投稿者: あしゅ

  • ジャンル・やかた 11

    頑張る、とは言ったものの、やはりムカついてはいた。
    すべてを知る事が出来ない現実にである。

    こうなったら私の推理を全部、後続のヤツらに残しちゃる!
    アッシュは自宅では絶対にしない点けっ放しのパソコンに向かった。
    フォルダを作り、名を “Ash Fail” と付ける。

    何か極秘ファイルのようでかっこいーーーーー!
    アッシュはご満悦だったが、え? “ファイル” って言いたかったのか?
    だったらFILEが正しいのだが、アッシュの英語力はこんなもんである。
    (いや、素でFailと打ってたぜ。 調べて良かったーーー!)

    ワードもエクセルも、その違いすら知らないので
    メモ帳を開き、そこに今までに思い付いた推理や見聞きした情報を
    人差し指1本でガシガシ打ち込む。
    しかもキーボードが英字のみなので、ローマ字で。
    日本語がわからんヤツなど、知った事かい!
    アッシュは、気持ちがささくれ立っていた。

    うーん、これじゃわかりにくいかなー、図解も必要かなー。
    いやもう、日本語をローマ字で書いてる事自体
    1行も読む気がしなくなるほど、わかりにくくて
    図解など、何の付け足しにもならないのだが
    そう思った瞬間、あのペイント太字地図が脳裏に甦った。

    もしかして、他の相続者も同じ心境になったかも!
    あの図解って、やる気を削ぐためのワナなんじゃねえの?

    デスクトップの他のファイルを開いていくと
    当たり前だが、全部英語であった。
    くわーーーーーーーーっ
    日本語のわからないヤツに仕返しされてるうううううううっ!

    別に誰もアッシュを想定して打ったわけではないのだが
    今のアッシュは、とことん被害者意識で一杯であった。

    その頃、ローズは食堂にいた。
    時計の針は、もう夕方の7時を回っている。
    あいつ、夕飯は食わないんかね?
    あまり飲み食いしないようだけど、あんなに痩せ細ってて大丈夫かねえ。

    親しい誰もがアッシュに対して抱く心配を、ローズが思ったのは
    アッシュを少し好きになりかけている事だという事に
    ローズは気付いてはいない。

    ローズは “敵” としては、指示がない限り動かなかった。
    普段の生活では、決して好戦的ではない性格のせいと
    自分が行けば、その回の相続は終わる、という
    自分の戦闘能力に対して、揺るぎない自信があるからである。

    しかしローズは、過去に4人の相続者の護衛をしていて
    そのすべてが相続者の死で終わっている。

    だけどそれは、ヤツらがあたしの言う事を聞かずに突っ走ったからだよ。
    グレーは自分では戦わなかったから、いけると思ったんだけどねえ。
    ローズにとって、グレーの結果は消えない深い後悔でしかなかった。

    その妹であるアッシュ。
    理解できない言動が、何を考えているのかわからなかったけど
    アッシュなりに色々と考えて、挑戦している事がわかったし
    今のところ、あたしの言う事は素直に聞いてるし
    後は戦闘でどう動くかがキモだね。

    ローズも、この相続が腕っぷしだけじゃクリア出来ない事を薄々感じていた。
    ゲレーといいアッシュといい、この兄妹は
    動きのなさにイライラさせられるけど
    それはそれで、正しいやり方を選んでいるような気がする。

    兄と同じ、それはアッシュにとっては最大の賛辞である。
    自他共に天才と認められていた兄
    その差の大きさに、妹はその背を追えずにもいた。

    しかしアッシュもまた気付いていない。
    投げやりなローズが、アッシュに対して徐々に惹かれている事を。
    それは館の頂点に立つ主の資質として、欠かせぬ要素
    得なければならない住人の尊敬の第一歩、である事に他ならないのだ。

    が、こういう時に無意識に台無しにするのが、アッシュの常。
    「ちょっと、あんた、飯は食わないのかい?」
    アッシュの部屋のドアを開けたローズの目に飛び込んできたのは
    顔面に紙を貼ったアッシュの姿であった。

    「・・・それは何のまじないだい?」
    ローズが怪訝そうに訊くと、アッシュはローズを手招きした。
    近寄ったローズの鼻先に顔をくっつけて
    アッシュはジロジロとローズの肌をチェックした。

    「ローズさんー、お肌のお手入れ、してないでしょー?
     日焼け止めとか、ちゃんと塗ってないでしょー?
     ここのシミとここのシワは、その証明ですよー。
     ほら、ここらへん、たるんで毛穴も開いてきているーーー!
     ちゃんとお手入れをしないと、ゴッと老けますよー。
     ほら、私、プルップルでしょー。」
    紙を剥がしたアッシュの肌は、確かに透き通って美しかった。

    「東洋人は肌がキレイだからね。」
    「東洋人とひとくくりにしないでくださいー!
     日本人!の肌がキレイなんですー!!
     それは日本人が、遺伝子とか水とかに恵まれてるからだけではなく
     お手入れをきっちりする性格だからでもあるんですーーーっ!」
    「あんた、いくつなんだい?」

    アッシュはローズに意気揚々と耳打ちした。
    「えっ、あたしより年上なのかい?」
    ローズのその驚きは、アッシュにとっては当然の反応だったが
    それはアッシュの最も好きな場面であった。

    アッシュは高らかに笑った。
    「ほーーーーっほほほほほほ!」
    テーブルの上に並べられた大小様々な形の容器を示し
    「この面倒くさいお手入れをこなしてこその、若さなのですわよー!」

