

    バイオラが部屋から走り出て行った後
    ローズを睨んで、アッシュがイヤミっぽく言った。
    「うちら兄妹を変人扱いするだけあって
     えらいマトモなお姉さまをお持ちでー。」
    「うるさいね! あの人は武器防具になるとああなんだよ。」

    「どうするんですかー? この床が抜け落ちそうな重さの鎖鎌ー。」
    「持って帰らせるよ。 しかしこれ、バイオラ、よく持ってこれたよねえ。」
    「怪力姉妹ですねえー。」
    「・・・否定はしないけど、ちょっとムカつくね。」

    「とりあえず武器待ちですかー? だったら何か食べませんー?
     私、朝食まだなんですよー。」
    「スコーンやパウンドケーキ程度ならあるけど、それで良いかい?」
    「わーい、そういうのが良いんですー。」

    お茶の用意を一切手伝わないアッシュを
    ローズはまったく気にしない。
    あたしの大事なティーセットを割られたら大変だしね。

    「そういや、あんた、食堂で皆に慰められたらしいね。
     良かったじゃないか。
     でも、よく思ってないヤツもいるよ、気をつけな。」
    「5人に好かれりゃ5人に嫌われる、ってのが世の摂理ですもんねー。」
    「・・・あんた、時々ものすごく図太いよねえ。」
    「えへへー、恐れ入りますー。」
    「褒めてるわけじゃないんだけどねえ。」

    お茶やらケーキやらクッキーを食べながら、たわいもない話をした。
    「何か、私ら、いっつもお茶してませんー?」
    「あんたの国はどうだか知らないけど、この国はそういう習慣なんだよ。
     何かあれば、お茶お茶さ。」
    「そういや、私の国にも茶道ってありますけど
     お茶って全世界共通の交流の儀式なんですねえー。」

    どこにでもある、昼下がりのお茶会の風景だったが
    そんな悠長な事をしている場合ではないのは、ふたりともわかっていた。
    館攻略は、まだ1mmも進んでいないのだ。

    3時間ほどで、バイオラが戻ってきた。
    望み通りのアームガード付き3段警棒を持って。

    アームガードは皮で作られていて、肘から手首手前までの長さ。
    警棒は、その外側にベルトで固定されており
    腕に固定するベルトが、更に3本付いている。

    しばらく3人でその武器をいじくり回して、キャアキャアはしゃいでいた。
    これも対象物が武器じゃなかったら、微笑ましい光景なのだが
    この世界全体が歪んでいるので、萌えアイテムも微妙に危ない。

    アッシュがアームガードを腕に巻き、言った。
    「さあ、出陣しましょうー!」

    続く。

    関連記事: ジャンル・やかた 15 09.10.9
          ジャンル・やかた 17 09.10.15

  • ジャンル・やかた 15

    目覚めたのは、翌日の夕方だった。
    昨日は何時に寝たのかわからなかったが
    確実に1日以上、眠りこけていたらしい。

    ズキズキと痛む頭でベッドに座っていると
    ドアがわずかに開き、目が覗き込んだ。
    「うわっ!」
    一瞬驚いたが、すぐにローズだとわかった。

    「あんた、よく寝ていたよ。 もう大丈夫かい?」
    という言葉で、ローズが何度も様子を見に来てくれていた事がわかる。
    そういう人を裏切れるか?
    もうイヤだと言って、失望させられるか?

    アッシュはベッドの上で土下座をした。
    「見苦しいとこを見せて、本当に申し訳ございませんでしたー・・・。」
    「いや、あんな場合はしょうがないよ。」
    ローズが慰めると、アッシュが懇願した。

    「でも、昨日のような事はもうイヤですー。
     それを上に伝えてくれませんかー?
     私、子供、大っっっ嫌いですけど、たとえ危険な子供でも
     暴力を加えるなど、考えたくもありませんー。 お願いしますー。」

    再びお辞儀をするアッシュに、ローズは言った。
    「上に言っとくよ。
     今回の事で、上も判断がついただろうしね。
     ただこれ以降は、手だれが襲ってくると思うよ。
     あたしは武器の調達をするから、あんたは今日も体を休めときな。
     飯を食って、風呂にも入って、洗濯もすれば良い。」

    「では、お言葉に甘えますー。」
    アッシュが入浴の用意を始めたのを見届け、ローズは部屋を出て行った。

    風呂に入っても、洗濯室に行っても
    アッシュの脳裏から、やられた敵の姿がうめき声が離れない。

    洗濯物を乾燥までセットして、食堂に行った。
    食欲がなあ・・・と、カウンター上に並んだ料理を見ると
    何と、炊いたご飯がボウルに山盛りになっていた。

    「ああーーーーーっ、これーーーーーーーっっっ!」
    ホカホカご飯を見つけたアッシュの目に、涙が溢れてきた。
    「許可が出て良かったね、嬢ちゃん。」
    ニコニコして声を掛けてきたウエイトレスに
    「ありがとうーーー」
    と、アッシュは号泣した。

    ショック続きで、涙腺が緩んでいたのもあって
    単に泣きグセがついていただけだが
    それが、人々の目には純粋に映っていた。
    これは割とラッキータイムである。

    ヒックヒック言いながら、ご飯と卵を食うアッシュに、周囲が
    「大変そうだね。」「頑張るんだよ。」
    と、チヤホヤと声を掛けてくれる。

    周囲のこの応対の変化が不思議ではあったが
    今のアッシュには、自分への強い肯定に思えた。

    「そのライス、ニッポンではパンと同じと考えるらしいぜ。」
    「ニッポンフードって太らないらしいね。」
    「そうそう。 ニッポン人は皆痩せてるんだって。」
    「美味しくて健康にも良いらしいよ。」

    あちこちのテーブルで、ご飯を試しながら盛り上がっている。
    「食べてみたいねー、ニッポンフード。」
    「街じゃ高級レストランでしか食えないしね。」
    「嬢ちゃん、料理人に食べやすいニッポンフードをリクエストしてくれよ。」
    この食堂が和気藹々とするのは、珍しい事であった。

    「皆ありがとうー、これからも精一杯頑張りますー。」
    と、おまえは一体どこのアイドルだよ? みたいに手を振りながら
    食堂を出るアッシュを、何個もの暖かい目が見送った。

    部屋に戻ったアッシュの目には、力強い光が宿っていた。
    私、何を悲劇ぶっていたんだろう?
    人が次々に死傷するのを見た衝撃で、自分を見失ってたとしか思えない。

    私は一応善人だけど、元々平和主義者ではなかったじゃないか。
    何もせずに死ぬのなんて、冗談じゃない。
    こっちから喜んで殺して回ってるわけじゃなし
    殺しに来たのなら、殺して帰すのは当然じゃん。

    兄ちゃんは安らかに眠れ。
    どんなに罪悪感にさいなまれようが、死んでしまったら終わり。
    私は生き残って、それを乗り越える!

