私的恐いツボは、いるはずのないものがいるシチュエ-ション。
たとえば、自分以外に動くものがないはずの家の中で
何かが動いていたら、もんのすごーーーく恐い。
結婚してた時は、近所にダチョウ牧場があって
ダチョウをよく見ていたのだが
ダチョウって、つぶらな瞳に長いまつ毛で一見可愛いんだけど
キシャッ! キシャッ! と動いて、すげえ狂暴っぽい。
もしこいつらが逃げ出して、うちの庭にいたら・・・などと
つい想像してしまい、それ以来、庭を見るのが恐くなったもんだ。
いた場合のために、最初にどこに電話をするか
とか、シミュレーションしたりして、ほんと我ながらアホウだ。
(またそれが楽しいのが、ホラーファンのサガなんだが。)
いるはずのないものが、本当にいた経験もある。
ハエとかゴキブリとか蜘蛛も、その範疇だが
いや、普通いねえだろう、ってもの。
キッチンで布巾を取ったら、その下にトカゲがいた時には
そのまま外出して、行方をくらまそうかと思ったぜ。
ヤモリじゃなく、マジでトカゲなんだ、漢字で書くと蜥蜴。
友人に電話をして呼びつけて始末してもらう、なんてしたら
一生それをネチネチ恨まれるハメになる。
その爬虫類をどうにかせにゃならんのは、私だけ。
もう、パニくって何をどうしたかも覚えてないんだが
トカゲは開けた玄関ドアから出て行った。
・・・シッポを残して・・・。
これが真の “トカゲのシッポ切り” か! と、感動したが
シッポが切れるような暴行どころか、ロクに触れてもいないんで謎。
多分あいつら、自力でシッポを切るぞ。
その残ったシッポも触れず、どうしようかと延々悩まされたが
出て行かずに、部屋の中で行方不明になるのが一番困る。
住みつかれて時々出没されるのもイヤだし
死んで腐るんじゃないかと思うと、とても不安。
その時は、出て行くのを確認できてラッキーだったけど
トカゲがいる事が既にアンラッキーだと言えよう。
最近は、カニがいたらどうしよう、と悩んでいる。
カニカニうるさい関西のグルメ番組のせいである。
関西人ってカニ好きなんだなあ。
私もカニは好きだが、足だけである。
胴体なんぞ出されたら、目を逸らすのに苦労させられる。
カニミソなんか、深く考えすぎてしまうぜ。
で、もし部屋にカニがいたら、と想像すると恐くないか?
それを食い物として見なせるか?
生きていたら侵入者で、死んでいたら死体、と見なさねえ?
というか、出自のわからないものは、食い物ではねえよな。
山道を走っていて出てきた猪、とかなら、産地も認定されて納得だが
玄関先に置いてあった野菜なんかは
普通に考えたら、近所の誰かのお裾分けだろうけど
誰なのか、何故無言で置いていくのか
食っていいものか、から考えなきゃならなくなる。
お返しはいらないから、という心配り、という説も聞いたけど
そういう出現方法の食い物を喜んで食えるものだろうか?
TV番組で観たカニから、空想をふくらませて
生き物を喰らう人間の罪とは、みたいな哲学に至るのは
ヒマだな、の一言で済ませる以前に
どう転んでもドツボ、という自分の運命の暗示のようで何となく不愉快。
カニは数年食っていない。