    この後アッシュは、美容の知識をまくしたて
    ローズをとことんウンザリさせた。

    続く。

    関連記事: ジャンル・やかた 10 09.9.24
          ジャンル・やかた 12 09.10.1

  • 民主党政権

    最近ニュースを観ないようになっている。
    それは、必ず民主党の話題が出るからで
    それを観ると、ものすごく憂うつな気分になるからである。

    中でも目に付くのは、鳩山総理の夫人の言動。
    初めて見た時に、えらい頑張ってる感じの人だな、と
    良く言ってるフリをしての悪口の印象しかなかった。

    ああいうタイプの人が身近にいると、とてもうっとうしいと思う。
    「頑張ろうね!」 とか、明るく言われて
    ええっ? 私そんなに頑張ってませんか? と聞き返したくなるような
    押し付けがましいポジティブさを感じる。

    が、TVを観ていて愕然とした。
    ・・・あの人、デンパちゃんか?
    夫人が本に書いてたそうだが、寝ていて木星だか火星だかに行ったんだと!
    緑がたくさんあったんだと!

    これは個人の自由っちゃあ自由だが
    総理夫人になる前から、議員夫人で公的存在の女性だろ?
    そういう経験談は、ちょっと控えてほしい。
    アメリカ外交の時に何かやらかさないか、ドキドキしたよ。
    ニッポンの名誉は無事だったんだろうか?

    鳩山総理は夫人の助言を大事にしているそうだから
    今度の日本が未知の世界へ誘導されそうで、とても恐い。

    もういっちょ激しく報道されているのが、ダム廃止。
    八ッ場ダムと川辺川ダム。 (やんば、一発変換しねえ!)
    前原国土庁大臣の黒いガラス玉のような瞳が、いつも気になる。
    ホラー映画なら、あの瞳は人間ではないキャラ設定だ。

    でもまつげが、やたら長いのがすんげえ羨ましい。 それも上下とも。
    男性にそのまつげはムダだろー、私にくれ、頼む!
    マスカラも付けまつげも、お肌に激しく負担なんだよー。

    あやうくヘンな方向に行きそうになったが、真面目に話を続けると
    ダムの存続か廃止かについては、事務的には廃止の方だと思う。
    しかし事務的処理だけで国政をやってはいけない。
    この問題に関しては、非は自民党政府にあるので
    現政府はいい迷惑だと同情せんでもないんだが。

    ただ、マニフェストマニフェストとアホウのひとつ覚えのように
    断行しようとする、その姿勢が気に食わない。
    民主党政権を許したドバカ国民の考えなぞ、よくわからんが
    民主党のマニフェスト全部を支持して、票を入れたわけじゃないはず。

    これは確信犯なんだよ。 (確信犯という言葉の使い方を間違ってるけど)
    愚民どもは、あのマニフェストの全文を読んで理解など出来ない
    仮に全読み理解をしたとしても
    まさかこれはしないだろう、とタカをくくっているに違いない
    選挙の時から、そう民主党は予想してたのさ。

    民主党が本当にやりたい事は、在日外国人の参政権なんだよ。
    現在は壮大な計画の、起承転結の “転” 状態なんだ。

    起は、商売で儲けて、地位、力を得る
    承は、宗教で洗脳して、政治の分野に足場を築く
    転は、政権を取って、有利な法案を全部可決させる
    結は、日本植民地化・完了

    これからの日本政府の動向を注視してほしい。
    特に大きく報道されないところに、恐ろしい動きがあるはずだから。
    よく考えるとこれってヤバくねえ? みたいな法案成立が。

    民主党は、日本国民 “だけ” に大きく犠牲を払わせて
    世界平和だの平等だの皆仲良くだののキレイ事を唱えながら
    日本国民 “以外” が幸せになれる世界を目指していくだろう。

    これを阻止できるヤツはいないかも知れない。
    何故ならば、上記の2つのダムの所在地、
    調べてみたけれど、この選挙区は自民党が勝ってるんだ。
    つまりダム周辺地域住民は、民主党マニフェストにNO!と言ってるんだ。
    なのにその民意を尊重してもらえない。

    これは民主党が強いんじゃなく、自民党がダメなんだって事。
    本当に日本国民のための政治を心掛けるヤツはいなくなってしまった・・・。

    ちなみに、八ッ場ダムんとこの当選議員は小渕優子
    川辺川ダムんとこは、金子恭之。

    何故このふたりは前原大臣視察の現場に行かないんだ?
    行って騒げよ、それがそこの人々に選んでもらった義務だろ。
    ほんと、情けないよ・・・。

    ダム建設を続行するか廃止するかは別として
    この政権獲得後の第一手であるダム問題には
    今後の民主党政権の方針が凝縮されている。

    国民がどうあらがおうが、俺らがダメと言ったらダメ
    それはマニフェストに基づいた “民意” であって
    俺たちを選んだのはおまえらだろう? と言われているんだ。

    日本、このままじゃ終わってしまうと思う。

  • エロ広告対策

    最近、エロ広告が増えてきています。
    セキュリティ設定が低い場合、
    見るだけで感染するページが増えてきているので、
    URLや、メールアドレスをクリックしないように、
    注意してください。
    発見次第、消していきます。

    また、「http://」を使えない設定にしたので、
    使いたい方は、最初の「h」を抜いた「ttp://」で始めてください。

  • 小説もどき

    私は小説を読まない。
    長文が読めないくせに、活字が好きなんだが
    物語を楽しみたきゃ、映画を観れば良いし
    文字を読みたきゃ、雑誌やノンフィクションを読む。