    アッシュは勢い付いて、かなり非道な思考を展開させていた。
    確かにこの状況の自己正当化は、この類の考えしかない。
    が、同時に他の部分でモヤモヤとしていた。

    ・・・・・・・・何か忘れてるような・・・・・・・
    あっっっっっ、洗濯!

    慌てて洗濯室に向かったら、食堂ではまだ日本食の話題をしていた。
    「スシ、テンプラ、スキヤキ、だろ?」
    「無知だね、それは観光用の “ワショク” って言うんだよ。
     ニッポン人が普段から食べているのが
     健康に良いニッポンフードなんだよ。」
    「ショウユ、ミソ、アンコ、って言う調味料を使うんだろ。」

    ああーーーっ、微妙に惜しい! と思いつつ
    食堂の前を素通りし、洗濯物を抱えて部屋に戻った。

    アッシュはこの館に来て初めて、ゆっくりと眠る事が出来た。

    続く。

    関連記事: ジャンル・やかた 14 09.10.7
          ジャンル・やかた 16 09.10.13

  • このブログの使い方

    いつも言ってることだが、自分の脳内のデフラグをするために
    書き殴っているのが、このブログの本来の目的である。
    私の脳内、ほんっと思考が入り乱れてグチャグチャなんだよー。
     
    だから、いたらん事、あくどい事も書いている。
    これでも “公共の場” だから、と気を遣っているのに、だ。
    だけど、それが “私” だから、しょうがない
    と、批判も罵倒も甘んじて受けている。
     
     
    だけど、そうこうやってる内に、違う感覚も出てきた。
    このブログにコメントを書いてくれる人の意見が
    もんのすごーーーーーーーーーーーーくタメになるんだ。
     
    知らない事を教えてくれるし、間違いは訂正してくれるし
    同意や褒め言葉は、励みになってやる気が出るんで
    何よりもどんどん来てくれ! と思うし
    反論は、そういう意見もあるのか! と、驚き、勉強になる。
     
    そしてどこのブログでも問題になる、批判や罵倒
    これも私にとっては、ショック + 驚き + 学習 になるんだ。
     
    「バカじゃねえ?」 などの1行コメントや
    意見を書いていても、「死ね」 とか 「キ○ガイ」 とかの
    用語が入っているコメントは、残念ながら消さざるを得ないんだけど
    消す前にちゃんと読んでいるから大丈夫だぞ。
     
     
    自分でも自分の記事は、どうだかなあ、と思う事も多々あって
    それをインターネットという公共の場に書くのはどうか?
    という迷いが、最初からずっとあった。
    迷っていながら書き続けるのは、私の図々しさなんだが
    ほら、どんどん表現が柔らかくなってるじゃん、それ、迷いの表れなんだ。
     
    だけど最近、この迷いがなくなりつつある。
    (そしたら、こっちのもんだ! と、図に乗りかねんのが私だが。)
     
     
    ネットは公共の場じゃん。
    でも、見る見ないは自分で選べるわけだ。
    ついうっかり見ちゃって腹が立つ、って場合がほとんどだろうけど
    そういう時は反論してくれれば良いんだよ。
     
    その場合のコメントは、コメントのルールに書いたように
    「全部がそうじゃない」 ってのだけはやめてくれ。
    そう言いたい時は、「私の周囲ではこうだよ」 と言う風に
    良い面を披露した方が、説得力があるよ。
     
     
    これを考え始めたのは、実は罵倒意見を貰ってからなんだ。
    リアルでは罵倒なんてされた事がないんだよ。
    叱責や説教は、誰よりも多くされてるんだが
    「死ね!」 なんて、言われた事がなかったんだ。
     
    書かれたショックって、ものすごいものだったんだよ。
    ほんっとに、頭から血がサーッと下りるって感じだったし、目まいがして
    心臓がドックンドックン鳴って、息苦しくなって、手が震えるんだ。
    思わず、安定剤を飲んでちょっと横になったよ。
    そんで食欲もなくってさ、吐き気がするし。
     
    言葉のパワーって、ものすごいものなんだな、とよくわかった。
    だから自分が書く内容にも、ものすごく不安になった。
    無意識に誰かを傷付けてるんじゃないか? と。
     
     
    だけど、こういう経験って中々できないものなんだ。
    日常の人間関係では、批判や罵倒は陰でしかされず、耳に入らない。
    これって稀有な体験だな、と気付いたんだ。
     
    もちろん罵倒されたいわけじゃねえぞ。
    慣れてきたとは言え、今でもズキッとするんだぞ。
     
    だけどな、それも個人の意見なんだ。
    禁止用語や1行罵倒は消すけどな。
     
     
    私が書く意見
    その意見に同意する人の意見
    その意見に反論する人の意見
     
    全部、世界のどっかに実在する人の一個人の意見で
    それはよっぽど親しい間柄じゃない限り、聞く機会がない貴重なものなんだ。
    気軽にこれらを読めるって、凄い事じゃないか?
     
    重い意見、軽い意見、正しい意見、間違った意見、どれでもない意見
    そんな様々な意見を読んで、取捨選択して
    自分がどういう考えを持つかを、自分で決めれば良いわけだ
     
    私はネットを、そしてここを、そういう場所だと思っている。
    くっだらん私の意見も、だから書く意味がある。
    私のつまらなさを誰かが打ち消してくれるであろうから。
     
     
    誤解しないで欲しいのは、これはコメントを書いてくれ、って事じゃない。
    読んだ人は、わざわざコメントを書かなくても
    各々の脳内でそれをやっているだろう、と考えたんだ。
    「あー、こいつはそういう考えなわけねー。」 みたいに。
     
    なんで、これからも堂々と自分の意見をここに書こうと思っている。
     
     
    なお、携帯でここを読んでくれている人もいて
    よくわからんが、携帯だと出ない項目もあるらしい。
    新着コメントとか、プロフィールとか?
     
    ここさ、新着コメントが右の方に出るんで
    どんなに古い記事にコメントをしても、わかるんだよ。
    だから返事が出来るんで、心配はいらない。
     
    ただ、(ここじゃありえないけど)
    10個以上のコメントが1日で付いた場合
    見落とす事もあるんで、その時は怒ってくれ。
    出来るだけ見落としがないよう注意してるけど、ほら、“私” だし。
     
    ほとんどの記事は、本文に関係のない雑談をして良いんだけども
    通りすがる人が主役のお便りコーナーと、人生相談と
    一応、余韻を大事にしたい、小説の最終回だけは
    内容に沿ったコメントをお願い。
     
     
    注意事項が書いてある記事を貼っとくよ。
     
    このブログの使用法 
     

  • ジャンル・やかた 14

    体が重くて、アッシュは中々ベッドから起き上がれずにいた。

    夕べは睡眠導入剤だけじゃ眠れなくて、安定剤も飲んだしなあ
    そんな薬の飲み方をしたら、すっげー体がダルいんだよなー。
    アッシュはそう判断したが、心身ともに疲れているのが原因だった。

    兄ちゃん、お酒に逃げていたんかもな。
    ああー、酒飲みの気持ちがちょっとわかる気がするー。
    戦いのストレスは、アッシュの想像以上に大きく
    無意識にそれを認める考えをしていた。

    アッシュは飲酒はしないが、薬に逃げるタイプである。
    薬好きで、専用のポーチを持ち歩いている。
    だがアッシュはオーバードースは決してしない。
    薬は気合いで効かせるもの、適量で効かなければすっぱり諦める
    それがアッシュの信念だった。

    アッシュは全体的に、“信念の人” であるが
    それが自分を追い詰める作用をする事も、多々あったのは悲劇である。
    いや、本当の悲劇はこれから始まろうとしているのだ。

    今日はこっちの4階と2階に行かなければ・・・
    重い体を起こして、アッシュは顔を洗いに向かった。

    考えに考えて出したやり方は、結局各階を巡る、という
    ごく普通の方法であった。

    地下の設備に近い場所に、本拠地を構えるのが普通だと思うんだが
    ペントハウスってのは最上階にあるもので
    VIPはそういうとこに住まないか?
    あるいはそんな推理を見越して、中途半端な階に据えるかも知れない。

    考えれば考えるほど、“もしも” のワナにハマっていくので
    短気を起こして、シラミ潰しの方法を選んでしまったのは
    過去の相続者と同じ道をたどっているという事に
    アッシュは気付いていない。
    正直、アッシュはアホウであった。

    北側4階の部屋のドアを開けて良いか、ローズに訊ねて
    南側と同様に断られ、そこが居住区だと確認できたアッシュは
    娯楽室だけを覗き、2階に向かおうと提案した。

    娯楽室にいた2人の男性の目付きから
    皆のアッシュを見る目が変化している事を知ったローズはさえぎった。
    「ちょっと待ちな。 2階に行く前に私の部屋に寄ろう。」

    ローズはアッシュをソファーに座らせて、寝室の棚を漁った。
    「これしかないけど、とりあえず持っときな。」
    手渡されたものを見て、アッシュは喜んだ。
    「すっげー、これ鉄板ガード入りじゃないですかー。
     ハードグローブってやつでしょー?」

    「あんた、妙に詳しそうだね。」
    ローズが呆れ気味に言うと、アッシュがムッとした。
    「一般常識ですよー、これ、スワットの標準装備なんですよー?」
    「・・・知らないよ、そんな事・・・。」

    ローズのつぶやきを意に介さずに、そそくさとグローブをはめ
    手を振り回しながらアッシュが言った。
    「うわ、鉄板って重いですねー。 私の筋力じゃ無理かもー。
     パンチのスピードがまったく出ないー。
     ま、ヌルいパンチだから重みが出た方が良いのかもだけどー。」

    数回素振りをしただけで
    「ああ・・・、もう腕が上がらないかもー。」
    と、ソファーに倒れ込むアッシュに、情けなさを感じるローズであった。

    2階に下りて行き、ドアを開けて良いか訪ねた時の
    気をつけな、の返事に、来るべき時が来た、と
    アッシュは心臓がドクンと鳴ったのを感じた。

    手が震えて、ドアレバーを上手く掴めない。
    ローズが見かねて、手を添えてドアをそっと開けた。

    部屋の中央に小さい影が見えた。
    それは手に包丁を持った子供の姿だった。
    アッシュがフリーズする間もなく、ローズが部屋に駆け込み
    それがどういう展開を意味するのか、理解したアッシュは
    とっさに部屋の前から離れた。

    物音がして、出てきたローズにアッシュは非難の目を向けた。
    ローズはわかっていたかのように、それを見るでもなく怒鳴った。

    「よく聞きな、しょうがないんだよ、敵である限り!
     子供が一番恐いんだよ、わかるかい?
     天使のような表情で同情を誘って、ブッスリだ。
     あいつらは小さな体でどこにでも潜める。
     テーブルの下に隠れて、膝の裏を斬られるかも知れないんだよ。
     やらなきゃ、こっちがやられる。
     現実は理想とはまったく違うんだよ!」

    それでもアッシュの表情は変わらなかった。
    ローズは溜め息を付いて、語りかけるように続けた。
    「殺しちゃいないよ。
     殺す必要はないんだ。
     そりゃ運が悪けりゃ死ぬかも知れないけど
     その時に戦闘続行不能にすれば良いんだよ。
     今までの戦いだって、死んだのは最初の男だけなんだよ。」

    アッシュは無言でローズを見つめていたが
    自分にローズを非難する資格はない事は、よくわかっていた。
    だったら自分のこの態度は、ローズにとって酷い行いである。

    そこまでわかっていても、どっかに何かが引っ掛かっていて
    それがアッシュの心臓を締め付けているのだ。

    無抵抗で死ぬ・・・・・?

    以前にローズが怒った時に言った言葉が、アッシュの脳裏に浮かんだ。
    果たしてその決断が出来るのか、迷っていた。

    その時に横で動く影が見えた。
    ローズとアッシュが、同時にその方向を見た。

    少女が立っていた。
    服装も髪型も、アンティックドールのようだったが
    何故か全身が茶色い粉にまみれている。

    アッシュを視認した少女が、突然、耳障りな金切り声を上げた。
    反射的にアッシュは、少女を蹴り上げていた。

    最初に “何故?” と自分に訊いた。
    体が勝手に動いてしまったのだ。
    生きてる・・・よね?
    でもそれを確認できない。
    少女の存在自体が恐いのである。

    さもわかった風に、モラルだの思いやりだの言ってても
    結局それは安全圏の中でしか保てない、もろい道徳だったんだ。
    風が吹いたら舞うような、軽い倫理観、軽い価値観、軽い考え
    軽い軽い人生だったんだ。
    それを、さぞ必死に生きてきたつもりになって・・・。

    自分の身が危ないとなると、手の平を返して本性を出す。
    私の本性って、こんなんだったんか?
    何よりも、まず自分 だったんか?