    ネットはいかん!
    いや、最近つくづく感じるんだが、モニターって発光してるよな?
    その光が、半端なく目にクるんだよ。

    TV画面もそうなんだ。
    うちはまだブラウン管なんだが、すんげえ眩しい。

    PCモニターもTV画面も、どっちも光度を最小限ギリギリにしてて
    ただでさえ暗い場面が多いオカルト映画なんか
    8割ぐらいほぼ真っ暗なシーンで、何が起こっとんのかさっぱりなんだが
    それでも眩しいんだ。

    目が疲れて、目の奥が痛くなって、連動して頭痛がして
    何かもう2時間も見てると、辛くてしょうがない。
    歳を取ると、モニター系は凶器になる。

    その点、紙は発光しない。
    光を反射はするけど、モニターほどではない。
    しかし難点がある。
    紙媒体は有料なのである。

    そりゃPCもTVも無料ではないが
    同じだけ楽しもうとすると、紙系の方が莫大な費用が掛かるんだ。
    よって最近は買う雑誌でさえ厳正な選択を強いられておる。

    何か話が逸れまくっとるが、とにかく私は小説は読まないのだ。
    うちの親は、遊びたい盛りの幼児の誕生日プレゼントに
    よいこの図鑑全巻セットやドリトル先生全集を贈る大馬鹿者だった。

    (他に何も娯楽がないド田舎だったので、図鑑は面白いものだったんだが
     ニンテンドーが頑張ってる現代のガキがほんと羨ましいよ。)

    周囲の大人たちが、私の情緒が欠落しているのに気付いていたのか
    しきりに本を読め本を読め、と言いまくっとったんで
    高校は本を読もう、と思い立ち
    今思えば、単に勉強をしたくない言い訳なだけだが
    1年ちょっとぐらい、毎日毎日小説を読んでいた。

    それが、大正?昭和初期?ぐらいの作家の本で
    一日に2冊とか読む時もあったんで
    教科書に出てくる作家たちの本は、ほとんど読んだと豪語してもいい。

    しかしな、“読む” 事だけを目的にしたせいか
    内容どころか、何を読んだのかもキレイさっぱり忘れてしもうた。
    ばかりか、作家の憂うつが移ったんか、ウツ気味になってしまって
    青春時代にこんな事をしててはいかん! と、気付いて
    その後は遊び狂ったさ。

    学生の本分は勉学だと言うに、何を考えとんのか
    お陰で私の高校時代は、タメにならん3年間だったぜ。

    てかさ、文句が恐いんで名前は伏せるが
    ああいう作家たちって、何であんなに陰気なんだ?
    思春期の少年少女が思い悩むような、自虐思考で
    もしかしたらそれが “少年の心を忘れない” ってやつなんか?

    こんな感想しか持てなかった私には
    情緒を補うための読書は、正直ムダな行為だった、と言えよう。
    こういう経験が、小説を読まない生活に繋がっているのかも知れない。

    ところが、ここに来て知ったが
    小説は、“書く” のは、とても楽しいんだ!

    頭の中で話がどんどん広がっていって
    まるで映画を脳内で観てるような、そんな楽しさがある。
    これは多分、“ジャンル・やかた” の話は最初に夢で見て
    その時に設定がちゃんと決まっていたから、もあると思う。

    話の大筋や登場人物は固定されていたんで
    後はその続きを、夢を見るごとく脳内で妄想すりゃ良いだけなんだ。
    話の内容がさすが私の夢だけあって私好みなんで、妄想するのも楽しい。

    ま、それを文章にせにゃいかん、という困難はあるが
    私の妄想は、ほとんど言葉のみなんで
    それを繋ぎ合わせれば良いだけだから、何とかどうにかやっている。

    と言うわけで、今のブログでの私のストレス解消は
    この “ジャンル・やかた” である。

    あっ、「面白くない」 という意見は聞かんからな!
    あえての補足で、このブログ全体がつまらん、という意見もだ。

    この小説もどきの記事は、自分の楽しみになってるんで
    色々と言いたい事も山ほどあるだろうけど
    しょうがねえなあ、と目を逸らしてくれ。

    皆にも小説を書いてみるのをお勧めするよ。
    やってみると、結構楽しいかも知れんぞー。

  • ジャンル・やかた 10

    「私がまず思ったのは、挑戦期間ですー。
     普通は数週間なのに、兄は数ヶ月生きていられましたよねー?
     まあ、最後は自爆ですがー。」
    いつものアッシュなら、ここで笑うとこなのだが
    真面目な顔で続けるので、ローズも無言で聞き入った。

    「つまり今までの挑戦者は、武闘派だったのでしょうー。
     館中を探して回るというストレートな方法ばかりだった。
     だけど兄が探していたのは、主の部屋じゃなくて
     主の部屋に繋がる手掛かりだったんじゃないんですかー?」

    ローズが口を挟んだ。
    「いや、あたしは何も聞かされてないんだよ。
     上からもグレーからも。
     あたしの知ってる事は、本当に少ないんだ。」
    「あなたが嘘を付いていないのはわかりますー。
     あなたが知っていて言えないのは、館の間取りだけですよねー?」
    「うん、大体そんなもんだ。」

    ローズはちょっと驚いた。
    真剣にバカだバカだと思っていたアッシュが
    こっちの状況を読んでいる事が信じられないのだ。
    それほど心の底からアッシュをバカだと信じていたのである。

    「ローズさん、私が知りたいのは、電気の流れなんですー。」
    「はあ? 電気・・・?」
    ああ、やっぱりバカだ、とローズはガックリきた。

    「はい。 電気ですー。
     この館って、古いようでいて凄い電子制御がされていますよねー。
     私の今いるこの建物のこの階の廊下だけで、カメラが6個ー。
     7階建ての多分地下2階、それが8棟ー!
     全体の電気の使用量は、ものすごいもののはずですー。」