    すべてが覆ってしまい、自分の何もかもが薄汚いものに思えてきて
    どうしたら良いのかわからず、指1本すら動かせないアッシュの
    尋常ならぬ様子に、ローズはこう訊くしかなかった。
    「大丈夫かい?」

    むろん反応はないが、アッシュの葛藤はわかる。
    多分こいつは、弱い者に暴力を振るった自分が信じられないんだろう。
    でも、このままここにいたら危ない。

    「ほら、部屋に着いたよ!」
    そう叫ぶローズに、頬をバシバシはたかれて、アッシュは我に返った。

    いきなり自分の部屋にいるのが、わからなかったが
    フラフラとバッグのところに行き
    震える手で、ポーチのチャックを開けようとした。

    「何だい? これを開けるんかい?」
    ローズがポーチを取り、開けて渡すと
    アッシュはその中身を全部床にバラまいた。
    それは大量の薬で、震える手でかき混ぜるアッシュの姿は
    まるで薬物中毒者のように見えた。

    見つけた薬を持つ手は大きく震えていて、とても役目を果たせそうにない。
    「これを飲みたいのかい?」
    ローズは1錠アッシュの手に握らせ、水を持ってきた。
    「ほら、飲みな。」
    アッシュの口に錠剤を入れ、水を飲ませる。

    床に座り込んで、呆然としているアッシュに
    まるでジャンキーだね・・・、そう思っても怯まなかったのは
    ローズにも選択肢が残っていないからであるが
    何より、アッシュを信じたいからなのが大きい。

    ローズは自らここに来て、ここで生きてきた。
    ここを否定される事は、自分を否定されるのも同然である。
    アッシュはそんな “ここ” に、馴染もうとしていた。
    それはローズ自身に同化しようとしているように思える。

    他の相続者にも、その傾向はあったのだが
    やはり、“知らずに来た” というのが、評価の底上げをしていた。
    その気もなく来たのに、中々出来ないよ・・・。

    座り込んでいたアッシュの目が動き、フウーと溜め息を付いた。
    「・・・30分経ちましたー。
     薬が効いてきたようで、ちょっと落ち着きましたー。」

    はあ????? 何だ、そりゃあ?
    ローズは顎が外れそうに、あんぐりと口を開けた。
    「薬って、大抵30分ぐらいで効くんですよー。
     これ、軽い安定剤なんですけどー。」

    ないないないない、それはない!
    と、ローズは否定したかったが、思いとどまる。
    聞いた事がある。 自己暗示・・・。
    それがこいつの乗り越え方なんだ、と気付いたからである。

    こいつの精神力の源は、自己暗示の強さなのだ。
    きっと薬はその道具でしかない。
    たった1錠で、それも30分で、あんだけの放心を取り戻すなど
    どんなに強い薬でも不可能だ。

    何というか、珍しい対処法だね。
    この奇行も、アッシュが “普通” じゃない証しで
    普通の能力じゃないアッシュは、主として大きな可能性を秘めている。
    こいつはまだまだだけど、主にふさわしいかも知れないね。

    ローズがここまでアッシュを擁護するのは
    アッシュというカギを否定するのは
    自分の未来をも潰す事になるからだ、という無意識の防御であった。

    「とにかく、もう今日はお休み。」
    「はい・・・。」
    アッシュの様子を見て、安心したローズは部屋を出て行った。

    アッシュはそのまま布団に入った。
    部屋着、外出着、とはっきり分けないと落ち着かない性格なので
    普段なら、これはありえない事である。

    もちろん眠りたくても眠れない。
    頭の中で否定的な考えがグルグル回る。

    アッシュの目から涙がこぼれ落ちた。
    「兄ちゃんは、こうなるのがわかってたんかも
     だから何もしなかったんかも。」

    うつぶせになって、ひとしきり泣いた後
    床に散らばったままの薬の山のところに行き
    探し当てた青い錠剤を2錠口に放り込み、水をガブガブ飲んだ。

    続く。

    関連記事: ジャンル・やかた 13 09.10.5
          ジャンル・やかた 15 09.10.9

  • コメントのルール

    ブログを書いていると、時々罵倒コメントがつく。
    ユルユル基準の私的には、罵りも荒らしもエロサイト広告も
    来てくれた記念として、出来る限り残しておきたいのだけど
    罵倒用語が入っていると、“風紀に好ましくない” と指摘され
    それに納得したので、消すようにしている。

    この罵倒コメント、受けるとかなり傷付く。
    マジで動悸や目まいがして、手が震えるのだ。

    だけど同時に、私も気付かずに
    人を傷付ける事を書いているのかも知れない。
    現に傷付いたので反論に来たけど、適切な言葉が見つからずに
    感情のままに罵ってる場合もあるだろうからだ。

    それに、そういう人々はとても親切だと思うんだ。
    私の場合、本当にイヤなものは無視をする。
    反応、というのは、どんな形でも
    そこに愛があろうとなかろうと、相手を成長させるからだ。
    嫌いな人に、そんな手助けなどしたくもない。

    無視すりゃ済むものを、わざわざ書いてくれる。
    その言葉が私の心にどんな傷を付けようと、結局私はそれを糧にしている。
    自分でも知らない内に、ちょっとずつ強くなっている事を後で知る。

    生きていると、ある日ふと気が付くんだ。
    クヨクヨしているだけでも、いつの間にか打たれ強くなってる! と。
    どんな反応でも、してくれるだけありがたい、と
    本当に孤独になった時にわかる。

    年寄りのこういう自分語りは、よく聞いとけよ。
    このご時世、いつ何時自分もそうなるかわからんぞ?

    だから罵倒コメントも、孤独老人にはしみじみありがたいんだが
    私がコメント返しで 「誤解だ」 と訂正してもなお
    似たような事を書いてくるのは、それはもう荒らしである。

    コメントをするにもマナーがある。
    記事を読んで、脊髄反射のごとく思った事を書くのではなく
    最低でも、その記事についてる他のコメント
    こっちの要望的には同じ種類の記事を読んでから、書いてほしい。
    それにここ、プロフィールもあるんだぞ。

    このブログは、管理人ぷらちッの協力によって作り上げられた
    私のごく個人的な意見の場なので
    それに広い公共性と揺るぎない真実を求められるのは、正直辛い。
    だがそれは、読む側も心しておくべき暗黙の了解である。

    いちいち 「全員がそういうわけではない」 とか、注釈せにゃならんか?
    個人の経験上で個人の人生で決め付けがあるのは、しょうがない事。
    それを表立って言うからには、反論は覚悟しているけど
    「皆が皆そうではない!」 という、わかりきった定型文はいらん。
    「私の場合は」 といった、経験談での自分個人の意見を言ってほしい。
    これが私がコメントに望む最低のルールだな。