    「ちょっと待った、地下が何で2階なんだい?」
    「これはあまり自信がない推理なんですけどー
     敷地内は電気や電話線は、地下ケーブルで通ってないですかー?
     だったら外部からの電気の入り口は、地下ですよねー?
     警備や設備の搬入とかを考えて、よくわからないですけどー
     とにかく地下1階に電気系統の制御室がある、と考えたんですー。」
    真偽はともかくも推理が出来る頭はあるんだ、とローズは再び驚いた。

    「そして、こういう作りの建物には、必ず地下水路が通ってますー。
     今まで観た映画ではそうでしたもんー。
     歴史やら地盤やらはわからないですけどー
     何となく、地下はあっても2階までじゃないかとー。 勘ですがー。
     そんで水路と同じ階に、ビリビリくる電気系統は持って来たくないんでー
     ここは元々地下2階に水路があってー、地下1階は牢屋とか拷問室とかでー
     そこを電気関係の部屋として利用するんじゃないかとー。」
    ローズもそこまでは知らないのだが
    アッシュの言ってる事が正しいような気がして、ほおー、と声を漏らした。

    へっ、本気を出せばこんぐらい軽いぜ! と、アッシュは図に乗った。
    「主の部屋がどこかはわかりませんがー
     この監視カメラの数からいっても、かなり多くのモニターがあるわけで
     モニター室がどこかにあると思うんですー。
     私が主なら、しょっちゅうそのモニターを見ていたいので
     主の部屋の近くにモニター室もあるんじゃないかと考えたんですー。
     私は電気には詳しくないですけど
     最初に館に電気が入ってくる場所があって
     そこから各階に電気を流しているのだから
     その場所にはどこにどれだけ電気を流しているか、表示があって
     ケタ外れに電気消費量の多い部屋、そこがモニター室だろう
     そこを見つければ主の部屋も近い、と、考えてるわけですー。
     だから地下に行きたいんですー。」

    「・・・あんた、凄いね・・・。」
    よくわからないが、あまりの意外性にローズがつぶやいた。
    「私の電気の知識は、某専門誌の受け売りですけどねー。」
    アッシュが天狗になって、表面だけの謙遜をする。

    「でもさ、地下には入れないんだよ。
     それはルール違反になるんで、即刻失格になるよ。」
    「へえ、そうなんですかー。
     うーん、・・・・・・・ そうかあー
     そのルールだけで地下の価値がわかったから、もう良いですー。」
    あ、なるほど、とローズは思った。

    「じゃあ、どうするんだい?」
    「私も無謀な特攻はしたくないので、的を絞りたいんですー。
     兄の行ってた先を教えてくれませんかー?」
    「あー・・・、悪いんだけどそれは言えない。」

    アッシュが食い下がる。
    「上か下か、北か南かだけでもーーーーーっ!」
    「失格になりたいのかい? 即刻死刑だよ?」
    「うーーーーーーーーーー・・・・・・・」

    頭を抱えるアッシュに、なだめるようにローズが語りかけた。
    「あたしだって困ってるんだよ。
     あんたは主の座を望んで来たわけじゃない。
     言ってみれば、無欲な被害者であって、本当に気の毒に思うんだよ。
     でもあんたは来ちゃっただろ。
     始まっちゃったんだから、終わらせるしかない。
     できればあんたに代替わりを成し遂げてもらいたいんだよ。」
    「・・・・・本当ですかー?」
    「今は本当にそう思っているよ。」

    「ありがとうございますー、ローズさんー。 嬉しいですー。
     あなたのためにも頑張りますー。」
    「グレーのためじゃないんかい?」
    「あんなバカ兄貴の事はどうでもいいですよーっ
     そもそもあいつがこの惨事の元凶ですもんー。」

    そりゃそうだね、とローズも心の底でうなずいた。
    「じゃ、まだ出掛けないんだね。 用事が出来たら声を掛けな。」
    部屋を出ようとするローズに、アッシュが訊いた。
    「ローズさん、あなたはこの館内で引越しした事がありますかー?」

    「一度だけだったかね。 何でそんな事を聞くんだい?」
    「居住区はここだけじゃないんでしょー?
     他の居住区でも私は安全でいられますかー?」
    「さあね。 だけど居住区内だけは安全なんだよ。」
    「そうですかー、ありがとうー。」

    「?」
    首をひねりながら、ローズは出て行った。

    引越しはない、という事は
    ローズさんの部屋があるから、私もこの部屋なんだよね
    だったら他のフロアにも挑戦者専用部屋ってのがあるかも?

    そんで? いや、ただそんだけ・・・。
    自分が推理している事が、あまり役に立たないと気付いて
    さっきまでの天狗気分が、一気に冷めてしまったアッシュだった。

    何か忘れてる気がする・・・

    アッシュは詰まる度に、繰り返しこの言葉を思い
    それはもう、一種の呪文のようになっていた。

    続く。

    関連記事: ジャンル・やかた  9 09.9.16
          ジャンル・やかた 11 09.9.29

  • 加齢臭

    加齢臭というものの真実は、よく知らないんで
    解決しようと思ったら、きちんと調べた方が良い。
    ただ私の経験では、一般的に言われている話と
    ちょっと違う事もあるような気がする。

    うちの両親は、ともに体臭は薄かったが
    さすがに老齢になってからは、加齢臭が出始めた。

    どういう匂いかっちゅうと、プラスチック? ビニール?
    何かそういう素材っぽい匂いなのである。
    本来の体臭の中に、そのプラスチック?臭が混ざり始めるのだ。
    そして年々その匂いが強くなり、老人臭になる。