    特に地域ネタにこういう反応の傾向が強いけど
    そもそも、抽象的な事で感情的に怒ると、より一層評判を落とすものだ。
    こんな良い話もあるんだよ、と紹介した方が、好意を持たれる。

    私は愛を持って書いてるから、悪口と捉えられるのは
    ひとえに私の文章力のなさのせいだろうけど
    コメントで訂正したら、それを信じてくれ。
    しまいにゃ、何か? 作文がヘタだとブログをやっちゃいかんのか?
    という、とんでもない人権主張まで持ち出すぞ。

    にしても、同じ文でも、受け取り方は人様々で
    私も気をつけて書かないといけないな
    ・・・・・とは思わない。

    どこの村でも、イヤな事を言うヤツはハブられるわけで
    私が村八分に遭ってないのは、賛同してくれる人もいるって事で
    それならそこで自分の捉え方を見直してみるのが、道徳的に正しい態度だ。

    あっっっ!!! これで言うと、私も書き方には注意すべきか!
    うわ、すんげえ反省してるよ今ーーーーー。

    私の場合、こういう事がよくあって
    これがブログを書いていて、得られるもののひとつなんだ。
    こんなん、普通は脳内のみでやっとるんかも知れんで
    周囲に迷惑をかけて、やっと得る私はバカそのものなのかもで
    ほんと申し訳ない事だが、真面目に感謝をしている。

    よくわかった。
    私も注意しつつ書いて、突っ込まれたら己を省みる。

  • ジャンル・やかた 13

    「1日2食って、あんた、だからそんなに痩せ細っているんだよ。
     ちゃんと食べないと、体が持たないよ。」
    この手のセリフを聞き飽きていたアッシュは、無視して
    ローズのベルトに挟んである大鋏を見て言った。

    「にしても、その大鋏、凄いですねー。
     グリップを閉じたら、鋏部分が飛び出るんですかー。
     あ、細いチェーンで繋がってるわけですねー?
     これ、自作ですかー?」

    「ああ、これね。 もう何代目かね。
     鍛冶屋に作ってもらったんだよ。
     あたしゃ武器は何でもこなせるんだよ。
     ただ今回はたまたまこれにしただけさ。」
    ローズが少し大声になったのは、周囲に聞こえるようにである。
    来れるものなら来てみろ、という威嚇なのだ。

    「あー、良いですねー。
     私も何か武器が欲しいですねえー。」
    「あんたに武器が操れるのかい?」
    ハッタリの賭けに出たローズに、アッシュが見事に応えた。

    「まず接近戦用に、ナックルは必須ですよねー。
     でもそれはあくまで近付かれた時のためですから
     筋力が弱い私には、長刀みたいなんが欲しいですねえー。」
    こいつもとんだハッタリ屋だな、とローズは痛快だったが
    何とアッシュは本気で言っていた。

    その場にいた人々には、アフタヌーンティーの話題に
    のんびりと武器の希望などを語り合っているふたりの姿が
    歴戦のツワモノに映っていた。

    6人中5人がそう思っても、違う意見のヤツは必ずひとりはいる。
    「あんたも役者だねえ。」
    階段を下りながら、肘で突付いてくるローズの言葉の意味が
    アッシュにはわからなかった。
    が、ローズの眼差しの変化で、後ろに敵がいる事を察知した。

    「おまえら、自信満々のようだな。」
    ちっ、刺激しちゃったか、ローズは後悔した。
    素早く大鋏を取り出したのだが、男はその刃を掴んだ。

    力勝負だからって負けないよ!
    ローズと男が睨み合って、力比べをしていたら
    ローズの頭頂部の髪をかすめて、男の側頭部に何かが当たった。

    アッシュが、そこいらに落ちている箱やら壷やらを
    男の頭目掛けて投げたのである。
    それもフルスイングで、容赦ない勢いである。

    男が怯んだ瞬間をローズは見逃さず、鋏を突いた。
    男は手摺りを背に、何とか踏みとどまったが
    背が高いのが災いして、手摺りの外に反りかえるような体勢になった。

    そこにアッシュが駆け寄り、男の片足にしがみ付き
    持ち上げようとし始めた。

    「おっ、おまえ鬼か?」
    男はそう罵ったが、この数秒の一連の動きから
    アッシュが自分の能力に合わせて、的確な反応をしている事を
    ローズは読み取った。

    文字通り、足をすくわれた形で男は階下に落下したが
    その瞬間アッシュが耳を塞いだのをも、ローズは見逃さなかった。
    男の落ちる音を聞きたくない、というのは
    裏を返せば、どうなるかわかっててやったのだ。
    罪悪感は? などと、キレイ事を言っていたアッシュが
    自ら敵を手に掛けるなど、どれだけの覚悟か。

    その上にアッシュが発した言葉は、ローズを感動させて余りあるものだった。
    「大丈夫ですかー?」
    敵の心配をするでもなく、己の不遇を嘆くでもなく
    まず最初に口にしたのが、ローズの身を案じる言葉である。

    こいつは恐るべきスピードで学んでいるのだ。
    普通に育ってきた人間には理解が出来ないであろう、この環境下において
    望んだわけでもない試練に、たった一日二日で順応しかけている。
    こいつは本当に掘り出し物かも知れない。
    ローズはアッシュの進化に、感嘆していた。

    しかしアッシュの真意は、そこにはなかった。
    アッシュは自分が被害者だという気持ちを手放してはいなかった。
    むしろ、そこに唯一の救いを求めていたのである。

    アッシュは常に、自分のつたない法知識に照らし合わせて
    どう言い訳が出来るのかを考えていた。
    だが、この状態では最早言い逃れは通用しない。

    そうなれば、自分が如何に生き延びるか、のみに照準に合わせ
    後はここの閉鎖性に期待するしかない。
    それ以上に問題なのは、自分の倫理観とどう折り合わせるかである。

    それがかなりの困難な思考転換ゆえに
    他人の心配をして、小さな善行を積み重ねようとしているのだ。
    ローズに対する気遣いは、この心理によるものである。

    もちろん、これを計算ずくでやっているわけではない。
    無意識に一番安心できる方向に向いているだけで
    言わば、心の防衛本能のようなものである。

    アッシュの必死の心の攻防とはうらはらに
    ローズはそれを、アッシュの “成長” と解釈していた。
    アッシュの背中に、冷たい汗が大量に流れているのに
    ローズもアッシュ本人も気付いてはいなかった。