    老人臭というのは、どういう匂いかと言うと
    うーん、体臭が酸化したような平べったい匂い。
    (加齢臭 - 油) + 線香 + 防虫剤 + 酸味 のような。
    上手く説明が付かないけど、老人って皆同じ匂いがすると思わんか?
    体臭は様々だったはずなのに、加齢によってどんどん一本化される。
    これって不思議だよな。

    上で 「老齢になってから」 と書いたが
    加齢臭ってのは、普通は30代後半ぐらいで出始めるのに
    うちの両親は隠居前ぐらいからで、かなり遅かった。

    その変わり目で心当たりがある。
    仕事現役中は、毎日入浴していたのが
    隠居してからは、週に2度ぐらいしか入浴をしなくなったのである。
    それから急に加齢臭が強くなったので
    入浴はやはり臭いと密接に関係していると思う。

    加齢臭というのは、男性の方が強いと言われるが
    うちの父親は体臭からして少なく、その理由は3つ考えられる。
    粗食、風呂の温度、飲酒
    (飲酒は違うかも知れないが、毎晩1升近く焼酎を飲んでいたので
     そこは他人と明らかに違う、という意味で挙げた。)

    粗食とは、肉をあまり食わないだけじゃなく
    食事自体をそんなにしなかったのだ。
    朝はご飯と味噌汁と少量の漬物、昼は麺類、夜は焼酎のみ。
    (ちょっと人間っぽくない食事量だと、今気付いた・・・。
     うちのとうちゃんって、かなりおかしいヤツだったんだなあ。)

    次が風呂の温度。
    とうちゃんの入った後の風呂は、2倍に薄めないと誰も入れない。
    兄は 「50度ぐらいあるぞ!」 と、怒っていたし
    周囲は、あんな熱いお湯に入ってたら死ぬ、と心配していた。
    隠居して、全自動の風呂になったんだが
    とうちゃんの湯張り温度は60度に設定されていて
    親族間で、「緑茶も煎れられる」 と陰口を叩かれていた。

    幸いにも、とうちゃんは風呂じゃ死ななかったが
    あれでヤケドをしないのが不思議でならなかった。

    思うに、粗食は体臭と関係があるので良しとして
    うちのとうちゃんは、あの熱湯風呂で脂を根こそぎ取られていて
    それが体臭の少なさに繋がっていたのではないかと思う。
    普通の感覚の持ち主には、何の参考にもならない逸話だが。

    要するに体臭にも加齢臭にも、入浴は重要なファクターだと言える。
    普通の人は、うちのとうちゃんのように脂煮出し入浴は出来んので
    体の洗浄の方に気を遣うべきである。

    私が勝手に思うのは、しっかり洗うべき部分があるって事。
    脇の下とヘソと股と足の指は当然として
    案外見逃されている部分が、耳の裏の下の付け根。
    ここがものすごい重要な部分じゃないかと思うのだ。

    耳の裏の下の付け根、簡単に言うと耳たぶの付け根の裏だが
    何故ここかっちゅうと、ここが脂っぽい人が時々いるのだ。
    何となく、ここ怪しくねえ? と感じて、自分では熱心に洗っていたが
    先日美容院のおねえさんが、「臭い人は耳の裏が臭う」 と言っていたので
    私のこの予感は大正解だと確信している。

    単に体を洗うんじゃなく、どこを重点的に洗うかが
    加齢臭予防の要だと思う。

    そしてもうひとつ、臭いの元として意外なところに敵がいる。
    ある日、タンスから出した服から加齢臭が漂ってきた事があった。
    それも一部の服からだけ。

    いよいよ私も加齢・・・と思うのはプライドが許さなかったので
    ものすげえ必死こいて別の犯人を探した。

    そこで発見したのは、洗濯してすぐ着る分には支障はないけど
    タンスに数ヶ月しまい込んでいたら
    加齢臭のような臭いになる衣類用柔軟剤が存在する
    という驚愕の真実である!

    冬用部屋着を洗ってタンスにしまい、次の冬に出した時に気付いて
    加齢臭は同時期に洗濯していた衣類からしか臭わないので
    防虫剤ではないし、洗剤は替えてないし、で
    消去法で柔軟剤が真犯人だと気付いたのだ。

    ただ、それがどの柔軟剤だったか忘れてしもうたのが
    私のいつもの惜しい部分!
    こういう生活用品って、何の気なしに使うから覚えにくいと思わんかあ?
    でも使っていたのは、メジャーなのばっかりだったはず。

    とにかくこういう、“悪の柔軟剤” もある、という事は大発見である。
    お陰で柔軟剤を気軽に替えられなくなってしまったあげく
    愛用銘柄がよりにもよって廃止になってしもうて、途方に暮れている。
    今使ってるのが良いか悪いかは、数ヵ月後にしかわからないし・・・。

    まとめてみると、加齢臭防止には洗浄と洗濯
    何か、ごくフツーの結論になってしもうたな・・・。

  • 電話の受け答え

    以前、ある生命会社に電話した。
    保険の契約が進行していて、連絡をひんぱんに取る必要があった時期の事で
    その日も担当者に電話をする約束をしていたのである。

    知らない女性が出たので、こちらの名前を告げ
    担当者をお願いすると外出中だった。
    担当者からは、外回りが多いけど会社のこの番号に電話をしたら
    会社から自分の携帯に知らせてもらえるので、すぐに連絡が付く
    という話を聞かされていた。

    そういう話だったので、連絡を取ってもらうようお願いすると
    どういうご用件ですか? と、訊かれた。
    客用番号だったので、ちょっと驚いたけど
    こうこうこういう用件です、と答えると
    「ああー、じゃあ絶対にAと話したいという事ですね?」
    と言われ、はあ??? と、更に驚いた。

    別にこっちは何が何でも担当者じゃなきゃいけないわけじゃないぞ
    でもおめえんちが、そういうシステムを取ってるんだろ
    私との保険契約はAさん担当の仕事だろ
    どういう意図があるにせよ、その言い方は何なんだよ?
    せめて、「ではAと直接話す必要があるんですね」 とか
    他にもっと言いようがあるだろ
    てか、客専用番号に掛けて最初にAさんを指名していて
    おめえんちの会社は保険の仕事なんだから
    電話口で根掘り葉掘り訊く必要があるのか?

    一瞬でこんだけの事をズラズラ思ったが
    向こうには向こうの都合ってもんがあるんだろうから
    「申し訳ないですけど、Aさんに連絡をお願いできますか?」
    と、穏やかに丁寧に言った。

    すると、外出中だから連絡が付かない場合もある、と言われる。
    そんなん普通にわかるって。
    おめえ、電話を望んだAさんの立場まで落としてるぞ
    もうそれ以上いらん事を言わん方がいいぞ
    と、思いつつ、では私から連絡があった事をお伝えください
    と言って、電話を切った。

    Aさんから、その後すぐに電話があったが
    会社の電話に出た女性の事は、何も言わず
    契約の話だけをして、Aさんとのやり取りはとどこおりなく終わった。

    私は、この電話に出た女性の受け答えは、とても失礼だと思う。
    これでも昔からある、超有名な会社なんだ。
    電話応対など普通業務だろうに
    なのに何で? と、不思議でしょうがない。

    最近それこそ保険会社のCMで、電話応対のシーンがある。
    それを見た時に、何て無礼な口を利くんだろう、と思った。
    あれは会社から掛けた勧誘電話なのか、客が掛けてきたのか?
    あの手の保険会社を、“通販保険” というらしいが
    フレンドリーに慣れ慣れしく話すのがコツなのか?

    私は、“お客様は神様” じゃなく、五分五分の商取引だと思っているが
    だからこそ友達じゃなく、取り引き相手として
    双方ともに最低限の節度と礼儀を持つ事を望んでいる。
    だからCMのああいう電話の応対は、イライラさせられる。

    あの電話、初対面なんだろ?
    それであのやり取りは、会社も客もどっちもねえよ、と思うんだが
    私の頭が固いんだろうか?
    時代はもう、ああいう流れになっているんだろうか?
    それなら、それに慣れるように努力するが
    私の周囲でああいう無礼な会話をする商売人は
    上記の保険会社の電話に出た女性ぐらいだぞ。

    あのCMで、あんなやり取りがデフォだ、という流れにしよう
    という思惑があるんだったら、ものすごく反対したい。

  • ジャンル・やかた 9

    「ちょっとあんた、ひとりでそれ以上行くんじゃないよ!」
    ローズが背後から叫んだ瞬間、アッシュは察知した。

    ああ、そうか、ローズは私の見張り役でもあるんだ。
    いやローズだけではない。
    この館にいる人全員が、自分を見張っているんだ・・・。

    ちょっと気落ちしかけたが、考え直す。
    もし私が主だったら、同じようにした。
    これはゲームではないのだ。 挑戦者が対等になれるわけがない。
    味方をつけてくれるだけでも、主側には温情があると言えよう。
    私が主だったら、ひとりvs大勢でフクロのなぶり殺しだね。

    あれ? アッシュは考え込んだ。
    “相続” って、主が在任している以上、“交代” だよね?
    交代するメリットって、主側にあるのか?
    もしかして、“主” の立場自体がデメリットがあるんか?
    でも挑戦者の多さは、主になりたいヤツが大勢いる、って事だよね。

    てか、私は実の兄からだから、“相続” だけど
    兄は誰から相続されたんだ?

    考え込むアッシュに、隣でワアワア怒鳴っているローズ。
    そのローズを顔を見つめて、アッシュは思った。
    この状況には、わからない事が多すぎる。
    多分、最後までわからないんだろう。
    言葉の意味について迷うより
    実際にある事のみを見た方が良いような気がする。

    手摺りに捕まって、上半身を上下させ
    玄関ドアの上のガラス窓の向こうを見ようとするアッシュ。

    よくは見えないけど、きっと敷地内の電線は地中を通っている。
    と言う事は、地下室があるって事か。
    でも主の交代は、ローズの記憶にはないようだ。
    普通ならそんな長期間、地下で暮らしたくはない。
    主は絶対に、地上のどっかの部屋にいるはず。
    そんでモニタールームってのがあって、その近くにその部屋はある!

    「ローズさん、この館に電気屋さんっていますよねー?」
    「電気屋? 電気技師ならいるよ。」
    「その人に会いたいんですけど、どこにいますかー?」
    「仕事場は地下だね。」
    「そこ、危険ですよねー? 行けると思いますかー?」
    「行ってどうするんだい? 敵だったら殺しにかかってくるよ。」
    「あっ!!! そうか! それはしまった・・・。
     私、その人に話が訊きたいんですがー・・・。」
    「だったら食堂で待つしかないね。 で、どいつに会いたいんだい?」
    「あっっっ・・・・・、何人いるんですかー? 電気技師さんってー。」
    「んーーー、5人? 6人?」

    やっぱ、この館すげえ、とアッシュは思った。
    普通なら、館の管理に何人もの技師はいらないはず。
    この館は電気制御されているのだ。

    「ここ、地下何階ですかー?」
    「さあね。」
    「あなたは一緒に考えてはくれないんですよねえー?」
    「あたしは護衛だからね。」
    あー、私の知能じゃ限界があるー!!!
    アッシュは自分が理系じゃなかった事を、激しく後悔した。

    いや、ローズとの会話は端々にヒントが隠れている。
    それを積み重ねれば、真実が見えてくるはず。
    やっぱりこまめな質問は必要だ。
    詐欺系の名にかけて! って、違うわ!