    「あいつが鋏と共に落ちちゃった。 急いで取りに下りないと。」
    ローズとアッシュが階段を駆け下りると
    そこには別の男が立っていた。

    武器なしはマズったね。
    焦るローズの背後で、アッシュが悲鳴を上げながら階段に戻った。
    あ! バカ! あたしから離れるなんて!
    慌てるローズを尻目に、敵の目はアッシュだけに注がれていた。

    階段の半分を上ったところで、アッシュは突然振り向き
    足元に転がっているものを手当たり次第に敵に投げ始めた。

    これが功を奏しているのは、アッシュの投法が優れているからである。
    斜め上から振り下ろす腕からは、硬い物体が猛スピードで
    それも確実に敵の体の中心部に飛んでくる。
    ローズが落ちた男から大鋏を取り戻すだけの時間は稼ぐ事が出来た。

    敵がうずくまる瞬間に、アッシュは目を逸らしはしたが
    ローズの元に駆け寄って訊いた。
    「敵って男性だけなんですかー?」

    いや、そんな事はない。
    多分あたしが護衛だから、腕の立つのが来てるんだろう
    ローズがそう説明すると、アッシュは首をかしげた。
    「相手が弱いだけなんじゃあー?」

    あんたの攻撃力が計算違いだっただけで
    見た感じ、どいつもそこそこいってたと思うがね。
    行きがけの敵は、知ってるヤツだったからわかるけど
    カウントダウンを無視しないと、本当に危なかったんだよね。
    ローズはそう思い起こしながら、アッシュに訊いた。

    「あんた野球かなんかやってたのかい?」
    「いいえー、私、運動神経も良いんですよー。 球技は得意ですしー。」
    アッシュの思い上がった言葉にも反感はなかった。
    実際にあの投げ方は、運動神経の良さを表わしている。

    明日から来る敵は、アッシュに対しての認識を変えて手強いだろうね。
    密かに危惧するローズに、アッシュが追い討ちをかけた。
    「ローズさんー、武器は複数身に付けるのが基本ですよー。」

    続く。

    関連記事: ジャンル・やかた 12 09.10.1
          ジャンル・やかた 14 09.10.7

  • 切る

    ナイスバディババアのたしなみとして
    プライバシー保護のため、手紙の宛て先とか
    ゴミで出して身元がわかるものは、専用のハサミで切っている。

    このハサミは、切ると粉々になるギザギザ刃の特殊バサミで
    結構、手が腱鞘炎になるレベルの切りにくさを誇っている。

    しかしシュレッダーは目障りなので、部屋に置きたくない。
    3枚刃だか5枚刃だかのハサミも、かむという噂。
    ペンやスタンプで消す方式は、光の加減で文字がわかるらしいし
    今のところ、私にとって証拠隠滅にはこのハサミがベストである。

    だけどだがしかし、本題はこのハサミの話ではない。
    ごく普通のハサミの話である。
    結構長年使っているやつなんだが、これが切れ味が良い。

    と、ここまで書いて、そのハサミを良く見てみたら
    棒人間ふたりが肩を組んでるマークなんだが、これってヘンケルだよね?
    えええええええええええええ?
    そんな高級なブツを買った記憶がないんだけど
    このハサミ、どこで入手したんだ????????

    この切れ味の持続性、さすがヘンケル!
    6年以上使ってるのに、何で気付かなかったんだか
    て言うか、知らずに良い物を選んでる私凄い!

    と、えらくエキサイトしているのは、文房具ブランド好きだからである。
    ヘンケルは文房具ブランドではないんで
    もう何もかもが破綻している論調だが。

    で、本当の本当にこっからが本題。
    最近私はナイスバディババアの宿命か
    どうにもこうにも心身共に調子が悪いんだ。

    別にこれといった医学的数値は出してはいないんで
    これもナイスバディババアのせいか、と思って放置しとるんだが
    たかが20cmほどの文で、3度も自画自賛してるのも
    こうやって本題本題言いながら脇道に逸れまくりなのも
    すべて不調のせいである。

    んで、郵便物をチョキチョキとしていた時に
    何故かその日に限って、大きい紙類とかかさばるゴミになるな、と思い
    いつになく、しつこくしつこくヘンケルバサミで切り刻んでいたんだな。

    夜にハサミを駆使するババアなぞ、オカルト意外の何ものでもないんだが
    何かわけもなく切るのに熱中しちゃってな。
    ここでもう、何かがおかしいのはわかってはいるんだが
    途中で気付いたんだよ

    切り刻む行為はストレス解消になる!!!!!!!

    それに気付いて、ついついゴミ漁りをしてまで
    色々と滅多切りにしたんだけど、そりゃもうスッキリしたよー。

    そんで散々チョキって、落ち着いた後に考えたんだ。
    何で切る行為がストレス解消になるんかな? と。

    思い当たるのがさ、どっかで聞いた話なんだけど
    夫婦喧嘩などで機嫌が悪い時に、皿を割る奥さんの話。
    100均で大量に割る用の皿を買っておいて
    イライラした時に、庭石のとこで叩き割るんだと。
    後片付けのために、新聞紙を敷いておくのがコツだそうだ。

    そんな事をやってたら、近所のヤバリストに載るんじゃないか
    100円とは言え、故意に物を壊すはどうか
    など、あれこれ感想を持ったが、それも切る行為と似てるよな?

    他はゲームでモンスターを殺す、とか
    ちょっと違うかも知れないけど
    浮気した彼氏の服を切り裂く女性だとか
    破壊行為って、ストレス解消になるんじゃないのか?

    そう言えば、精神病院での治療に、紙を切るってのがある
    と聞いた事があるが、それも何か関係してるんだろうか?

    掘り下げて考えると、ものすげえ恐い話だが
    自分以外を破壊する行為が、精神の安定に繋がるのかも知れない。
    だとしたら、よその国を戦場にする戦争は
    自国民が安定する、というメリットもあるよな。

    ちなみに、ギザギザバサミではまったく効果なし。
    どうやら良く切れるハサミで、スッパンスッパン切り刻むのがカギのようだ。

    これも、深読みすると怖い話じゃねえ?
    そういやメタルギアソリッドでは
    銃よりスティンガーの方が爽快だったし・・・。

    うーん、書いてて思ったが、もしかしてこういう感覚は
    特殊な人格のヤツにしか当てはまらないのかも?
    ものすごい発見をした気分になって、得意になって書いていたのに
    何でこう自分を疑うハメになるような方向に行くんかなあ。

    ほんと、自分のこの謙虚さがイヤ!

  • ジャンル・やかた 12

    目覚めたアッシュは、珍しく爽快だった。
    衝撃続きの最近の展開に、一気に老けた気分になっていたのだが
    まだまだ私の美肌健在!
    アッシュは天狗感覚を取り戻していた。

    その勢いで、今後の予定も決めた。
    やっぱ私は天狗になってこそ、私なんだよなー。
    アッシュは珍しくハイテンションだった。

    「勇者よ、旅立つのじゃー、さあ冒険の始まりですー
     ♪ ちゃらっちゃちゃっちゃ ちゃっちゃー ♪
     これから4階に行きますー。
     だけどただの4階じゃないんですー。
     何と! ジャジャーーーン! 南館の4階ですーーー!」

    アッシュがそう言いながら、クルッと回って
    両手を広げ、左足を前に出し右足を後ろに流し、膝を曲げて軽く会釈をした。

    ドア口のアッシュの道化を見せられて
    呆然としたローズと、アッシュの後ろを通りがかった女性の目が合い
    通りがかりは気の毒そうに目を逸らした。

    ローズは、ものすごい恥を掻かされた気分になったが
    やっと自分の出番が回ってきたので、無言で廊下に出た。

    階段の前に来て、ローズがやっと口を開く。
    「南の4階はあそこだけど、この階段をホールまで降りて
     向こうの階段を4階まで上らなきゃならないよ。」
    「北と南と通路で繋がってたんなら早いんですけどねえー。」
    と答えるアッシュに、ローズははた、と訊き返した。

    「そういや、何であっちが南だとわかったんだい?」
    「曇ってるけど、夕方微かにあっちの雲が赤かったんですー。
     あっちが西なんでしょうー?」
    「へえ・・・?」
    関心するローズに、アッシュはちょっとムッときた。

    「いい加減、私の知性を認めてくれませんかねえー?」
    「天才と紙一重、って言うけど、そうなのかもねえ。」
    「それは兄の方だと思いますー。
     私は凡才だけど、一般常識はあるんですー!」
    前半は同意するけど、最後の部分はどうだかね。
    ローズは腹の中で思った。

    玄関ホールまでは、何事もなく進めた。
    問題はこっからなんだよね、とローズが思った途端
    長身の男性が現れた。

    「新相続者! 無知なる未知者!
     俺が腕を確かめてやる。
     3つ数えたら開始しよう。 3・・・」
    ローズの鋏が男の腹に刺さっていた。

    倒れ行く男を見て、アッシュが叫んだ。
    「卑怯くせえーーーーーーっっっ!!!」
    「何がだい?」
    男の腹から鋏を引き抜きながら、ローズがアッシュを睨んだ。

    「カウントダウンの途中だったのにー。」
    「それをご丁寧に待ってどうするんだい?
     これは決闘じゃないんだよ?
     わけわからん能書きたれるこの男もバカだけど
     それをボケッと聞くあんたも相当のバカだね。」

    アッシュは恐くて男に近寄れず、遠巻きに訊いた。
    「その人、死なないですよねー・・・?」
    「死のうが死ぬまいが、そんな事はどうでもいい!
     こっちが考えるべきは、戦闘可能かどうかの1点だけさ!」

    ローズが怒り始めたので、アッシュは黙り込んだが
    先ほどまでのテンションが暗転したかのように、地の底に落ち
    恐怖に怯え、膝が震えているのがわかった。

    負けたら私もああなる、って事だよね? むっちゃくちゃ痛そう・・・。
    即死ならまだ良いけど、中途半端に刺されたらどうしよう。

    目前で起こっている出来事は、映画などではよく観ていたけど
    それが現実だと認識せざるを得ないのは
    男のたてるうめき声が、あまりに苦しそうだからだ。

    他人のあんな声、聞いた事がない!
    アッシュは耐え切れず、天井を見上げながら
    両耳に指を突っ込んで振動させながら、あーあー言った。

    ローズはアッシュの受けているショックを理解できた。
    自分も初めての時は、このうめき声にビビったものだ。
    あの時の自分は、ショックから身動きが取れず
    その後何日も食事を採れずに衰弱したものだ。

    立ち直れたのは、周囲の冷笑に負けたくなかったからで
    それでも数ヶ月して、やっと再び戦えるようになったのに
    こいつはその場で自分でどうにかしようと努力をしている。

    ローズはアッシュの肩に手を置いて
    照れくささを隠すかのように、ぶっきらぼうに言った。
    「グレーがいつも言ってた。
     『妹は実は俺より凄いんだ。』 って。
     確かにあんたは大物かも知れない。」

    「へ?」
    指を突っ込んで、あーあー言ってたアッシュに
    ローズの言葉が聞こえるわけがなかった。
    間抜け面して振り向くアッシュに、ローズは激しくイラッとしたが
    こらえて、同じセリフを繰り返した。
    ここで挫折されたら困るから、とにかくおだてないと。

    少々棒読みになったが、ローズの読みは当たり
    アッシュの心は木に登りまくった。
    「兄がそんな事をー? 私、大物ですかー?
     何でそう思うんですかー? 『詳しく』 しても良いですかー?」

    あーもう、またわけのわからん事を言い始めた。
    バカはおだてやすいのは良いけど、調子に乗るから面倒なんだよねーーー。

    ローズは忍耐力をフル発揮しながら言った。
    「優れた適応能力があるような気がするんだよ、あんたには。」
    「・・・適応能力ですかー。 別に優れてないですけどねー。」
    どれだけの大賛辞を期待していたのか
    贅沢にもアッシュは、その答にガッカリした。

    こいつが真に優れているのは、忘却だろうね。
    もう、さっきの戦闘の事を忘れて、ひょこひょこ着いて来ている。
    目まぐるしく変わる話題も、それを表しているんだね。
    階段を上りながら、ローズはひとり納得した。

    4階に着いた。
    行き道の敵は1回だったか。
    いつもより少ないのは、ハンデが与えられているのか?