    脳内ひとりボケ突っ込みに、アッシュは微笑し
    それをローズはまだ慣れていないのか、目をそらした。

    「じゃ、行きましょうかー?」
    アッシュがそう声を掛けると、ローズは嬉しそうに応えた。
    「おっ、やっと出陣かい、どこにだい?」
    「だーかーらー、地下にですってばー。」
    ヘラヘラ言うアッシュに、ローズは軽蔑の目を向けた。
    「地下は関係者以外、立ち入り禁止だよ。」
    「えっっっ!」

    そりゃそうだよな、言わば館の要によそ者を出入りさせるわけがない。
    だけどこれで、地下に電気系統の何かがあるのは確実。
    5~6人の技師・・・、24時間体制であろう。

    アッシュはまたローズの顔を見つめた。
    ローズに自分の思惑を言うべきか言わざるべきか。
    たとえ何も助言を貰えなくても、“同意” は必要なんじゃないのか?
    義務での護衛より、自分に感情移入をしてもらった方が
    後々やりやすいのではないだろうか?

    でも、ローズからこっちの情報が漏れたら・・・?
    アッシュは両こめかみを指で押さえながら、うなった。

    いや、どうせ主側が有利なのは変わらない。
    だったらローズの “肩入れ” に期待する方が、可能性がある。
    意を決したアッシュは、ローズの目を見据えて訊いた。

    「あなたには私の情報を誰かに伝える役目もあるんですかー?」
    アッシュの真剣な目に、ローズはとまどった。
    「そういう役目はない。 あくまで護衛なんだ。」
    「攻略に関するヒントもくれない代わりに
     周囲にも私の事を何も言わない、という事ですかー?」
    「そうだよ。 そんなコウモリのような事はしないよ。」
    「わかりました。 信じます。 来てください。」

    アッシュはローズを促し、自分の部屋に戻った。
    部屋の中央に立ったアッシュは、振り返ってローズに語り始めた。

    続く。

    関連記事: ジャンル・やかた  8 09.9.15
          ジャンル・やかた 10 09.9.24

  • ジャンル・やかた 8

    アッシュはパソコンと格闘していた。
    スレイプニールまでは期待していなかったけど
    インターネットエクスプローラーってのがない!!! 何で???

    こんな時は、スタートから・・・で、どこだっけ
    英語だからよくわからーーーーーーーーーん!!!
    確かここを見れば、ソフト?とかあるはず。
    一番下の緑の矢印のところをクリックした。

    eマークは全世界共通だよね?
    あ、あった、クリッククリックーーーと。
    ウィンドウが開くも、何かが書いてあるだけのページしかない。
    こっからヤフーとか、どう開くんだろ?

    アウトルックは?
    スタートから、プログラムで・・・・・
    あ、あった、クリッククリックーーーと。
    ウィンドウが開くも、これまた白紙のページ。
    メールは1通もなく、送受信も利いてないようだ。

    えーとえーとと言う事はーーーーーー
    モデムとか言う箱! 何か、ないような気がするーーーーーーー
    これはインターネッツには繋がっていないという事ですかーーーーーー?
    ええっ? じゃあ、このパソコン、単なるワープロ?
    何てこったい!

    あっっっ、じゃあ、携帯のネットは?
    ーーーーーーーーーーー 圏外だから繋がるわけがねーーーーーーっ!
    電話! 電話は? 電話のモジュラー何たらはあるんか?

    パソコンから出ているコードを辿って行くと
    壁にあったのは、差込口が2個の普通のコンセントだけであった。
    電話をつける余地すらない作りなんだ・・・。
    じゃあ、ここの住人は電話は使わないんか?

    アッシュはローズの部屋に駆け込んだ。
    「あんたねえ、ノックぐらいしなよ。」
    ごく当然の激怒をするローズに、アッシュは
    ほんとすいませんほんとすいません、とペコペコする。

    「で、今度は何だい?」
    「電話はどっかにありますかー?」
    「あるけど、あんたは掛けられないよ。」
    「携帯電話って知ってますかー?」
    「知ってるよ! 持ってるヤツもいるけど、私には必要ないね。
     ここら一体は圏外だろ、持ってても意味ないからね。」
    「電話、私は何故掛けられないんですかー?」
    「・・・あんたの話は前後するねえ。
     あんたが外に話を漏らすと困るからだろ。」
    「じゃなくてー、えーと、ここの電話は相手先に直通なんですかー?
     それとも交換手がいるんですかー?」
    「交換手・・・? うーん、聞いた事がないねえ。
     でも掛けたら相手にすぐ繋がるよ。」

    うーん、よくわからない。
    自分の疑問もよくわからない。
    何を考えてたんだっけ?
    にしても、走ったからゼイゼイだわ、あっつい。 あれ?

    「・・・・・・今、3月ですよねえー?
     ここらへんの気候って、今ぐらいはもう暖かいんですかー?」
    「いや、4月半ばまではまだまだ冷えるねえ。
     丘の方は雪も残ってるよ、ここいらは寒い地方なんだ。」
    「でも、あったかいですよねえー?」
    「セントラルエアコンとかいうやつだからね。
     1年中適温に設定されてて、館内は快適だよ。」

    そうなんだ!
    この館は外見は古いけど、中は最新設備が整ってるんだ!
    「ローズさん、“指示” って言ってましたけど
     それってどうやって受けるんですかー?
     上の人みたいなんとは、どうやって連絡を取るんですかー?」
    「ああ、そこの内部専用電話でだよ。
     あんたの部屋は、相続者専用だからないだろうけどね。」

    ローズが指を差した方を見ると、ファックス付き電話機が置いてあった。
    どうやら他の住人の部屋にも、これで電話を出来るようだ。
    館内には、外部に繋がる電話機自体がないのかも知れない。

    改めて部屋を見回すと、ローズの部屋は寝室が別になっている。
    このリビングには、TVに冷蔵庫、電子レンジも置いてある。
    ドアの真上を見ると、ブレーカーが4個並んでいた。
    見取り図はない代わりに、空調パネルがある。

    アッシュは窓に駆け寄り、向かいの建物の屋上を見上げた。
    アンテナなどは見当たらない。

    廊下に出て、窓の外を見る。
    こっちは裏側のようで、草原が広がっていて
    見える範囲の正面奥と左手に丘陵地帯、正面の丘の向こうは山
    右手範囲は森が続いていて、その先は開けているようだが見えない。

    食堂に駆け込み、窓を開けて上下左右を見回す。
    右側は他の住人の部屋が並んでいるんで確認が出来ない。
    だからここで出来る限り見ないと。
    アッシュは身を乗り出して、右手側を覗き込んだ。

    「おいおい、危ないよ、お嬢ちゃん。」
    じいさんがオロオロして、アッシュのジーンズのベルトを握る。
    アッシュが遠くに見たのは、鉄塔だった。
    ダメだ、こっちからでは見えない。

    じゃあ、真下だ!
    「ごめんねー、ありがとうーーー。」
    と、じいさんに叫びながら、アッシュは食堂を飛び出して行った。
    じいさんは、あうあう言いながら、アッシュの背中を見送った。

    真下、つまり東西南北を書いていない見取り図で言うフロアの南
    居住区のその部分に来たアッシュは、激しく動揺していた。
    ここに部屋はなく、壁もまたなく、あったのは手摺りである。

    見下ろすと、昨日入って来た玄関ホールがある。
    そのホールをはさんで真向かいには、また別の建物が続いていた。
    ここまで大きい建物だったとは・・・。
    アッシュは愕然とした。

    続く。

    関連記事: ジャンル・やかた 7 09.9.10
          ジャンル・やかた 9 09.9.16

  • 検索ちゃん

    ちょい前に大騒ぎしていた、TVデビュー
    録画して貰ったのを観た。

    この番組、関西では放送していないんだけど
    以前に観た覚えがあるんだよ。
    最初は関西でも放送してたんじゃないんか?
    それも8chの夜11時ぐらいから。
    なーんか、そういう記憶があるんだよなあ。

    で、肝心のこのブログの記念すべきTVデビュー
     ↓ 5秒もない、この一瞬だった。

    えれえ観にくい画面ですまんけど
    PC画面の撮影は、私には無謀だった、っちゅう事でひとつ何とぞー。

    ボーッと観てて、あまりにもボーッと観すぎてて
    ついついブログの事を忘れて、最後まで観て
    終わった後に、あれっ? と
    私は何でこの番組を観てたんだっけ? と。

    もう、ほんと相変わらずの忘却っぷりで
    最初から探し直して、ストップして携帯で撮ったぜ。
    この番組、面白いよな。
    関西はメイド刑事をやっとる場合じゃないぞ。

    なお、この録画が観たい人は
    ぷらちッに言えば送ってくれるそうです。

    にしても、この一瞬、なくても良いんじゃないのか?
    今回のシャンプーの話、私の記事とまったく関係ない気がするんだが
    何でこの記事を映そうと思ったんだか
    この一瞬のために、わざわざメールで了解を取って
    しかも私にわけわからん返事をされて
    番組制作って大変なんだな、と思った。

    ちなみに、“モテるシャンプー” とは
    イタリア人男性のフェロモン入りだと。

    匂い、やめといた方が良いぞーーー。
    良い匂いと臭い、紙一重だぞーーー。

    たとえば、オリエンタル系って一歩間違うと線香臭くなるじゃん
    それが歳を取ると、更に振り幅がデカくなって
    いまや、ヘタなローズの匂いのボディミルクなんか付けると
    老人臭のごとき酸っぱい匂いが漂うようになってきてよー。
    もう、薔薇の貴婦人と自称するには、ほど遠くなっちゃったぜ。

    あれって、何の匂いが悪さしてるんだろうなあ。
    自分の皮膚に付くと変化する香りがあるんだよな。
    とにかく年齢とともに、NG香りが増えてくるんだ。

    と、ここまで悪態ついておいて今更だが
    フェロモンって匂いじゃない、って聞いた事がある。
    フェロモンには匂いなどないんだと。

    調べてみたけど、よくわからんだった。
    ほんと、ここまで言っといて投げ出してすまんこったが
    シャンプーとか香水とか、必ず他人に感想を確認しながら使うようにな
    という逃げのまとめで良いか?

    ちゅーか、次の放送、稲川順二の恐い話だったんじゃん!
    ちょ、そっちの方が私の専門 ( ← ? ) じゃーん!
    ホラー、心霊、私に語らせてくれよーーー!!!
    あああああああああああああああああああああ、観たかったーーー!