    玄関ホールを見下ろすローズに、アッシュが声を掛けた。
    「ローズさん、ここのドア、開けて良いですかねー?」
    「開けちゃダメだ。 ここは居住区、非戦闘区域だよ。」
    「あー、やっぱ3~4階でしたかー。
     開けちゃダメ、って事は、居住区には主の部屋はないんですねー?」
    「そうなるね。」

    4階をグルリと一周したら、アッシュの居住区と同じ間取りだった。
    ただ、洗濯室はあるが、食堂の場所は娯楽室になっていた。
    もしかして北館の4階も、こうなってるんだろうか。

    「3階に下りてみましょうー。」
    アッシュの言葉に、ローズが左右を確かめたのち階段を下りる。

    「ここも居住区ですよねー。」
    「そうだね。」
    作りは北館の3階と対称になっているようだ。
    南端に食堂がある。
    「北館在住の私たちでも、ここで食事できますかー?」
    「ああ、問題ない。 ちょうどお茶の時間だし何かつまもうかね。」
    腕時計の針は、2時50分を指していた。

    食堂には、6人の男女が固まって座っていた。
    こっちに気付き、静まり返った様子にローズは悟った。
    こういう時の話題は、相続者の噂ばかりなんだよね。

    自分が護衛の役目ではない時には、ローズもそれに加わっていた。
    しかし今は、第三者ではない。
    ローズはある種の選民意識のような感覚に浸っていた。

    「あー、同じシステムなんですねー。」
    そう言いながら、アッシュは冷凍庫の中のアイスを
    ディッシャーでゴリゴリ削っていた。

    ローズがハムサンドと紅茶を持ってきたのに
    アッシュの前にはストロベリーアイスが乗った皿が1枚だけである。
    「あんた、今朝ちゃんと飯を食ったのかい?」
    「11時ごろに、バタートーストを食べましたー。
     基本、1日2食なんですよねー。」

    そうは言ったが、アッシュが飲み物やアイスしか摂らない時は
    食べないのではなく、食べられないのである。

    アッシュは事務的に物事を考える術が身に付いていたが
    愚鈍なりにも、人間としての感情は普通にあるわけで
    冷徹な脳処理のツケは、体にダイレクトに現れてしまう事に
    いつもギリギリまで気付かずにいた。

    ストレスに気付けないと、それをより大きく育ててしまう事を
    アッシュは今までの人生で、学習できていなかったのである。

    続く。

    関連記事: ジャンル・やかた 11 09.9.29
          ジャンル・やかた 13 09.10.5

  • 何のために生きるのか 

    自分は何のために生きているんだろう?

    この自問自答を、必ず一度はしたと思う。
    私もクソ陰気臭え小説を何冊も読んだ時には
    こんな疑問が頭にこびりついたよ。

    人は何のために産まれてくるのか、何のために生きるのか

    だけどケダモノの野生の勘で、この問題には深く立ち入ってはいけない
    と察知したんか、単に脳細胞の不足で忘れたんか
    この疑問を持ち続ける事はなかった。
    バカ、ブラボー!

    寿命も残り少なくなってきた今だから、自信を持って言えるが
    この類の疑問はな、一般人は持っちゃいけない魔の問答だ。
    自分を追い込む呪文なんだ。
    そういうのは宗教家や芸術家に任せておけ。

    だが最近になって、そこらへんの本当の問題は
    この問いにあるんじゃない、と気付いた。
    こういう疑問を持つ人間の方にあるのだ。
    この呪文を持つ心境になる事に、問題があるのである。

    自分は何のために生きているのか?

    これを思うヤツ、よく考えてみい。
    その答を、本当に “自分” が出したいのか?

    違うだろ?
    自分が何のために生きているのか、他人に答えてほしいんだよな?
    自分がいかに他人にとって重要な存在であるか
    その存在を認めているよ、代わりはいないよ、と言ってほしいんだよな?

    幼い頃から、周囲の人との違いを認識させられてきた私は
    大勢の人の中にいても、常に孤独感があった。

    この “違い” とは、よそ者だとか、喋り方がおかしいとか
    直球で言われてたので、バカガキだった私にも理解できた事である。
    しかもそれは、自分ではどうにも出来ないジャンルだったんで
    他人と違う、というのをデメリットとして受け止め
    子供の脳みそで、孤独感に変換してしまったんだと思う。

    しかしこの孤独グセのお陰で、何のために生きるのかという
    迷路に、はまらなかったんだと思う。
    と言うか、そこまでの思考力がないせい、ってのが大きいんだが
    それもまた結果的には幸運だったと言えよう。

    私はただそこにいるだけなのに、周囲があれこれ言うわけで
    それは怒られたり文句を言われたりの、罵倒系が主だったんだが
    その孤独感と、渋谷のスクランブルの真ん中にひとりで立つ孤独感とは
    恐怖が全然違う事に気付いたら、悪口だろうが何だろうが
    言われないより全然マシ、と思うようになれた。

    一番恐いのは、無視なんだ。
    大勢の通行人が行きかう中で、誰も自分を知らない誰も自分に目を留めない
    自分がそこにいてもいなくても、まったく関係ない
    こんな孤独感は、他にないぞ。

    まあ、横断歩道を渡りながら、こんな事を考えるのは
    アホウ以外の何者でもないがな。

    だけど誰でも、大なり小なりこういう感覚を味わっていて
    それが “自分は何の~” という疑問に繋がる。
    もちろんそれは、交差点での話ではなく
    自分が属する社会の中での、自分の存在感に関してである。

    だからあえて言う。
    何のために生きているかなんて、考える必要はない。
    それは他人に認められたい気持ちの裏返しだから。
    そんな疑問を持つ自分は、自己評価が高すぎる事に気付け。

    存在なんて、いくらでも作れるものなんだ。
    コンビニに行けば客だし、会社に行けば従業員だし
    アパートに住めば店子で、雑誌を読めば購読者だ。
    そんで、ここにコメントを書けば、私のネット仲間になるのさ。

    あ、最後のは冗談だから、非難はやめてくれ。
    客だの購読者だの、何だよそれ、と言いたいかも知れんが
    売る側としては、おめえひとりを確保するのに
    どんだけ四苦八苦してるやら。 ほんと死活問題なんだぞ。
    “消費者” って、社会にとって、すんげえ大切なんだ。

    もちろん、そういう存在感が欲しいんじゃないのもわかっている。
    だけど誰しも、そこにいるだけなんだよ。
    どの命も、ただそこにあるだけなんだ。

    まるで荒野に立つ一本の木のような
    この潔いさりげなさの美しさに気付けたら
    生きているだけで、それだけで良い、とも思えてくるんだ。

    ま、弱々な心と足りない頭脳の持ち主、その名は私! は
    ちょっと辛い事があったら、すぐ死にたくなるけどなー。
    (これがまた、その慟哭もすぐ忘れるんで助かっとるが。)

    “特別” という言葉に潜む傲慢さを捨てて
    自分を “いるだけ” で満足だと、いかに納得させるかが
    幸福に過ごす人生のカギだから
    この問題には他人を介入させない方が、平穏だと思うぞ。
    何のために生きて、なんて、主観のフリをした客観だからな。

    誰のためでもなく、自分のために生きればそれで良いんだ。
    自分で作りだした記憶がない自分の命なら
    受け取ってしまったら、最後まで使い切るしかねえんだよ。
    用途を説明されてないんだから、自分にわかるわけがねえだろ。

    そう諦めて、あるがままでいれば良い。

          私に捧ぐ  ううう・・・